とある
配られた手札は黒のAと8のツーペア。
中々の手札だ。あと1枚は……
フィールドに海水が満ちる。
ギャンブルを楽しんでいた悪魔達が逃げ出して、遊戯場が沈む。
波打つ海面の下を巨大な影が通る。
「日を呪うもの、ねじれるもの、海を統べるもの。比肩を許さぬ、最も強き蛇。「
海面が爆ぜる。水柱から現れたのは龍にも見紛う海蛇。
曰く、心臓は石のように硬い。
曰く、腹は陶器の破片を並べているかのよう。
曰く、どんな武器もこの蛇を貫けず、傷つけることが出来ない。
神が創り出した神獣であり怪物。世に2体しかいないタニーン、その雌個体。
「真打ち登場ってかァ?…………パワーはブラスカルデの方が上だなァ」
「来るなら来いよ」
俺がそう言うと、ケラケラと笑う藤。
「イイぜ。アタックシーン!ブラスカルデ、やれェ!」
骸の王が黒套をはためかせながら、海面を蹴って突っ込んでくる。指示も待たずにレアヴィータが海中へ潜った。待たんかい。
「レアヴィータ、
宣言と共にブラスカルデの進路上の海面が爆ぜ、レアヴィータが大口を開けて牙を剥く。噛み砕く気満々だ。それに対して、ブラスカルデは静かに拳を構えた。
……瞬間。
『ッッッ──!!』
残像すら見えない骨の拳が、嫉妬の大蛇を真正面から殴り飛ばした。悲鳴と共に、大波と水飛沫をあげながらレアヴィータが海面に倒れ込んで沈黙する。
まぁ、パワー1700と2200だし。普通に負けるよな。戦闘の結果に何処か訝しげな藤が呟く。
「……ソイツ、ホントにこの程度かァ?」
「こっからだよレアヴィータは……ほら来た」
レアヴィータが吼える。顔の鱗に痛々しい衝撃の痕を刻みながらも再び起き上がり、ブラスカルデへ憤怒の形相を向けている。
「……なァるほどな。戦闘破壊耐性か」
「その通り。レアヴィータ、常時発動効果① このモンスターは戦闘で破壊されない。そして…………」
「……あ?なんだありゃァ……」
藤の目線の先。嫉妬の大蛇が脱皮しているのだ。より硬く、より強く、より強大になる為に。レアヴィータは己より強い存在を許さないのだから。
脱皮を終えたレアヴィータから力の奔流が放たれる。その衝撃波に攫われて、俺のデッキからカードが1枚手札に加えられた。お、「
「常時発動効果② このモンスターが戦闘に負ける度、パワーを+300してデッキから1枚ドローする」
「エースキラーか……!!」
「そうとも言う。コイツはエースキラー兼エースだ」
藤が「異次元転送ロケット」*1とか入れてたら簡単に処理できるけど……多分ないだろう。あったら困る。
「ターンエンドォ……!」
もうブラスカルデで押し切る事はできない。なら次に取る手は、当然「
「ターンスタート。ドローシーン、リカバーシーン」
引いたカードは「
………………、使うか。
「メインシーン。手札からスペル、「
「
「ない」
無効にされる。使わせたのはアリ。
「メイン終了、アタックシーン。行け、レアヴィータ!」
突っ込ませる。指示を聞き終えるより早くレアヴィータは飛び出した。さて、
「……ブラスカルデで
少し悩んで
潜水しているレアヴィータが、高速でブラスカルデの周囲を回り始める。今度は渦潮を作って海中に引きずり込む作戦のようだ。
パワー差はたった200だからある程度良い勝負するはず……と思ったんだけどなぁ。
向けた視線の先には、レアヴィータの上顎と下顎をがっつり掴んで無理やりこじ開けているブラスカルデの姿。
うーん、全くの見当違いだったようだ。ほんとにパワー差200?1000ぐらい離れてないか?
「効果により、戦闘で破壊されない。そして戦闘に敗北した時、パワー+300してデッキから1枚ドロー」
引いたカードは「
シルファードは悪魔カウンターが10個ないと召喚できない。
フェルネクスは相手モンスターの直接攻撃中に割り込む形でしか召喚できない。
ヴァルバストは墓地に悪魔族モンスターが5体居ないと召喚できない。
非常に、ひっじょ〜によろしくない。「
まず間違いなく、次のターンで藤は「
「アタックシーン終了、ターンエンド」
「おれのターンだァ!スタート!ドロー!」
加えられたカードは「仕切り直し」。確か制限1の……
「……そんなもん入れてんの?」
「オウよ。「
至言。流石、運命力に胡座をかく凡百のプレイヤー共とは心構えから違うな。
「続けるぜェ。リカバー、メイン!
吹き荒れる砂塵の中、髭の長い男が海面を歩いてくる。ヒルコックだ。
「召喚時効果ァ。このモンスターの攻撃権を放棄することで、相手の手札2枚を指定!そのカードの種類をおれが予想し、オープンさせる!2枚的中でおれは2枚ドローし、このターンの間だけこのモンスターにパワー+500!1枚的中でこのモンスターにパワー+200する!」
「右から1番目と2番目のカードを指定!おれはどちらもモンスターカードと予想する!ヒルコック、
ヒルコックが銃声を鳴らす。シルファードとフェルネクスが手札から弾かれ、フィールドに開示された。
「
あいてて。
ドローされたのは「屍刃のデソード」、「エフェクトブレイク」。
デソードは攻撃時に手札と墓地を肥やしつつ、ライフバーンも飛ばしてくるアタッカー兼潤滑油さん。
エフェブは……結構ダルいけど、大丈夫だと思う。発動した効果を無効にできるのは強いが、相手のターン中に発動した効果への
けれど、手札にあるだけで牽制として影響を持つ。……シグオムで見える分、余計に気になる。とりあえず使わせないとな。
「早撃ち決闘場」でドローされたカードは「果てなき死出の旅」。まぁまぁまぁ……。ヒルコックが破壊された時「
「さぁて、ここからだァ!「
そう。問題はここから。
「効果により、おれのフィールドに居る「
発砲音。
「1枚命中で、お互いに1000ダメージ」
ヒルコックが斃れる。
「2枚命中で、命中した手札2枚を破棄させる」
次なるターゲットは、俺の手札だ。
「3枚命中で、お前に2000のダメージを与える」
発砲音。今度は4発分。
「4枚命中で、おれはこのゲームに勝利する」
手札からシルファード、フェルネクス、ヴァルバスト、「
「
「どうかな」
「おれァ知ってるぜ。悪魔族の特徴は手札発動効果を持つ豊富な悪魔族モンスターと、ライフをコストにした強力なスペル。それぞれの妨害によって、相手の展開を遅延する。……その「
よく知ってるな。悪魔族のことなんざ、調べもしてねぇ奴らが大多数なのに。
「お前のその2枚を破棄だァ。「早撃ち決闘場」の効果。お前に200のダメージを与えて、1枚ドロー」
シルファードとフェルネクスが撃ち抜かれ、墓地へ送られる。
ドローされたのは2枚目の「
俺のライフは既に1450。度重なるバーンでほぼ死にかけだ。藤は4枚命中の特殊勝利に頼らずとも、3枚命中の2000ダメージバーンでも勝てる。
が、次も
「アタックシーン終了、ターンエンドだァ」
「ターンスタート、ドローシーン」
引いたカードは「
どうせ日和ってたら負けるんだ。そんならじゃんじゃかリソース突っ込んで、死ぬ気で勝ちに行く。
「リカバー、メインシーン!条件は相手フィールドにパワー2000以上のモンスターが1体以上、クリア!来い、「
現れるは黒馬に跨る騎士の悪魔。
グラジャグラスに続き、コイツも
まぁ、今回は次へと繋げる為の捨て駒的な役割だけどな。
「召喚時効果。デッキを3枚破棄する事で、相手フィールドの最もパワーの高いモンスターと同じパワーになる」
「させるかよォッ!
「了解、こちらはない。召喚時効果は不発になるが、処理は終了で良いか?」
「あァ、こっちもねェよ」
良し。目障りな妨害はこれで消えた。多分、藤も使わされてる事は分かってただろうけどな。ブラスカルデと同じパワーになって、相討ちでもされたら次はレアヴィータの攻撃が待ってる。
ブラスカルデは破壊時に、召喚時効果で除外したモンスターを全て墓地へ戻し、その後墓地から「
そして、この追加召喚無効は常時発動効果。エフェブで無効にできない。なら、そもそものキルマリスの召喚時効果を潰した方が良い。
この
……手札は3枚。
ヴァルバスト、「
フィールドに開示されている、藤の手札は8枚。その中の1枚に視線を向ける。
「仕切り直し」。
効果はゲーム中に1度、お互い手札を全てデッキに戻してシャッフルし、4枚ドローする。
もし。次のターン藤がコレを使って、4枚ドローした時に「
「……アタックシーンだ。行け、レアヴィータ!」
アタックシーンの開始宣言から既に海中に潜っていたレアヴィータ。
「ブラスカルデ、
大口を開けて突っ込んできたレアヴィータを受け止めようとするブラスカルデだが、今度は止められなかった。骸の王をゴリゴリと噛み砕き、藤へ吐き捨てるレアヴィータ。
「レアヴィータの攻撃時効果。戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターのパワー分のダメージを相手へ与える」
「ぐォッ!?……チィッ、エフェブ持っとけば良かったか?……いや、こっちの方が被害少ねェか」
「とにかく、ブラスカルデの破壊時効果ァ!召喚時に除外した「
魂に安寧を与える黒衣の骸は去った。「
「「
半分ぐらい海水に沈み、無人となった遊戯場が稼働する。破棄されたカードのエネルギーが水没したスロットへ流れ込んで……
あー……なーんも起きない。故障してます。
見かねたシグオムが代わりに空間を裂いて、墓地から這い出してくるヒルコックを異空間に放り込んだ。
「これで処理終了。続け、シグオム!」
「ライフで受けるぜェ!」
シグオムが手を翳し、能力を行使する。
裂けた空間から現れるのは……なにこれ。なんか触手みたいな舌をチロチロと出し入れしていて、……青黒い粘液を全身から滴らせる犬?の様な。
『む、マズイ』
シグオムがそう呟き、再び手を翳した。裂かれた空間に犬のような怪物が呑み込まれて消える刹那、触手のような舌を藤へ飛ばす
「うォッと!?……なンだ、今の」
「……さぁ?」
藤のライフを削った直後、空間の断絶によって切り離された舌が暫くウネウネとのたうち回っていたが、やがてプスプスと煙を上げて消えていく。
『いや失敬。少々、遠くまで広げすぎたようだ』
『知らない方が良い事もある』
さいですか。じゃあいいや。
「続ける!キルマリスで攻撃!」
「これもライフだァ!」
キルマリスの騎乗する黒馬が、藤を踏みつけてライフを削った。これで、藤のライフは残り600。レアヴィータのバーンがかなり効いてるな。
「ターンエンドだ」
勝利は目前。だが、油断は禁物。夜明け前が最も暗いのだから。
遅れまして申し訳ない。ZAに夢中になっておりました。デウロが可愛い。
次回、決着。
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