悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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 女性として史上初の魔導大帝。
 千の魔導書を書き残し、百の弟子を取り、十の新しい魔法体系を確立した後、ひとりの子を産んだ。

 魔導女帝 レディスペリア



悪魔的FTK

 対戦(バトル)が始まると同時に虚空に巨大な眼が開かれる。

 あれは監視。そして、調()()の為の眼。

 

 ギョロリと、それがオレ達を捉えた瞬間。

 

 

「うっ……!」

 

「ぐぁっ」

 

 

 身体のずっと深いところから、ごっそりと何かが奪われていく。……曰く「その内慣れる」らしいが、全くそんな気がしない。

 奪われたのは運命力プレイヤー(オレ達)プレイヤー(オレ達)である為に、必要不可欠な力。オレ達は大して運命力のない雑魚だからこの程度で済むが、トップランカーレベルが奪われると失神するのだとか。

 この性質を利用し、相手の運命力がどの程度か計る事もできると聞いている。

 

 さて、どうだ?

 

 

「…………なんか吸われたか?」

 

 

 数人の顔がニヤリと歪む。コイツ、オレ等以下の雑魚だ。

 奇を衒う同時対戦(バトル)や、強気な言動は弱さの裏返し。オレが言うのもあれだが、雑魚ほど自分を大きく見せようと躍起になるもんだ。

 

 ただ、ニヤついている数人以外の反応はあまり芳しくない。懸念していた事態が発生したと思っているのだろう。

 この「闇の領域」は相手が強いほど、オレ達へのリターンが大きい。逆に、相手が弱いほどこの領域はオレ達へ牙を剥く。

 

 

「ふぅ〜……」

 

 

 満たされていく感覚。運命力の調整が完了し、分配されたようだ。

 

 眼に合図を送ろうと視線を向ける。

 

 

「……あ?」

 

 

 違和感。

 

 暗黒に浮かぶ眼が、血涙を流している。こんな事は初めてだ。

 何かの不具合か?試作とは言っていたが……。向こうは感知出来ているのか?

 

 そんな考えは、次の瞬間には消し飛ぶ事になる。

 

 

手札準備(ハンズレディー)……はぁ!?」

 

 

 準備を終えた仲間の一人が驚愕と困惑の混じる声を上げる。どうかしたかと聞く余裕は、誰にもなかった。

 

 

「なんだこの手札は……!?」

 

 

 ──────強い、強すぎる。

 展開要員のフィールドカード、妨害の「スペルブレイク」、ドローソースの「墓荒らしドロー」。ここまで揃う程の運命力ならば、オレの求めるカードはほぼ確実に舞い込んでくる…………!

 

 まさか、まさかまさかまさか。オレが、1ターン目に最終盤面を作れるのか……!?

 トップランカーの中でも、限られた実力者にしかできないと聞くアレを……!

 

 

「…………はぁ。手札準備(ハンズレディー)

 

 

 浮き足立つオレの前で、つまらなさげに溜息を吐くターゲット。よほど手札が悪かったのだろう。

 

 …………いや、待て。

 

 おかしい。

 

 何かが…………

 

 

「だから使いたくねぇんだよな、コイツら」

 

 

 本当に、心底楽しくなさそうな声。

 

 嫌な予感がする。肌が粟立つ。

 もしかすると、狩られるのは……

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「召喚条件はフィールドに3体以上の「機鋼(メカニカル)」モンスターと、動力カウンターが10個以上。両方クリア!「機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)」を召喚!」

 

 

 フィールドに機神が立つ。

 

 

「召喚条件は、フィールドにAW(アニマルウェポン)モンスターが5体以上。さらに、召喚制限により手札を2枚破棄しなければ召喚できない。手札から「AWー02 ミサイルカ」、「AWー255 輸送ペリカン」を破棄し、「AWー61 大戦艦グレートホエール」を召喚!」

 

 

 背に艦砲を満載させた、機甲を纏う大鯨が進水する。好きなだけ展開するがよろしい。ぜーんぶ平らにぶっ潰すから。

 

 

「手札からスペル、「竜脈覚醒」を発動!自分の墓地の「ドラゴン族」モンスター1体を除外して発動……」

 

反撃(カウンター)で「スペルブレイク」。「竜脈覚醒」を無効にする」

 

「無駄だァ!反撃(カウンター)で「エフェクトブレイク」!テメェの「スペルブレイク」を無効に……」

 

「更に反撃(カウンター)、「エフェクトブレイク」を発動。お前の「エフェクトブレイク」を無効にする」

 

「な、なん……っ」

 

「もうひとつ反撃(カウンター)。手札から「魔導女帝 レディスペリア」の手札発動効果を使う。デッキを上から5枚オープン。その中のスペルカードの枚数によって、それぞれの効果を発揮する。

 1枚ならそのスペルカードを手札に加える。

 2枚ならデッキから1枚ドロー。

 3枚なら墓地のスペルカードを2枚手札に戻す。

 4枚なら上記の効果全てを発動し、

 5枚ならこのカードを追加召喚する。

 

 オープンされたのは「希望的観測」、「後光(フラッシュバック)」、「強制熟考」、「刹那の恩寵」、「残滓の胎動」。全てがスペルカードの為、レディスペリアを追加召喚する。オープンされたカードはデッキへ戻してシャッフルする」

 

「効果処理。このカードが手札発動効果で追加召喚された時、常時発動効果が解禁される。このモンスターがフィールドにいる間、相手は1ターンの間に召喚、スペルカードの使用、フィールドカードの配置をそれぞれ一度しか行えない」

 

「ぇ、あっ……」

 

 

 フィールドに降り立ち、目深に被ったフードを取り払うレディスペリア。呪文が刻まれたローブをたなびかせながら、女帝は場を支配せんと手を翳した。

 

 

女帝陛下の勅命(マジェスティ・オーダー)、完遂」

 

 

 ……1人目。

 

 

「ターンスタート。ドロースキップ、リカバースキップ、メイン。スペルカード、「因果反転」を使う。このターンの間、自分が受けるダメージは相手に。相手が受けるダメージは自分へ与えられる」

 

「させねェよ、「スペルブレイク」だ!!」

 

「それに反撃(カウンター)、こちらも「スペルブレイク」を使う」

 

「ぐ、うっ……!」

 

 

 ギリリ、と歯を食いしばるチンピラを尻目に効果を処理する。

 

 

「そっちの「スペルブレイク」が無効になり、「因果反転」が通る」

 

「続いて、手札から「禁書庫の司書」を召喚。メインシーンのアクティブ効果を発揮し、自分のライフを500減らして1枚ドロー。その後、この効果を発動したターンの間、自分が受けるダメージは2倍になり、効果でドローを行う度に300のダメージを受ける」

 

「次。手札からスペル、「切腹ドロー」を使う。自分に500ダメージを与えて、デッキから1枚ドローする。「禁書庫の司書」の効果で自分が受けるダメージは2倍になるので1000ダメージ。ドローしたので追加で600ダメージ。そして「因果反転」により、俺の受けるダメージはお前が食らう。おら、腹を切れ」

 

「ざっけんなテメェ!?」

 

「次は「流血蓄積」だ。自分に300ダメージを与え、フィールドに鮮血カウンターを1つ置く。倍の600ダメージを受けてもらう」

 

「ぐぅ!?……まさか、テメェ!」

 

「次、「刹那の恩寵」を使用。効果発動時、自分の手札が0枚ならデッキから4枚ドロー。そして、メインシーン終了時に手札、墓地を全て除外する。ドローをしたので600のダメージを受けろ。そして再び「流血蓄積」。鮮血カウンターを1つ置いて、お前に600のダメージ」

 

「続いて「禁書庫の司書」の効果。1ターンの間に自分がスペルカードを3枚使用した時、墓地のスペルカードを3枚除外してデッキから1枚ドローする。「因果反転」、「切腹ドロー」、「流血蓄積」を除外。ドローを行ったので600のダメージを受けろ」

 

「このまま俺をやるのか!?」

 

「正解。三度目の「流血蓄積」。鮮血カウンターを1つ置いて、600のダメージをお前に」

 

「そんなっ、こんな事がっ!?」

 

「はい、失血死(ブリード・アウト)

 

 

 ……2人目。

 

 

「ターンスタート、ドロースキップ、リカバースキップ。メインシーン、フィールドカード「嵐の王域」を配置。常時発動効果。お互いに効果によってドローした時、ドローした枚数分自分のデッキを破棄する。この効果によって3枚破棄される度、フィールドに悪天カウンターを1つ置く。続いて、「疾病獣 カゼガゼル」を召喚。召喚時効果発動、デッキを1枚破棄してフィールドに傷病カウンターを1つ置く。反撃(カウンター)は?」

 

「……ねぇよ」

 

 

 スルーしたが、当然握ってるだろう。

 

 

「効果処理、デッキを1枚破棄し、傷病カウンターを1つ置く。続いて破棄された「黒死の眷属 ぺインフル・ラット」の効果発動。種別(カテゴリー)「疾病獣」を持つモンスターの効果で破壊、破棄、墓地に送られた時、自分のデッキを2枚破棄してフィールドに傷病カウンターを2つ置く」

 

「それは通さねぇ!反撃(カウンター)で「エフェクトブレイク」を使い、ペインフル・ラットの効果を無効にする!」

 

「もったいないな。反撃(カウンター)で「スペルブレイク」を発動。「エフェクトブレイク」を無効にする」

 

「チッ、尽く……!」

 

 

 御三家と一括りにされているエフェブ、スペブ、フィルブ。しかし、このスペルカード達には明確に差がある。

 

 最も評価が低いのは「フィールドブレイク」。展開の下地となるフィールドカードを手軽に破壊できるというそこそこの強みを持つが、所詮はそこそこ。他の2枚と比べるとかなり霞む。

 2番手は「スペルブレイク」。相手のスペルを止める事ができるのは間違いなく強い。

 しかし。「エフェクトブレイク」は「スペルブレイク」の仕事も熟せる上に、モンスターの効果、フィールドの効果、武装(アームズ)の効果も無効にできる。

 

 つまるところは、「スペルブレイク」より仕事の出来る「エフェクトブレイク」が「スペルブレイク」によって潰されるのは…………結構もったいない。別にぺインフル・ラットはマスカンじゃないし、大事に取っておく方が良かったと思うよ。

 まぁ、俺が「スペルブレイク」握ってる時点でどうにもならないんだけどな。

 

 じゃ、潰すね……

 

 

「スペル、「緊急招集令(エマージェンシーコール)」を使う。カテゴリーを1つ指定し、デッキから1枚オープンする。そのカードが指定された種別(カテゴリー)のモンスターの時、追加召喚ができる。指定するのは「魔獣(まじゅう)」。何かあるか?」

 

「クソが、ねぇよ」

 

「効果を処理。デッキを1枚オープン……オープンされたのは「冥狗 ケルベラ」。種別(カテゴリー)「魔獣」を持っているので追加召喚。召喚時効果、お互いにデッキを2枚破棄し、1枚ドローする。ドローを行ったので「嵐の王域」の効果でデッキを1枚破棄。破棄されたスペル、「ハイパー・スペルリサイクル」の効果を発動。このカードを除外し、墓地のスペルカードを1枚手札に戻せる。このカードの効果はデッキ、手札から破棄された時に発動できる」

 

「スーパーレアのスペル……!」

 

「戻すのはさっき「嵐の王域」で破棄された「刹那の恩寵」。次、スペル「平等の理」を使う。このターンの間、自分が効果でカードをドローした時、その枚数と同じ数だけ相手はデッキからドローする」

 

「「刹那の恩寵」を発動。効果発動時、自分の手札が0枚ならデッキから4枚ドローし、メインシーン終了時に手札、墓地を全て除外する。「平等の理」の効果で4枚ドローしろ。「嵐の王域」の効果で互いにデッキを4枚破棄。合計3枚破棄したのでフィールドに悪天カウンターを1つ置く。次、「希望的観測」を発動。自分のデッキを上から2枚オープンし、その中の1枚を手札に加える」

 

 

 オープンされたのは「気高きバァルゼ・ヴル」、「痘獣王 バリオライオ」。見慣れたメンツだ。はぁ、つまらん。

 

 

「手札に加えるのはバァルゼ。残ったカードはデッキの下へ戻すが、バリオライオはオープンされた時に墓地へ送られる効果を持つ。バリオライオを墓地へ。バリオライオは墓地に送られた時、フィールドに傷病カウンターを2つ置ける」

 

「なんなんだよテメェは……!」

 

「ゲームに関係ない事を喋るな壁野郎。「カウントゼロ・ドロー」を使う。フィールドに置かれているカウンターを全て取り除く。取り除いたカウンター3つにつき、1枚ドロー。傷病カウンターが5個、悪天カウンターが1個だから2枚ドローする。「平等の理」の効果でお前もドローしろ。「嵐の王域」の効果も忘れんなよ」

 

「次、「気高きバァルゼ・ヴル」の効果。このモンスターは1ターンの間にデッキが合計20枚破棄された時、直ちに追加召喚できる」

 

 

 重い制限のように思えるが、この効果が参照するデッキ破棄数は両プレイヤーのもので、実はそこまで重くない。比較的楽に召喚できるエースモンスターだ。

 

 フィールドに暗雲が立ち込める。現れ来るは慈雨と嵐の神。いずれ異教徒に蝿の王、糞の山として貶められ、そのように零落する最高神。

 

 

「この効果で召喚された時、相手のデッキを相手の手札の枚数分破棄する」

 

「……、そういうコンセプトかよ」

 

 

 はい、そうです。「全青(オールブルー)レディスペリア」は先行封殺。「切腹強要バーン」はライフバーンでのFTK(ファーストターンキル)

 そして、この「無限デッキバーンストーム」はデッキアウトによるFTK(ファーストターンキル)

 ……今更ながら、デッキ破棄効果を繰り返し発動してる訳じゃないから、無限ってワードは余りにも分不相応というか、名前負けしているな。中2の時に作ったデッキだからしょうがないと言えばしょうがないけど。

 

 

「気色悪ぃ……テメェは、プレイヤーの風上にも置けねぇ……!!」

 

「はいはい」

 

 

 チンピラが一丁前に……まぁいい。

 

 褐色の男神が嵐を巻き起こし、相手のデッキを吹き飛ばしていく。大体半分くらい減ったな。あと何枚だろう。

 

 

「縺倥e縺?∪縺」

 

 

 耳元に現れたキモイ口が教えてくれた。残り10枚か、ピッタリだな。報告ASMR感謝~。

 

 

「「気高きバァルゼ・ヴル」メインシーンのアクティブ効果発揮。自分のデッキを好きなだけ破棄し、その枚数分相手のデッキを破棄する。最大10枚までだ」

 

「くそがぁ!!なんでだ、奪ったはずだ!テメェから運命力を!」

 

「へぇ、そういう感じか。デッキ全損(ワイプアウト)。ターンエンド」

 

 3人目。FTKタイプのデッキはこれで終わりか。早かったな。もっと妨害飛んでくるかと思った。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ゲラゲラ。

 ケタケタ。

 

 廃墟と化した冒涜の都市で、悪魔たちが嗤う。

 

 一杯のコップで、大海全てを掬えるものか。

 嗚呼、愚か也。その闇が一体何なのか、知りもせず、知ろうともしないその無知さ。

 分からぬものを、分からぬまま使う事の何と愚かしい事か。

 

 ゲラゲラ。

 ケタケタ。

 

 

 





「刹那の恩寵」……悪さばかりするカード。戒くんはデメリット効果を無理やりワンキルする事で踏み倒している。デッキに1枚しか入れられず、ターンに1度しか使えない。過去に二度、効果を改訂されている。

効果改訂……カードに協会が後から制限を設けること。ターンに1度、ゲーム中に1度、デッキに1枚しか入れられない等の記載はこれ。

ゲラゲラ。ケタケタ。……嗤っていたのは七大罪科(デビルズシン)

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