【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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4話 天界人

花の騎士団の館の中で、龍華と話している、

 

「今回の依頼は、氷花と一緒に向かってくれないか?」

 

龍華は手元の書類を一枚、俺に差し出す。

 

「近くの集落で、人が度々いなくなる事件が起きているらしい。数日単位で、ふっと消えるように姿を見せなくなる」

 

「……またカードモンスター絡み、ですか?」

 

「可能性は高い。ただ、政府も管理機構もないこの世界では、事件か失踪か、断定は難しい」

 

龍華は静かに息を吐く。

 

「空振りの可能性もある。だけど、それならそれで構わない。何も起きていないことを確認するのも、大事な任務だからね」

 

「了解しました。氷花が帰ってきたら、すぐに向かいます」

 

俺は軽く頷いた。

ほんの数日前まで、モンスターに芋を奪われていた自分が、今は騎士団の一員として任務を受けている。

 

~~

 

氷花と共に、指定された集落へと向かっていた。

 

瓦礫の道を歩きながら、氷花がぽつりと口を開く。

 

「今回の事件、何事もなければいいけどね」

 

「そうですね……でも、何か起こりそうな気もします」

 

「私の勘だけど、嫌な予感はしてるの。こういう時に限って、ね」

 

氷花の声には、どこか張り詰めたものが混じっていた。

任務慣れした者の直感なのか、それとも――。

 

ふと、以前から気になっていたことを尋ねてみる。

 

原作でもどこから依頼を受けているのかと謎が多かったため好奇心は強かった。

 

「……そういえば、この依頼って、誰から来てるんですか?」

 

原作でもそこは語られていなかった。

でも今の立場なら、少しは知れるかもしれない。

 

「天界人……って呼ばれてる人たちかしら」

 

氷花は歩みを止めず、静かに答えた。

 

「空の上に住んでる人間よ。信じられないかもしれないけど、ちゃんと存在してるの」

 

「空の上に……人間が……?」

 

「そう。あっちは平和そのもの。豊かな暮らし、秩序ある社会、魔物なんて一匹もいないわ。

そして、私たちが生きるこの地上は――その平和のためのスケープゴートよ」

 

言葉に詰まる。

氷花は、感情を込めずに淡々と話を続けた。

 

「地上がモンスターに襲われてから、もう100年。天界人たちは、完全に地上人との連絡を絶ったの」

「彼らにとって、地上はただの“封じられた地獄”。そして私たちは、モンスターが上に行かないための防壁なのよ」

 

「……えっ?」

 

あまりに唐突で、とんでもない事実に、言葉が詰まった。

原作でも触れられていなかったはずだ。少なくとも、こんな深い設定は――

 

空の上の世界、天界人。そして俺たちはその“地上”という檻に閉じ込められた存在。

モンスターの襲来も、荒廃した文明も、全てはその“平和”を守るための犠牲なのか。

 

俺たちはただの……おとりだったのか?

 

喉の奥に鉛のようなものが詰まった感覚。

悔しさが、心の底からにじみ出る。

 

その時――氷花はさらりと、とんでもないことを続けた。

 

「そして、私と龍華は“天界人”なの」

 

歩みは止まらない。声にも一切の揺らぎはない。

 

「私たちは、とある目的のために地上に降りてきたの。もちろん、地上を良くしたいという志はあるわ。でなきゃ、こんな危険なことしない」

 

まるで当たり前のことのように語られたその事実に、もう何も言葉が出てこない。

でも――不思議と、怒りは湧かなかった。

 

「……ありがとうございます。治安を整えてくれているんですね」

 

それしか言えなかった。

でも本心だった。どれだけ人間がモンスターを恐れていても、彼女たちは戦い続けている。

 

「……目に見えない“身分”って、本当にあるんですね」

「モンスターよりも……人間のほうが、化け物かもしれません」

 

俺の言葉に、氷花は少しだけ目を細め、ほんの僅かに笑ったような気がした。

 

「そうね」

 

短く、でもどこか肯定的に。

 

彼女も、痛みを知っているのかもしれない。

その世界の裏側に、何度も心を殺してきたのかもしれない。

 

空と地上のあまりにも遠い距離――

それを少しだけ、俺は知ってしまった。

 

~~

 

とんでもない事実を聞かされた俺は、ただ唖然とするしかなかった。

思考が追いつかない。怒りなのか、虚しさなのか、それすらも整理できない。

 

けれど、時間は待ってくれなかった。

気がつけば、俺たちは目的地である集落の入り口に立っていた。

 

建物は粗末な木造で、ところどころ壁が剥がれ、屋根は雨風を凌げるかすら怪しい。

それでも生活の痕跡はある。残飯の匂い、燃え残った焚き火、わずかな人の気配。

だが、どこかおかしい。静かすぎるのだ。人が生きている場所にしては――。

 

氷花が振り向き、静かに言った。

 

「……ついたけど、2人での行動は厳守ね」

 

「……分かりました」

 

この世界では、分かれるという選択肢は死を意味する。

一人きりになる危険性を、彼女も知っているのだろう。

 

「まずは、周囲を歩いてみましょう。もし誰かを見かけたら、話を少し聞く方向にしましょう。」

 

「了解です」

 

「相変わらず、過疎っているわね」

氷花は、どこか虚無を含んだ目で集落を見渡した。

 

「畑の栽培があるだけ、まだマシかしら」

「作業中の人に話しかけるのはやめましょう」

「了解です」

 

静かすぎる土地。

作物は育っているが、人の息遣いが感じられない。

この集落に生きている者がいるとしても、それはもはや“生活”ではなかった。

 

何の手がかりもないまま歩いていたその時――

氷花がふと足を止め、目を細めてしゃがみこむ。

 

「これは……」

 

落ちていたのは、小さな銀のペンダント。

透き通った宝石が埋め込まれ、複雑な刻印が浮かんでいる。

 

「天界人が天界へ帰還するためのペンダントよ」

「……つまり、これは」

「ええ。ただの失踪事件ではないわね」

 

氷花の声音は変わらず冷静だった。

その分だけ、言葉の重みが胸に刺さる。

 

「天界人による“狩り”。一般人をカードにして回収してるのよ」

「本当に、残酷なやり方だわ」

 

ペンダントを手のひらに乗せながら、氷花は続けた。

 

「……ここでの任務は終わりかしらね。これを持ち帰って、天界に報告する」

 

「何で……何で、そんな淡々としていられるんですか」

思わず声を荒げてしまった。

「天界人だから? 地上の人間はどうでもいいってことですか?」

 

氷花はそれを否定しない。

 

「そう見えるでしょうし、軽蔑されても仕方ないと思ってる」

「こいつをカード化すれば、あなたはすっきりするでしょう」

「地上人が天界人をカード化したと事実が暴走し、戦争を生む可能性があるわ」

「これはさらに狩ることを許すことの免罪符になってしまう」

 

「戦争……」

 

「それを止める責任が、私たちにはあるの」

 

言葉に詰まった。

怒りは確かにある。だが、それ以上に、現実の重さがのしかかってくる。

 

「人間は、残酷よ」

「悲鳴や涙を見ても、脳は興奮物質を出してしまう。理性ではどうにもならない本能に、私たちは支配されている」

 

「だから、私たちはそれを止めに来たの。何度も、何百回も、繰り返される“悲劇”を」

 

目の前の氷花の瞳には、微塵の揺らぎもなかった。

 

「……すみません。軽々しく発言してしまって」

 

ぽつりと呟いたその言葉に、氷花はすぐには応えなかった。

ただ、そっと落ちていたペンダントを懐にしまい、目を伏せる。

 

「育った場所を馬鹿にされたように感じたのね」

「当然の感情よ。私でも、そう思ったと思う」

 

声は静かだったが、決して冷たくはない。

過ちを責めるのではなく、ただ受け止めてくれるような響きだった。

 

「……とりあえず、帰りましょう」

氷花が歩き出す。

 

沈黙のなか、俺もその背を追った。

 

夕暮れの空は、茜色に染まりつつあった。

地上の空――この場所で生きてきた人々の空が、どこか誇らしく見えた。

 

 

~~

 

組織の館に戻ると、氷花がすでに事の一部始終を龍華に報告していたようだった。

俺はどうしても納得できなかった――その胸のざわめきを、黙っていられなかった。

 

そんな空気を察したのか、龍華は先に言葉を発した。

 

「おかえり。まず、私の考えを聞いてくれ」

「そのあとで、君の意見を聞かせてほしい」

 

彼女は静かに立ち上がり、言葉に熱を込めた。

 

「私はこの歪んだ世界を、ほんの少しでも“まし”にしたい。

たとえ完全な理想郷など手に入らなくても、人々が笑う未来を形にしたいんだ」

 

「だが、そのためには“権力”が必要だ。

声を上げるだけでは、誰も耳を傾けない。感情論だけでは、社会は変わらない」

 

「力でねじ伏せる? そんなやり方は、今の地上の荒廃を見れば明らかだろう」

「確かにモンスターが襲われたことがこの地上が落ちぶれたきっかけであることは間違いない。そのヒビを広げたのは地上人同士の醜い争いだよ」

「戦いは土地を焼き、心を腐らせる。暴力は暴力しか生まない。私はそれを繰り返したくない」

 

「だからこそ、“合法”の力が必要だ。

人々に認められ、理解され、そして委ねられる力。

それがあれば――今回のような一方的な“狩り”も、防げる法を築ける」

 

「それには時間がかかる。遠回りに見えるかもしれない」

「でも、それが秩序であり、平和の礎なんだ。

可能であれば、私は地上人と天界人の隔たりをなくしたい。本気で、そう願っている」

 

――その瞳には、静かな炎が宿っていた。

 

俺は深く息を吐き、拳を握る。

 

「信頼はできます。理想論だとは思いましたが、あなたの言葉からは“本気”が伝わってきました」

「ナルシストでのあなたが、ここまで熱を込めるなんて――正直、胸に響きました」

 

原作では、髪型を気つけるシーンがありナルシスト気質なシーンがある。

ファンでもナルシストキャラとしての認知されている。

 

「……少し皮肉が混じってるように聞こえるけど?」

 

「ええ、混じってます。でも、事実です」

 

俺は思う。

 

確かに暴力は、さらなる暴力を呼ぶ。

天界人に怒りをぶつけたところで、そこから連鎖するのは報復、そして戦争だ。

 

そうやって誤解と対立が育ち、地上は秩序を失った。

 

カードのシーンはこれくらいでいい?

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