悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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考えろ。考えろ。考えろ。

さもなくば。次の瞬間には。

考えることすら……

強制熟考


この時代にリーゼントとは……

 

 戒にしがみついて、風圧に耐える。

 

「ねぇ戒、そういえばさ…………」

 

「あにーー!??聞こえねーからデケー声で頼むー!」

 

「……うん、着いてから話すね」

 

「あんだってーー!?」

 

「着いてから聞くからーー!!」

 

「おっけぇぇぇ!!」

 

 ……原付の二人乗りってダメなんじゃなかったっけ。

 

 

 数分後、私の家の前に着いたので聞いてみた。

 

「おん、ダメだな」

 

「ダメじゃん……」

 

「ちょっとだからいーんだよ、気にすんな」

 

 気にするんだけど……私これでもバトモン部部長だよ、聖城学園の。発覚したら大炎上待ったナシ……まぁ、別にいいか。

 

 私は、戒の居場所を作るために部長になった。戒が学園から居なくなった今、無理して部にいる必要もないし……いや、約束を果たさないといけない。

 

 そうだ、聞きたいこと、もうひとつあった。

 

「ねぇ、なんで私に「誰にも負けるな」……なんて言ったの?」

 

「んー…………別に?」

 

「なにその間」

 

「何でもないって。気にすんな」

 

「一番気にする言い方しないでよ」

 

 顎をさすりながらそう言う戒。目線は私に向いておらず、明後日の方向だ。

 ……何か隠してる素振りをしていることくらい分かる。伊達に幼馴染やってない。

 

「…………まぁ、次こっち戻ってきたら言うから。ちょっと辛抱してくれ」

 

 ……なんか釈然としない。

 

 不意に、パチンと指を鳴らして戒が私にスマホを向けた。

 

「そういやさ、俺ら連絡先交換してなかったよな。交換しとこうぜ」

 

 はっ!!

 これは千載一遇。私達は距離が近すぎて、逆にお互いの連絡先を知らなかった。部屋の窓開ければ、すぐ向かいに戒の部屋の窓があるくらい。だからこそ、この1年の間お互い殆ど連絡を取らなかった……取れなかったわけで。

 

 返事するより先に、ポケットをまさぐってスマホを探す。

 

 ……あ。

 

「私今スマホ持ってない……」

 

「現代っ子に有るまじき、だな」

 

 やっぱり一旦学校へ戻ろう。連絡先は早急に確保しないと……

 

 などと考えているうちに、戒が紙切れに何かを書いて、私に差し出す。

 

「ほい、これ俺の連絡先」

 

「ほ」

 

「ほ?」

 

 思わず変な声が出た。ありがたく受け取る。マジマジと数字の羅列を見つめてから、感謝を伝える為に視線を上に向ける。

 

 戒は既にヘルメットを被り、バイクに跨っていた。

 

「じゃ、俺はこれで」

 

「ちょちょちょちょちょちょちょ……っ」

 

「いつでも連絡寄越せよな〜」

 

「…………」

 

 今夜、寝る前くらいに鬼電する事を決めた。いざ、寝落ちもしもし。ムフフ、心躍る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖と別れて数時間、俺はひたすらバイクを走らせ続けた。都会の喧騒が遠くなり、景色に緑が多くなり始めた頃。

 

 ブォンブォンブォンブォンッ

 

「…………俺なんかしたっけ?」

 

 ブロロロロロロロロロッ

 

 沢山のバイカーに周りを囲まれていた。派手な装飾をしたバイクに跨り、同じく派手なヘルメットを被った集団だ。ヘルメットちゃんと着けてて偉い。

 

「変なのに絡まれたなぁ……」

 

 並走しながらぼやく。今どき暴走族……いや、今は珍走団が正式呼称だっけか。どちらにせよ流行んねぇぞ。関わりたくねぇ〜……。頭おかしい奴らとは関わり合いにならない方がいいって、ザーガンにも言われた。

 

 不意に、前を走っていた一際派手なバイカーがハンドサインを送ってくる。

 

「…………着いて来い、ねぇ」

 

 離脱は……無理そうだ。ガッチリ周囲を固められている。仕方ない、行くか。しっかり麿を護送したまへ。

 

 

 

 

 少し走り、廃工場へ到着。……悪ガキ共の巣窟としては上等過ぎるなぁ。落書きもされ放題。まさにアジトって感じだ。

 

 事が済んだら、警察に連絡させてもらうね。

 

「オイこらてめぇ、何処のモンだァ」

 

 バイクの群れを率いていたリーダー格が、ヘルメットを脱ぎながら詰めてくる。……この時代にリーゼントを見るとは。ある種の感動が湧き上がってくるね。あとヘルメットしてて偉い。……なんだ、凄くピリピリする。

 

「何処のモンとは?」

 

「何処の高校のモンかって事だ、聞かんでも分かんだろ」

 

 分かるかい。主語はハッキリとお願いします。

 

「聖城学園の2年だ。頭に元が付くけどな」

 

 にわかに周囲がざわめく。まぁ、超名門だし。中身は結構グズグズだけど。

 

「んだてめぇ、そこ辞めたのか。奇遇だなァ、勿体ねぇなァ?」

 

「俺は強い奴と対戦(バトル)がしたいだけだったけど、向こうは名門なだけあってガチだった。エンジョイの俺とは反りが合わなかった。……で、奇遇って事はお前もっ……痛てっ」

 

 急に横からひっぱたかれる。グラサンかけたモヒカン頭が唾飛ばしながら俺に叫んだ。

 

「誰にお前つってんだお前ェ!山に埋めんぞ!!!」

 

「うるせぇぞ倉間。おれァ、お前に喋っていいっつったか?」

 

「すんませんしたっ!!」

 

「分かりゃいいんだよ。ただなァ……次ナマこきやがったら、埋まんのはてめぇの方だ倉間」

 

 聞くに絶えない雑音を遮って、リーダー格の男は静かに凄んだ。モヒカン頭はすぐさま頭を下げて謝罪する。

 

 ……コイツ、ただの悪ガキ共の(カシラ)じゃないな。強者特有の雰囲気を感じる。対面するだけで、空気がピリピリと張り詰めるような緊張感を感じる。店長と初めて戦った時もこんな雰囲気だったっけか。

 

 ニヤついてる俺の顔を見て、リーダーの男が同じように笑った。

 

「へへっ、笑ってんのかい。……お前、名前なんつぅんだ?」

 

「悪末 戒。「悪魔族」デッキを使う、しがないプレイヤーだ」

 

 周囲がまたざわめいた。聞き飽きた反応だ。皆、正気か?とでも言いたげな目で俺を見る。正気だよ。正気だからこそだ。お前らこそ正気なのか?

 

「そォか。おれァ、藤 阿吽(あうん)。「銃人(ガンマン)」デッキを使う」

 

 諸人が、目を見張り耳を疑って挙句の果てに俺の正気を疑う事を。コイツは……藤は「そういうこともあるか」とでも言いたげに流した。

 

 やはり。

 

「なァ、悪末よ。おれ達の考えている事、同じだと思うんだが」

 

「そうだな、藤」

 

 そうだ。俺達の心は通じあっている。

 

 

「「対戦(バトル)だ」」

 

 

きっと、楽しい対戦(バトル)になる。

 

 





神を父に持つ、神殺しの大狼。

神喰い フェンリガルム
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