教えよう。過去、現在、未来。その出来事を。代わりに、魂を貰うがな。
廃工場内に何故かある
「やろう。早くやろう」
「急かすなよ、おれも同じ気持ちだァ」
藤が使うデッキテーマは「
まぁモチーフ元がアメリカの西部開拓時代に活躍した保安官や浮浪者と、かなり狭い範囲だ。早々に使い切ってしまったのだろう。悲しいね。
全体的にパワーも低い。記憶している限り、2000どころか1500を超えるパワーを持つモンスターはいなかったはず。しかし、その効果の特異性は唯一無二。特殊勝利カードもあるし、全く油断ならない……が。多少気になる点もある。
果たして、「
「……よォし、準備が整ったみてぇだな」
互いに向かい合い、デッキをセットする。
「「
手札は……「
「先行はどォする?」
「俺から行かせてもらおうかな」
「OK、そんじゃァ……」
「「
先ずは俺のターン。
「ターンスタート!ドロースキップ、リカバースキップ。メインシーン!フィールドカード、「
フィールドに悪魔達の遊び場が建つ。スロット、ポーカー、丁半……様々なギャンブルで悪魔が遊んでいる。楽しそう。
「メインシーン終了、アタックスキップ。ターンエンド!」
「悪魔族の力ァ、見せてもらうぜ。ターンスタート!ドロー、リカバー、メイン!「早撃ち決闘場」を配置ィ!」
フィールドに砂混じりの風が吹き、西部劇でしか見ない植物……タンブルウィードがコロコロと転がっていく。周りにはガンマンらしき人影があり、俺と藤の戦いを見守っているようだ。
「
「次だァ、「ヤング
砂塵の中から現れた少年が、俺の手札へ銃口を向ける。ここからが「
「アタックシーン開始時、このモンスターの攻撃権を放棄する事で相手の手札を1枚指定し、そのカードの種類をおれが予想した後、オープンさせる!予想が的中したならおれはデッキから1枚ドローし、お前のライフを200削る!
選ばれたカードは右端に置いていたシグオムだ。
「モンスターカードと予想!バング、
パァンッ!と発砲音が響き、俺の手からシグオムが弾かれ、フィールドに開示状態で置かれる。
「モンスターカード、
再び発砲音。今度は俺の手札ではなく、俺自身を狙った一撃だ。
「フィールドカード、「早撃ち決闘場」の効果ァ。
決闘場から流れ弾が飛んできて、俺のライフを削る。いてて。
「アタックシーン終了、ターンエンドだァ」
攻撃権を放棄し、相手の手札を対象に発動する効果。これこそ「
「いいね」
こういう手合いとの
「ターンスタート。ドローシーン、リカバーシーン、メインシーン」
引いたカードは「
「手札の「
「召喚時効果があるが、手札に対応するカードがないので空撃ちになる。何かあれば」
「ねェぜ」
「では処理終了だ。続いてシグオムの常時発動効果。相手の手札は常にオープン状態になる」
「おォ」
シグオムが手を翳すと、フィールド上に藤の手札情報が映し出される。なるほどなるほど……ん?
「
「
「
「果てなき死出の旅」
「名もなき
…………なんだ、この手札。「
「あーァ、バレちまった。早かったなァ?」
悪戯がバレた子供のように、ニヒッっと笑う藤。その様子を見て、思考が一つの結論に至る。
まさか。
「「
「正解ィ!より正確に言うならァ……「
適性を複数持つ人間は少なくないらしい。仮入部してた頃、部員の何人かがそうだった。
ただ、適性があるテーマ同士の相性が悪くて、より強い方のテーマだけ使っている……そんな感じだった。
「よーく分かったよ藤。「
「だろォ?おれもよォ、一世紀近く追加のないテーマが適性だと知った日には凹んだぜ。まだ小坊だったからよォ、布団に潜って暫く泣いてたぜ。だがよォ……
「手始めに、おれを馬鹿にしていた連中を全員ボコしてやった。古臭いテーマを使うおれを、指差して笑ってた奴等だ。真正面から、
「そっから、周りからの見る目が変わったぜェ。雑魚を……可哀想な奴を見る目が、おれを恐れる目に変わった。親兄弟すらそうだった」
「気持ち良かったぜェ……それと同時に悲しくもあったけどなァ」
「誰もおれと勝負したがらなくなった。一度戦って勝てばよォ、その後はヘラヘラしておれを避けやがる」
それは、強者の孤独だった。途中までは一種のサクセスストーリー。だが話が進むにつれて、他と隔絶した強さが藤から喜びを奪っていく。かつて切望し、遂に手に入れた強さが巡り巡って、藤を孤独に陥れている。
なんという皮肉だろうか。
「ひとまずなァ、地元で敵もおれ自身の居場所も無くなったおれァ、強さだけを引っ提げて聖城学園に入ったわけよ。そこの校長がまァ鬱陶しいのなんの」
おっと?
「偉そうに、上から目線で講釈垂れて気やがんのが気に食わなくてよォ。いつも通り
「……先輩だったのか」
「まァな、だから奇遇だと思ったぜ。偶然すれ違ったお前からよォ、俺が
「頼むぜ、悪末。おれを助けると思って、本気で叩きのめしに来てくれよ」
「あぁ、全力を尽くすよ。メインシーン終了、アタックシーンへ!」
そこまで言われたら、期待に添えざるを得ない。苦慮の道を歩む先輩へ、餞別に敗北をお届けするとしよう。
「シグオムで攻撃!」
「来いよォ!ライフで受ける!」
藤の周りの空間が歪んで裂ける。その中から電車が勢いよく藤に突っ込み、ライフを500削る。
「うォあ!?……随分エキセントリックな攻撃しやがるなァソイツ」
「過去、現在、未来を見透かすどころか見た先の事象を持って来れるイカレ悪魔なんでね。俺はこれでターンエンド」
「何言ってっか分かンねェわ。よォし、行くぜ。ターンスタート!ドロー!」
ドローしたカードは「
「リカバー、メイン!」
……こりゃ
「見えてんだろォ、おれが引いたカード。なら今からどォなるか、分かるな?来なァ、厄災呼び込むサゲマン!「
唐突に、後ろからバングが撃ち抜かれる。決闘場の野次馬たちも何人かが撃ち抜かれて倒れ、それにより皆散り散りに逃げていく。
そうして、無人となった決闘場に人影が一つ。カナレーだ。
「召喚時効果ァ!おれのフィールドにいる
「破壊された自分のモンスター……つまり、「ヤング
これでバングを
因みにドローされたカードは「屍山血河」。「
「メイン終了、アタックシーンだァ!カナレーの効果で、攻撃権を放棄!更に手札を1枚破棄し、お前の手札を2枚指定!そのカードの種類を予想し、オープンするぜェ!破棄すんのは、「
手札の「
「おれから見て右側はモンスターカード、左側はスペルカードと予想だァ!カナレー、
「っぶねぇ〜……」
思わずそう口に出す。的中したのが1枚だけならデッキから1枚ドローして、俺に200ダメージ与えるだけで済む。手札を破棄はされない。
けど、まぁヤバい。手の内が見られすぎだ。
「どっちもモンスターカードかァ。
「まぁな。それでも使いようはある」
カナレーが俺のライフを奪う。
ドローしたカードは……「
ただ、「
「アタックシーンを終わる。このタイミングで、ブラスカルデの墓地効果を使うぜェ。ターンに1度、おれのデッキを上から3枚破棄だァ」
墓地から生えた亡者の腕がデッキからカードを剥ぎ取る。
ブラスカルデ、またの名を過労の王。「
「お、ラッキーだなァ。これでターンエンドだ」
どうやら、墓地で発動する効果を持つモンスターが落ちなかったらしい。良かった良かった。
いやぁ、どうにも流れが悪い。藤はもう次のターンで決めに来れるだろう。どうにか引き戻したいが……ドローにかかってるな。あー、ワクワクする。
「ターンスタート、ドローシーン」
引いたカードは……「
チラリ、と手札の1枚を見る。
「
もし、ブラスカルデが出てくるなら……コイツも出せる。そうなるなら、直接攻撃で負けることは先ずない。「
あぁ、楽しいなぁ。やっぱり
かっけぇクイックドローの仕方を練習してんだ。見るか?
ヤング