悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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煌々と輝くその身体は、いずれ弾ける運命。

ーーーーそれがどうした、私は私のままだ。弾けたあともな。

大龍星 ドラグベテルギウス


出発〜

 

「うーん」

 

 目の前に散らかるのはカードバインダー。確か15冊ぐらいあったはず。

 

 父さんが遺したカードコレクションだ。空き巣入られるかもしれないから持って行きたいが……如何せん数が多すぎる。動き回ることを考えると、手荷物は出来るだけ少ない方がいいから全部は無理。

 

「2冊くらい持って行って……後は隠すか」

 

 隠し場所は……俺のベッドの下とかにしとくか。空き巣さんもベッドの下は配慮してくれるでしょ。知らないけど。

 

「あとは……」

 

 リビングに飾ってあるウルトラレアカード。マグネットローダーに入れられたソレは、窓から差し込む陽光を受けてキラキラと輝いていた。

 

「虹星龍神 ホープフル・ドラグノヴァ」

「黒屍皇 カバネクロウ」

頂点捕食者(エーペックスプレデター) キングレクス」

「覇者」

切り札(トランプ) クラウン・ジョーカー」

 

 俺が引き当てたカード達。父さんは「疾病獣」の使い手だから、そのテーマのカードばかり手に入る。だから、俺が代わりにパック剥いて「疾病獣」じゃないカードを集めてた。

 

 しかも、この5枚はイラスト違い。シークレットとも呼ばれるらしい。悪魔が言うには、カードの有する運命力が桁外れに強いとイラストが変わる事があるのだとか。しかも、ひとつとして同じシークレットはないらしい。

 

 例えば、「虹星龍神 ホープフル・ドラグノヴァ」の通常イラストは背の七色の光輪を輝かせ、右向きへ飛翔している構図だ。

 俺のは翼を広げて、七色の光輪から流星を放っている構図。

 

 懐かしいなぁ。父さんも母さんも飛び上がって喜んでたっけ……。

 

「……コイツらも持っていくか」

 

 シークレットをせっかく引いたのだから、そのテーマのデッキも作ってみなさい。と母に言われて、それぞれのデッキを作ったはいいけど……あんまりにも強いもんだから、観賞用にして飾ってたんだ。見栄え良いし。

 

 ぽぽ〜いと、カードバインダーとローダーをリュックサックに放り込む。

 

「後は水筒と……最悪野宿するかもしれないし、寝袋と簡易テント持っていくか」

 

 家族でキャンプ行こう!って父さんが言うんで色々買ってたんだけど、結局行けずじまいだった。丸まってパツンパツンの寝袋と簡易テントを物置から引きずり出して小脇に抱える。……ちょっとホコリっぽいな。

 

 外へ出て、旅の相棒となる原付に載せる。父さんがウキウキで改造したキャンプ仕様だ。俺そっちのけで色々やるもんだから、母さんが軽く頭を叩いてストップ掛けたんだ。……この原付が使われる事はついぞなかったが。

 

「あー……」

 

 もう、父さんも母さんも居ないんだよぁ。

 

「つらぁ……」

 

 いつまでも癒えない傷がじゅくじゅくと痛む。多分化膿してます。誰か治してください。

 

『治してやろうか?』

 

 うるせぇ、引っ込んでろ!クソ悪魔め!

 

『ちぇーっ』

 

 ……ちょっと楽になったかもしれない。曇天から晴れ間が見えたような気分だ。シリアスな雰囲気はギャグ展開で中和可能って、漫画で見た。

 

 さて、荷造りを進めよう。昼前には出発したい。

 

「あとは……」

 

 サブとして「モリモリワンパンフェンリガルム」、「覇応」、「腹切強要バーン」、「無限デッキバーンストーム」、「全青(オールブルー)レディスペリア」……自信作は皆持っていこう。テロリスト共に襲われたらコイツらで叩き潰してやるか〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタックシーンッ!往けぃムサシードドラゴン!」

 

 二刀を構えて龍が突貫する。「五輪の書」を使わず、召喚してすぐの攻撃。校長のセオリーからは外れる動きだ。

 

 焦ってるのか、それとも……戒との戦いで何か思うところがあったのか。

 

 どちらせよ、やることは変わらないけれど。

 

「ソニックスペル、「有刺鉄線防壁(バーブワイヤーウォール)」。パワー1000以下の相手モンスター全ては攻撃した時、破壊される」

 

「その効果に反撃(カウンター)じゃ。「徹底好戦」を発動する。手札のヤモリザードを破棄し、「有刺鉄線防壁(バーブワイヤーウォール)」を無効にさせてもらおうかの」

 

「更に反撃(カウンター)。「騎士の宣誓・魔封」を使う。フィールドの騎士トークンを墓地へ送り、「徹底好戦」を無効に」

 

「むっ」

 

 この反応から考えるに、もう手札に「徹底好戦」はない。本命は通る。

 

「続けて反撃(カウンター)、「死中に活」。相手のモンスターが攻撃中の時にだけ発動できる。この攻撃の間だけ、パワー2000以上の相手モンスターに直接攻撃された時、ライフを1残す」

 

 私が戒対策に入れているカード。主にシルファード、サイターン、ヴェールゼバルブ、レアヴィータを意識。適性が薄いのか、中々手札には来ないけれど。

 

「ほう」

 

「何もなければこのままライフで受けます」

 

「ないぞ」

 

「ではライフで受けます」

 

 ムサシードドラゴンが二刀を交差させ、‪私を切り裂く。パワー4400の攻撃なので、「死中に活」の効果により1だけライフが残る。

 

 窮地。劣勢。それでも、まだ負けていない。

 

「「戦国竜騎 リザードラグーン」よ、続け!攻撃時により、戦国カウンターを7つ増やす!」

 

 竜人が手網を引き、ワイバーンがそれに従って突撃する。フィールドのドラゴンゾンビトークンや剣豪リザード、イモリザードは「有刺鉄線防壁(バーブワイヤーウォール)」で攻撃できないけれど、リザードラグーンはパワー1700。攻撃ができる。

 

 かといって、防御(ブロック)はよろしくない。リザードラグーンは戦闘で相手モンスターを破壊した時、再び攻撃権を得る効果を持っているから。

 

 ならば。

 

「ソニックスペル、「緊急停止命令」を使用。モンスターの攻撃を直ちに中断させる」

 

 バッテンマークがリザードラグーンの眼前に現れ、急停止させる。

 

 昔、戒に言われた。それだけ沢山のドロー手段を持っているのなら、あらゆる場面を想定して様々なスペルを投入しておく方が良いって。相手の攻撃封じ、スペル無効化、その他汎用カードとか。

 

 実際その通りだと思う。アーサーが既に着地している状態で、騎士モンスターばかりドローしても……って感じだし。

 

「ぬぅ。アタックシーン終了、ターンエンドじゃ」

 

「ターンスタート、ドローシーン」

 

 引いたカードは「王の閃槍(ロンゴミニアド)」。ちょうどいい。

 

「メインシーンに移行。召喚条件は自分の手札12枚以上あるか、フィールドに騎士モンスターが5体以上。前者をクリア。「王の騎士 アーサー」を召喚。続いて手札の「光輝の大聖剣(エクスカリバー)」の効果を発動。アーサーが召喚された時、このカードは直ちに追加召喚できる」

 

 王の手に光が集まり、剣が顕現する。

 

「続いて、「王の閃槍(ロンゴミニアド)」を召喚。効果によりアーサーの武装(アームズ)可能数に数えられないので、アーサーに武装(アームズ)させる事ができる」

 

 光が渦を巻いて1本の槍となる。それこそ「王の閃槍(ロンゴミニアド)」。叛逆の騎士を貫いた、血濡れの大槍。制裁の槍。

 

 王は地に突き刺さったそれを掴み取り、構えた。

 

二重武装(ダブルアームズ)じゃと……!?」

 

 校長の目が見開かれる。当然だと思う。何故なら、「王の閃槍(ロンゴミニアド)」は戒と両親以外に見せたことがない。部の皆も知らない私の奥の手。……多分、戒もあの感じだと忘れてたんじゃないかな。簡単に忘れられるほどのカードじゃないんだけどね……

 

 ともかく。奇しくも、二重武装(ダブルアームズ)モンスター同士の戦いとなる事は確実だ。

 

「アタックシーン、アーサーで攻撃。効果で、自分フィールドの種別(カテゴリー)騎士(ナイト)」を持つモンスターの攻撃時効果を、選んでふたつまで発揮できる。対象は陽光の騎士と湖の騎士」

 

反撃(カウンター)はないぞ」

 

「では陽光の騎士の効果でデッキから3枚ドローし、手札を2枚破棄。捨てるのは「‎ソードブレイカー」と「白の妻」。更に陽光の騎士が武装(アームズ)している「陽射しの聖剣(ガラティン)」の攻撃時効果も発動する」

 

 アーサーが掲げる大聖剣が強く輝く。それに連動するように、陽光の騎士の持っている剣も光を放つ。

 

「墓地の名前に「騎士」が含まれるカードを5枚好きな順番でデッキの下へ送り、パワー+500。戻すのは「硬い手の騎士」、「悲しみの騎士」、「騎士の宣誓・魔封」、「騎士の宣誓・撃滅」、「穢れなき騎士」」

 

「続いて、湖の騎士の攻撃時効果。フィールドの騎士モンスター1体を指定し、その攻撃時効果を発動する。対象は陽光の騎士。再び墓地の「騎士」カードを5枚デッキに戻してパワー+500。戻すのは「不義の騎士」、「悲しみの騎士」、「騎士の宣誓・撃滅」、「騎士の宣誓・封殺」、「騎士の宣誓・封殺」」

 

「さらに、湖の騎士が武装(アームズ)している「湖面の精剣(アロンダイト)」の攻撃時効果。このターンの間、フィールドにいる騎士トークン1体につきパワー+100。フィールドに騎士トークンは1体なので、+されるのは100だけ」

 

「次にアーサーの攻撃時効果②を発動。自分のフィールドの騎士モンスターを好きなだけ墓地へ送り、その合計パワーをこのモンスターに上乗せする。対象は「湖の騎士」。「湖面の精剣(アロンダイト)」を武装(アームズ)しているので、+されるパワーは1800」

 

「そして武装(アームズ)カードの効果を発揮する。まず「光輝の大聖剣(エクスカリバー)」の効果。攻撃終了後、1度だけ追加攻撃できる」

 

 怒涛の効果処理。これでアーサーのパワーは6700。1回でも攻撃が通れば終わり……というより、「王の閃槍(ロンゴミニアド)」がある時点でもう結果は見えている。

 

「続いて、「王の閃槍(ロンゴミニアド)」の効果。このモンスターが戦闘で相手のモンスターだけを破壊した時、上回ったパワー分のダメージを相手のライフへ与える」

 

「……やりおるわ。ムサシードドラゴン、迎え撃て!」

 

 二刀流の龍が王と激突する。

 

 絶え間なく剣戟の音と、斬撃の余波。ムサシードもよく食らいついているが、アーサーが圧倒的に優勢だ。

 

「このタイミングでソニックスペル、「騎士の宣誓・撃滅」を発動。攻撃中のアーサーを指定し、そのパワー以下の相手モンスターを1体破壊する。対象はムサシードドラゴン」

 

 まずはその武装(アームズ)を剥がす。

 

「ムサシードドラゴンの効果を使うぞ。このモンスターが効果対象になる時、武装(アームズ)カードを破棄する事で対象にならない。破棄するのは「了改」」

 

 だろうね。ムサシードドラゴンは耐性がしっかりしている。羨ましい限りだよ本当に。

 

「さらに「了改」の効果を発動じゃ。このカードが破棄された時、手札に武装カードがあるなら直ちに追加召喚できる。召喚するのは「泉守富士原鐘重」。ムサシードドラゴンへ直接武装(ダイレクトアームズ)!」

 

「了改」のパワー+値は900だけど、「泉守富士原鐘重」は+700。若干のパワーダウンとなるけれど、発動せずムサシードがやられたらそれこそ負け一直線だ。

 

 ……「泉守富士原鐘重」は破壊されてもフィールドに残る系の効果がある。確かコストは「泉守富士原鐘重」自身の破棄だったような気がするけど……多少粘られるかな。

 

 ともかく、対象を失った「騎士の宣誓・撃滅」はそのまま空撃ち。二刀流の龍と王の騎士が再び激突する。

 

 拮抗は一瞬だった。

 

 王がムサシードの胸を切り裂き、「王の閃槍(ロンゴミニアド)」で頭を貫く。二重武装(ダブルアームズ)同士の戦いは決着した。もう一回あるけどね。

 

「「王の閃槍(ロンゴミニアド)」の効果。相手のモンスターを戦闘で破壊した時、上回ったパワー分のダメージを相手ライフへ与える」

 

 ムサシードドラゴンのパワーは4400。アーサーは6700。つまりライフを2300削る。

 

 …………戒が「王の閃槍(ロンゴミニアド)」覚えてないの、交渉(ネゴシエーション)でダメージ返せるからかな。

 

「「泉守富士原鐘重」の効果!このモンスターが破壊された時、このカードを破棄する事でフィールドに残る。……しかし、これではのぅ」

 

 地に突き刺さっていた「泉守富士原鐘重」が砕け散るが、代わりにムサシードが息を吹き返す。

 

 でも、「泉守富士原鐘重」には「了改」のように新たな武装(アームズ)カードを追加召喚する効果がない。ムサシードドラゴンの効果で+されていた500と、「泉守富士原鐘重」のパワー+700が失われる。

 

 現在のムサシードドラゴンのパワーは3200。アーサーのパワーは6700だから、次の戦闘で発生する貫通ダメージは3500。校長のライフは2700。

 

「これで終わり。アーサーで再び攻撃!」

 

「……良かろう、ライフで受ける」

 

 アーサーが投擲した「王の閃槍(ロンゴミニアド)」を、潔く校長は受け入れた。対戦(バトル)が終了する。私の勝ちで。

 

「……ふぅ、望みは分かっておる。悪末 戒の」

 

「詳しく説明してください」

 

「一から十……いや、一から百まで」

 

「戒に何をしたんですか」

 

「う、うむ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、荷造り終わり。出発〜」

 

ゆっくり行こう。千里の道も一歩からだ。

 

 





我らは堕ちた。翼は灼け落ち、宙に戻る事は叶わない。

故に、叫ぶのだ。郷愁の慟哭を。

隕龍星 ドラグギベオン
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