【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件 作:銀層
電翼龍のダンジョンに潜る前、俺たちは短い作戦会議を開いた。
「まずは私と狼華で前線を張る」
龍華が、迷いのない声で告げる。
「除去と展開の切り替えは、私たちの得意分野だからね」
狙いは明確だった──電翼龍が得意とする貫通ダメージを放たれる前に、即座に破壊すること。
その一撃を封じ込められれば、奴らの猛攻は大きく削がれる。
「私たちが先陣を切る。その流れを見て、後続の二人も参戦してくれ」
龍華の視線が音華と光華を射抜く。
二人は静かに頷いた。
「なるほどな」
柊は短く呟いた。その目は、ただこちらを見ているだけではない。
戦場の隅々まで見渡す鷹のように、俺たちの動き、判断、呼吸のリズムすら観察している。
今も、こうして評価しているのだろう。
俺たちが使える駒か、それとも足を引っ張るだけの存在か──その線引きをするために、必死になっている。
俺たちのカードを、柊は手際よくめくっていく。
指先の動きは無駄がなく、どのカードも一目で効果と用途を把握しているようだった。
「柊さん、これで勝てるかな?」
デッキを差し出す。
「試験とはいえ、生き延びたいからね。あなたに頼ることも試験の一つでしょう」
「……おもしろいな」
柊は口元をわずかに歪め、視線をカードに落とす。
「たぶん、下級層なら安定して勝てるだろうな」
「なら、私のデッキを見てくれ」
龍華がカード束を差し出す。
「展開力がすごいな……このドラゴンの連続召喚は、俺よりも速いかもしれない」
柊の目がわずかに見開かれる。
「だが、破壊の手段が薄いのが弱点だな」
龍華は微笑んで、胸元から一つのペンダントを取り出す。
《龍の嘆きのペンダント》:ドラゴンを5体場に出すたび、敵1体に無条件でダメージを与える。
「なるほど……破壊と展開、両方を満たしているわけか」
柊の声には、先ほどよりも明確な興味が混じっていた。
(こいつらは……本気で黒悪魔を倒すつもりだ)
柊はカードの束から視線を上げ、静かに息を吐いた。
その目には、単なる冒険者や戦闘狂とは違う、確かな覚悟が映っているのが見えた。
~~
電翼龍のダンジョンに突入した。
鋭い雷光をまとった竜たちが、咆哮とともに突進してくる。
「では、こいつらを倒すぞ」
龍華が声を張る。
「分かりました」
俺は頷き、次のカードを引き抜く。
雷鳴と竜の咆哮が交錯する中、決戦の合図が響いた。
俺と龍華は、即座にカードを切り、盤面を作る。
攻撃は苛烈だが、防御は薄い──それが電翼龍の弱点だ。
俺は除去カードを的確に撃ち込み、龍華はその隙を突いて一気に展開。
破壊と展開のリズムが噛み合い、敵の攻め手を潰し続ける。
雷鳴が轟く中、盤面はこちらの色に染まりつつあった。
体力1の電翼龍が、無数に盤面を覆っていた。
その羽ばたきは空気を震わせ、青白い雷光があたりを走る。
「今だ――!」
俺は《紅蓮獣バーサク・タイガー》を召喚する。
《紅蓮獣バーサク・タイガー》
6コスト、3/3。召喚時、敵陣すべてに1ダメージ。そして、破壊した数だけ相手ライフに直接ダメージを叩き込む。
次の瞬間、電翼龍たちは一斉に爆ぜる。破壊数はそのままダメージとなって、敵のライフへと突き刺さった。
貫通どころか、息をする暇すら与えない一撃だった。
こうして俺たちは、電翼龍たちを蹴散らしながら進軍を続けた。
紅蓮の咆哮と、龍華の連続展開がかみ合い、敵の波はまるで紙を裂くように崩れていく。
「ほぉ~、簡単に倒していくか」
柊は腕を組み、口元にわずかな笑みを浮かべてつぶやいた。
その表情には、まるで自分の部下を褒めるような誇らしさがあった。
やがて通路の先、巨大な門が視界に入る。
分厚い鋼鉄に雷紋が刻まれ、内側からは絶え間ない轟音と電光が漏れ出していた。
「そろそろ、ボスだ」
柊が静かに呟くと、場の空気が一段と重くなる。
俺たちはデッキを握る手に、自然と力がこもった。
ボスの姿が、雷鳴とともに現れた。
全身を覆う蒼白の電光が、まるで鎧のように輝き、翼を一振りするだけで空気が裂ける。
「私が倒す」
龍華が一歩前へ出る。その瞳には迷いも恐れもない。
試合が始まるやいなや、龍華は手札を捌き、次々とドラゴンを召喚していく。
攻撃と展開が一体となったその動きは、まるで竜巻のように戦場を飲み込んでいった。
「──《五爪の召龍・ガイレン》!」
彼女がカードを叩きつけると、山札の5枚がめくられ、その全てから光が弾ける。
光柱の中から現れたのは、咆哮をあげる5体のドラゴン。
その瞬間、戦場の空気が一変した。
紅蓮の光が龍たちの全身を駆け抜け、筋肉と鱗を包み込み、攻撃力が爆発的に跳ね上がる。
龍華の胸元で揺れる《龍の嘆きのペンダント》が強く輝き始めた。
「条件──場にドラゴン5体。達成済み」
龍華の声と同時に、ペンダントから紅蓮の衝撃波が放たれる。
轟音とともに直撃した5ダメージは、雷翼龍の鎧を粉砕し、その巨体を揺らした。
ボスは悲鳴をあげる暇もなく崩れ落ちる。
「君たちは……そこそこやるようだな」
柊はわずかに口角を上げた。
「私たちの仲間にしよう」
その表情には、もう試験官ではなく、同じ戦場を並び立つ者としての信頼が宿っていた。