ファンサービスは僕のモットーですから   作:ジャギィ

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第9話

少し、昔の話……

 

舞網市に、スタンダード次元に、もっと正確に言えば『遊戯王ARC-V』の世界に、1人の少年が舞い降りた。その少年はとあるキャラクターと似通った容姿をしており、前世から持ち込んでいたデッキもそのキャラクターが使っていたテーマと同じものだった

 

夢にまで見た世界に生まれ直した事実に、孤独の末に餓死したという末路すらも忘れそうになるほど、少年は歓喜した

 

しかし、その希望はすぐ絶望に墜ちた

 

少年は強過ぎた。カードの強さもそうだが、豊富な知識からあらゆる展開を予測、先回りしてデュエルする姿に、多くの者達が心を折った。そして1人残らず少年を罵倒し、最後に同じ言葉を残していく

 

『こんなのデュエルじゃない』

 

少年はただただ絶望した。生まれ変わった世界は、デュエルで何でも解決出来るような理想の世界ではなかった。幻想と気づいた時には既に遅く、少年は誰からも相手されないようになり、ひたすら妬まれ、畏れられ、化け物として蔑まれ続けた

 

世界に零れ落ちてきた少年に食料も、金も、戸籍も、ましてや人の繋がりもある訳がなく、それでも1週間近く、カツアゲ紛いのデュエルで何とか飢えを凌ぎ続けるも、やがて限界が訪れ、少年は雨の中飢えで倒れた

 

空腹で体が動かせず、雨で体が冷える。それでも誰も助けてくれない。誰も見てくれない。孤独だった

 

“また死ぬのか。前と同じように、ひとりぼっちで死ぬのか”

 

孤独の絶望に沈み、命の灯火が尽きようとしていた…

 

『なんという眼をしとるのじゃ、可哀想に…』

 

その時だった

 

『お腹が空いているのかい?…このままでは冷えてイカン。すぐ近くにワシの塾がある、来なさい』

 

『歩けないのかね?…よっこいせっと…なんと軽いのじゃ。辛かったじゃろうに…』

 

『さあ、食べなさい。…そうガッツかなくてもよい。誰も取らんよ、ゆっくり食べなさい』

 

少年は……後にIVと名乗るようになった青年は、この時思ったのだ

 

“希望”は、誰の中にも等しく存在するのだと

 

 

 

「「「デュエル!!」」」

「…………」

 

 

 

オベリスク・フォース達はニヤニヤと笑いながら目の前の男を見下していた。情報通りならばエクシーズモンスターを使い、逆転に長けたデュエルをする。しかし、オベリスク・フォースにとってこれはデュエルではない。デュエルという名の“狩り”なのだ。逆転する機会など1度も与えんと全員が意気込んでいた

 

「俺の先攻」

「チッ、先攻は奴からか」

「まあ良かろう」

「我々に勝てるはずがない」

 

オベリスク・フォース達は知らない

 

本気のIVが先攻を取った時点で…もうまともにターンが回ってくることがないという運命を

 

「IV…!」

 

コロンの介抱をする黒咲は、この結末を見届けるしかなかった

 

そして……IVの()()()()()()()()()が始まる

 

「フィールド魔法「地獄人形の館」を発動。発動時、デッキから「ギミック・パペットーリトル・ソルジャーズ」を手札に加え、そのまま召喚」

 

館と共に現れたのは、「ジャイアントキラー」をいつも操っていた小型人形の色違い版。くるみ割り人形のような口をカタカタ動かしながら、静かに現れる

 

「「リトル・ソルジャーズ」は召喚・特殊召喚時、デッキの「ギミック・パペット」を墓地に送ることで、その墓地に送ったカードと同じレベルにする事が出来る。デッキの「ナイトメア」を墓地に落とし「リトル・ソルジャーズ」をレベル8に」

 

レベル4→8

 

「お得意のエクシーズの下準備か」

「手札の「ブラッディ・ドール」のモンスター効果。EXデッキの「ファンタジクス・マキナ」を見せることで、見せたモンスターのランクと同じレベルの「ギミック・パペット」を「ブラッディ・ドール」と共に特殊召喚する。「ブラッディ・ドール」と「カトル・スクリーム」を特殊召喚」

 

「「リトル・ソルジャーズ」と「カトル・スクリーム」でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚」

 

「「ギミック・パペットーファンタジクス・マキナ」」

 

ギミック・パペットーファンタジクス・マキナ

ランク8 DEF3100

 

「出たな、エクシーズモンスター」

「守備力3100か。中々のものだな」

(だが無駄だ)

(我々の手札には「古代の機械猟犬(アンティークギア・ハウンド・ドッグ)」がある!)

(いくら壁を並べてもプレイヤーを直接狙えば問題ない!)

 

そう、オベリスク・フォースが使用する「古代の機械猟犬」とその系列のカードは、バーンに特化したデッキ構築をしている。状況に応じて、協力して「古代の機械混沌巨人(アンティークギア・カオス・ジャイアント)」を出すことも出来る。加えて3対1という数の利を活かした戦いを相手にすれば、勝つなど不可能に近いだろう

 

……戦っていたのが普通の人間であれば

 

「「ファンタジクス・マキナ」のモンスター効果。ORUを1つ使い、デッキから「RUMーアージェント・カオス・フォース」を手札に加え、更にこのターン、通常召喚とは別にもう1度「ギミック・パペット」モンスターを召喚出来るようになる。そして…「ファンタジクス・マキナ」を対象に「アージェント・カオス・フォース」発動!「ファンタジクス・マキナ」を1つランクが上のエクシーズモンスターにカオス化させる!」

「カオス化だと?」

「俺はァ!「ファンタジクス・マキナ」1体でオーバーレイ!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!!

 

カオスエクシーズ・チェンジ!!」

 

天の宇宙に「ファンタジクス・マキナ」だった球体が飲み込まれ……大爆発と共に闇が辺りを包んだ

 

 

 

「舞台を操る真の黒幕よ!愚かなデク人形共を玩び、希望を絶望に堕とせ!!」

 

 

 

「今こそ降誕せよ!!「CX(カオスエクシーズ) ギミック・パペットーファナティクス・マキナ」!!」

 

 

 

膨大な闇の中から姿を現したのは、見上げるほどの巨体を持った漆黒の人形

 

「ファンタジクス・マキナ」が普段のIVを形取ったモンスターだとするならば…「ファナティクス・マキナ」はまさに、IVの本性を体現したかのようなモンスター

 

「ジャイアントキラー」のようなローラーと獲物を引き摺り込む鉤爪付きのワイヤー。血のように真っ赤な髪とその横から伸びる2本の角は、邪悪なデザインも相まって、まさに“血に飢えた悪魔”の如きモンスターであった

 

CX ギミック・パペットーファナティクス・マキナ

ランク9 ATK3100

 

「なんだ、このモンスターは!?」

「攻撃力、3100…!?」

「狼狽えるな!いくら攻撃力が高かろうと、先攻1ターン目では何も出来ない!次の俺達のターンで…」

「何も出来ないのは、お前らだ」

「な、何っ?」

「特殊召喚に成功した「ファナティクス・マキナ」のモンスター効果!デッキから「傀儡遊儀ーサービスト・パペット」を手札に加える!そして墓地の「カトル・スクリーム」の効果!俺のエクシーズモンスターのORUを1つ取り除き、このカードを特殊召喚する!」

「バカな!いつそんなカードを!」

「さっき「ファンタジクス・マキナ」で墓地に送ったORUがこいつだ。さあ来い、「カトル・スクリーム」!」

 

ORUの「ファンタジクス・マキナ」を墓地に送りつつ、「カトル・スクリーム」を特殊召喚するIV。これでフィールドに「ブラッディ・ドール」と「カトル・スクリーム」、レベル8のモンスターが再び揃った

 

「レベル8のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

「現れろ、“No.40”!!」

 

 

「天よりの使者よ。操り糸に縋る愚者を、その音色でもって、天上の地獄に引きずり込め!!」

 

 

「「ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス」!!」

 

 

No.40 ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス

ランク8 ATK3000

 

「またエクシーズ召喚だと!」

「このモンスター、さっきのガキも使っていた…」

「ここで墓地の「RUMーアージェント・カオス・フォース」の効果発動!俺のフィールドにランク5以上のエクシーズモンスターが特殊召喚された時、デュエル中に1度だけ墓地のこのカードを手札に戻す!」

「あのカードは!」

「「ヘブンズ・ストリングス」のモンスター効果!ORUを1つ使い、このカード以外の全てのモンスターにストリングスカウンターを乗せる!そして「ファナティクス・マキナ」のモンスター効果発動!ORUを1つ使い、互いのどちらかの墓地からモンスター1体を対象に取り、そのモンスターを相手フィールドに特殊召喚する!俺は今墓地に送られた「カトル・スクリーム」をお前のフィールドに特殊召喚する!」

「バカが!わざわざ自分のモンスターを渡すなど…」

「この瞬間、「ファナティクス・マキナ」の効果が起動!相手のフィールドにモンスターが特殊召喚された時、特殊召喚されたモンスターの内1体を破壊し、その元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える!」

「なんだと!?」

「さあ、最初の一撃を喰らいなぁ!」

 

 

「『ディスペアー・カノン』!!」

「ぐわあああ!!」

 

 

オベリスク・フォースA LP4000→3000

 

「クソッ…おのれぇ、味な真似を!」

「そして俺はここで「RUMーアージェント・カオス・フォース」を再び発動!俺は「ヘブンズ・ストリングス」1体でオーバーレイ!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!

 

カオスエクシーズ・チェンジ!!」

 

 

「現れろ、“CNo.40”!」

 

 

現れた時と同じような状態で渦の中に飲み込まれ…再び現れた時、それは白い翼は黒い悪魔の羽と化していた

 

 

「人類の叡智の結晶で、悪魔よ甦れ!」

 

 

「「ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス」!!」

 

 

CNo.40 ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス

ランク9 ATK3300

 

 

「またランクアップしただと…!?」

「「デビルズ・ストリングス」の特殊召喚時効果!それにチェーンして墓地の「ファンタジクス・マキナ」の効果発動!「ギミック・パペット」エクシーズモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地のこのモンスターを蘇生!そして墓地の「RUM」1枚を手札に戻す!「アージェント・カオス・フォース」を回収…」

「ま、またあのカードが…」

「「デビルズ・ストリングス」の効果解決!フィールド上に存在するストリングスカウンターが乗ったモンスター全てを破壊し、1枚ドローする!『メロディ・オブ・マサカ』!」

 

「デビルズ・ストリングス」は悪魔の名に相応しい禍々しい剣を構えると、ストリングスカウンターが乗ったモンスター…即ち「ファナティクス・マキナ」を破壊し、IVはカードをドローする

 

それを見たオベリスク・フォースはプレイングミスをしたのだと思い、安心感からIVを嘲笑い

 

「バ、バカめ!わざわざ自分のモンスターを」

「そして、この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを、相手に与える!」

「破壊するとは…………は?」

「やれぇ!!「デビルズ・ストリングス」!!」

 

IVの命令を受け、先ほどから構え続けていた剣に闇のオーラを纏わせる。それは「ファナティクス・マキナ」の怨念が詰まった破壊のエネルギーであり、剣を振るうと闇の流動体は刺々しい刃に形を変え、ライフポイントを根こそぎ奪い尽くした

 

「ぎゃああああ!!?」

 

オベリスク・フォースA LP3000→0

 

「………は…?」

「な、何が…何が起きて…?」

 

気がつけば、仲間が1人消し飛ばされている現実に、残っていたオベリスク・フォースの2人は混乱の極地に至る。そして、その状況を第三者視点で見ていた黒咲は、IVが行った戦術に戦慄する

 

「先攻ワンターンキル…!」

(しかも俺の見る限り、IVはまだまだ余力を残している風に見える…いや、間違いなく余裕だ!)

 

何故なら、あれだけの展開力を見せつけて、先攻ワンターンキルをしたにも拘わらず、IVの手札枚数は6枚。手札を減らすどころか逆に初期札より1枚多い

 

そして黒咲が何より恐ろしいと思ったのは、EXデッキの2枚を除けばIVが使用したカードは、全て黒咲も知っているカードだという点だった

 

(つまりあいつは、俺との今までのデュエル全てが、その気になれば先攻1ターン目で終わらせることが出来たという事…!)

 

しかもあれほど複雑な効果の手順やコンボを、IVは1つもミスすることなく、澱みなく行っている。一体どれほど、あのデッキと向き合ってきたのか。デュエリストとしての技量も間違いなく高かった

 

「魔法カード「手札断殺」を発動!互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、2枚ドロー!」

「くっ、ドローする…!」

「2枚ドロー!」

 

IVは注視する。そして確認した

 

墓地に送られたカードの中に…モンスターカードが混じっていたのを

 

「次はお前だッ!!」

「ッ!!」

 

モンスターカードを墓地に()()()()()()相手を2人目の標的として指さし、IVは次の手を進めた

 

「俺のフィールドのエクシーズモンスター「ファンタジクス・マキナ」をリリースする事で、手札の「ギミック・パペットーナイトメア」は特殊召喚する事が出来る!更にこの方法で特殊召喚に成功した「ナイトメア」は、手札・墓地から同名モンスターを特殊召喚出来る!」

「う、嘘だろ!?またレベル8のモンスターが2体!?」

「「ナイトメア」2体でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!再び現れよ!「No.40 ギミック・パペットーヘブンズ・ストリングス」!!」

「2体目だと!」

「まずは「ヘブンズ・ストリングス」の効果!ORUを1つ使い、「デビルズ・ストリングス」にストリングスカウンターを乗せる!そして「RUMーアージェント・カオス・フォース」を三度(みたび)発動!「ヘブンズ・ストリングス」でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!!」

 

「「CNo.40 ギミック・パペットーデビルズ・ストリングス」!!」

 

「「デビルズ・ストリングス」の特殊召喚時効果!1体目の「デビルズ・ストリングス」を破壊してドロー!3300ポイントのダメージを受けろ!

 

『メロディ・オブ・マサカ』!!」

「ぐああああっ!?」

 

オベリスク・フォースB LP4000→700

 

「ORUとして墓地に送られた「ブラッディ・ドール」は手札以外から墓地に送られれば手札に戻す事が出来る。手札の「ギミック・パペットーキラーナイト」のモンスター効果!自分か相手、どちらかの墓地のモンスター1体を対象として発動し、対象のモンスターと「キラーナイト」をそのカードの持ち主のフィールドに特殊召喚する!俺は……もう1人の奴の墓地に送られた「古代の機械猟犬」を、効果を無効にして守備表示で特殊召喚させる!」

「お、俺だと!?」

 

3人目…オベリスク・フォースCと言えるプレイヤーの墓地から、機械仕掛けの猟犬が姿を現す

 

「「デビルズ・ストリングス」のモンスター効果!ORUを1つ使い、相手モンスター全てにストリングスカウンターを乗せる!そして俺は「ファンタジクス・マキナ」の効果を適用し、「ギミック・パペットーテラー・ベビー」を召喚!」

 

ベビーカーに乗せられた、青い体色に頭部の一部が欠けた赤ん坊の人形がケタケタ笑いながら登場する

 

あまりに長い、長過ぎるターンにしびれを切らしたオベリスク・フォース達はIVに抗議の声を上げる

 

「い、いい加減にしろ!いつまでターンを続けるつもりだ!」

「とっとと我々にターンを回せ!」

「とんだロマンチストだな」

 

それに対し、IVは冷ややかな目で見ながら、静かに告げる

 

「お前らにターンが回ってくるなんて…本気で思っているのか?」

「な……なんだと……?」

「そ、そんな事、出来るわけが……」

 

オベリスク・フォースは恐れ慄く。何故ならその宣言は、3人相手に先攻1ターン目でライフを削り切るという宣言に等しく、もしそれが出来るとするならば、それは即ち

 

「こ、こんな、こんなのがデュエルな訳あるかぁ!!」

 

今までの自分達の所業を棚に上げて、まるで悪魔でも見るかのようにIVを畏れた目で見る餌達に、IVは1人語り始める

 

「希望を与えられ、それを奪われる……その瞬間こそ人間は1番美しい顔をする」

「な、何?」

「それを与えてやるのが、俺のファンサービスさ」

「何を言って…」

「だがな、不思議に思わないか?奪う事前提で、何故わざわざ希望を与えるのか?」

 

このIVはあくまで模倣、コピー、贋物だ。だからこそIVは自分なりにファンサービスというものを模索し…1つの解釈に至った

 

「それはな、どんな人間にも己の中に“希望”というものを持っているからだ」

「“希望”……」

 

黒咲の胸の内に、妹と親友の姿が浮かび上がる

 

「それが人に、世界にとって良いものであれ悪いものであれ、その人間にとってかけがいのない存在だ。俺は絶望に染まった顔を見るのが好きだ。だが希望を全て奪われた人間は生きてはいけない。故に俺は仮初の希望を与え、それを奪うのさ。それが『俺』流のファンサービスだ」

「さっきからごちゃごちゃと、一体何が言いた」

「だからこそ」

 

その声音が怒りと、憎しみに染まるのを理解出来た

 

「俺の“希望”を奪い、俺の“希望”を傷つけたお前達から……

 

 

勝利も、プライドも、生きる目的も…命も!魂も!!

 

 

お前らのありとあらゆる希望を根こそぎ奪い、壊し尽くしてやるんだよぉ!!」

 

 

 

デメットに助けられ、コロン達に受け入れられ、共に過ごした。たった半年だが、それは孤独の絶望を体験したIVにとって、何にも変え難い時間だった

 

その思い出を踏み躙られた怒りは、IVを通じてモンスター達にも伝わり、禍々しい気配を増幅させていく

 

「召喚に成功した「テラー・ベビー」の効果!墓地の「ギミック・パペット」モンスターを守備表示で特殊召喚する!甦れ「デビルズ・ストリングス」!そして特殊召喚した「デビルズ・ストリングス」の効果で、「古代の機械猟犬」を破壊し、攻撃力分のダメージを与える!」

「があああっ!!」

 

オベリスク・フォースC LP4000→3000

 

紋章の増した力は、少ないダメージによる衝撃すらも凄まじい激痛に変える。効果ダメージでのたうち回る相手を虫ケラを見る目で一瞥しながら、最後の仕上げに入る

 

「そして墓地の「リトル・ソルジャーズ」を除外し効果発動!俺のフィールドの「ギミック・パペット」を2体まで選択し、対象のモンスターのレベルをターンの終わりまで4つ上げる!「キラーナイト」「テラー・ベビー」のレベルを上げる!」

 

レベル4→8

レベル4→8

 

「レベル8となった「キラーナイト」と「テラー・ベビー」の2体でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

「現れろ、“No.15”!!」

 

 

「地獄からの使者、運命の糸を操る人形…」

 

 

「「ギミック・パペット-ジャイアントキラー」!!」

 

 

No.15 ギミック・パペットージャイアントキラー

ランク8 ATK1500

 

 

「魔法カード「ジャンク・パペット」!「手札断殺」で墓地に捨てた「ギミック・パペットーボム・エッグ」を特殊召喚!そして「ボム・エッグ」は手札の「ギミック・パペット」モンスターを1枚捨てる事で、相手に800ポイントのダメージを与える事が出来る!」

「あ…ああ…!」

「「ブラッディ・ドール」を捨てて効果発動!」

「ああぁぁぁぁあっ!!?」

 

オベリスク・フォースB LP700→0

 

「あ…有り得ない…!我々は、我々は誇り高きアカデミアのデュエル戦士だというのに…!こんな、何も出来ずに負ける訳が…!」

「「デビルズ・ストリングス」のORUを取り除き、「地獄人形の館」の効果発動。俺の墓地の「ヘブンズ・ストリングス」をお前のフィールドに特殊召喚する」

 

最後のオベリスク・フォースのフィールドに特殊召喚された攻撃力3000の()()()()()()()()()()、そしてIVの場には召喚されたばかりの「ジャイアントキラー」。黒咲はIVの狙いを完全に理解していた

 

「これで最後だ!「ギミック・パペットージャイアントキラー」のモンスター効果!ORUを1つ使い、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を破壊!」

 

「ジャイアントキラー」の射出した糸に操られ、ローラーまで引きずり込まれ、破壊される「ヘブンズ・ストリングス」

 

「そして……破壊したモンスターがエクシーズモンスターならば、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」

「バカな!バカな!バカな!バカな!」

「さあ、懺悔の用意をしな…「ジャイアントキラー」!」

 

 

「『ディストラクション・カノン』!!」

 

 

「バカなァァァァァッ!!?」

 

 

オベリスク・フォースC LP3000→0

 

 

「……なんだ…これは……」

 

黒咲は思わずそう呟いた

 

レジスタンスでも飛び抜きの実力者達ですら、キチンと対策を取らなければ為す術もなくやられていくのがアカデミアとのデュエルだ。それほど数の利というのは埋め難い戦力差だ。相手がアカデミアの中でも精鋭の集団ならば尚更だ

 

だというのに蓋を開けてみれば、IVは初めて戦う数の暴力などものともしない、圧倒的な力という暴力で相手に何もさせずにねじ伏せてみせた

 

アカデミアのような、戦力差にものを言わせたルール無用の雑な戦い方とは根本的に違う

 

ルールという名の砥石で膨大な時間研磨し続け、鍛え上げ続けてきた、いっそ芸術的とすら言えるほどの暴力。美しさすら垣間見える純粋な殺意

 

文字通り、黒咲達とは()()()()()()()()()()()()()

 

(IV…お前は、本当に何者なんだ…)

「うっ……」

 

そう考えていた時だった。気絶していたコロンが目の覚まし、周りを見渡していた

 

「気がついたか。まだ痛いところはあるか?」

「あなた…だれ…?」

「俺か?俺は……」

 

そう聞かれ、なんと答えるべきか少し迷って…出てきた言葉はこれだった

 

「仲間…」

「え…?」

「俺は……そう、IVの仲間だ」

「IV………そうだわ…IVはどこ…?」

「大丈夫だ、IVならそこに」

 

 

「まだだ!まだ終わってねえぜ…!「ジャイアントキラー」!」

 

 

その時、憎悪の籠った声が2人の耳に届いた

 

「!?」

「IV…?」

 

「『ファイナル・ダンス』!!」

「ぐわあああ!?」

 

見れば、デュエルを終え、倒れ伏していた1人のオベリスク・フォースに対し、IVが実体化させたモンスターで攻撃を行っていた

 

「貴様、何を…!」

「何を…だと?分かりきった事聞いてんじゃねえよ。デュエルで負かした程度で、俺の気が済むと本気で思っていたのか?」

 

その目には深い闇が漂っており、顔はいっそ清々しいとすら言えるほどの狂気の笑みを浮かべていた

 

「こ、こいつ…!」

「何故だ!?何故脱出装置が起動しない!?」

「手動でも次元跳躍が出来ない…!」

 

IV以外には知る由もなかったが、IVの紋章の力には世界の壁を超える力があった。IV自身の不理解もあり、次元と次元の間を単独で超えることは出来ないが、IVが確保してある異空間への移動は可能だった

 

オベリスク・フォース達に起きている現象はその能力の応用。本来ならば敗北すると融合次元の拠点へ強制的に帰還させる機能を、自分を中心とした一定の範囲を異空間で囲い込むことで、電子機器の機能不全やデータ送受信のシャットアウトを起こしていたのだった。過去にIVを監視カメラで捉えられなかったのも、これが原因だ

 

「仕方ない!「古代の機械混沌巨人(アンティークギア・カオス・ジャイアント)」を出すぞ!!」

「待て!?我々の任務を忘れたか!!ここで「混沌巨人」を呼べば、多くのスタンダードの連中にバレる!我々の存在が露見するぞ!」

「プロフェッサーの命令を遂行する為だ!目撃者を全員消せば問題ない、スタンダードなど数が揃えばすぐに制圧出来る!やるぞ!!」

「ぐっ…………やむを得ん!合わせろ!」

「おう!」

「来い、「古代の機械猟犬」!「双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)」!」

「「参頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)」!」

「「究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)」!」

 

見覚えのある機械仕掛けの猟犬と共に、1つずつ首が増え、サイズも大きくなった「古代の機械猟犬」の融合体も召喚される

 

「あれは!」

「融合召喚!!現れよ!この世の全てを形無き混沌に帰す究極破壊神!

 

「古代の機械混沌巨人」!!」

 

地響きを鳴らしながら現れるは、十の獣の頭部が各部位についている巨大なマシンモンスター。オベリスク・フォースの破壊の象徴にして切り札「古代の機械混沌巨人」であった

 

それを見た黒咲は歯を食いしばる。エクシーズ次元ハートランドは、あのモンスターの先制攻撃によって蹂躙され、破壊し尽くされたと言っても過言ではない。その脅威が、今度はIVという一個人に向けられようとしていた

 

「我々を愚弄した罪は重いぞ、エクシーズの残党め!!「混沌巨人」、奴らを攻撃──」

 

ガガガガガッ!!

 

「………は?」

 

だが、「混沌巨人」は攻撃の為の予備動作すら出来なかった

 

IVの背後、その地面の闇から迫り上がるように登場した「混沌巨人」に匹敵する巨大モンスター…「ファナティクス・マキナ」のフックワイヤーが、「混沌巨人」をがんじがらめにして捕獲したからだ

 

「やれ、「ファナティクス・マキナ」」

 

その言葉に反応し、ワイヤーが高速で巻き取られ、胸部のローラーの中に究極破壊神と謳われるモンスターを引き摺り込む。粉砕機の中に入った腕は原型がないほど破壊され、胴体も頭部も脚も、漆黒の人形は無感動に解体していく

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!

 

「嘘だ…嘘だ…!」

「これは夢だ…そうに違いない!じゃなきゃ、こんな事…!」

 

自分達の切り札すらもことなげもなく対処され、とうとう現実逃避し始める3人だが、その3人にこれは悪夢のような現実だと教えるようにIVは呟く

 

「『ディスペアー・カノン』」

「「「うわああああああ!!!」」」

 

闇の奔流がオベリスク・フォース達を吹き飛ばす。既にボロボロの3人だが、立ち上がれない3人はまるで操り人形のように体が勝手に動き、宙に浮いていく。原因は言うまでもなく、「ファナティクス・マキナ」の横で剣を掲げている「ヘブンズ・ストリングス」だった

 

「なんだ…!?体が勝手に…!」

「…っ!見るな!!」

 

黒咲はIVが何をしようとしているのかを察し、コロンが何も見えぬよう、聞こえぬよう目と耳を塞いだ

 

そして磔にされたように宙を浮くオベリスク・フォースに、「ジャイアントキラー」が巨大な鞭を振り下ろす

 

「ぐわぁ!?」

 

鞭を振り下ろす

 

「うぎぃ!!」

 

振り下ろす

 

「がああっ!!」

 

何度も…何度も…

 

「こんなものじゃねぇ…」

 

何度も、何度も、何度も、何度も

 

「爺さんが、コロンが、あの2人が受けた……

 

 

苦痛は!!恐怖は!!絶望は!!」

 

 

 

こんなものじゃねぇッ!!

 

 

 

『ファイナル・ダンス』ッ!!『ファイナル・ダンス』ッ!!『ファイナル・ダンス』ッ!!『ファイナル・ダンス』ッ!!

 

 

“ぐあああああっ!!”

“やめろおおおおおっ!!”

“ぎぃやああああああっ!!”

 

 

悍ましい絶叫が、悪夢の如き光景を彩る

 

不気味で巨大な人形達に囲まれ、逃げる事も出来ず、ひたすら苦痛と恐怖を与えられる。これが悪夢ではなく何だと言うのか

 

(IV…お前は、これほどまでに……)

 

黒咲の故郷にも、今のIVと同じような境遇の奴がいた。アカデミアの侵略によって、家族を失った男が

 

建物の崩落から2人の息子を庇った父は命を落とし、その後の襲撃により弟はカードにされた。父と弟を失ったその男は復讐を決意し、実際にアカデミアを何人も痛めつけてカードに変えていたが…それでもここまでの凶行をするまでには至ってなかった

 

ここまでするほど、あの2人が大切だったのか

 

たった3人の人間に、この世全ての恨みつらみをぶつけるかの如きIVの狂気の行動に、黒咲も閉口せざるを得なかった

 

「さあ…フィナーレといこうか」

 

IVは瀕死のオベリスク・フォース達を「ジャイアントキラー」に掴ませると……破壊的な音を立てるローラーに向けて徐々に、徐々に近づけていく

 

「!? IV、お前まさか!!」

 

「う、うわああああああっ!!?」

「やめろっ!!やめろおおおっ!!」

「は、離せええええっ!!!」

 

IVがやろうとしている事に声を上げたのは黒咲だけではない。むしろ当事者であるオベリスク・フォース達は今までで1番の悲鳴をあげた。このままでは破砕機で生きたままミンチにされると分かっては、体が悲鳴を上げているのも無視して必死に脱出しようと抵抗していた。もっとも、その程度では「ジャイアントキラー」はビクともしないが

 

そんなオベリスク・フォースの絶望する姿を、IVは狂笑しながら嘲笑う

 

「ハハハハハ!!仮面越しでも分かるぜ、イイ表情をするじゃねえか!そら、もっと頑張ってみろよ!早くしないと骨も残さずミンチになっちまうぜぇ!!」

「やめてくれぇ!!いや、やめてください!!何でもするから、助けてくれぇ!!」

「ならもっと絶望の表情を見せな…!テメェらみてぇなクズどもが全てをかなぐり捨てて命乞いしながら死んでいく様は、これ以上なく見ていてスカッとするぜ!!」

 

そのセリフから、IVがオベリスク・フォース達の命乞いを全く聞く気がないのは明らかだった。これ以上は見逃せないと、黒咲はコロンから離れてIVに呼び掛けた

 

「それ以上はもうやめろ、IV!!」

「…なんだ?散々俺がやってきた事を見逃しておきながら、今更止めるつもりか?」

「…ああ、そうだ。俺は、お前の怒りは当然のものだと思っている。俺も家族を奪われた…お前の怒りと憎しみは理解出来る。正直に言えば、こいつらはここまでされる謂れのある事を散々やってきた。まさに因果応報だ」

「……で?」

「だが!お前がこいつらに手を下せば、お前もアカデミアと同じように、いや、それ以上に人の道を外れる事になるぞ!そうなれば二度と戻ってくる事は出来ない!!」

 

黒咲も、アカデミアを打倒する為、何より妹を救う為に、手段を選ばず戦ってきた男だ

 

特にスタンダード次元に来てから、赤馬零児を誘き寄せる為に関係者を襲撃してカードに変えた行為は、アカデミアと同等の行為であり、それは黒咲にも自覚があった。それでも、例え今後自分がどうなろうとも妹の瑠璃を助けたいという一心での行動であり、全てが終われば罰を受ける覚悟もあった

 

だが、IVはそんな黒咲ですら越えようとしなかった一線を、人としての境界線を容易く越えようとしていた

 

カードにされた人はまだ元に戻るかもしれない。しかし、人の命は死んでしまえば、二度と元には戻らない。これほどの実力者で、そして家族思いな男に、そんな修羅の道を歩んで欲しくはない

 

IVを仲間だと認めた、嘘偽りのない黒咲の本心だった

 

「だから、それだけはやめろ!!悪魔に堕ちるなッ!!IVッ!!」

 

そんな、黒咲の魂の説得を聞いた、IVの答えは

 

「何言ってんだ、黒咲」

 

 

「俺は……悪魔のデュエリストだぜ?」

 

 

「ッ………!!」

 

瞬間、黒咲は悟ってしまった

 

この男は既に…ただの言葉では止めることが出来ないほど、闇に染まってしまっている事を

 

「さあ…絶望の悲鳴を上げな!!」

「い、嫌だッ!こんな死に方だけは嫌だァァァッ!!!」

「よせぇぇぇぇぇっ!!!」

 

黒咲の制止も虚しく、死刑宣告が下された──

 

 

「死ね」

 

 

 

「ダメェ────ッ!!」

 

 

 

「ジャイアントキラー」の手は、ローラーのギリギリ手前で止まった

 

IVの長い脚に……コロンが勢いよく突進したからだった

 

「IV、お願いだからもうやめてよ!!」

「…………」

「不味い、離れろ!今のIVは普通じゃない!!」

 

今のIVは、憎しみに駆られて完全に我を失っている。ともすれば、自分から大切なものを壊すかもしれないほどに

 

「離せ、コロン」

「イヤ!!コロン、絶対離れない!!」

「離れないなら、お前から…」

「ッ! クソ!!」

 

意地でも脚にしがみつくコロンに、邪悪な気配を漂わせながら手を伸ばすIV(悪魔)。嫌な予感が的中した黒咲は決死の覚悟でコロンを守ろうとし…

 

「だって、離れたら…IVもどっかに行っちゃうもん!!」

 

ビタッ

 

「っ…!?(止まった…?)」

 

コロンのその言葉を聞いた瞬間、IVの動きが急に止まった。そんな変化にも気づかないまま、コロンは胸の内から溢れる思いを次々と声に変換していく

 

「パパとママも死んじゃって、デメット爺さんも消えちゃって、IVまでどっか行っちゃったら……コロン、また独りになっちゃう!!」

 

 

かつてコロンは、両親を事故で亡くしてから、抜け殻のようになってしまっていた。祖父のデメットが見かねて引き取ったものの、心の傷は深く、大きく、涙も枯れ果て、まるで人形のようであった

 

そんな彼女に転機が訪れる。ある日デメットが拾ってきた青年、彼はコロンと同じ孤独を抱えた人間だった。青年はぶっきらぼうで怖いところもたくさんあったが、本当は優しく温かい人で、傷ついていたコロンを気遣い、デュエルや勉強を教えてくれたりもした

 

デメットやIVとの触れ合いによって、コロンは本来のやんちゃで元気な性格に戻った。そうなると当然IVともよく衝突しケンカもしたが、コロンはIVの事を、本当のお兄ちゃんのように大切な家族だと思うようになっていった…

 

 

子供心ゆえにコロンは分かっていた。このままIVの手が血で染まれば、もう二度と自分やデメットの前には現れなくなると。また、大切な家族が居なくなるのだと

 

「お願い、IV、どこにも行かないで…私…わたし…!」

 

 

 

「もうひとりぼっちはやだぁっ!!」

 

 

 

「!!」

 

 

 

“ひとりぼっちで死ぬのか”

 

 

 

「うぇぇぇ…!!うえええんっ!!」

 

それ以上、コロンは何も言わなかった。泣いて、泣いて、泣きじゃくりながら、孤独になる恐ろしさを訴え続けた

 

IVも、黒咲も、何も言わなかった。泣き声だけが静寂を切り裂いていた

 

「…そうか……そうだよな……」

 

「ギミック・パペット」達が霧散していく。破砕機に間一髪で巻き込まれなかったオベリスク・フォース達は、3人とも涙や鼻水や尿など様々な液体を垂れ流しながら気絶していた。少なくとも、一生を怯えて生きることになるだろう

 

IVは唐突に屈んで、コロンを抱き締めた。泣きじゃくる子供の背中をあやす様に優しく叩くその姿に、あの禍々しい気配は既になかった

 

 

「ひとりぼっちは…辛いよなぁ…」

 

 

「えぐっ……ひぐぅ……ふぉ〜……」

「悪かった、コロン。置いていこうとして、独りにして、悪かった…」

 

2人は、ただただ抱き締め合った

 

自分は孤独じゃないと、確かめるように

 

大切な人がいるのだと、証明する為に

 

黒咲隼は、孤独に怯えるその2人を、静かに見守っていた…

 

 

 

ある男には、カードの精霊達がついていた。男に自覚はないが、手に入れてから死ぬまで大切に使ってくれて、死んだ後も一緒に連れてきてくれた事で多くのカードが歓喜し、自我が宿り、それらは精霊と化した

 

もし、男の心が絶望に染まり切り、世界の破滅を望めば、精霊達は男の望みを叶えるべく力を振るい、容易く世界を滅ぼしたであろう。かつて世界の全てを破壊し尽くそうとした、悪魔と呼ばれたデュエリストのように

 

しかし、世界は滅びなかった

 

1人の老人が男の孤独を埋めてくれたから

 

1人の少女が男の絶望を止めてくれたから

 

人知れず、世界は2度救われていた

 

男は、二度と悪魔に堕ちる事はなかった

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