【TS転生】気づいたら、大好きだったカードゲームのディストピアアニメの世界で幼女になっていた件   作:銀層

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9話 龍華の強さ

「今日はダンジョンに行ってもらう」

 

館の一室、落ち着いた空気の中で、龍華が静かに言葉を発した。

その声音はいつもより淡々としているが、どこか試すような響きが含まれていた。

 

「……ただし、今回は私の動きだけ見てくれ。危険な場面では決して前に出ないように。まずは流れを体で覚えるんだ」

 

彼の視線は鋭くも穏やかで、まるで教師が優秀な生徒に向けるものだった。

その目に、わずかだが期待と信頼の色が宿っていた。

 

「少しキャリアを積んだら、誰かと同行させる予定だ。それまでに、基礎と判断力を身につけておくことだね」

 

彼はそう言うと、すでに装備を整えている様子だった。

 

「分かりました」

 

短く、だが力のこもった返答。

これまでに積み上げてきた戦いの日々が、確かな自信となって言葉に宿る。

 

「少し強いモンスターだから、油断はしないでくれよ」

 

龍華の言葉には、淡い警告とともに確かな経験が滲んでいた。

 

足を踏み入れたのは、深い森の中にひっそりと佇む――

苔むした石柱と、蔦に覆われた外壁が印象的な「森の神殿」。

 

自然に還りつつある建造物には、どこか神秘的でありながら、静かな威圧感が漂っていた。

 

「……少し確認させてくれ」

 

龍華は慎重に周囲の構造を目で追いながら、ぽつりと呟く。

 

「建物の構造からして、風系――ダークバタフライの系統かもしれないな」

 

目を細めながら続ける。

 

「……でも、逆に考えれば、こちらにとって都合がいい場面もある」

 

龍華の目が鋭く光る。

 

~~

 

ダンジョンの奥へと足を踏み入れると、空気が一変した。

風の神殿――そう呼ぶにふさわしい場所。

天井の高い空間には、淡く光る風の流れが見えるような錯覚すら起きる。

 

壁を飾る彫刻は、羽を広げた何かの姿。

床には風紋のような模様が広がり、冷たい風が肌をかすめる。

生き物の気配はなくとも、ここには“何か”が確かにいる。

 

「……ダークバタフライで間違いなさそうだな」

 

龍華は空を見上げるように呟く。

まるで、この空間全体が敵の巣であるかのような、圧迫感があった。

 

「やつらも人間の魂をカード化している……そして、それを“餌”として使っている可能性がある」

 

低く重い声に、嫌な確信が滲む。

 

「ほかのモンスターも捕食してる。ここにいるのは、明らかに“上位種”だ。今までの奴らとは格が違う」

 

そう語る声の奥には、わずかな緊張と、それを覆い隠す冷静さが同居していた。

 

風が鳴る。

神殿の奥から、無数の羽音が……ざわり、とこちらに忍び寄ってくる。

 

このダンジョンは、明らかに“死地”だ。

だが、立ち止まるわけにはいかない。

 

~~

 

「来い──《召竜王グリヴァルド》!!」

 

カードが場に叩きつけられた瞬間、風が震え、空間が軋んだ。

召喚陣が閃光を放ち、巨大な影が天を覆う。

現れたのは、王の名を冠するドラゴン。

その威容はまさに覇者──5/5のステータスと、竜を連鎖的に呼び起こす召喚能力を宿す、頂点の存在。

 

「いけ──グリヴァルド、攻撃!」

 

咆哮と共に竜が翼を広げ、闇を裂いて突撃する。

だが、黒く翳る影が道を塞いだ。

 

《ダークモルフォン》──闇に潜む防壁が、牙を立ててグリヴァルドの爪を受け止める。

一撃は止められた。だが──それで終わりではない。

 

「……ここからが本番だ」

 

龍華の声が低く響く。

次の瞬間、グリヴァルドの効果が発動。

山札の頂がめくられる。

 

──現れたのは、《五爪の召龍・ガイレン》。

 

「ガイレンの効果、発動!」

 

山札の5枚がめくられる。その中に、4体のドラゴンが光を放って姿を現した。

 

《暴吼竜 ヴァルスヴァイン》(コスト6/5/5)

「速攻を付与──我が軍勢は、即座に牙を剥く」

 

《崩天竜 グランデリクス》(コスト10/10/10)

「この大地の支配者──攻撃時、自軍の竜たちのコスト合計で相手の戦線を破壊するッ!」

 

《轟連王 ガルヴァロス》(コスト6/4/4)

「召喚時効果──すべての我がドラゴンに+2/+2」

 

《チャイルドドラゴン・アン》(コスト3/1/1)

「そして……この子竜が導くは、ドラゴンの呪文の連鎖だ」

 

怒涛の展開に、風の神殿が震える。

盤面は一瞬にして、絶対的な竜の軍勢に染め上げられた。

力、連鎖、制圧──すべてが完璧な調和で噛み合っている。

 

「これが、私の“頂”だ──!」

 

龍華の目には迷いがなかった。

召喚されたドラゴンたちは、今にも空を裂いて飛び出すような勢いで、次なる一撃を待ち構えている。

 

敵は圧倒され、空気ごと押し潰されそうな重圧に沈黙した。

 

竜の王が導く連鎖召喚、それは一つの“儀式”であり“制圧”であった。

これこそが──龍華の力だった。

 

竜たちが天を覆う。

風の神殿に響くのは、翼が大気を裂く音と、喉奥から響く咆哮。

そして、ただ静かに立ち尽くす少女──龍華。

 

その足元には、五体を超えるドラゴンたちが並び、地を揺るがす鼓動を響かせている。

まるで「王に仕える軍勢」とでも言うように、規律と威厳を持った佇まいだった。

 

「これが、龍華さんの戦術……」

 

俺は呆然と呟いた。

目の前で展開されたのは、単なる強力な召喚ではない。

完璧に練られた連鎖──力と効率の両立。

一枚のカードから次々と広がる召喚の波。

そして、すべてが噛み合っていく、精密でいて大胆な構築。

 

圧倒的だった。

1ターン、1アクションごとに、彼女の読みと決断が垣間見える。

カードに命が宿るようなプレイ。

この場にいる者すべてが、息をのむ。

モンスターすら怯えていた。

 

これが、龍華の戦術だ。

“召竜”の名を持つにふさわしい、竜を使役する者の頂点。

力をただ振り回すのではなく、冷静に積み重ね、絶対的勝利を構築していく。

 

本当に……すごい。

 

感嘆と畏怖の混じった感情が、胸の奥で静かに渦を巻いていた。

 

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