そういえば、「悪魔族は贔屓しない。」を書き始めてから一年が経過しました。ひとえに皆様からのご愛顧、ご声援あっての継続です。心より感謝申し上げます。
亀更新と言って差し支えない投稿頻度ではありますが、これからも宜しくお願い致します。
聖と寝落ちもしもしをした翌朝。
スマホでマップを開きながら次なる行き先を見繕う。程々に栄えてる所がいいな、ホテル代も嵩張らない。旅費も稼がなきゃならんので、寂れてるとこだと困る。
「隣の県行くか」
ここら辺はプレイヤー狩りが彷徨いているし、1回派手にやらかしている以上見つかったら面倒だ。離れるのが得策。……寧ろ開き直ってプレイヤー狩り全員ぶちのめすのもアリか?流石になしだな。
しかし、よく眠れた。睡眠時間は寧ろ寝落ちもしもしの影響で減ったぐらいなんだが、こう……充足感が違う。身体の調子も良い。あれだけハードな一日を過ごした後だっていうのに、疲労感もない。
……聖に助け舟を出したつもりだったが、俺も助けられていたようだ。持ちつ持たれつ。
「ご利用ありがとうございました、またお越しくださいませ」
チェックアウトして、外に出る。あぁ言ってくれたフロントマンには悪いけど、多分もう来ないかな。理由は治安が悪いからです。
「お兄さ〜ん、ちょっといいですかぁー?」
「え?」
そう声を掛けられたのは、原付に跨って目的地の設定を行っていた時。びっくりしたなぁ、またカツアゲかと。思わず右手がデッキケースに伸びたぐらいに。
茶髪サイドテールの……子供?っぽい女性と、短い黒髪をオールバックにしている壮年の高身長男性。
誰だ、警察か?スーツに身を包んでいる警察ってもう刑事じゃんね。有り得なくはないか。騒ぎ起こしたばっかだからなぁ〜……と思っていると、男性の胸元にキラリと光る何かが目に入る。
「協会の者だ。抵抗せず、着いてきていただけるとありがたい」
「げっ」
思わず声に出た。黄金色に輝くバッジ。カードを包む手のひらが刻印されたそれは、協会専属プレイヤーの証。良く見てみると、男性の方のバッジは少し色褪せている。歴がそれなりに長いのだろう。
……何か協会に目ぇ付けられることしたかなぁ、したわ。悪魔族使ってる時点で、世間様からは「なんだコイツ……」みたいな目で見られる事を忘れてた。
発端は…………多分大会。入賞まで行ってしまったのが悪かったか。悪魔使いには生きにくい世の中だ。……なんか、俺の大会出場がキッカケで色々起こりすぎだな。諸悪の根源説ある
「ちょっと急いでまして。断る事ってできます?」
「推奨はしない」
「私達と
圧のある笑顔でそう言う女性。だが、顔が可愛い寄りなせいで全く怖くない。……私達、ねぇ。ここに居る二人だけとは言ってないな。協会お抱えのプレイヤーは十数名程と聞く。全員相手にするのは正直厳しいなぁ。
何、とっ捕まえられて何されるの俺……?やだー、こわーい。
なーんて、な。
「なんだ、簡単ですね」
「……はー?」
「ほう」
男性の方は意外そうな顔をし、女性の方は明らかにピキっている。経験の差が出てるなぁ。
協会お抱えのプレイヤー。使用デッキ、名前、戦績……その一切が謎に包まれており、開示されている情報はほぼ皆無。ただ、恐ろしく強いらしいが……この女性からは別にそんな雰囲気を感じない。
「どちらが先に戦います?それとも、お仲間を呼んでからにしますか?」
「勝つつもりなんですねー?そういうの、自信過剰っていうんですよー」
女性の方が腰のケースからデッキを取りだし、俺へと向けた。緩やかな口調とは裏腹に、こめかみには青筋が走っている。
……効きすぎじゃない?冷静に
「ミドル、冷静になれ。私がやろう」
「……了解」
ミドルと呼ばれた女性は渋々といった様子でデッキを下ろし、代わりにリーダーっぽい風格を漂わせる男性が前に出る。
ミドル……本名っぽくはないな。コードネームだろうか?特殊部隊の隊員みたいだ。……いや、間違ってないか。トップの手となり足となり動くんだから、特殊部隊そのものだ。
「私に勝った時、君は何を望む?」
「俺を放っておいて欲しい。難しい事じゃないでしょう?」
「私に勝つ方が難しいことだと思うがね?」
「どうでしょう、そう手間はかからないと思います」
「むはは」
「……行きましょう」
ミドルさんに促され、対戦スペースへ足を運ぶ。後ろをミドルさん、前を男性……面倒臭いな、おっさんと呼称するか。とにかく挟まれている。……しれっと俺の前後を挟んだな。逃亡阻止の動きがスムーズ過ぎて一瞬気付かなかった。
前を歩くおっさんを見ながらそんな事を思いつつ歩く。うーん……いやぁ、かなり強いなこの人。雰囲気からして、大体店長とどっこいかって感じ?流石に遊んでられないか。ミドルさん相手なら悪魔族で遊べそうだったんだけどな……
となると、考えるべきは使用するデッキ。悪魔族でギリギリの戦いを愉しむのも悪くはないが……負けたら強制連行だ。俺の旅、開始一日で終了は流石に嫌。
まぁ、「覇応」でいいか。対応できる幅が広いし、何より
……着いた。簡素で演出ホログラムが控えめな対戦スペースだ。
「さて、始めようか」
ケースからデッキを取り出し、ボードにセットするおっさん。鈍く光を反射する黒スリーブに入れられたデッキからは、なんとなく圧を感じる。強い(確信)
俺も「覇応」デッキを取り出してセット。これにて準備完了だ。
「「
「
「
今使ってるデッキ的に後攻の方が都合がいい。まぁ、相手のデッキによりけりではあるが。……先行を取りたがったってことは、アグロか?
「ターンスタート。ドロースキップ、リカバースキップ。メインシーン開始」
「前線基地、展開。「蠢く黒砦」を配置。配置時効果発動、フィールドに斥候蟻トークンを2体生成する」
「そして、手札から「
黒い何かが集まって砦の形を成しているものがフィールドに現れ、そこから2匹の蟻が飛び出してくる。続いて翅が4枚ある蝉が召喚され、喧しく鳴き始めた。
うっすらと覚えがある。このデッキは確か……
「デッキの上から5枚をオープン!その中の
ぐ、「軍虫」だぁ……。結構……その、言っちゃ悪いけどだりぃデッキ。使うの悪魔族の方が良かったかもしれん。
「オープンされたカードは「
早速エースモンスターが加わった。こりゃあ面倒だぞ……
「「蠢く黒砦」の常時発動効果。
「オープンされたのは「
複葉機の翼を持つトンボが、エルロンロールしながらフィールドに現れる。
早い早い早い、展開が早い。まさに虫が湧き出るが如くだ。フィールドには既に4体の「軍虫」モンスター。どう考えても第1ターンの速度じゃない。そして、「
「「
トンボの羽音(?)に共鳴し、フィールドの後方……おっさんの手札から下腹部が砲塔となっている大型の蜂が現れ、俺へと砲口を向けた。
「何もない。このまま受ける」
瞬間、砲撃。
俺へ少々のダメージを与えた砲ネットは、薄くなってそのまま消えていく。
「メイン終了、アタックスキップ。ターンエンドだ」
淡々と、やり慣れた作業のようだ。どうもなぁ〜……作業してます感の強い相手では気分が盛り上がらない。
……「軍虫」はゾロゾロと湧き出て来て壁となり、前線を維持する虫モンスター達と、「蠢動」によって手札から効果を発揮し、支援や攻撃を行う虫モンスター達に別れる。
この役割分担による合理的で効率的な……そう、まさに軍隊のような統率の取れた動きがかなり厄介。基本的に、相手モンスターを貫通してライフにダメージを与えられるテーマじゃないと話にならないのだ。
そして、「覇応」はそういうタイプのテーマではない。ぶっちゃけ、悪魔族デッキの方が楽だった説はある。サイターンで全部焼けるから。
嘆いててもしょうがない。頑張って擦り潰そう。
「ターンスタート。ドローシーン、リカバーシーン、メインシーン。「覇者」を召喚。このカードは自分の第1ターンの時にのみ、召喚条件を無視して召喚できる」
「ん!?」
「あれっ!?」
え……なんだこの空気?
蛮神の心臓が美味しすぎるイベントです。
巨怪戦は……ナオキです……