【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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22話 柊という男

私たちはついに、柊の協力を取り付けることができた。

黒悪魔族への攻撃する未来へと開き始める。

 

「君たちは、すぐに攻めたいのか?」

柊が低い声で尋ねる。

 

「そうだ」

迷いなく答える。時間をかければかけるほど、敵は備えを固める。

 

「……わかった。少しだけ人員を分けよう」

柊は腕を組み、こちらをじっと見据える。

「俺たちの中でも、特に希望が強く、志の高い者たちを渡す」

 

その言葉は重かった。

 

「それにしても、地上人なのにすごいな」

柊が感心したように言う。

 

「天界人は差別が多いからね」

彼は続ける。

 

「確かにそう思うだろう」

龍華がゆっくりと口を開く。

 

「ここにいる奴らは、必死に上り詰めたからこそ強い」

「……いや、ちがうな。機会さえあれば、地上人でもここまで強くなれる」

「私たち天界人と本質的な差なんて、その程度なんだ」

 

「そうかもな」

柊は静かに頷き、目を細める。

「差別は……やっぱり、あるのかもしれないな」

 

「私たちは、天界人とか言われても、あまりピンとこないですね」

光華が肩をすくめて笑う。

 

「龍華さんが軽く話されたくらいで」

「本当に存在してるのかどうか、実感はまだないです」

 

「ただ……龍華さんの言葉だから、信じますけど」

そう付け加えると、光華の表情は少しだけ柔らかくなった。

 

「柊さん、どうして黒悪魔を狙うんです?」

「ほかにも、もっと効率よく稼げる相手はいるはずですよ」

俺が問いかけると、柊は少しだけ視線を落とした。

 

「……たしかにな。だが、俺にとっては効率じゃない」

「理由は、復讐だ」

 

短く吐き出された言葉に、場の空気がわずかに張りつめる。

 

「三年前、黒悪魔が天界を襲撃した」

「天界人を誘拐する事件だったが、その混乱の中で――俺の妹が殺された」

 

「三年前だと!?」

龍華が思わず声を荒らげる。

彼女の頭の中には、力がなくて救えなかった情けない自分を思い出してしまった。

 

「コリン地区での事件か……」

 

「そうだ。君も……まさか、あの時の被害者なのか」

柊が驚いたように顔を上げる。

 

「そうだ。まさか、ここで因縁が交わるとはな」

「まさか……私が戦う理由の核心が、こんなにも近くに潜んでいたとはな」

龍華は静かにうなずいた。

 

「……ちなみに、何があったんだ?」

柊が静かに問いかける。

 

「私の妹の安否が、不明になった。死体すら見つからなかった。……だから、生きていると信じたいが、難しいだろうな」

 

「……君たちには、もっと早く話すべきだったな。すまない」

龍華は息をつき、俺たち3人へ視線を向けた。

 

「別にいいですよ」

「こういう話は……無理に人に言うもんじゃないですし」

俺は首を横に振る。

 

~~

 

時間が経ち、俺は光華と二人きりで腰を下ろしていた。

 

「花園の騎士団を壊滅させられて……龍華さんの本来の仇って、けっこう複雑ですね」

「そうですね。氷花さんをはじめとした花園の騎士団にも、きっと報いることができればいいんですが」

 

「黒悪魔と戦えるのは嬉しいですけど……良くも悪くも、勝負どころですね」

「下手をすれば、命を落とすこともありますから」

光華は少し遠くを見るようにして言った。

 

 

「……不安ですね」俺は正直に答える。

「でも、私たちはこれまでにたくさんのモンスターを狩って、地上を守ってきました」

光華は微笑み、続けた。

「それだけの仕事をしてきたんです。きっと、いいことがありますよ」

 

「そうですね……きっと、幸運がやってきます」

俺も、その笑顔につられて口元を緩めた。

 

「そういえば、光華さんの家もモンスターに壊滅させられたんですよね」

ふと思い出して、俺は口にした。

「そのモンスターを追わないんですか?」

 

光華は首を横に振る。

 

「……私としては、人々の生活さえ少しでも良くなれば、それでいいと思ってるんです」

「仇を討つより、守ることの方が大事ですから」

 

「それに、今の活動でも十分にやれてますし……何より、龍華さんへの恩返しがしたいんです」

彼女は柔らかく笑みを浮かべ、続けた。

 

 

「光華さんは、本当に真面目ですね」

俺がそう言うと、彼女は小さく肩をすくめた。

「そうでもないですよ。ただ……こうしてゆっくり話す時間があるだけで、私は幸せです」

「……確かに、そうかもしれませんね」

 

ディストピアの世界に転生してから、こんなふうに穏やかな会話を交わせることはほとんどなかった。

そのせいか、光華とのやり取りは胸の奥をじんわりと温めてくれる。

 

──このささやかな日常を守るためにも、俺は黒悪魔との戦いを生き残らなければならない。

 

光華との会話を終え、俺たちは立ち上がった。

穏やかな時間は終わりだ。これからは血と刃が支配する世界に戻る。

 

「さて……行きますか」

俺は腰のカードケースを確かめる。

デッキは全てスリーブに収め、サイドにはメタカードを仕込んだ。

万一のため、切り札の位置も確認する。手が届く場所に置くのは、生き残るための最低条件だ。

 

「龍華さんはもう出発準備できてますよ」

光華が視線を送る先で、龍華は長剣の切っ先を微かに光らせながら、静かに鞘に収めた。

その背後には柊と彼の精鋭たちが並んでいる。鎧の金具が小さく鳴るたび、空気が張り詰めていく。

 

「黒悪魔との戦い……ここからは一歩も引けない」

柊が短く告げた言葉が、全員の胸に重く響く。

 

俺は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

そして、仲間たちに視線を巡らせる。

「行こう。生きて、帰るために」

 

冷たい風が頬をかすめる。

その先には、黒悪魔の待つ戦場がある。

 

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