【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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18話 黒悪魔の襲撃

ダンジョンの入り口が見えてきた。

岩に埋もれるようにして口を開けたダンジョンは、まるで獣が口を開けて待ち構えているようだった。

 

しかし、龍華の足が、ぴたりと止まる。

 

「……先に行ってくれ」

 

俺たちは思わず振り返る。

 

「我々を、追ってきているみたいだ」

その声は冷静だったが、どこか張り詰めたものを感じた。

 

「分かりました……」

 

本当は言いたかった。

「一緒に戦います」――と。

 

でも、言えなかった。

その言葉に、何の意味もないことを痛いほど分かっていたから。

 

龍華の実力は別格だ。

あの黒悪魔族の気配に気づけたのも、彼女だけだった。

 

俺たちじゃ、足手まといになる。

 

光華も黙ってうつむいていた。彼女もまた、同じことを悟っていたのだろう。

 

 

「……信じてます」

 

その言葉だけを残し、俺たちはダンジョンの中へと足を踏み入れた。

背後で、龍華の気配が静かに消えていく。

 

闇に包まれた森の外れに、そいつは現れた。

黒い肌に、まるで寄生されたかのように頭部に食い込んだ水晶――禍々しい光を放ち、脈動している。

その男は、狂気を湛えた目で、目の前の存在を値踏みするように見ていた。

 

「なるほど……お前が、一番強いやつか」

「そうだ」

龍華は一歩、地を踏みしめる。

口元には、かすかな笑み。余裕とも、挑発とも取れる。

 

「ただの女じゃなさそうだな……」

「さすが、“団長様”ってところか」

水晶が脈打つたびに、男の周囲の気配が歪む。空気が震え、異界の瘴気が滲み出す。

だが、龍華は微動だにしなかった。

 

「御託はいい」

「……勝負しよう」

声は低く、静かに、だが確かに大地を揺らすような重みがあった。

次の瞬間、森の静寂が、破られた。

 

~~

 

お互いに静かにカードをシャッフルし、手札を引く。

一瞬の静寂。空気が張り詰める。

 

「では、勝負を始めようか」

 

黒悪魔の男は、ゆっくりと頭の水晶に手をかざした。

淡い紫光が脈打ち、水晶の奥に何かが映し出される。

 

「……ふむふむ」

彼はにやりと口角を上げる。

 

「なるほど。あなたは“ドラゴン”のデッキか……」

 

「……なに?」

龍華の目がわずかに見開かれる。

 

「驚いたか? 俺の水晶はな!!」

「“手札を覗く”ことができるんだよ」

 

「……なるほどな」

龍華は低く呟く。

だが、焦りは見せない。

むしろ――面白くなってきた、というように笑っていた。

 

「でも、それだけじゃ勝てない。デッキの中身が見えた程度で、勝てると思わないことね」

 

「なるほど……やっぱり、さすが団長様だ」

「でも、その自信、崩れる瞬間が楽しみだ」

 

「人間を馬鹿にする余裕を叩き潰すのが楽しみだよ」

龍華は笑っており、言い返している。

その反応に黒悪魔は舌打ちをうつ。

 

 

黒悪魔は、不気味に笑いながら次々とカードを展開していった。

 

「出でよ──《黒悪魔兵》《黒悪魔斥候》《黒悪魔魔導犬》……!」

 

盤面に並ぶ黒悪魔族たち。しかし、どれも小粒な下級モンスターばかり。

能力を持たず、ただの壁にもならない。

 

(……なるほど)

龍華は冷静に分析していた。

 

(こいつの“水晶”は、ハッタリだ。こちらの手札を読む力は本物かもしれないが、デッキの内容は貧弱。効果耐性もなく、展開も鈍い。つまり──こいつは“情報”で優位に立とうとしただけの雑魚)

 

「人間のくせに……ドラゴンを次々と展開していくな」

「この程度で、私を倒せるとでも?」

 

龍華は、静かにカードを場に出す。

 

「来い──《召竜王グリヴァルド》!」

 

フィールドに召喚された巨大な紅蓮の龍が咆哮を上げる。

 

「グリヴァルドの効果発動。デッキトップを1枚確認──それがドラゴンなら、即座に場に召喚!」

 

ドンッ!!

 

「《轟連王 ガルヴァロス》!!(コスト6/4/4)

召喚時効果──すべての我がドラゴンに+2/+2を付与!」

 

ドラゴンたちの全身に紅蓮の光が宿り、攻撃力が爆発的に高まる。

 

「私のペンダントの効果を、今発動する」

 

胸元で揺れていた《龍の嘆きのペンダント》が強く光りだす。

 

「条件は──場にドラゴンが5体。達成済みだ」

「この瞬間、相手フィールド上のモンスター1体に“5ダメージ”を与える!」

 

ペンダントから迸った蒼白の光が、《黒悪魔斥候》を貫き、木端微塵に吹き飛ばす。

 

──展開、強化、そして破壊。

 

3つの戦術が完璧に揃った瞬間だった。

 

黒悪男は、唇を噛んでいた。だが、もはや抵抗の術はない。

 

「くっ……こんな……はずでは……」

 

「情報だけで勝てると思うな」

「それが“カードバトル”だ」

 

一気に総攻撃を仕掛ける龍華。

フィールドのドラゴンたちが咆哮しながら、一斉に黒悪魔を襲う!

 

そして、勝負は決した。

 

黒悪魔が断末魔の叫びをあげて崩れ落ちる。

 

身体が黒い霧のように崩れ──

次の瞬間、一枚のカードへと変わった。

 

ぴたりと地面に落ちるそのカードを、龍華は静かに拾い上げる。

 

「……人間を、舐めるなよ」

 

低く冷たい声とともに、彼女はカードを懐にしまい込んだ。

 

空気が静まり返る。

 

ペンダントの光が収まり、周囲には倒された黒悪魔族の残骸が残るのみ。

ただのカードゲームではない。これは、命を賭けた“現実”だ。

 

龍華はゆっくりと背を向けた。

 

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