悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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湖の乙女に見初められ、育てられた最高の騎士。
比類なき剣術者にして……円卓崩壊の先駆け。

湖の騎士


これ以上ない屈辱を

 

「退学届ね。いかにも、保守派のジジイが考えそうな事だ」

 

 バトモン保守派。

 

 昔からの伝統や習慣、考え方を維持し、バトモンにおける急進的な改革に反対する思想。この国ではプレイヤーを中心として、デッキやカードが捧げる結果を重視していた時代があった。プレイヤーとデッキの関係を主従のソレとして見ているわけだ。

 

 その性質が相まってか、「武仕(ぶし)」等の主君に使えるテーマや、「八百万(やおよろず)」、「御霊(みたま)」といった古来からの信仰をモチーフとするテーマを優遇し、使用を奨励してきた。

 

 反面、そのイメージにそぐわないカードテーマを迫害してきた歴史がある。日本においては「呪怨霊(じゅおんりょう)」、「鬼種(きしゅ)」、「妖魁(ようかい)」といったカードテーマが、強い憎しみや恨みを持つ人間に適性が生まれやすく、それらの負の感情を増幅させるとして迫害された。

 

 因みに。負の感情を増幅させるとか、そんな事実はなかった。何やってんだホント。プロパガンダにおいてレッテル貼りは基本だけども。

 

 海外発祥のカードテーマにも当たりが強いが、「騎士(ナイト)」等の主君への忠誠を感じるデッキには、むしろ歓迎ムード。武士道感じるからか?よく分からん。

 

 しかし人を誑かす「悪魔族」、テメーはダメだ。という具合。

 

 まぁ下手したら魂持っていかれるし、しゃーない。ちゃんとアイツら、人の弱みに付け込んで契約持ちかけて来るからな……両親が死んだ時なんか、ヴァールが直々に「両親を生き返らせてやろう。代価は其方の魂だ」って言ってきた。超迷ったわ。やんなかったけど。

 

 断った時の、ヴァールの表情が印象に残ってる。残念そうな、それでいて嬉しそうな。

 

 …………話が逸れた。退学届だったわ。

 

「しかもご丁寧に一昨日の日付が書いてあるし。そういうていか」

 

 大会の前日だ。俺が(ひじり)に勝った時には、既に聖城学園の生徒ではない。だから部長にならないし、できない。そういう論理で通すつもりだ。

 

「校長先生、本気ですか」

 

 黒宮先生が冷たい視線を校長に向ける。

 

「致し方ない事じゃよ。もはや、儂らの手に余る。実力ではなく運で戦う悪魔族使いなど、我らが学園の最強に相応しいと思うか」

 

「……」

 

 ぐっと押し黙る黒宮先生。トップランカーほどこの思想が強いんだよなぁ。

 

 実力……実力ねぇ。デッキからよいしょされた手札が実力ですか。随分安い実力ですこと。オホホー。「序列(デーモンズ)」モンスターもそうだそうだと言っています。

 

 ……ただまぁ、なんとなーく意図は読める。乗ってやるか。

 

「バトモンで決めましょうか。そちらが勝てばそちらの言う事に従う。俺が勝てば俺の好きなようにする……それでいいでしょう」

 

「うむ、よいじゃろう。それでこそプレイヤーよ」

 

 ゆっくりと立ち上がる老骨が放つ威圧感は、流石元日本一といったところ。まぁ、「七大罪科(デビルズシン)」の奴らに比べれば屁でもない。そよ風みたいなもんだわ。

 

「黒宮先生、生徒の注目を集める訳にはいかん。教員用の対戦スペースの準備を」

 

「……分かりました。準備します」

 

 そう言って退出する黒宮先生。あの人もあの人で俺の事考えて言ってくれてたし、悪い人じゃなかった。ただ余計なお世話だったねって話なだけで。「モリモリワンパンフェンリガルム」で勝ってからは「悪魔族使うのやめなさい」とか言わなくなったし、良い先生だったよ。

 

 ただ、あの冷ややかな目線を向けられると、変な性癖に目覚めそうになるからやめて欲しい。実際目覚めてる奴がクラスメートにいた。

 

 さて。

 

「おいジジイ」

 

 腰にぶら下げたデッキケース。中身を取り出して握る。

 

「口が悪いのう……。なんじゃ?」

 

 言わずもがな、それは悪魔族デッキだ。

 

「いい機会だと思ってな。見せてやるよ」

 

「ほっほっほっ。何をじゃ、実力か?」

 

 何一つ思い通りにならない…… 

 

「俺が……」

 

 渇きに渇いていた、俺が

 

「心底求めていた対戦(バトル)を」

 

 

 

 

 

 

 

 職員室にある個室。そこには簡易的な対戦スペースが存在する。生徒達が使う校庭や屋上に設置されているそれよりもずっと小さくて、現れるモンスターにも迫力がない。校庭や屋上のは新しいモデルが登場する度に更新されるが、ここの対戦スペースはいつまでも型落ちのままだ。

 

 それは、教員(自分たち)より生徒達の対戦スペースを充実させるという、教育者としての矜持だろう。その現状を知った生徒から「更新する時に、少しでも足しになれば」と寄付を受けるも、頑なに受け取らなかった話もある。クソ頑固。

 

 で、その対戦スペースに俺らは居る。審判は黒宮先生だ。仕事大丈夫かよ。……それは校長もか。

 

 相手はあの元日本一プレイヤー、和泉 立善。アレだけ舐め腐った態度を取ってはいたが、気を引き締めてキッチリ仕留めに行こう。

 

「「対戦(バトル)」」

 

「先行はいるかの?」

 

「いらない。後攻でいい」

 

 手札はそれなり。後攻の方がドローできるし攻撃できるし、お得な感じがする。実際お得。

 

「よかろう、では儂の先行で往くぞ。ターンスタート、ドロースキップ、リカバースキップ、メインシーン。手札から「足軽リザード」を召喚じゃ」

 

 ジジイのフィールドに具足を身につけた人型のトカゲが現れる。長槍を持ち、舌をチロチロと出して周囲を警戒しているようだ。種別(カテゴリー)は「武仕(ぶし)」と「ドラゴン族」。リザードってドラゴン扱いで良いのか?

 

「召喚時効果じゃ、デッキから1枚ドロー。続いてフィールドカード、「戦乱の世」を配置。配置時効果じゃ。デッキから1枚ドローし、その後手札から「武仕(ぶし)」、「ドラゴン族」両方の種別(カテゴリー)を持つパワー500以下のモンスターを1体追加召喚する。出番ぞ、「剣豪リザード」」

 

 フィールドに火薬と血の混じった臭いと砂煙が立ち込める中、それ等を鬱陶しいと言わんばかりに切り払いながら、刀を持ったリザードが現れる。

 

 ジジイの「二天一龍」デッキは、リザード達が大半を占める。エースである「二天一龍 ムサシードドラゴン」の着地まではコイツらが前線を張り続け、粘る。

 

 ムサシードドラゴンはとある効果によって、真正面からのパワー比べでは無類の強さを誇るモンスター。ただ召喚条件が特殊で、簡単には召喚できない。

 

「これにてメイン終了、アタックスキップでターン終了だの」

 

 俺が今回やることは決まっている。

 

「ターンスタート。ドローシーン、リカバーシーン。メインは何もしない。アタックスキップでターンエンド」

 

「ほう、手札事故か。悪魔族なぞ使うからよ」

 

 無駄口叩かずターン進めてよ、バッドマナージジイめ。手ぇ出るぞ。

 

 覚悟しろよ。プレイヤーとして、これ以上ない屈辱を味わわせてやるからな。

 

 

 

 





吟遊詩人であり、弓の名手。
妻が居ながら、想い人を忘れられず……

悲しみの騎士
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