悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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その死は黒く……

十の黒災(テンペスト)


責任感が強い二人

 

 

『……なんか色々複雑で分かんないや』

 

 

 戸惑ったような声で聖はそう言った。そりゃそうか、誰だってそうなるわ。俺だって、幼馴染みから電話かかってきたと思ったら(イリーガル)カード云々……とても理解し切れないと思う。致し方なし。情報共有も兼ねての連絡だし、注意喚起だけしてもらおう。

 

 

「まだ報道されてないだけで、被害者は相当居ると思う。部員にも注意させといてくれ」

 

『うん。戒はその……(イリーガル)カードっていうの?何枚ぐらいあると思ってる?』

 

「どうだろうなぁ……」

 

 

 あの程度の実力しかない奴らに任せられるなら、相当な数があると考えるのが自然だ。出来るだけバラまいて、数打ちゃ当たるってな。

 カードを持たされた奴が全員あのチンピラ共みたいなヘタレならいいんだが……そんな良い話はない。多分本命がいる。数があって、本命がいるからこそあんな奴らにも持たせてるんだろ。

 うん、しっくりくる。

 

 どうやって(イリーガル)カードを作っているかにもよるが……。現代の手法で原初(オリジン)から複製(コピー)しているなら……これはあんまり考えたくないな。百どころか千まで有り得る。まぁ、流石にないだろう。闇の領域、運命力の均等化、勝者の権利の強制……そして新しいカードの素になる存在が、容易にポンポコ作れるワケがない。道理が通らん。

 

 …………もし。

 もし古代でよく取られた手法を使っているなら……数が揃っていてもおかしくない。これは別の意味で考えたくもないが……

 ただまぁ、それでも。

 

 

「百には届かないと思うけどな」

 

『それでも相当な数だね……』

 

「あんまりにも状況が逼迫するようなら、そっちにも協会直々に話が来るかもな」

 

『今の会長さん、聖城(うち)のOBだもんね。あんまり巻き込んで欲しくないけど』

 

 

 聖城学園の教員、バトモン部部長やそれに近い実力を持つ部員はしばしば協会からの要請により、現場対応をさせられる事がある。協会は死ぬほど人手不足だし、元々が協会の職員(プレイヤー)が聖城で教員になったり、そもそも協会職員に相応しい人材の育成の為に聖城学園が造られた……という事情があったり、ズブズブもズブズブな関係性だから仕方ないのだが。

 

 

『全く新しいカードの素なんて、一体なんの目的で……いや、愚問だね』

 

「皆欲しがるよな」

 

 

 プレイヤーならば、一度は夢想する。自分にとって理想のカード。最強のカードを。

 パワーが高く、効果が強く、耐性があり、出しやすい、そして自分の適性に合った種別(カテゴリー)のカード。

 

 俺は他のテーマから良さげなカードを漁れるが、他はそうはいかない。

 適性テーマでデッキを組んでその中に適性のないカードを入れると、コップに注いだ水と油のように、綺麗にデッキ内で別れるからだ。上が適性カード達、下が適性のないカード達。そうなるなら、態々適性のないカードを入れる必要がない。引けないのだから。

 

 だが面白いことに、デッキの下から1枚ドローする効果を多用するテーマ……例えば「奇術師」なんかは、適性のないカード群をデッキの中層ら辺に押し込むそうだ。単純にデッキボトムへ沈むのではなく、そのテーマが捲りにくい層へ適性のないカードを集める。これがカードの習性だと。父さんがそんな事を言っていた。

 

 さらに店長曰く……手軽なデッキ圧縮法として、一部のプレイヤーが使っているらしい。水が上から下に流れるような、世界の自然法則(ルール)を逆手に取って自分が有利になるように仕向けるとか……どんな人生送ってればそんな発想が浮かぶんだ。まさに逆転の発想。

 

 

『戒、この後どうするの?変な連中が変なことしてるなら、あんまり旅とか、その……出歩かない方ないいかもだけど……』

 

「普通に旅は続行するぞ。俺が負けると心配してるのか?」

 

『いや全然……。危ない事に巻き込まれて欲しくないから』

 

「問題ない。マジで問題ない。今度は逃げるからな」

 

『ほんと?』

 

「ほんとほんと。マジ」

 

 

 逃げれたらいいんだけどな。初手領域で逃げ道潰されたらどうにもならないけど……とりあえず素行悪そうな奴は避けて通ろう。

 

 お、コンビニみっけ。甘味甘味〜。……電話しながら買い物は、周りの客に迷惑だよな。

 

 

「んじゃあ、用件はそれだけ。そろそろ切るぞ」

 

『あっ……』

 

「……そっちは話す事あった?」

 

『え!?いや、え〜っと……』

 

 

 ……そんなに名残惜しそうな声を出されると、切りづらい。

 

 

「実は今な、買い出しにコンビニに向かってる途中なんだ。だから周りの客に迷惑だし一旦切りたいんだけど、もしアレだったら、十分後ぐらいに掛け直すぞ?」

 

『いや、いやいやいや!そんな……こっちは別に話す事もないし……ていうか、戒は今日色々あって!変な事に巻き込まれて疲れてるだろうし!』

 

「聖」

 

『……な、なに?』

 

「後で掛け直すからな。一旦切るぞ」

 

『……うん』

 

 

 電話を切り、店内に入る。

 

 今日の出来事が影響してるのか、前の聖に戻ったな。寧ろ大会で再会してからの聖の方が、おかしい状態だった。

 他人に配慮し、自分のしたい事を我慢する。それが俺の見慣れた本来の聖。俺に対しては昔から何も我慢してなかったけど……。

 自分の敗北も計算に入れた上で俺をバトモン部に入れようとしてた時なんか、見ない間に随分と強くなったな〜と思ってたんだけどな。それが裏目に出て俺の自主退学……その遠因になってしまったせいで、逆戻り。

 

 

「責任感じるわ……」

 

 

 菓子パンをカゴに放る。ホイップメロンパンだ。

 そもそもの話。聖はもちろん、ジジイだって俺をガチで退学させるつもりはなかったわけで。最終的に退学になったのは、紛れもない俺自身の意思決定の結果。ジジイとの対戦(バトル)に勝って、勝者の権利として自分から退学の話に乗り、押し通した。退学しない選択だってできたのにな。

 

 つまるところ、退学の話を出したジジイと乗った俺が悪いっていうか責任があるわけで、聖が気に病む事じゃない。そう言ってもイイ子ちゃんだから気にするんだけどな、アイツ。

 

 

『良い娘じゃない。大事にしなさいよ〜』

 

 

 チッ、着拒(ミュート)が切れたか。俺と聖はそんなんじゃないっての、分かったかグレイモール。

 ざわざわと悪魔共が騒ぎ始める。

 

『ホントか?』

『嘘は言っていない』

『コイツマジ?』

『そんな事言ってると、他所に盗られちゃうわよ〜』

 

 

 あーあー!うるさーい!そもそも俺のじゃねぇよ聖は!ったく、悪魔はこれだからいけない。当人の気持ちを考えてねぇわ。盗られるもクソもないんだわ。

 

 

『じゃあ好きじゃないのね?』

 

 

 大好きに決まってんだろ、ふざけんなよ。舐めてるとぶっ飛ばすぞテメー。産まれた頃からほぼずっと一緒の幼馴染みだぞ。好きにならない道理が…………いや待て、そういう意味じゃないぞ。これは恋愛とか抜きに、聖が好ましい人間であるという…………

 

 

『あ〜らあらあら』

『親愛と恋愛の情の区別はついているのか?』

『この様子だとついていないだろうな』

 

 

ふんっ!!*1

 

 ちゃちゃばっか入れてきやがって。俺はそういうのが一番嫌なんだよ、バーカ!

 …………俺が聖に向けている感情は、親愛だ。そのはず。ずっと傍にいて欲しいなんて思ってないし。俺が聖へそういった感情を向けているなら、接触が無かった期間中ずっと苦しかったハズだ。その人を想うと胸が苦しくなるのが恋だと聞くし、関係値は親友以上家族未満といった具合だろうか?

 うん、きっとそうだ。考えるのはもうやめよう。あんま良くない気がする。

 

 

「あ、やべ」

 

 

 視線の先には菓子パン類で山盛りとなったカゴ。考えるのに夢中過ぎて入れすぎてしまった。金額は優に3000円を超えるだろう。

 

 まぁいいか、買お。自分へのご褒美。

 

 

 

 

 

 

「あ、姐さん?こちら左小指です〜。こちら、例の少年を発見しました〜」

 

「あ、了解で〜す。左手、全員集合まで待機ですね〜。とりあえず尾行だけしときま〜す」

 

 

*1
着拒の音





バルバトスアダプト当たらないしチャンピオンズ面白いしで泣ける
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