【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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11話 ダンジョン攻略

勝負が始まった。

 

キング・ダークバタフライのターン。

黒く禍々しい羽音とともに、一枚のカードが宙に放たれる。

場に出されたのは──《ダークバタフライ》。

 

その瞬間、何も書かれていないはずの空のスロットに、小さな繭のようなトークンが自動的に出現した。

 

「これは……?」

 

俺は思わず声を漏らす。

 

「これは《さなぎトークン》。上位種のみに許された特殊能力だよ」

 

龍華が静かに言った。

 

──いわゆる、リーダースキルのようなものか。

最初から特別なルールを持ち、フィールドに出るだけで盤面を変えてしまう能力。

そんな理不尽な力を、“上位種”は当然のように振るう。

 

「自分だけ能力を持っていて……さすが上位種ですね」

 

俺は悔しさと畏怖が入り混じった声でそう呟いた。

 

しかしながら、龍華は一切動じていなかった。

静かにデッキに手を伸ばし、冷たい視線でカードを引く。

 

「来い、《召竜王グリヴァルド》──!」

 

その一声で、空気が震えた。

重々しい雷鳴のような咆哮がダンジョン内を貫き、召喚陣から光があふれ出す。

黒銀に煌めく巨大な竜――《グリヴァルド》が翼を広げて現れると、辺りの風が一変した。

風は竜を中心に吸い込まれ、そして爆ぜる。

 

「効果発動。竜の王に従う者たちよ、集え!」

 

グリヴァルドの咆哮に応えるように、山札がめくられていく。

鋭く、素早く、ためらいのない動き。カードを握る龍華の手は、まるで儀式のように美しかった。

 

「《五爪の召龍・ガイレン》、降臨!」

 

空が割れ、光が降り注ぐ。

鋼鉄の翼を持つ老獪な竜が、空間を裂いてその姿を現す。

 

「さらに、《暴吼竜ヴァルスヴァイン》──」

 

野獣のような唸り声と共に、黒き竜が地を踏み鳴らす。

その姿は、見る者の戦意を根こそぎ奪っていく。

 

「《崩天竜グランデリクス》、来い!」

 

天井を突き破りそうな威容。

現れたその瞬間、周囲の気配が一変する。まるで重力が変わったかのように、空間そのものが竜の咆哮に従って歪んだ。

 

「そして、《轟連王ガルヴァロス》!」

 

その呼び声と共に、最後の竜が飛来する。

雷鳴と共に降り立ち、既に召喚された全てのドラゴンの力を増幅する咆哮を上げた。

 

――怒涛の召喚劇。

1ターンでこれほどの盤面を構築できる者が、どれほどいるだろうか。

 

目の前の《キング・ダークバタフライ》が放った“さなぎトークン”たち。

それらは、か細く、儚く、ただその場に佇むだけの存在に過ぎなかった。

 

「力には、力で応じる!」

 

龍華がそう言い放つと、竜たちが一斉に動き出す。

空を舞い、地を砕き、炎を吐き、稲妻を裂く。

わずか数秒。だがそのすべてが、地響きと閃光に包まれた。

 

さなぎトークンたちは何もできないまま、ただ蹂躙された。

もがく間も与えられず、焼き尽くされ、打ち砕かれた。

 

――完全な制圧。

 

これが、龍華のバトルスタイル。

敵に一切の猶予を与えず、理不尽とも言えるまでの力の奔流で叩き伏せる。

 

カードゲームであるはずのバトルが、もはや“戦争”のように見えた。

その支配力、展開速度、そしてプレイヤーとしての威圧感――

 

まさに、“王者の戦い方”だった。

 

 

~~

 

戦いが終わった後、キング・ダークバタフライの残骸の中から、一枚のカードと、煌めく奇妙な扇が転がり出た。

 

「これは……何ですか?」

俺は思わず手を伸ばし、その扇を手に取る。触れた瞬間、微かに風が走ったような感触があった。

 

龍華が扇をちらりと見て、口角をわずかに上げる。

「それは上位種が落とす特別なドロップ。カードとは別に、こういった“装備アイテム”があるのさ」

 

「装備……?」

 

「そう。この扇は《蝶王の扇》といってね。持っているだけで、ダークバタフライ系のカードに“さなぎトークン生成”の能力を与える」

「いわば、上位種の能力を“借りる”ことができるわけだ」

 

俺はゴクリと息をのんだ。

「そんな強力なアイテムが……」

 

「だからダンジョン探索は重要なんだよ。カードだけじゃなく、こういうレアアイテムの回収も目的になる」

「普通の討伐じゃ、絶対に手に入らないからね」

 

龍華は淡々と語るが、その眼差しは真剣だった。

「ただし、こういうダンジョンを安定して回れるのは――氷花と私くらいさ」

「だからこそ、あんたたちにも早く戦力として一人立ちしてもらいたいのさ」

 

扇を見つめながら、俺は無言で頷いた。

 

龍華が淡々と語るのを聞きながら、俺は扇を握る手に力を込めた。

 

――結局、今回も何もできなかった。

 

龍華が圧倒的な力でキング・ダークバタフライを倒し、貴重なドロップまで手に入れた。

俺はただ、その背中を見ていただけだ。

 

(……自分の無力さが、嫌になる)

 

どれだけ戦っても、まだ“追いつけない”。

俺は足元を見つめた。

 

だが、同時に胸の奥から、ゆっくりと熱がこみ上げてくる。

悔しい。情けない。でも、だからこそ――。

 

「俺も……もっと強くなります」

 

思わず口に出ていた。龍華がちらりと振り返り、わずかに微笑む。

 

「その意志があるうちは、大丈夫だよ」

 

その言葉に、わずかに救われた気がした。

それでも、この無力さを埋めるには、まだまだ努力が必要だ――。

 

 

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