悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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滅ぼしてやる。(わたし)が、お前を。お前の国を。
あぁ、アーサー。憎き、我が怨敵。
……私の、弟。

破滅の大魔女 モルガーン



おれ達の居場所

 

 初戦は、俺をシバいて藤にシバかれた……倉間さんだっけ。どうやら、「忍蛇(にんじゃ)」デッキを使うらしい。どんなデッキだっけ。「固有能力(キーワードアビリティ)」の隠密を使うのは覚えてるけど。

 

 

 ────「固有能力(キーワードアビリティ)」。近代になって登場した、比較的かなり新しめのカード達が持っている効果の総称。それぞれのカードテーマに固有の能力名があり、その数は実に多様。

忍蛇(にんじゃ)」ならば「隠密」。

電脳(サイバー)」ならば「電奪(ハッキング)」。

歌姫(ディーバ)」ならば「熱唱」。

 

 それ以前のテーマに「固有能力(キーワードアビリティ)」がないわけではない。

 

 新しく追加された「呪怨霊(じゅおんりょう)」モンスターはほとんど「呪殺(じゅさつ)」を持っている。同じく追加された「機鋼(メカニカル)」カードには「層甲(アーマー)」が。

 

 

 ……あまり日の目を見ないテーマへの救済措置、そんな感じの印象だ。「呪殺」が入る前の「呪怨霊」とか全く強くなかったし。やることは精々、相手モンスターのパワーを下げるくらいだ。特筆する点がない。まあ、数百年前から存在するテーマと考えれば妥当だ。

 寧ろ、昔のカードがいつまでも強いのがおかしい。「騎士(ナイト)」とか「天至(てんし)」とか。「ドラゴン族」系統は許そう、弱いテーマもたくさん抱えてるからな。ただし「天位竜」、テメーはダメだ。

 

 話が逸れたが、詰まるところ「呪怨霊」はまったくもって見所のないテーマだった。しかし、「呪殺」が入ってからは状況が一変。強デッキに名を連ねるまでに至った、ということ。

 

「呪殺」は、「このモンスターが破壊された時、相手モンスターを墓地へ送る」効果。道連れ、共倒れを戦略に組み込んだカードテーマは数多く存在するが、あくまでもそれらはサブプラン。それをメインに据えたテーマはかなり少ないんじゃなかろうか。

 

 …………違う違う、いつの間にか「呪怨霊」が話の中心になった。「固有能力(キーワードアビリティ)」を貰ったテーマが結構躍進してっから、「忍蛇(にんじゃ)」も怖いなって。

 

 

「オッス、よろしくおねがいしやす!!」

 

「あぁ、よろしく。……なんか口調変わってね?」

 

「いえ、気のせいっス!胸をお借りしやす!」

 

 

 ほんとかなぁ。

 

 

手札準備(ハンズレディー)、どっちが先行取りやすか?」

 

手札準備(ハンズレディー)

 

 

 あっ。

 

 

「……そっちに譲るよ」

 

「いいんすか!?じゃあ遠慮なく!ターンスタート」

 

「すまん。手札の七大罪科(デビルズシン) 憤怒のサイターン」の効果」

 

「……えっ」

 

 

 本当にすまない。これが悪魔族なんだ、許せ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「……どうも。二回戦の相手をさせていただく、御崎といいます。使うデッキは「妖醒(フェアリー)」です」

 

「あぁ、どうもご丁寧に。悪末です」

 

 

 染められたであろう金髪を揺らしながら、長身の女性が頭を下げる。レディースもいるのか、熱いな。

 

 

「……先ほどは倉間が失礼をしました。申し訳ありません」

 

「あぁいや、気にしないで下さい。強いて言うなら、その件は一回戦で清算済みですんで」

 

 

 初手サイターンで全て破壊したからな。寧ろ、申し訳なさがひとしお。何もさせなかった、正に完封だ。

 

 

「……そう言ってもらえると助かります。……倉間はあたし達の中で一番の新参ですが、リーダーへの忠誠心は誰よりも強いんです。そこまではいいんですが、ああやって暴走することも少なくありません」

 

「……苦労してるんですね」

 

「えぇ、本当に。……すみません、無駄話が過ぎました。始めましょうか」

 

「あ、はい」

 

 

 えーと、使うのは「妖醒(フェアリー)」だっけか。トークンを沢山フィールドに出して戦うタイプだったような気がする。確か、「騎士(ナイト)」と効果上で若干関わりがあるんだっけ。聖が言ってた。

 

 

手札準備(ハンズレディー)。……先行いいですか?」

 

手札準備(ハンズレディー)。大丈夫ですよ」

 

「ではいきます、ターンスタート。ドロースキップ、リカバースキップ。メインシーンへ移行。フィールドカード「四精の元素領域(エレメンタル・ランド)」を配置します。アタックスキップ、ターンを終了します」

 

「ターンスタート、ドローシーン、リカバーシーン、メインシーン……ターンエンドで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「自分フィールドに存在する全ての「妖醒(フェアリー)」、「騎士(ナイト)」モンスターを破壊することで、このカードは召喚できる。来なさい、「破滅の大魔女 モルガーン」!」

 

「ないです」

 

 

 沢山の妖醒トークンを全て焼き払い、銀髪の魔女が現れる。

 

 そうか、アーサー王伝説に縁あるカード。そりゃ「騎士(ナイト)」と関係あるわけだ。

 

 パワーは……1700。エースカードとしての基準は満たしているが……まぁ、魔法使い(メイガス)系の種別(カテゴリー)である「魔女(ウィッチ)」も持ってるし、素のパワーではなく効果で場を荒らすタイプだろう。

 

 さて、如何程か。

 

 

「モルガーン、召喚時効果を発動。召喚する際に破壊した「妖醒(フェアリー)」モンスターの数だけ、魔力カウンターをフィールドに置きます」

 

「通ります」

 

「破壊した「妖醒(フェアリー)」モンスターの数は、トークンが5体、「大火精 サラマンデ」、「悪戯グレム」が1体ずつ。よって魔力カウンターは7個置かれます。続いて、モルガーンのアクティブ効果(メインシーン)を発動します。魔力カウンターを1つ取り除き、相手のモンスター1体をこのターンの間だけ除外します。対象は「序列三十七位(デーモンズサーティーセブン) フェルネクス」を指定」

 

「お、通ります」

 

 

 つよい。しかも、アクティブ効果持ちか。まぁ魔法使い(メイガス)系はだいたい持ってるけども。

 フェルネクスの足元が渦巻く水面へと変わり、その中へ引きずり込まれていく。トイレみたーい。

 

 

『誰が汚物だぁがぼぼぼっ!?』

 

 

 そこまでは言ってないです。次のターンが来ればまた会おうな、フェルネクス。

 

 

「アタックシーンへ移行、モルガーンで攻撃します。攻撃時効果①を発動。魔力カウンターを1つ取り除く事で、墓地の「妖醒(フェアリー)種別(カテゴリー)を持つスペルの効果を発動できます。対象は「妖精の戯れ(フェアリープレイ)」です」

 

「通ります」

 

「では「妖精の戯れ(フェアリープレイ)」の効果により、種別(カテゴリー)妖醒(フェアリー)」を持つモンスター1体は相手モンスターに防御(ブロック)されません。対象は当然モルガーンです」

 

「はーい」

 

 

 俺のフィールドに立っているマファルスが完全に置物になっちゃった。まぁ、やりようはある。

 

 

「モルガーンの攻撃時効果②により、このモンスターの攻撃で相手のライフを減らした時、フィールドの魔力カウンターを2つ取り除く事で、追加攻撃権を得ます。何かありますか?」

 

「手札の「序列二十五位(デーモンズトゥエンティーファイブ) グラシャグラス」の効果発動。このモンスターよりパワーの高い相手モンスターが自分へ直接攻撃した時、直ちに追加召喚できる」

 

「通ります」

 

「ではグラシャグラスが無事着地。続いて召喚時効果発動。自分のライフを500削り、相手モンスター1体を墓地へ送る。対象はモルガーン」

 

「あー……ないです」

 

「ではモルガーンは墓地へ」

 

 

 ……なんか思ったよりあっさり除去できたな。パワー低めのエースは、代わりに何かしら耐性やフィールドに残る系の効果を持ってる事が多いんだけど…………墓地送りが耐性を潜り抜けた感じか?

 

 

「うーん、破壊時効果でフィールドに残る効果を発動するので墓地送りは厳しいですね。「取り替えっ子(チェンジリング)」も引けてないですし、仕方ないです。アタックシーンはこのまま終了で、ターンエンドです」

 

「了解、ターン貰います」

 

 

 まぁ、エースが陥落した相手を攻め落とすのは簡単だ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「……ボクらのNo.2である御崎さんを倒したようですね、流石です。三回戦、相手をさせて頂くのはこのボク、水野です。よろしくお願いします。使用デッキは「魚竜」です。楽しい対戦(バトル)にしましょう」

 

「あ、どうもよろしくお願いします」

 

 

「魚竜」か。古生物、その中でも海棲爬虫類に焦点を当てたカード群だな。「固有能力(キーワードアビリティ)」もあるし、結構な武闘派テーマだ。

 

 

「始めましょう。ボスに勝ち、No.2の御崎さんに勝った相手にボクが勝てば、必然的にボクが最強ということです。流石に気分がアガりますね」

 

「上昇志向つっよ、手札準備(ハンズレディー)

 

「いずれ世界を手にし、バトモン雑魚でもカードに好かれていなくても、楽しく生きれる世にしてみせます。手札準備(ハンズレディー)

 

 

 思想もつよい……

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 水野さん、引きはつよくなかった。悲しいね……。

 

 

「……わたし、筧。あなた、たおす。はんずれでぃー」

 

「俺、悪末。お前に、負けない。手札準備(ハンズレディー)

 

 

 ……アイマスクを額にずらして短い黒髪の少女がデッキを取り出す。……そういえば

 

 

「そういえば、なんのデッキを使うんだ?」

 

「ふっふっふっ。「賭博(ギャンブル)」」

 

「…………!?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 


 

 

 


 

 

 


 

 

 


 

 

 

 

 

 

「よォ、悪末。うちのメンバーはどうだァ、なかなか骨のある奴らだったろ」

 

「……あぁ、うん。なんか凄かったよ」

 

 

 主に癖がな。まぁ確かに、皆最後まで諦めず勝機を探ってた。筧さんだけ「ふっふっふっ。きょーきの、さたほど……!」とか言いながらギャンブルカードで自滅していったけど……彼女からすれば、ギャンブルで負けるのは本望だろう。

 

 

「おれァ、コイツらみたいな……色んなモンに見放された逸れ者に居場所を作ってやりたかった」

 

「そうやって、おれァこのグループを……「逸走団」を作った」

 

 

 あぁ、そういう名前なんだ。このグループ。

 

 

「布団の中で泣いてたおれみたいな奴を作らねぇように、馬鹿なおれなりに張ったセーフティネットだったワケだが……いつの間にかなァ、おれ自身の居場所にもなっちまった」

 

「おれァこれからもよォ、コイツらが求め続ける限り(トップ)張って、コイツらの……おれ達の居場所を守っていく」

 

 

 ギラリ、と。闘志に燃えて輝く眼を俺に向ける藤。

 

 

「その為にもよォ、先ずはお前を乗り越えてやるぜェ」

 

 

 凶暴な、それでいて楽しげな笑みを浮かべてそう言った。

 

 

「さて、やるぞ。おれの新生「屍人の銀弾(デッドマンズ・シルバーバレット)」と、お前の新生「悪魔族」デッキの決戦だ」

 

「でっどまんず……なに?」

 

「あァ、「屍人の銀弾(デッドマンズ・シルバーバレット)」。おれのデッキの名前だ。イイだろ?」

 

「おん。良いと思う」

 

 

 藤の後ろに居るギャラリー……具体的には御崎さんや水野さんが「褒めてあげて」って身振り手振りしてるのが目に入り、ノータイムで褒めを口にする。流石の反射神経と褒めてやりたいところだ。

 

 

「ふゥん。やっぱりお前は理解(わか)ってるなァ。おれのダチなだけある。早速始めるぜ」

 

 

 ダチ認定されてる。それはシンプルに嬉しい。

 デッキを取りだしてセットする。

 

 

手札準備(ハンズレディー)。今回は「死人の手札(デッドマンズ・ハンド)」、ブチ当ててやるよ」

 

「おう、叩き潰してやるよ。手札準備(ハンズレディー)

 

 

 バトルフィールドが起動する。

 最終戦だ。気張っていこう。

 

 

 

 

 

 

 …………勝敗はその場に居た人間たちだけが知るってことで。いやぁ〜、強かった強かった……。

 

 

 





「逸走団」……藤 阿吽命名。メンバー達は結構渋い顔をしている。決して散らない某鉄の華が元ネタ。

拠点の廃工場……みんなのバトルポイントを合わせて土地ごと買い取った。皆で寝泊まりしてる。

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