砕けた円卓は戻らない。
それでも騎士達は待ち望んでいる。王の帰還を。
王の騎士 アーサー
今日もいい天気。反面俺はグロッキー。夢の中でサイターンとシルファードが取っ組み合いしてて大騒ぎだったからだ。多分、
他の「
「
てか同一の存在なんだから仲良くしろよ。全く。
そんな事を考えながら通学路を歩く。……真横に車が止まった。この青い軽は確か……
「────おはようございます、悪末君」
「…………、おはようございます先生」
そう、担任の車だ。黒髪ポニテが特徴の
ただ、俺はこの人とあんまり顔合わせたくないんだよなぁ。
「えぇ、今日も変わらず不快な気配を漂わせているわね」
何故なら苛烈な悪魔族アンチ。……これ悪魔族に言ってるよな? ワンチャン俺個人への人格攻撃だったりしない? どちらにせよ教育者としてはアウトだと思うけど……まぁいいや。
「はぁ。なんでもいいですけど、ご用件は?」
「その前に乗りなさい。話は向かいながらするわ」
「あ、はい」
急かされるままに乗り込んで、バタンと扉を閉める。なぁ〜んか、嫌な予感。……車内から珈琲のいい匂いがする。
「校長先生から、あなたを連れて校長室に来るように言われているの。詳細は私も知らないわ」
「そうですか」
校長、
……なんでこんなに詳しいのかというと、それはあのジジイもアンチ悪魔族だからだ。悪魔族通り越して俺や父さん母さんの誹謗までしてくる。ネチネチネチネチ……鬱陶しいことこの上なかった。
敵の情報を調べるのは当たり前の事。俺に舐めた口効いてきやがった奴ら、全員口を縫い合わせて墓穴に叩き込んでやるという意気込みの表れ。意気込みです。流石にね。
しかし、俺の座右の銘は「一飯の徳も必ず償い、
「着きました。降りなさい、なるべく人目に付かないように」
「……はーい」
人目につかないように? 何故なのか。十中八九ロクな理由じゃないだろうけど。
「行くわよ」
「はーい」
黒宮先生に連れられて、校舎の中を歩く。俺は毎朝早めに登校するし、今日は先生の車でより早く来たから生徒の姿はまだない。外から朝練してる運動部の声掛けは聞こえるけど。
やがて、俺達は目的地へ到着する。
「校長先生、黒宮です。悪末君をお連れしました」
やけに豪奢な校長室の扉の前で黒宮先生がそういうと、扉の奥から「入ってくれ」と嗄れた声で返答があった。それに従い、先生と俺は中へ入る。
「朝からすまんの、悪末君」
その姿を言い表すなら、「骨と皮だけ」という表現が適切だろう。肉や脂肪が再び身に付く兆しもなく、先細りする命の形そのもの。しかし、その眼だけは衰えることなくギラギラと輝いているかのようだ。
無駄に蓄えた髭を撫でながら、校長はそう口を開いた。
「思ってもない癖に。建前は良いんで、本題お願いしますよ」
「最近の子はせっかちだのう。年寄りの雑談に付き合う事も……」
「はっきり言わなきゃ分かんねぇかなぁ」
言葉を遮って睨みつける。
「老い先
「ッ、悪末君!貴方、誰にそんなことを言っているのか分かっているの!?」
余命幾ばくかもない老いぼれでしょ。黒宮先生は悪魔族だけ(多分)に厳しい言い方をするけど、明確に俺や父さん母さんの事を巻き込んで悪く言ったことはなかった。
こいつは違う。やれ「悪魔の子」だの「お前の両親は悪魔に魅入られたから死んだのだ」だの。んの関係もねぇことをベラベラベラベラ……。
おかげで悪魔族からも「アイツ殺したくない?」「アイツ苦しめたくない?」つって契約迫られるし。うるせー!お前らの契約にサインしたら最後、時の果てまで弄ばれるだろうが!……全く。最近は大人しいけどな。
「良い、黒宮先生。聞き分けのない子供を教育するのも儂らの務めよ」
「どうでもいいんで、本題話して貰えます?」
「これが本題じゃ。少し聞け。儂ら教員はお主に口酸っぱく言うたはずじゃぞ、悪魔族はやめておけとな」
「反骨精神全盛の思春期にやめろって言っても意味ないでしょ」
「ほっほっほっ、それはそうじゃのぉ」
白い滝のような髭を揺らしながら笑う校長。しかし、次の瞬間には真剣な表情で俺に語りかけた。
「それでも、じゃよ。儂ら教員も、バトモン部部員も、一ノ瀬も……皆がお主の実力を認めていたぞ。入部試験で行われたレンタルデッキでのプレイングは、儂の長い教員人生で見ても飛び抜けておった」
一ノ瀬先輩は、先代のバトモン部部長。それ以上は特に知らない。興味もなかったし。
入部試験か……懐かしい。名門学園のバトモン部となると、当然入部希望者も多く集まる。全員入部させる事は不可能なので、試験という形でふるいにかける。その年、試験を突破して仮入部まで漕ぎ着けたのは
「効果の発動タイミング、
「えぇ。間違いなく、次代を担うプレイヤーになると思いましたね。特に、妨害の撃ちどころが恐ろしいほどに的確。浅草さんと部長の座を争うだろうと目されていました」
ふん。初心者向きの「
「何よりお主は、当時の部長であった一ノ瀬を
「お主の実力は悪魔族では活かされん。もし万が一にでも、このまま悪魔族を使って部長を負かすような事があってはならん。もしそのような事態が発生したのなら…………儂らも重い選択をせねばならん故な」
…………なるほどな。昨日、俺が
強いやつがリーダーって、理には適ってるけどな。ただ、人にもカードにも適性……役割がある。ただ強いだけじゃなぁ……。実際、長い歴史の中で何度か内部分裂起こしかけたり、起こったりしてるらしいし?
「何故……何故別のデッキにせなんだ……。お主は別のデッキを幾つも持っておるだろう……。それも銀枠のデッキを……」
「アレらは趣味で作ったデッキなんで。本命は悪魔族ですよ」
「あれだけ練られたデッキが?……冗談じゃないわ。私は、貴方の趣味に負けたと?」
いやぁ……黒宮先生と戦った時のデッキ、「モリモリワンパンフェンリガルム」*2は結構な自信作ですけどね。ただ、わからん殺しの側面が強いし、二回目があれば先生も立ち回りを変える。結果もまた変わると思う。
引きたいカードが引ける。欲しいカードが来る。初手にコンボカードが揃う。理想の初期手札。そんな事ばっかでうんざりしてた。代わり映えのない手札、展開、リーサル。
その点、悪魔族は思い通りにならないのが良い。だからアイツらを使ってる。そうしている限り、俺は
「全く、折角の銀枠カードが泣いておるぞ。……思えばお主が握ったレンタルデッキ、「
「話逸れてますよお爺ちゃ〜ん」
「ええい、分かっておる! ……問題は、お主が公式の大会で悪魔族デッキを使い、現部長の浅草を敗ったこと。本来であれば、お主が部長の座に着く。が、悪魔族使いにそのような事はできん。しかしながら……公式で結果が出ている以上は無視することも得策ではない」
「つまり?」
「この書類にサインせい。これで全て解決する」
校長が懐からピラリと紙をひとつ取り出す。どれどれ……
退学届
ん〜!なるほど!
プレイヤー……人によって、それぞれカードやデッキへの適性がある。適性のないカードをどれだけ使っても枠の色が変わらないし、中々手札にも来ない。適性のあるカードはパックでじゃんじゃか出てくるので分かりやすい。因みに
悪魔族カード……カード側のバグ。
戒くん……プレイヤー側のバグ。