悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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死なずの王。
身体は朽ち果てかけ、意識は殆どない。
それでも。終わりを奪われた者たちへ、終わりをもたらす誓いを守り続けている。

屍徒(しと)の王 ブラスカルデ


屍と悪魔

 

「リカバー、メイン。条件は相手のライフが3000以上。クリア!「序列二十五位(デーモンズトゥエンティーファイブ) グラシャグラス」を召喚」

 

 

 紋章(シジル)が燃え盛り、中から翼を持つ猟犬のような悪魔が現れる。グラシャグラスは正面の敵を見据え、遠吠えを上げた。さぁ、仕事して貰うぞ。

 

 

「召喚時効果!自分のライフを500削り、相手のモンスター1体を墓地へ送る。対象は「厄災(カラミティ)銃人(ガンマン) カナレー」!」

 

「おォ」

 

 

 俺のライフを吸収したグラシャグラスが、黒い霧を吐き出す。ソレは瞬く間にカナレーを包み込み、塵に変えた。ホント、助かるぜグラシャグラス。

 

 

「アタックシーン!行け、グラシャグラス!」

 

「このタイミングで、手札からソニックスペル「亡者の誘い」を使用ォ!墓地からパワー200以下の屍徒(しと)モンスターを追加召喚する!地より這い出ろ、「名もなき屍人(デッドマン)」!そして、グラシャグラスの攻撃を防御(ブロック)しろォ!」

 

 

 ん。……あー、そういえばヒルコック引いた時と同じタイミングで、「早撃ち決闘場」の1枚ドローしてたか。確認しそびれてた。まぁ使わせたと考えればいい。

 

 地から土にまみれたゾンビが生える。緩慢な動きでフィールドに立った瞬間、その首がグラシャグラスの牙によって噛み砕かれる。これで破壊だが……破壊時効果が使われるな。

 

 

「「名もなき屍人(デッドマン)」の破壊時効果。デッキから1枚ドローだァ」

 

 

 まぁ、無難なワンドロー効果だ。引いたのは「動く死体の黒脂」。こちらの攻撃を妨害できるカードではない。

 

 

「続ける。シグオムで攻撃!」

 

「無いぜェ。ライフで受ける!」

 

 

 シグオムが再び空間を歪めて引き裂く。その中から現れたのは巨大な顎。……おそらく、ティラノサウルスのものだ。遥か太古から呼び出されたソレが藤に噛みつき、ライフを減らす。

 

 

「うわッ!?……心臓に悪ィな、ソイツ」

 

「ハハハハ。これでアタックシーン終了、ターンエンドだ」

 

「……よゥし、ターンスタート!ドローシーン!」

 

 

 ドローされたのは種別(カテゴリー)死獣(しじゅう)」のモンスター、「屍喰らい スカヴァルチャー」。知らないカードだな、どれどれ……?

 

 


 

「屍喰らい スカヴァルチャー」

パワー400 モンスターカード 死獣(しじゅう)

 

──召喚時効果──

 自分フィールドの「屍徒(しと)」、「死獣(しじゅう)」を持つモンスターを破壊することで、1枚ドローできる。

 

──攻撃時効果──

 このカードを破壊することで、手札の召喚条件を持たない「死獣(しじゅう)」モンスターを1体追加召喚できる。

 

──破壊時効果──

 墓地の「屍徒(しと)」、「死獣(しじゅう)」を持つモンスターを好きなだけデッキへ戻し、戻した枚数分デッキから1枚ドローできる。

 

──墓地発動効果──

 自分のターンに1度、手札を1枚破棄する事でデッキを2枚破棄できる。

 

 

 死体を食らう掃除屋(スカベンジャー)

 死ねない亡者すらも、生態系は受け入れて糧にするのだ。

 


 

 

 あらヤダ、しっかり強いわこの子。スーパー潤滑剤じゃん、就活で売り文句にしろ。

 

 しかも、ちゃんと全部「できる」効果なのがいいね。使い所を選べるのは十分に長所だ。ただ、今の盤面と手札では召喚してもうま味薄い。召喚するなら、黒脂の方だろうか。

 

 

「来なァ!数多の屍取り込む怪魔、「動く死体の黒脂」!制限によりィ、墓地の「屍徒(しと)」モンスター3体を除外して召喚!除外対象はバング、ブラスカルデ、屍人(デッドマン)!」

 

 

 ズリュと、墓地から黒いなにかが盛り上がる。それは死体から滲み出た脂だ。バング、ブラスカルデ、屍人(デッドマン)の身体を取り込んで膨張し、溢れ出るそれは、フィールドに悪臭と瘴気を振り撒く。

 

 足も、手も、頭も胴体もない。凡そ生物と呼べる特徴が見当たらない。ただ黒い脂が這いずっているだけ。より不気味なのは、脂の奥でバングと屍人(デッドマン)の顔がにこやかに微笑んでいる事。ブラスカルデは殆ど骸骨だから分からないけど。

 

 こいつは面倒だ。コイツの破壊時、召喚する際に除外した「屍徒(しと)」モンスターをフィールドに呼び戻す効果を持っている。……パワーは900か。グラシャグラスのパワーは700だから……多分攻撃してくるな。防御(ブロック)されたらされたでモンスターを処理できたと考えられるし、俺がライフで受けたらその分勝ちに近付くだろう。

 

 グラシャグラスの破壊時がなければ、な。

 

 

「アタックシーン!「動く死体の黒脂」で攻撃!効果により、デッキから3枚破棄!破棄した中に種別(カテゴリー)、「屍徒(しと)」を持つモンスターがあれば、このターンの間パワーを+500!更にィ、攻撃終了時に攻撃権を得る!」

 

 

 黒い脂が藤のデッキを吹き飛ばす。その中の「屍徒(しと)」モンスターであろうカードのパワーを取り込み、「動く死体の黒脂」は更に肥大化する。コイツ、自分が消した分の墓地をしっかり補充するんだよな。厄介。落ちたのは……「死鳥獣 ネクロガルダー」、「屍刃のデソード」、「屍騎のライデス」。しっかり不死(アンデッド)系落ちてんな。

 

 

「グラシャグラスで防御(ブロック)!」

 

 

 牙を剥き出しにしてグラシャグラスが吠え、死体の山に挑みかかる。パワーが倍ある相手にも関わらず、その行動に一切の迷いは見えない。振るう爪を脂が絡め取り、ジュウジュウと音を立てて溶かしていく。やがて爪だけではなく腕、身体、頭と脂の触手が伸びて、内側へ取り込んでいく。グロい。

 

 が、グラシャグラスは頭を取り込まれる直前に黒い霧を吐き出した。

 

 

「グラシャグラスの破壊時効果。自分のライフを半分削り、相手モンスター1体を墓地へ送る」

 

「おォッと。そう来やがるかァ」

 

 

「墓地へ送る効果」で墓地へ移動したカードは、破壊時効果を発動できない。小学生でも知ってる事だ。

 

 黒い霧に蝕まれて、グラシャグラスごと「動く死体の黒脂」が塵へと消えていく。

 

 グラシャグラスは生粋の格上殺し(ジャイアントキラー)。単体で完結した使いやすい性能の悪魔族。ガッツリライフを掻っ攫っていくが、それに見合った活躍はしてくれる。

 

 特に、破壊時の「自分のライフを半分削り、相手モンスター1体を墓地へ送る」が優秀だ。コストが自分のライフの半分だから、自傷で死ぬ事がない。まぁ、ガッツリ持っていかれる事もあるけど。今回のように。

 

 

「自分のライフを半減させてまで潰すかァ。よく分かってんじゃねェか」

 

「見え透いたマスカン通す奴なんて居ないでしょって。「悪魔の遊戯場(ヘルズパーク)」の効果で、1枚ドロー」

 

「アタックシーン終了、ターンエンドだ」

 

 

 流石に今の状態でブラスカルデを着地させるワケにはいかない。レアヴィータの手札発動効果を掻い潜られるし、最悪そのまんまゲームエンドまである。……引いたのは「地獄の門(ヘルズゲート)」。いやぁ、使い所困る。

 

 

「ターンスタート、ドローシーン」

 

 

 引いたカードは……「悪魔の仕込み(デビルズプレパレーション)」。抱えておくのはアリ。手札はあればあるほど「銃人(ガンマン)」に抜かれ難くなる。後は「悪魔の遊戯場(ヘルズパーク)」でコストにして追加召喚潰せる。

 

 攻撃はどうするかどうか、だな。レアヴィータ着地させる為に少し誘ってみるか。

 

 

「リカバーシーン、メインシーン。何もせずアタックシーン。シグオムで攻撃する!」

 

「このタイミングで墓地の「死鳥獣 ネクロガルダー」の効果発動ォ!このカードをデッキの下へ戻し、手札の「死獣(しじゅう)」モンスターを1体追加召喚する!」

 

「何もない」

 

「ならば死を喰う翼、「屍喰らい スカヴァルチャー」を追加召喚だァ!」

 

 

 黒い羽根が舞い、竜巻が発生する。その中から現れるは黒翼の巨鳥。ハゲ頭が特徴的な掃除屋だ。シグオムの前に立ちはだかり、叫声をあげる。

 

 

「召喚時効果は使わねェ!」

 

「何もない」

 

「ならば防御(ブロック)だァ!スカヴァルチャー!」

 

 

 命令を受けて巨鳥が飛翔し、鋭いかぎ爪でシグオムを捕らえんと降下する。それを目の当たりにしたシグオムは一度だけ、指をパチンと鳴らした。

 

 スカヴァルチャー直上の空間が裂け、中から空飛ぶ円盤が姿を現す。ニョニョニョニョニョ……と独特な音と共に円盤の下部から光が照射され、直下の巨鳥を捕らえた。直後、円盤は捕らえたスカヴァルチャーごと裂けた空間の中へ消えていった。……うーん、見事な宇宙的誘拐(キャトルミューティレーション)

 

 

「……これ、破壊時発動できんのかァ?連れ去られてんだが……」

 

「知らないのか、宇宙人は連れ去った生物を実験に使って殺すんだ。もちろん使えるさ」

 

「エグい事しやがる。……気を取り直してェ、破壊時効果発動!墓地の「屍徒(しと)」、「死獣(しじゅう)」を持つモンスターを好きなだけデッキの下へ戻す!そして、その数だけデッキから1枚ドローだァ!」

 

「何もないぞ」

 

「墓地のデソード、ライデス、「動く死体の黒脂」をデッキに戻すぜェ。よって3枚ドロォー!」

 

 引かれたカードは……「異次元回収アンカー」、「厄災(カラミティ)銃人(ガンマン) カナレー」、「ヤング銃人(ガンマン) バング」。流石の構築力だな、ちゃんと除外されたカードの回収手段も入れている。

 

 ……戻ってくるか、ブラスカルデ。

 

 

「アタックシーン終了、ターンエンド」

 

「俺のターン!ドロー、リカバー、メインだァ!手札からスペル、「異次元回収アンカー」を使う!除外されたカードを1枚手札に戻す!」

 

 

 引かれたカードは「スペルブレイク」。来たな御三家*1スペル。……契約(コントラクト)単体じゃ逆に無効化され返される状況か。良くないなあ。

 

 

「ない」

 

「そんじゃァ戻ってこい!「屍徒(しと)の王 ブラスカルデ」!続いて、手札から「名もなき屍人(デッドマン)」を召喚!そして、手札のブラスカルデの効果を使う!」

 

 

 種別(カテゴリー)屍徒(しと)」を持つモンスターが召喚権を使って召喚された時、このカードを追加召喚できる。パワーや効果に見合わない、随分と軽い条件だ。だから死ぬほど使い倒されるんだけど……お労しや。

 

 

「黒套の骸、終わりなき死を終わらせる者!来い、「死徒(しと)の王 ブラスカルデ」!」

 

 

 黒い風が吹く。それは王の訪れを知らせる風。終わりもたらす骸の王が来た。

 

 いや、まぁ正直安心した。対エース抱え落ちは悲しい。

 

 

「召喚時効果ァ!自分の手札、フィールド、墓地のモンスター全てに種別(カテゴリー)屍徒(しと)」を付与し、好きなだけ除外する!除外した数だけ、ブラスカルデのパワーを+100!この効果でフィールドの「屍徒(しと)」モンスターを除外する時、破壊時効果を使用できるッ!」

 

 

 これが強ぇんだ。「お前は屍徒(しと)!お前も屍徒(しと)!全員纏めて除外エリアにGo!」って感じのハチャメチャ能力。加算されるパワー数値は1枚につき100と控えめ。しかし墓地を肥やしに肥やす不死(アンデッド)系なので妥当な数値だ。

 

 

「よってェ、除外される「名もなき屍人(デッドマン)」の破壊時効果が発動できる!手札からバング、カナレー、ヘンリィ。墓地からはスカヴァルチャー、カナレー。フィールドからは「名もなき屍人(デッドマン)」。合計6枚を除外し、パワー+600だァ」

 

「続いて「名もなき屍人(デッドマン)」の破壊時効果を発揮し、1枚ドロー。なんかあるかァ?」

 

 

 引かれたカードは「屍山血河」。大局に差し障りはないな。

 

 

「ある。手札の七大罪科(デビルズシン) 嫉妬のレアヴィータ」の効果を発動。レアヴィータよりパワーの低い相手モンスターが、パワー+によってレアヴィータを上回った時に追加召喚できる」

 

「────来るかァ!!」

 

 

 フィールドに海水が満ちる。

 

 

「日を呪うもの、ねじれるもの、海を統べるもの。比肩を許さぬ、最も強き蛇。「七大罪科(デビルズシン) 嫉妬のレアヴィータ」召喚!!」

 

 

*1
スペルを無効化するスペル「スペルブレイク」、フィールドを破壊するスペル「フィールドブレイク」、発動した効果を無効化する「エフェクトブレイク」の総称





最強の生物としてデザインされた海蛇。
故に、自身より強いものを許さない。

七大罪科(デビルズシン) 嫉妬のレアヴィータ
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