ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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今回は箸休め回ということでIVはデュエルしません

代わりに別の子のデュエルをお送りします


第6話

舞網チャンピオンシップ、開催──!!

 

 

 

「早えーよホセ」

「どうしたのIV?」

「なんでもねえ」

 

なんだが時系列を著しく飛ばされたように感じてそう呟いたのをコロンに拾われたIVは、適当に誤魔化した

 

 

 

あの後、遊矢は原作通り権現坂(権現坂昇。遊矢のもう1人の幼馴染)とのデュエルを制して舞網チャンピオンシップ出場の切符を得た。他のメンバーも変わりなく、ここに大きな差異はなかった

 

では、存在自体がイレギュラーであるIVは?

 

彼もユースコースでの参加が確定していた。元々この世界に来てからはデュエルで無敗を誇っていた男だ。先日非公式デュエルで初の敗北を喫したわけだが、それでも公式戦で無敗なことに変わりはなく、IVは舞網チャンピオンシップで前代未聞の勝率10割で出場を果たしたのであった

 

しかし、本来IVは舞網チャンピオンシップに参加する意思は元々なかった。何故なら、今大会はランサーズの候補者を選定する為に開催されており、しかも2日目のバトルロイヤルデュエルではアカデミアの精鋭“オベリスク・フォース”が襲撃してくるからだ

 

つまり参加しても百害あって一利なし、大人しく傍観しておこうと考えていたわけである

 

では、何故そう考えていたIVが突如大会出場を決定したのか?…その理由が、IVの眼下にいる小さな子供にあった

 

「こんなにおっきな場所、初めて来たわ!デメット爺さんも連れてくれば良かった!」

(こいつ、能天気に…)

 

……そう。なんとあろう事か、人形デュエル塾からコロンが舞網チャンピオンシップへの出場エントリーを果たしてしまっていたのであった。しかも知ったのは前日

 

これにはIVもロクに練習したことがない奴がアクションデュエルをやるのは危険だから参加を止めるよう何度も言った(無論それは建前、本当の理由はアカデミアとの戦いに巻き込まれない為だ)。コロンも意地になって反発する為、売り言葉に買い言葉の口喧嘩に発展し、挙句の果てに大声でコロンが泣き出す始末である

 

最終的にデメットの鶴の一声でコロンは大会の参加が決定。IVもデメットには逆らいたくない為、仕方なく妥協策として自身もユースコースで大会に参加し、コロンと一緒に行動出来るようにしたのであった

 

零児や黒咲に記憶に関して詰問されることもあったが、そこは適当にはぐらかして答える気がない姿勢を見せれば特に問題はなかった。記憶はともかく、この世界でスタンダード来訪以前の経歴がないのは事実なのだ。痛くない腹を探られたところで、というやつである

 

とにかく、もうすぐコロンの第一試合が始まる。コロンが出場するジュニアコースは小学生だけが参加者なだけあって、高所から落ちても大丈夫な柔らかいソリッドビジョンが採用されている。危険なことにはならないだろう

 

ちなみにこの後行われたIVの初戦はファンサービスするまでもなく後攻ワンターンキルで終わった。悔しいでしょうねぇ

 

「じゃあIV、行ってくるね!」

「…ああ、気をつけろよ」

 

そんな事を思いつつ、IVは元気よく走っていった家族を見送った

 

 

 

さて、そんなコロンの初戦。その対戦相手はIVも見知った子供だった

 

「あなたとデュエルするの?私コロンっていうの!コロンちゃんって呼んでね!」

「う、うん。よろしく、コロンちゃん…」

 

相手は遊勝塾のシビレデブこと原田フトシであった。本来ならば彼も違う対戦相手と戦うはずなのだが、これもイレギュラーによる変化のひとつか

 

そんなフトシくん、普段はウザいほど明るくアグレッシブな彼だが、その彼にしてはいやによそよそしい態度でコロンちゃんに接していた

 

その理由はひとつ

 

(シ、シビレるくらい可愛い…!)

 

なんとフトシくん、コロンちゃん相手に一目惚れしてしまったのである。女子なら仲間である鮎川アユも愛らしい容姿に素直な性格といい子だが、まるで物語から飛び出してきたようなお嬢様或いはお姫様の姿をしたコロンは、フトシの心の琴線にぶっ刺さってしまったのだ

 

「ではこれより、原田フトシと人形(ひとかた)コロンのデュエルを開始する!両者、準備はよろしいか?」

「コロンちゃんはオッケー!」

「お、俺もいいよ!」

「では、アクションフィールド、オン!フィールド魔法「人形の館」!」

 

現れたアクションフィールドは、天井や壁が取り払われた木製の館。所々に置かれた人形や薄暗い雰囲気に、フトシは不気味がる

 

「うへぇ…この間(遊矢とIV)のデュエルの時のフィールド魔法みたい…」

「きゃー!可愛いお人形さんがたくさんあるわ!」

「か、可愛い…?」

 

惚れた女の子の美的感覚に少し疑問を抱くも、そういうのが好きな子もいるだろうとフトシは特に深く考えなかった

 

そして、コロンから始まった口上を皮切りにデュエルが始まる

 

「戦いの殿堂に集いし決闘者デュエリストたちが!」

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

 

「「アクション……!」」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

「お、フトシのデュエルがそろそろ始まるぞ」

「相手は…ドレスを着た女の子?」

 

時間を少し戻して、視点を遊勝塾サイドに変える。それぞれの試合を終わらせた遊矢達は、遊勝塾年少組のデュエルを応援しに来ていた

 

フトシの対戦相手を見て訝しむ柚子に続くよう、白ランにリーゼントの濃ゆい顔つきをした男児…権現坂が公開された情報を読み上げる

 

「対戦相手は人形コロン、塾は……人形デュエル塾?」

 

聞いた事のない塾だ、と権現坂が考える中、遊矢と柚子、素良の3人は『人形』という単語を聞いて嫌そうな顔をした

 

「に、人形かぁ…」

「どうしたのだ?」

「いえ、ちょっと…最近人形で嫌な思いをしたから…」

「やな奴が人形モンスターを使ってたんだよ」

 

つい先日、背後からいきなり人形(ネクロ・ドール)に拐われた経験から柚子が血の気の失せた顔で言い、素良も融合モンスターを下敷きにエクシーズ召喚されたのを思い出し、キャンディーに歯を立てながらそう吐き捨てた

 

「ああ、例のIVとかいう男の話か」

「呼びましたか?」

「「………え?」」

「あ」

「む?」

 

権現坂がIVの名前を出すと、何故かそれに対してこの場の誰でもない返事が返ってきて、遊矢と柚子は合わせて声を震わせ、素良は噂をすればと思い、権現坂は見知らぬ男の登場に眉を顰めた

 

それを対し返事をした男…IVはいつもの貼り付けた笑顔で話しかけ続けた

 

「先日ぶりですね皆さん。そちらの君は会うのは初めてですね?僕の名前はIVと言います、よろしく」

「「で、出たァ───!!」」

 

まるでおばけが出たかのような反応の2人を尻目に、権現坂が3人の前に立ちIVと対面する

 

「俺達に何の用だ?」

「おや、用がなければ話しかけてはいけませんか?」

「お前のことは遊矢達から聞いている。柚子を人質にデュエルを強要したとな。遊矢はそのおかげで色々な事に気づけたと言っていたが、お前が卑劣な手段を使って遊矢達を傷つけたのは事実!そんな男を遊矢達に近づけさせるなど、この漢、権現坂!断じて許しはしない!」

 

そう言って3人を庇う権現坂を見て、IVは内心めんどくせぇと思いながらも、柚子を見ながら言う

 

「そうですか。……では、柊柚子さん。貴女に一つだけ言いたいことがあります」

「わ、私!?」

 

指名されてアタフタする柚子に向かって…IVは深く頭を下げた

 

「柊さん、先日は申し訳ありませんでした」

「え…?」

「目的の為に貴女を巻き込んだこと、貴女の幼馴染を傷つけたこと、この場で謝罪いたします。遊矢くんも、大変な無礼をした事を謝罪します」

「IV…」

 

あまりに素直に謝ってくるIVの殊勝な姿に、遊矢も柚子も、それを目の前で見ていた権現坂も思わず困惑した

 

有名人である自身が頭を下げ続けては注目の的になると、程々にしてから頭を上げる。IVは真面目な表情で言った

 

「君達が許したくないと言うならば許さなくて構いません。これは僕なりのケジメであり、そして自己満足なのですから」

「柚子…」

 

権現坂が見守るように柚子を見る

 

言葉を待つIVに、柚子は意を決したように息を吐くと、IVに要求する

 

「IV、少し頭を下げてちょうだい」

「え…?」

「いいから」

 

言われるがまま、IVは片膝を突いて姿勢を低くし

 

スッパァン!!!

 

「痛っ!!」

 

強烈なハリセンの一撃がIVの頭部に炸裂した

 

その一撃を繰り出した柚子はハリセンを肩に置きながらIVに言う

 

「貴方のおかげで、遊矢は昔みたいに明るくなったわ。だから今回は謝罪も含めて、それで無かったことにしてあげる。遊矢もそれで良いわよね?」

「あ、ああ…」

「でも!今度同じ事したら絶対許さないわよっ!!ホントに怖かったんだからっ!!」

 

怒る様子を見せるがどう見てもポーズでしかない。痛む頭を押さえながら、IVはふと権現坂を見た。彼は呆れたようにため息をつく

 

「柚子がこう言って許したのだ。ならばこれ以上俺が口を挟むのも野暮といったものだ」

「…分かりました。謝罪を受け取ってくれて、ありがとうございます」

 

IVとしてもこれで心残りはなくなった…と考えたところで、IVは近くに置いてあった大きな袋を柚子に手渡す

 

「何これ?」

「お詫びの品として持ってきた物です。つまらない物ですが受け取ってください」

「は、はぁ、どうも」

 

謝罪はもう受け取ったのに、と思いつつせっかく用意してくれたのだからと受け取り、ヤケにヒンヤリする事から「氷が入ってる?菓子折り?」と思いつつ中身を確認し……今度は恐怖とは別の意味で青ざめた

 

「う、受け取れませんっ!!」

「え、柚子?」

 

貰った品を突き返すその姿は失礼極まりないものだったが、彼女の金銭感覚を考えれば、当然と言える物が入っていた

 

 

味!値段!希少性!頭の数!カロリー!あらゆるものが高級プリンの3倍以上あるそのプリンの名は『トリシューラ』!!それが10個入りの『トリシューラ徳用セット』!お値段なんと、驚異の『29800円(税込み)』ッ!!

 

 

ぶっちゃけた話、レオ・コーポレーションのような大企業同士がお中元として渡すレベルであり、貧乏まっしぐらの遊勝塾会計係の柚子には恐れ多い物品であった

 

「気にしないでください、お詫びの品なのですから」

「普通ならそうだけど私さっき貴方の事叩いちゃったのよ!?その上こんな高級な物受け取っちゃったら、私厚かましいにも程があるじゃない!!」

 

「それに、お父さんにはこの間の事は話してないの。こんな物見つかって出処を聞かれたら、貴方の事バレちゃうわよ!」

 

「なるほど、確かにそれは困りますね…しかし、僕の塾ではこれを消費し切る事は出来ません。そうなると棄てざるを得なくなり、それは勿体ないと思いませんか?」

「そ、それは…でも、貴方なら他にもツテが」

「それに」

 

IVが向けた視線に柚子や遊矢達も追従すると、そこには『トリシューラ徳用セット』を開封し、既に1個のプリンを堪能してるショタが1人

 

「お〜いし〜♡」

「もう既に食べてしまってるようですし」

「素良ぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

あまりの暴挙に柚子はムンクの叫びのように絶叫。すかさずハリセン攻撃をかますもヒョイっと避けられ、素良は満面の笑みでIVを見た

 

「こんなおいしい食べものがあったんだね〜♪ありがとうお兄さん!融合モンスターでエクシーズ召喚したの、特別に許したげる♪」

「こっちのモンスター吸い尽くす融合(テメェら)にだけは言われたくねえよ」

「んー?」

「いえ、なんでもありません」

 

アハハハハ!なんて笑いながら牽制し合う2人。柚子は「カロリーが…」とか「お父さんにどうやって誤魔化せば…」やら、ぶつくさ言いながら落ち込んでいるのを遊矢に慰められ、権現坂は本日何度目かのため息を吐いた

 

これは良くないと遊矢は思い、話を逸らす為にデュエルコートに指を指す

 

「そ、そんな事よりほら!そろそろフトシの試合が始まるし、応援しないと!」

 

 

 

「俺のターン!自分フィールドにモンスターがいないか恐竜族モンスターだけの時、「らくがきじゅうーすてご」は手札から特殊召喚できる!こいつが特殊召喚できた時、デッキから「らくがきちょうーとおせんぼ」を手札に加えて、その後手札を1枚捨てる!カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

名前の通り、落書きチックなステゴサウルスが出てくる。モンスター1体とリバースカード1枚という普通のスタートでデュエルは始まった

 

「私のターン、ドロー!私はモンスターを1体セットして、ターンエンドよ!」

 

「…え、それだけ?」

「カードも伏せないなんて」

「あの子、そんなにデュエル上手くないのかな?」

 

モンスター1枚だけという状況に、遊勝塾の面々は驚く

 

「それじゃ俺には勝てないよコロンちゃん!俺のターン、ドロー!「らくがきじゅうーすてご」をリリースして、「らくがきじゅうーてらの」のアドバンス召喚!」

 

らくがきじゅうーてらの

レベル8 ATK2400

 

「わぁ〜、おっきい〜!」

「「らくがきじゅうーてらの」は、恐竜族モンスター1体でアドバンス召喚できるんだよ!」

「すごーい!フトシくんデュエル上手なんだね!」

「え、えへへ。それほどでも〜!」

 

好きな女の子に褒められたフトシはクネクネ踊りながら有頂天になるが、ハッと正気に戻るとデュエルを再開する

 

「「らくがきじゅうーてらの」は召喚に成功した時、フィールドのモンスター1体を破壊できる!俺はコロンちゃんの伏せたモンスターを破壊!」

「きゃあ!!」

 

セットモンスター共通のモンスタービジョンが粉砕される。するとその中から巨大なプレゼント箱が現れ、ポップなSEと共にぬいぐるみが飛び出す

 

「わっ!?」

「セットモンスターは「おもちゃ箱」!このモンスターは破壊された時、デッキから攻撃力か守備力が0の通常モンスターを2体特殊召喚できるの!来て!「ガールちゃん」!「熊っち」!」

 

攻守共に0だが、2体のぬいぐるみモンスターがコロンの壁モンスターとしてフィールドに現れる

 

「これでダイレクトアタックはできないわ!」

「じゃあ「てらの」で「ドール・モンスター 熊っち」を攻撃!」

 

カクカクギザギザの火炎放射が放たれ、「熊っち」を焼却破壊した

 

「あ〜ん!私の「熊っち」が〜!フトシくんひど〜い!」

「ええ!?ご、ごめんね…?お、俺はこれでターンエンド!」

 

理不尽に怒るコロンだったが、()()()()()()と比べれば全然マシかと切り替えてデュエルを続けた。怒られ損なフトシくん、哀れ

 

「私のターン!魔法カード「黙する死者」を発動!通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚!」

 

これでコロンの場には2体のモンスター。ここからアドバンス召喚に繋げるのか…会場の殆どの人間がそう思っていた

 

「私は「ドール・モンスター ガールちゃん」と「熊っち」で

 

 

()()()()()()!!」

 

 

『『『ええっ!!?』』』

 

…だからこそ、コロンが取ったその行動に多くが驚愕した

 

「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

「命を吹き込まれた人形さん♪ステップ踏んで、シアワセ掴め♪」

 

 

「来て、ランク4♪「プリンセス・コロン」!」

 

 

そうして現れたのは、付けたデュエルディスクの代わりに大きな風船をいくつも掴んでいる…それ以外は全くと言っていいほど、人形コロンと瓜二つの姿をしたエクシーズモンスターだった

 

『ウフフ』

 

プリンセス・コロン

ランク4 DEF2200

 

ジュニアコースの、それも全く無名の選手がエクシーズ召喚を行う。それだけでも驚きを禁じ得ないというのに、そのモンスターがプレイヤーと瓜二つなのも、また混乱に拍車をかけていた

 

「な、なんだあれ!?」

「プレイヤーそっくりのエクシーズモンスター!?」

「いや、この場合、あの子供の方があのモンスターと似てると言えるのでは…!?」

 

遊矢ら幼馴染組も混乱の極地にいた

 

そんな中、唯一冷静な素良は、同じく混乱してないIVに話し掛ける

 

「驚かないんだね」

「まあ、見慣れていますからね」

「見慣れている?」

「ええ。あの子とはよくデュエルをしますから」

「ふーん……」

 

探るような視線を無視し、IVはフィールドを見下ろす。混乱がある程度収まったのか、コロンがデュエルを進めている

 

「どう?これが私の切り札「コロン」ちゃんよ!」

「シ、シビレるくらいビックリしたぜ…!」

「エクシーズ召喚に成功した「コロン」ちゃんのモンスター効果!墓地から「おもちゃ箱」を特殊召喚するわ!そして「コロン」ちゃん以外の自分のモンスターがいる限り、「コロン」ちゃんは攻撃も効果も対象を取れなくなる!」

 

「厄介なモンスターだな…」

「「おもちゃ箱」みたいな破壊された時に後続を特殊召喚するモンスターがいる限り、「プリンセス・コロン」には手を出せないってわけね」

「だが、防御を固めるだけでは勝利することは出来ない。あの少女、どうするつもりなのだ?」

「権ちゃんが言うと説得力があるね〜」

 

権現坂の言うように、「プリンセス・コロン」は防御力こそ硬いが攻撃性能は低い。それをどう補うのか?その答えをコロンはすぐに示した

 

「さらに永続魔法「波動キャノン」を発動!」

 

「「波動キャノン」!」

「「波動キャノン」は自分のターンが来る度にカウンターが溜まっていく永続魔法」

「そして「波動キャノン」自身を墓地に送ることで、乗っていたカウンターの数×1000ポイントのダメージを相手に与える…上手いねあの子。この方法なら「プリンセス・コロン」の効果を最大限に活かしてフトシにダメージを与えれるよ」

「フトシの奴、マズいんじゃないか!?」

 

カードを1枚伏せたコロンは既にターンを終了しており、フトシの手番が回ってきた

 

「俺のターン、ドロー!あ、やった!魔法カード「守備封じ」!「おもちゃ箱」を攻撃表示に変えるぜ!」

「ウソ!?」

 

DEF0→ATK0

 

「いいぞフトシ!」

「「プリンセス・コロン」の効果は確かに強力だが、それ以外のモンスターは攻守共に0だ。相手にダメージを与えてライフを削りきれば、「プリンセス・コロン」を無理に倒す必要はなくなる」

 

フトシは2体目の「らくがきじゅうーすてご」を増やして、しかもその手にはアクションマジックがあった

 

「行くよコロンちゃん!「らくがきじゅうーてらの」で、攻撃表示の「おもちゃ箱」を攻撃!さらにアクションマジック「ハイジャンプ」を発動!「てらの」の攻撃力は1000ポイントアップ!」

 

ATK2400→3400

 

「させないわ!」

 

するとコロンはジャンプして地面に思いっきり着地し、トランポリンの要領で高跳び、アクションマジックをギリギリのタイミングで取った。アクロバティックな動きに観客が沸く

 

そうしてセットしたアクションマジックは、確かに発動した

 

「アクションマジック「回避」を発動──」

 

──ただし、カード名は「加速」だが

 

「──じゃない!?アクションマジックって好きなカードが出てくるんじゃ」

「行っけー「てらの」!!」

「きゃあああ!!」

 

人形コロン LP4000→600

 

「あー…」

「あの子、アクションカードの仕様を勘違いしちゃったのね」

「プロ、特に父さんはいつも良いカード引いてたからなぁ。俺も念じれば良いカードが引けるんだと最初はよく勘違いしたよ」

(あのバカ……)

 

戦況を見れば、「おもちゃ箱」が破壊されたことで出てきた2体の「ドール・モンスター」の内1体が続く「すてご」の攻撃で破壊される中、吹っ飛ばされたコロンはうつ伏せに倒れ、プルプル震えていた

 

小さな女の子のそんな姿にフトシは泣かせてしまったと思い込み、デュエル中にも拘わらず声がけした

 

「コ、コロンちゃん、大丈夫!?」

「……い……」

「や、やっぱり、もうちょっと手加減したあげた方が良か「許さない…」………え?」

 

そんな時だった。コロンの愛らしい雰囲気が、変貌したのは

 

 

「許さない許さない許さない許さない…!!

 

許さな───いっ!!!」

 

ドカーンッ!!…と

 

館のデュエルフィールドなのに、まるでコロンの背後で火山が噴火したかのような情景を幻視する人々。それほどコロンの怒りは衝撃的且つ苛烈なものだった

 

「よくも私のかっこ悪い姿をIVに見せつけたわね!絶対に許さないわよ原田フトシ〜〜〜!!」

「ええー!?でも、デュエルだから仕方ないんじゃ…」

「問答無用っ!私のターン!!」

 

波動キャノン カウンター 0→1

 

「「波動キャノン」を墓地に送って効果発動!1000ポイントのダメージよ!」

「うわっ!」

 

原田フトシ LP4000→3000

 

「「熊っち」をリリースして「馬の骨の対価」!カードを2枚ドロー!そして私は「デメット爺さん」を召喚!」

 

コロンが召喚したのは、これまた彼女の祖父であるデメットそっくりの人形モンスター

 

「「デメット爺さん」の効果発動!墓地の攻撃力か守備力が0の通常モンスターを、闇属性のレベル8にして2体特殊召喚!」

 

「デメット爺さん」が糸を縫う、または小さな部品を弄ると、墓地から修復された「ガールちゃん」と「熊っち」が同時に出てくる

 

レベル4→8

レベル4→8

 

 

「…なあ、柚子、素良」

「な、何?」

「俺、この光景、すっっごく見覚えがあるんだけど…」

 

可愛らしさから激昂した姿に変貌するコロン、人形モンスター、不利な盤面からの急な展開力…少し前にやったデュエルとの既視感を酷く感じ取れた遊矢は嫌そうな顔で言うと、同じように素良も嫌そうな顔で呟く

 

「…奇遇だね。ボクも、すっっごく嫌な予感がする…」

 

 

「私は、レベル8となったモンスター2体でオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

 

ㅤ  15ㅤ 

 

 

 

「来て、“No.15”!!」

 

 

「運命の糸を操る地獄からの使者!漆黒の闇の中より、舞台の幕を開けて!」

 

 

「「ギミック・パペット-ジャイアントキラー」!!」

 

 

No.15 ギミック・パペットージャイアントキラー

ランク8 ATK1500

 

 

『えええええっ!?!?』

 

…そしてそのモンスターの登場に、IVを除く全員が目を見開いた

 

何せ、無名の子供が出したそのモンスターは、この数ヶ月近くでIVの代表的モンスターとまで囁かれている「ジャイアントキラー」だったのだから

 

「…遊矢…これ、予想出来た…?」

「出来るわけないだろ!?なんかヤバそうなモンスターが出てくるとは思ってたけど…!どういう事だよIV!?」

 

遊矢が顔を向けて問い質せば、IVは仕方ないといった風に首を振り、コロンが持っているカードの正体を話す

 

「あれはコピーカードですよ」

「コピーカードだと!?それは違法ではないのか!?」

「正確には、レオ・コーポレーションに僕のカードのデータを提供する対価として、エクシーズカードを複製してもらったんですよ。つまり、あの子のデッキには「ジャイアントキラー」以外の「ギミック・パペット」エクシーズモンスターも入ってるということです」

「「ジャイアントキラー」以外って…」

「あれか……」

 

遊矢と素良の脳裏に、攻撃力3000の大型エクシーズモンスターの姿が浮かび上がる

 

「でも、なんでそのカードをあの子に渡したの?あの子何者?」

「それは…」

 

説明しようとした瞬間、阿鼻叫喚が会場を包んだ

 

 

「う、うそだろ…?」

「すごいでしょ!!「キラ」ちゃんを出せるように、私すっごく練習したんだから!」

 

おそらく“killer(殺人者)”の意味も知らずキラキラしてるという意味で名付けたあだ名なのだろうが、致命的なまでに「ジャイアントキラー」に合ってなかった

 

「「キラ」ちゃんのモンスター効果!ORUを1つ使って、「らくがきじゅうーすてご」を破壊するわ!」

「え!?」

「行っけー「キラ」ちゃん!」

 

糸で「すてご」を捕らえた「ジャイアントキラー」が、コロンの可愛い掛け声に合わせて、ちっとも可愛くない攻撃でモンスターを破壊する

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!

 

「す、「すてご」ぉぉぉーっ!!!」

 

最早見慣れた尊厳破壊っぷりだが、「ジャイアントキラー」の事をビジュアルしか知らない観客や視聴者はその残虐っぷりに閉口し、青ざめ、そして案の定子供達はギャン泣きしていた

 

「ここで「デメット爺さん」の効果!エクシーズモンスターが通常モンスターのORUを使って効果を発動した時、そのエクシーズモンスターと相手フィールドのモンスター1体を選択して発動!その相手モンスターを破壊して、選んだエクシーズモンスターのランクの300倍、相手に効果ダメージを与えるの!」

「さ、300倍!?「ジャイアントキラー」のランクは8だから、えっと…!」

「もう1回よ、「キラ」ちゃん!」

 

フトシの計算を待たず、「デメット爺さん」の効果破壊にも拘わらず何故か「ジャイアントキラー」が動き出し、フトシのエースである「らくがきじゅうーてらの」を機械的に解体していく

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!

 

「うわああああああっ!!!」

 

これにはポジティブデブのフトシも深く心を傷つき、手と膝をついて完全に戦意喪失してしまった

 

 

「……な、なんと恐ろしいモンスターなのだ……」

 

大騒動となった観客席の中で、権現坂がポツリと漏らす

 

『「キラ」ちゃんのランク8×300、2400ポイントのダメージよー!』

『ぐへええええ!?』

 

「…フトシ、大丈夫かな…?」

「トラウマになってないといいけど…」

「遊矢、柚子、お前らが弱気になって諦めてどうする!まだアクションマジックがある!それで次のターンまで耐えれば…」

 

『リバースカードオープン!「魔封じの芳香」!お互いに魔法カードは1度伏せなければ発動できなくなるわ!』

 

「あ、終わった」

 

締めに発動されたアクションマジック封じの罠カードに素良は呟いた。流石の権現坂も何も言えないのか、無念と言わんばかりに顔を伏せる

 

『「キラ」ちゃんでトドメー!『ファイナルダンス』!』

『わぁあああああっ!!?』

 

原田フトシ LP 0

 

「…これはひどい…」

 

基本的に楽観的で、且つ結構グロテスクなモンスターを好んで使う素良がそう言うのだから、本当に酷いのだろう

 

「IV─────ッ!!」

 

そんな事を遊勝塾の面々が考えていると、観客席まで移動してきたコロンがIVに抱き着いて満面の笑みで頬擦りしていた

 

「え、さっきの子!?」

「いつの間に…」

「IV!IV!コロンちゃん勝ったわよ!IVのおかげで勝つことができたわ!ちゃんと見てたわよね!?」

「ええ、見ていまし」

「コロンちゃんの前でその喋り方禁止って言った!」

「…ったく、声がデケェんだよ、少しは静かにしろ」

(((あっ、やっぱそっちが素なんだ)))

 

遊矢、柚子、素良の心の声がシンクロした

 

「IV殿、その子供とは知り合いなのか?」

「ん?…ああ、こいつは…」

「IVはデメット爺さんの塾に後から入ってきたの!つまりコロンちゃんの後輩ってワケ!」

 

ふんす!と鼻息を鳴らしながら胸を張るコロン

 

「…という訳だ。塾長の爺さんの孫娘がこいつでな、爺さんに代わってこのガキの面倒を見てやってんだよ」

「ちょっと、また子供扱いしたわね!私はもう立派なレディなんだから!」

「レディ……お前が?………ハッ」

「あ───っ!!また鼻で笑ったぁーっ!!」

 

ポコポコ叩かれるも、痛くも痒くもないIVは更にコロンをからかい始める。そんな、紳士的でも悪魔的でもない、至って普通の少年みたいに子供と戯れるIVの様子を物珍しそうに遊矢達は見ていた

 

「IVって、所属先の塾を頑なに話さなかったらしいけど、こんな無名の塾出身だったんだな…」

「なんで黙っているのかしら?」

「あんなデュエルをしてるからねー、敵とかも多いんじゃないの?」

「己の塾を守る為か…」

 

IVの事は未だ分からずじまいだったが、この悪魔のようなデュエリストにも人並みに大切な場所があるのだと遊矢は思い、IVとコロンのじゃれあいをしばらく眺めているのであった

 

 

ちなみに負けたフトシはその後、IVに満面の笑みで頬擦りするコロンの姿を見てしまいハートブレイク!敗北とは違う涙を流しながら、少年の淡い初恋は無惨にも散っていってしまった

 

「かわいそうなフトシくん…」

 

「ジャイアントキラー」で涙目になっていたアユだけが、すぐに彼を同情してあげられるのだった…

 

 

 

 

 

 

 

やめて!ジャイアントキラーの特殊能力で、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を破壊されたら、紋章の力で実体化したファンサービスでセレナの精神まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないでセレナ!

あんたが今ここで倒れたら、バレットやプロフェッサーとの約束はどうなっちゃうの?

ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、IVに勝てるんだから!

 

次回「セレナ死す」 デュエルスタンバイ!




一体いつから────「ジャイアントキラー」は出てこないと錯覚していた?
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