【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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17話 ダンジョンに行く前の準備

俺たちは、遠く離れた獣系ダンジョンへの遠征に向かっていた。

知らない土地に足を踏み入れるのは、それだけで神経がすり減る。

 

「まずは、情報屋の元に行こう」

龍華が静かに言った。

 

「獣のダンジョンには、私も行ったことがない。だから、事前に情報を集める必要がある」

 

彼女の表情は落ち着いていたが、その目は真剣そのものだった。

無理もない。相性の悪い相手だった場合、最悪のケースも考えられる。

準備不足で踏み込めば、それこそ命取りになりかねない。

 

慎重すぎるくらいが、ちょうどいい。

 

「了解。情報屋のところへ向かいましょう」

俺たちは頷き合い、足を速めた。

 

俺たちは、情報屋と呼ばれる男の元へたどり着いた。

テントが一つ、草むらの中に立っている。まるで風に飛ばされそうなほど頼りない。

彼はどこかに定住しているわけではないようだった。

 

「龍華。お前が仲間を連れてきたのは、初めてだな」

 

テントの中から姿を現した情報屋は、軽い口調でそう言った。

 

「組織が……黒悪魔族に潰された」

 

龍華の声は静かだったが、その奥に強い怒りが滲んでいた。

 

「黒悪魔に、か……それは大変だったな。で、これからどうする?」

 

「決まってる。黒悪魔族を倒す」

 

「ほう、なるほど。それなら最初の情報としては悪くない」

 

そう言って、情報屋は丸めた地図を広げた。

 

「これが、俺の移動日程だ。次に会いたければ、これを参考にしろ」

「次も“お前たち”に情報を渡す価値があると判断できればな」

 

そこから彼の顔つきが変わり、話は本題に入った。

 

「カード20枚を受け取った。ほとんどがバニラカード……だから、渡せる情報は限られる」

 

「獣のダンジョン。あれはどんなデッキなんだ?」

 

龍華が尋ねると、情報屋は即答した。

 

「獣族を大量展開する自然属性のデッキだ。群れで一気に押し込む戦術だな」

「だから、“全体除去”を持っていけ。それだけだ」

 

彼はさらに、そこそこ効果のある2枚のカードを龍華に見せられると、わずかに態度を軟化させた。

 

「そこまで出すなら、ボスの情報だけ教えてやる」

 

「頼む」

 

「ボスは《紅蓮獣レオン・ファング》を中心にした構成だ。

味方全体のステータスを+1する支援系のカード……ただの殴り合いじゃ勝てないぞ。

除去と展開力、どちらも必要な相手だ。これ以上は俺も分からん」

 

「なら、問題ないな」

 

俺は笑って、懐から自分のカードを一枚取り出す。

 

「《紅蓮獣レオン・ファング》。俺も同じカードを使ってるんだ」

 

「ほう……たまげたなぁ」

「そういう巡り合わせも、あるもんだな」

 

情報屋は楽しそうに笑った。

~~

 

「自分と同じタイプのデッキか……」

俺はポツリとつぶやいた。

 

「なら、そのダンジョンで手に入るアイテムも、デッキの強化に直結するはずだな」

 

「きっと、能力とも噛み合ったアイテムがドロップするだろう」

龍華が横から補足する。

 

「獣ダンジョンの攻略は、我々のパーティーを一気に底上げする近道になる」

彼女の視線はすでに、戦場の先を見据えていた。

 

「……ただし、無理は禁物だ」

「嫌なプレイや苦手な展開があれば、ちゃんと共有してくれ」

「そうすれば、立ち回りでフォローできる。攻略の難易度も下げられる」

俺はメンバーに目を向けて、言葉を続けた。

 

「それと、道中で全体除去カードも拾っておきたいな。事故を減らすためにも」

 

~~

 

闇に包まれた空洞の中、下っ端の黒悪魔族の一体が、ぼんやりと頭に埋め込まれた水晶を眺めていた。

その水晶は微かに輝き、遠くの気配を感知している。

 

「……生き残りがいるのか」

歪んだ口元が、ゆっくりと吊り上がる。

 

「こいつらを狩れば、いいものを持っているかもな……」

「出世できる……あのアスモディウス様に認めてもらえる……!」

 

ドクン、と水晶が赤く脈動する。

興奮を抑えきれないのか、彼は自らのデッキを取り出すと、指でなぞるようにカードを選び始めた。

 

「フフ……行こうか。狩りの時間だ」

「お前たちが拾い集めたその"アイテム"、ありがたく献上してやるよ……!」

 

黒悪魔族の影は、闇の中へと音もなく消えていった。

狩りの標的は、今まさに獣のダンジョンを目指す彼女たちだった。

 

~~

 

黒悪魔族の根城の隅。

闇に覆われた部屋の中、少女は膝を抱えてうずくまっていた。

瞳には、濁った赤と、かすかな金が揺れている。

 

──まだ、完全には染まっていない。

 

だが、身体の節々に走る痛みがそれを許さない。

背中には未完成の黒い羽根。手の甲には魔の刻印。

少女は、もがきながらその変異に耐えていた。

 

ふと、水晶に目を向けていた黒悪魔の下っ端を見つめる。

耳に入ったのは、聞きたくもない言葉だった。

 

「生き残りがいるのか」

「こいつらを狩れば、いいものを持っているかもな」

「出世できる……アスモディウス様に認めてもらえる……!」

 

少女は、息を呑む。

 

危険信号をおくっている。

声にならない声。けれど、その願いだけは確かに、世界のどこかに響いていた。

 

彼女がまだ「完全に堕ちていない」ということだけが、ほんのわずかな希望として――。

 

 

~~~

 

 

龍華はふいに足を止めた。

森の静寂が、わずかにざわめいたような気がした。

 

「……嫌な予感がする」

 

その一言に、俺たちは思わず立ち止まる。

 

「黒悪魔族が……近づいている」

龍華の声は低く、確信に満ちていた。

 

「え……敵が大群で来るってこと……?」

音華が身構える。彼女の手はすでにデッキに伸びていた。

 

「……いいや、一人だけだ」

龍華は静かに首を横に振る。

 

「でも、そいつの相手は――私しかできない」

 

空気が凍る。

龍華の気配が、いつもとは違う。冷たく、研ぎ澄まされた刃のようだ。

 

龍華は大切な誰からのメッセージだと感じてしまっており、胸が少しざわついた。

 

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