【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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15話 滅亡からの復活

花園の騎士団は──滅びた。

 

燃え落ちた屋敷の残像が脳裏に焼きつく中、龍華は肩を落としていた。

けれど、彼女の眼差しにはまだ、消えていない光が宿っていた。

 

「……実は、こうなることも予想していて。別の拠点も準備していたんだ」

 

声こそ落ち着いていたが、その裏にある悔しさは隠しきれていなかった。

それでも彼女は、立ち止まらなかった。

 

「すごいですね……」

 

光華はぽつりと呟いた。

心底驚いていた。目の前に広がる建物――それは少し古びた館だった。

かつての花園の騎士団本部に比べれば、ずいぶんと小さい。

だが、それでも確かな“拠点”の体を成している。

 

「このあたりは、定期的にモンスターを掃討してる。しばらくは安全だろう」

 

龍華の声に、ほんの少しだけ安堵が滲んだ。

 

かつての華やかな屋敷とは違う。

ここには豪奢な庭園もなければ、騎士たちの声もない。

 

それでも、ここが「始まりの場所」になる。

再起の第一歩となるのは、間違いなかった。

 

「ここからまた……始めるんですね」

 

光華は、遠くを見るような目で呟いた。

そして、その隣で俺も静かにうなずいた。

 

 

時間が少し経ち、俺は龍華と二人きりで話す機会を得た。

 

「天界には……報告したんですか?」

 

組織が壊滅したことを、彼らにどう伝えるのか。ずっと気になっていた。

 

龍華は一拍置いてから、静かに答えた。

 

「まだだが……少しずつ話そうと思っているよ」

 

「……やっぱり、天界って強いんですよね。私たちより」

 

「当然だ」

 

「取引とか……できないんですか? カードとか、アイテムとか。そういう形で、力を貸してもらえたり……」

 

俺は口を結びかけて、少し迷いながらも口を開いた。

 

龍華は目を細めた。驚いているのか、それとも呆れているのか、感情は読み取りづらい。

 

「……君も、氷花さんのことが悔しいんだね」

 

「はい。まだ何もできなかった。だから……力が欲しいんです」

 

「……気持ちはわかる。だけど、天界が力を渡すのは“対価”がいる。基本的には釣り合わない取引になる」

 

龍華は少し考えてから、ぽつりと続けた。

 

「でも……そうだな。取引するという発想自体はなかった。こっちが弱いとわかってるから、つい、頭から諦めてたよ」

 

「……?」

 

「不利な条件になるだろうが、彼らの持っている“アイテム”──私が欲しかったものがある」

 

「じゃあ……」

 

「それを、差し出すつもりだ。交換としてね」

 

龍華の瞳は揺れていなかった。強さを求める決意がそこにあった。

 

それは俺が望んだ“力”そのものでもあった。

 

「強くなります。絶対に」

 

小さく、龍華が笑った気がした。

 

~~

 

龍華は天界の存在・天界人であることを伝えた。

 

「地上と天界に分かれていたなんてね……」

音華はぽつりと呟いた。その声には驚きと、どこか納得したような感情が混じっていた。

 

「信じられないけど、龍華から……そんなオーラが出てるのは、確かに感じてた」

 

光華も静かに頷く。

 

「……信じがたいですが、本当なんでしょうね。あの力を見てしまうと」

 

俺も心の奥で同じ感情を抱いていた。

ただ──俺は転生者だ。

この世界の“外側”を知っている者として、そういう異世界的な話にも多少の耐性があった。

信じがたいが、納得できる。そういう距離感だった。

 

龍華は、皆の真剣なまなざしを受け止め、深く頷いた。

 

「──では、ここからが本題だ」

 

彼女の声には迷いがなかった。

「襲ってきたモンスターを最速で狩る。それとも、このまま少数でこじんまりとモンスターを狩り続けるか。今の我々には、二つの選択肢がある」

 

一瞬の沈黙の後、光華が口を開いた。

 

「……私は、あいつらを倒したいです。あの日、あの光景を見て……本当に悔しかった」

拳を強く握りしめ、目に宿るのは迷いのない闘志だった。

 

「たぶん、また狩りを続ければ、あの悪魔たちは再び現れます」

「だから、いずれ向き合う必要があるんです」

 

俺と音華も、無言で頷いた。

心の底では皆、同じ気持ちだった。

 

「……たしかにな。再び襲われるリスクはあるが、それでも前に進む覚悟があるなら、止めない」

 

龍華が静かに息を吸い込み、続けた。

 

「了解だ。その方向で話を進めよう」

 

そして──

 

「まず、私を最速で強くする手段はある。…それが、天界人との取引だ」

 

場の空気が少し張り詰める。

天界人との接触、それはあまりにも遠い存在との交渉を意味していた。

 

「私は、君たちのおかげで取引のテーブルに立てるだけの実績を積めた。……でも、それでも実績をうまく報告できていない。立場は、あちらの方がまだ上なんだ」

 

そう語る龍華の顔に、わずかに悔しさがにじんでいた。

彼女が自分の弱さを口にすることは珍しかった。

 

「……大丈夫です」

光華が優しく笑って言う。

「むしろ、私たちのカードも、依頼の中で確実に強くなってきています」

 

「不利なトレードでも、龍華が強くなるなら構わないよ」

音華も真剣に語る。

「ダンジョンも、これからどんどん攻略していくべきだと思う」

 

「ありがとう。……本当に、頼もしくなったな」

龍華はふっと目を細め、感謝の意をこめて微笑んだ。

 

龍華は、一瞬だけ目を伏せた。

まるで、重い覚悟を飲み込むように。

 

そして、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……ありがとう。ふたりとも」

 

その声には、わずかに震えがあった。

けれど、それは弱さではない。

確かに、仲間の想いを受け止めた者の覚悟の重さだった。

 

「私が欲しいのは──“ドラゴンを5体召喚した時、相手のモンスター1体にダメージを与える”というアイテム」

 

龍華の言葉が再び静かに、しかし力強く響く。

 

「黒悪魔族はカードの効果を受けない。だが、アイテムの効果は通る。これなら対策になるはずだ」

 

天界との不利なトレード──

だが、必要なのは勝つための道具。

命を懸けてでも、倒さなければならない相手がいる。

 

「このトレードには、私の持っているすべてのアイテムを使うつもりだ。ほとんどが、氷花と私で集めたもの。だから、私にその権限がある」

 

少し言い淀んで、言葉を続けた。

 

「だが……カードに関しては違う。君たちが集めたものもある。反対があれば、そのカードは決して使わない」

 

言葉を聞いた音華が、すぐさま口を開いた。

 

「大丈夫。私のカードを使ってください」

 

彼女の瞳は、まっすぐだった。

誰かのために戦い、託し、つなぐ。

その意志が、言葉に宿っていた。

 

あのカードは、新しいメンバーのために。

未来の希望のために。

 

だからこそ──迷いなく渡す。

 

光華も、そっと続けた。

 

「音華さんがそう言うなら……私のカードも、使ってください」

 

言葉は静かだが、その決意は熱い。

信じている。だから託す。

今は、龍華にすべてを預けるべき時。

 

そして、俺も頷いた。

迷いはなかった。

 

「……わかった。みんなの想い、無駄にはしない。必ず、勝ちに繋げてみせる」

 

龍華の声に、迷いはなかった。

次の戦いの火蓋は、静かに──だが確実に切って落とされた。

 

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