悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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教えよう。過去、現在、未来。その出来事を。代わりに、魂を貰うがな。

序列十一位(デーモンズイレブン) シグオム


屍人の銀弾(デッドマンズ・シルバーバレット)

 

 廃工場内に何故かある対戦(バトル)スペース。周囲を少し見渡せば、スペースを起動、維持する為の家庭用発電機がずらりだ。ワクワクする。

 

 

「やろう。早くやろう」

 

「急かすなよ、おれも同じ気持ちだァ」

 

 

 藤が使うデッキテーマは「銃人(ガンマン)」。古いテーマだ。……というのも、銃人(ガンマン)カードが出た直近の年代は1900年代の初め。一世紀を過ぎても追加がない。故に、古いテーマ。

 

 まぁモチーフ元がアメリカの西部開拓時代に活躍した保安官や浮浪者と、かなり狭い範囲だ。早々に使い切ってしまったのだろう。悲しいね。

 

 全体的にパワーも低い。記憶している限り、2000どころか1500を超えるパワーを持つモンスターはいなかったはず。しかし、その効果の特異性は唯一無二。特殊勝利カードもあるし、全く油断ならない……が。多少気になる点もある。

 

 果たして、「銃人(ガンマン)」デッキでこの人数の不良を従えられる程の強さを得られるのか……?

 

 

「……よォし、準備が整ったみてぇだな」

 

 

 対戦(スペース)に光が点る。両手で頬を叩き、気持ちを切り替える。その先の思考は、藤への侮辱にもなりかねない。これからの好敵手(ライバル)に、そんなことはしたくない。

 

 互いに向かい合い、デッキをセットする。

 

 

「「手札準備(ハンズレディー)」」

 

 

 手札は……「七大罪科(デビルズシン)」が2枚と「悪魔の遊戯場(ヘルズパーク)」、シグオム。悪くない。むしろ良い。

 

 

「先行はどォする?」

 

「俺から行かせてもらおうかな」

 

「OK、そんじゃァ……」

 

「「対戦(バトル)!」」

 

 

 先ずは俺のターン。

 

 

「ターンスタート!ドロースキップ、リカバースキップ。メインシーン!フィールドカード、「悪魔の遊戯場(ヘルズパーク)」を並べる!」

 

 

 フィールドに悪魔達の遊び場が建つ。スロット、ポーカー、丁半……様々なギャンブルで悪魔が遊んでいる。楽しそう。

 

 

「メインシーン終了、アタックスキップ。ターンエンド!」

 

「悪魔族の力ァ、見せてもらうぜ。ターンスタート!ドロー、リカバー、メイン!「早撃ち決闘場」を配置ィ!」

 

 

 フィールドに砂混じりの風が吹き、西部劇でしか見ない植物……タンブルウィードがコロコロと転がっていく。周りにはガンマンらしき人影があり、俺と藤の戦いを見守っているようだ。

 

 

銃人(ガンマン)」専用のフィールドカード。効果は……まぁすぐに分かる。

 

「次だァ、「ヤング銃人(ガンマン) バング」を召ォ喚!このままメインシーンを終了し、アタックシーンへ移行する!この時、「ヤング銃人(ガンマン) バング」の効果を発動ォ!」

 

 

 砂塵の中から現れた少年が、俺の手札へ銃口を向ける。ここからが「銃人(ガンマン)」の真骨頂。

 

 

「アタックシーン開始時、このモンスターの攻撃権を放棄する事で相手の手札を1枚指定し、そのカードの種類をおれが予想した後、オープンさせる!予想が的中したならおれはデッキから1枚ドローし、お前のライフを200削る!標的(ターゲット)捕捉(ロック)!」

 

 

 選ばれたカードは右端に置いていたシグオムだ。

 

 

「モンスターカードと予想!バング、撃て(ファイア)!」

 

 

 パァンッ!と発砲音が響き、俺の手からシグオムが弾かれ、フィールドに開示状態で置かれる。

 

 

「モンスターカード、命中(ヒット)ォ!デッキから1枚ドローし、ライフを200削る!」

 

 

 再び発砲音。今度は俺の手札ではなく、俺自身を狙った一撃だ。

 

 

「フィールドカード、「早撃ち決闘場」の効果ァ。種別(カテゴリー)銃人(ガンマン)」を持つモンスターの効果で、相手の手札をオープンさせて予想を的中させた時ィ、デッキから1枚ドローし、相手へ200のダメージを与える」

 

 

 決闘場から流れ弾が飛んできて、俺のライフを削る。いてて。

 

 

「アタックシーン終了、ターンエンドだァ」

 

 

 攻撃権を放棄し、相手の手札を対象に発動する効果。これこそ「銃人(ガンマン)」の特色。オンリーワンと言っていい希少効果だ。

 

 

「いいね」

 

 

 こういう手合いとの対戦(バトル)は久しぶりだ。

 

 

「ターンスタート。ドローシーン、リカバーシーン、メインシーン」

 

 

 引いたカードは「悪魔の烙印(デビルズブランド)」。良いカードだ。捨てやすい。

 

 

「手札の「序列十一位(デーモンズイレブン) シグオム」の効果を発動。このカードは自分の手札を1枚破棄する事で追加召喚できる。破棄するのは「悪魔の烙印(デビルズブランド)」。来い、地獄の大公爵。識りたる者よ!」

 

 

 紋章(シジル)が描かれ、中から紫のコートを羽織った体格の良い悪魔が現れる。猿の顔を持つ、過去、現在、未来を見通す知識の悪魔。

 

 

「召喚時効果があるが、手札に対応するカードがないので空撃ちになる。何かあれば」

 

「ねェぜ」

 

「では処理終了だ。続いてシグオムの常時発動効果。相手の手札は常にオープン状態になる」

 

「おォ」

 

 

 シグオムが手を翳すと、フィールド上に藤の手札情報が映し出される。なるほどなるほど……ん?

 

死人の手札(デッドマンズ・ハンド)

悪童(ビリー・ザ・キッド) ウィリー・ヘンリィ」

屍徒(しと)の王 ブラスカルデ」

「果てなき死出の旅」

「名もなき屍人(デッドマン)

 

 …………なんだ、この手札。「銃人(ガンマン)」カードだけじゃない。これは……「屍徒(しと)」のカード?

 

 

「あーァ、バレちまった。早かったなァ?」

 

 

 悪戯がバレた子供のように、ニヒッっと笑う藤。その様子を見て、思考が一つの結論に至る。

 

 まさか。

 

 

「「銃人(ガンマン)」と「屍徒(しと)」の混合(ミックス)デッキか!」

 

「正解ィ!より正確に言うならァ……「銃人(ガンマン)」と、「屍徒(しと)」を含む不死(アンデッド)系との混合(ミックス)さァ!!」

 

 

 適性を複数持つ人間は少なくないらしい。仮入部してた頃、部員の何人かがそうだった。

 

 ただ、適性があるテーマ同士の相性が悪くて、より強い方のテーマだけ使っている……そんな感じだった。

 

 

「よーく分かったよ藤。「銃人(ガンマン)」テーマだけでこれだけの不良共を束ねるにゃ、どうにもカードパワー不足だと思ってたんだ」

 

「だろォ?おれもよォ、一世紀近く追加のないテーマが適性だと知った日には凹んだぜ。まだ小坊だったからよォ、布団に潜って暫く泣いてたぜ。だがよォ……不死(アンデッド)系に広く適性があるって事が分かってからはァ……世界が変わったぜ」

 

「手始めに、おれを馬鹿にしていた連中を全員ボコしてやった。古臭いテーマを使うおれを、指差して笑ってた奴等だ。真正面から、対戦(バトル)で叩きのめした」

 

「そっから、周りからの見る目が変わったぜェ。雑魚を……可哀想な奴を見る目が、おれを恐れる目に変わった。親兄弟すらそうだった」

 

「気持ち良かったぜェ……それと同時に悲しくもあったけどなァ」

 

「誰もおれと勝負したがらなくなった。一度戦って勝てばよォ、その後はヘラヘラしておれを避けやがる」

 

 

 それは、強者の孤独だった。途中までは一種のサクセスストーリー。だが話が進むにつれて、他と隔絶した強さが藤から喜びを奪っていく。かつて切望し、遂に手に入れた強さが巡り巡って、藤を孤独に陥れている。

 

 なんという皮肉だろうか。

 

 

「ひとまずなァ、地元で敵もおれ自身の居場所も無くなったおれァ、強さだけを引っ提げて聖城学園に入ったわけよ。そこの校長がまァ鬱陶しいのなんの」

 

 

 おっと?

 

 

「偉そうに、上から目線で講釈垂れて気やがんのが気に食わなくてよォ。いつも通り対戦(バトル)で黙らせる事にしたんだが、普通に負けちまってなァ。自分から負けたら退学って言い出した以上、取り消す訳にもいかねェし。そのまんま辞めたんだ」

 

「……先輩だったのか」

 

「まァな、だから奇遇だと思ったぜ。偶然すれ違ったお前からよォ、俺が不死(アンデッド)系と適性があるって知る直前の……そうだなァ。言葉にすンなら現状の打開……その予感がした。そんでここまで連れ込んで話してみりゃ、更に偶然。おれの後輩と来たもんだ」

 

「頼むぜ、悪末。おれを助けると思って、本気で叩きのめしに来てくれよ」

 

「あぁ、全力を尽くすよ。メインシーン終了、アタックシーンへ!」

 

 

 そこまで言われたら、期待に添えざるを得ない。苦慮の道を歩む先輩へ、餞別に敗北をお届けするとしよう。

 

 

「シグオムで攻撃!」

 

「来いよォ!ライフで受ける!」

 

 

 藤の周りの空間が歪んで裂ける。その中から電車が勢いよく藤に突っ込み、ライフを500削る。

 

 

「うォあ!?……随分エキセントリックな攻撃しやがるなァソイツ」

 

「過去、現在、未来を見透かすどころか見た先の事象を持って来れるイカレ悪魔なんでね。俺はこれでターンエンド」

 

「何言ってっか分かンねェわ。よォし、行くぜ。ターンスタート!ドロー!」

 

 

 ドローしたカードは「厄災(カラミティ)銃人(ガンマン) カナレー」。……うーん、効果はなんだったかな。どれどれ。

 

 

「リカバー、メイン!」

 

 

 ……こりゃ厄災(カラミティ)ですわ。

 

 

「見えてんだろォ、おれが引いたカード。なら今からどォなるか、分かるな?来なァ、厄災呼び込むサゲマン!「厄災(カラミティ)銃人(ガンマン) カナレー」、召ォ喚!」

 

 

 唐突に、後ろからバングが撃ち抜かれる。決闘場の野次馬たちも何人かが撃ち抜かれて倒れ、それにより皆散り散りに逃げていく。

 

 そうして、無人となった決闘場に人影が一つ。カナレーだ。

 

 

「召喚時効果ァ!おれのフィールドにいる種別(カテゴリー)銃人(ガンマン)」を持つモンスターを2体まで破壊し、デッキから破壊した数だけドロー!更にィ、バングが破壊された事で手札の「果てなき死出の旅」が発動!」

 

「破壊された自分のモンスター……つまり、「ヤング銃人(ガンマン) バング」に種別(カテゴリー)屍徒(しと)」を付与する!」

 

 

 これでバングを不死(アンデッド)と同じように使えるな。手札やデッキからの破棄を効果発動のコストにしているテーマと、不死(アンデッド)はすこぶる相性がいい。こういう使い方も出来るわけだ。

 

 因みにドローされたカードは「屍山血河」。「屍徒(しと)」をサポートするフィールドカードだ。配置条件が「墓地に屍徒(しと)モンスターが5体以上」だから、このターン配置されることはない。が、かなり強力な効果を持つ。配置されると面倒だ。

 

 

「メイン終了、アタックシーンだァ!カナレーの効果で、攻撃権を放棄!更に手札を1枚破棄し、お前の手札を2枚指定!そのカードの種類を予想し、オープンするぜェ!破棄すんのは、「屍徒(しと)の王 ブラスカルデ」!標的(ターゲット)捕捉(ロック)!」

 

 

 手札の「七大罪科(デビルズシン)」2枚が選択される。……2枚当てられたらマズイな。破棄されて手札なし(ハンドフリー)になって、もうジリ貧だ。お祈りタイム。

 

 

「おれから見て右側はモンスターカード、左側はスペルカードと予想だァ!カナレー、2発撃て(ダブルファイア)!」

 

「っぶねぇ〜……」

 

 

 思わずそう口に出す。的中したのが1枚だけならデッキから1枚ドローして、俺に200ダメージ与えるだけで済む。手札を破棄はされない。

 

 けど、まぁヤバい。手の内が見られすぎだ。

 

 

「どっちもモンスターカードかァ。一発のみ命中(シングルヒット)、1枚ドローとお前に200のダメージ。更に「早撃ち決闘場」で1枚ドロー、200のダメージを与える。……にしても、かなり事故ってんじゃねェか。まだソイツら、召喚できねェだろ?」

 

「まぁな。それでも使いようはある」

 

 

 カナレーが俺のライフを奪う。

 

 ドローしたカードは……「野蛮な嘴(ワイルド・ビル) ヒルコック」。「死人の手札(デッドマンズ・ハンド)」の発動に必要なモンスター。コイツにも出てきて欲しくないところだな。

 

 ただ、「死人の手札(デッドマンズ・ハンド)」は現状怖くない。あのカードは相手の手札を4枚指定し、予想を的中させれたらゲームに勝利できる効果を持つ。が、相手の……すなわち俺の手札が4枚より少なければ使えない。

 

 

「アタックシーンを終わる。このタイミングで、ブラスカルデの墓地効果を使うぜェ。ターンに1度、おれのデッキを上から3枚破棄だァ」

 

 

 墓地から生えた亡者の腕がデッキからカードを剥ぎ取る。

 

 ブラスカルデ、またの名を過労の王。「屍徒(しと)」の過労死枠。「屍徒(しと)」デッキにおいて大事なこと、必要なことは大体コイツがやってくれる。まさにデッキの要だ。

 

 

「お、ラッキーだなァ。これでターンエンドだ」

 

 

 どうやら、墓地で発動する効果を持つモンスターが落ちなかったらしい。良かった良かった。

 

 いやぁ、どうにも流れが悪い。藤はもう次のターンで決めに来れるだろう。どうにか引き戻したいが……ドローにかかってるな。あー、ワクワクする。

 

 

「ターンスタート、ドローシーン」

 

 

 引いたカードは……「序列二十五位(デーモンズトゥエンティーファイブ) グラシャグラス」。よーし、何とかなりそうだ。打開するには程遠いが、間違いなく死期は遠のくハズだ。

 

 チラリ、と手札の1枚を見る。

 

七大罪科(デビルズシン) 嫉妬のレアヴィータ」

 

 もし、ブラスカルデが出てくるなら……コイツも出せる。そうなるなら、直接攻撃で負けることは先ずない。「死人の手札(デッドマンズ・ハンド)」の効果範囲に入って、ワンチャン特殊勝利の可能性もあるけど。

 

 あぁ、楽しいなぁ。やっぱり対戦(バトル)は最高だ。

 

 

 






かっけぇクイックドローの仕方を練習してんだ。見るか?

ヤング銃人(ガンマン) バング
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