ただひとつ、静まることのない憤怒。
「
このカードは手札に加えられた時、直ちに追加召喚しなくてはならない
わあああああああああああああああああっ!!!!?
「ちくしょう、好きにしやがれ!手札から「
そう言いながら紅い炎を纏いながら輝き始めたカードを、やけくそでフィールドに出す。
「来たるは憤怒の炎!!世界を灼き尽くし、無人の大地にてひとり凱歌を唄うがいい!!「
「これは……!」
フィールドに現れた炎が徐々に人の形を成していく。輝く双眸が炎の奥に見えた時、炎が弾けてサイターンの全貌が明らかになる。
天を突く双角。6枚の翼。炎に包まれた漆黒の身体。髑髏の頭。空のはずの眼窩には、金色に輝く瞳が嵌められていた。
……強制召喚効果を持つこのカードは、ヴァールやアルガレスほどの使いやすさはないが、盤面をひっくり返す能力は抜きん出ている。ほーら、始まる。
『──────────ッ!!!』
怒りの絶叫。怨嗟の咆哮。それと同時に、召喚時効果が発揮される。
「……お互いに手札を全て破棄する。破棄されたカード1枚につき、サイターンのパワーに+200。それがコイツの召喚時効果だ」
「なんっ……!?」
キサラギの顔が凍りつく。俺の手札は6枚。キサラギの手札は3枚。合計9枚のそれら全てが発火し、破棄される。あーあ。良い手札だったのに。
サイターンの素のパワーはたった500。ミサイルカで破壊可能なラインだ。しかし、そのパワーに破棄した手札分のパワーが加算される。1枚につき+200で、破棄されたのが9枚。
つまり、加算されるパワーは1800。
合計2300だ。
「
『──────ッッ!!!!』
コウモリの翼を大きく広げると、身体の炎がより一層強く燃え始める。サイターンがギラリと眼を輝かせ、全周囲に熱波を放った。
その熱気が、周囲のプレイヤー達の目線を誘う。
「うおぉ…………なんだあれ!?」
「パワー2000越えのエースモンスター同士がやり合ってんのか!!」
「すっげぇ……悪魔族デッキであそこまでやれるのかよ……」
「おい、相手の女……『影喰い』のキサラギじゃねぇか!」
「最近躍進してる新人バトラーじゃん。ウケる〜」
ウケんな。俺もキサラギも苦しいんだよ今。
「くっ!?」
「攻撃時効果、サイターンのパワー以下のモンスター全てを破壊する。……悪いな、グレイモール」
圧倒的熱量で灼かれ炭化し、消えていくグレイモール。その手には親指が立てられていた。すまん。「
「……「
なるほど、「
「その「
「ううん、こっちは制限ない」
「了解した」
普通逆じゃねぇかな。全体付与の耐性にターン1制限つけろ。除去が面倒だ。
「……ふう。グレイモールが破壊されたので「
引いたカードは……あ、「
とか思っていると、サイターンが「
『──ッ!!』
咆哮と共に炎が強まり、周囲に光が満ちる。ジュゥッと灼かれる様な音が響き、「
だが、「
「アタックシーン終了、ターンエンドだ」
「むぅ……ターンスタート、ドローシーン……はぁっ!!」
気合いを入れてドローするな。逆転の一手を引こうとするな。……あ、ドローしたカードが若干光ってる。引かれたかね、これは。
「!……ふふ。メインシーン!わたしは「
現れるは小さな影の猫。……パワーは200。なんだ、なにをしてくるんだ?
「このままアタックシーンへ!「
なるほど、ドロー効果を持つモンスターか。何かを探してる事は一目瞭然。妨害したいが、サイターンが全部捨てやがったからな。全くもう……。墓地から回収できるタイプの悪魔スペルは落ちてないし。とことんツキが悪いな。
「ふふふ……!」
なにか良いカードでも引いたか。嫌な予感〜……
「ソニックスペル!手札から「
…………
えーっと、確か「
…………「
……サイターンはこのターンで破壊される。それはもういい。コイツが出る時はぶっ壊すか、ぶっ壊されるかの二択。……流石にパワーが2000以上あってぶっ壊されるのは初めてだけど。
飛びかかってきた影の猫を適当に蹴り飛ばすサイターン。これで破壊だが……
「ん!「
だよなー。……もうこの際、華々しく興行的に魅せながら散るか。その方がカッコイイだろ。
「次!「
「やれサイターン!!迎え撃てェ!!」
再び組み合う2体。パワーはお互いに2300……全くの互角だ。しかし、「
「効果で、フィールドの影絵モンスター……「
「
『ッ──』
もはや焼け石に水。憤怒の大悪魔が、大いなる奈落の闇に取り込まれていく。……ん?サイターンが念話でなんか言ってる。
『怒りの炎は、いつか潰える……』
喧しいわ。勝手に飛び出しておいてそんな事よく言えるなお前。はよやられんかい。……よし、消えた。
「おおお……すげぇ」
「闇を照らすは光。光を呑み込むのも闇か」
「大型モンスター同士の殴り合いは見応えあるな」
衆目からの感想も上々と。さて、「
「ふぅ。フィールドカード「
引いたカードは……
「おっ!?来たかっ!!」
「
「ふふ。なにか良いカード引いた?」
「まあな、何とかなりそうだ」
「わたしの「
自信満々だな。確かに、真正面から破壊しようとするのは厳しい。やるにしても、「
「ターンスタート、ドローシーン」
引いたカードは「
「リカバーシーン、メインシーン開始!召喚条件は墓地に悪魔スペルカードが3枚以上!墓地には「
「嵐と慈雨、豊穣を司るは在りし日の姿!零落せども、その叡智と武勇に翳りなし!来たれ、「
吹き荒れるは嵐。雨が降り頻る中で
「召喚時効果!墓地の悪魔スペルカードを全て手札に戻す!」
手札へ戻ってくる3枚の悪魔スペル。おかえり〜、ようやっと有効活用できるぜお前ら!期待してな!
「アタックシーン!ヴァール、行け!」
「本気?ヴァールのパワーは「
承知の上!
そう。ヴァールのパワーは1500。フィニッシャーとしてはかなり低い数値。だが、ヴァールはそれを補う効果を持っている。
「なにかスペルを使う気?」
「いいや、使わない」
「本気?」
「そっちも何もないなら、バトルを処理するぞ」
混沌の獣神へ稲妻を放つヴァールだが、伸ばされた闇はそれを尽く飲み干し、その先のヴァールを捉えた。身体中を貫かれて墜落するヴァールを見ながら、効果の宣言をする。
「ヴァールの破壊時効果。手札の悪魔スペルカードを1枚破棄することで、攻撃権がある状態でフィールドに残る。破棄するのは「
破棄されたカードの力がヴァールに宿り、地へ堕ちる前に身体を修復。そのまま空中で体勢を立て直し、またフィールドへ舞い戻った。
「……なるほど。それを繰り返して欲しいカードを探すつもり……」
「いいや?この一回で目当てのカードを引けなければ負けだ。引ける可能性は多少あるが、如何せん欲しいカードはデッキに1枚しか入れられない。どう転ぶか見物だと思わないか?」
そう。40枚のうち、10枚ちょい開いた。……ちょっと厳しいが、出てもおかしくない!
「……可能性?そんなの考える必要あるの?」
まあそうなるよな。お前達は、望むカードは大抵引ける。だから引く可能性とか、そんなものは考慮しない。信じるのは相棒たるデッキであり、確率ではないと。デッキを想えばデッキはそれに応えてくれると。
俺はそうじゃない。俺の悪魔達は不平等を嫌う。……
「必要さ、俺と悪魔達にはな。……続ける。「
加えられたカードは……
「よし、続ける。手札から「
「召喚時効果!このターンの間、相手モンスター1体のパワーを半分にする!!」
「無駄……!「
「
「……!!」
キサラギが息を呑む。
俺は、望んだカードを手にしていた。
「効果を処理!「
アンドラムアリウスの額がバックリと割れ、禍々しい瞳が獣神を睨みつけた。邪眼の視線により、「
「……そん、な……いや、まだ……まだ!4回の破壊耐性がある!破壊耐性を剥がした上で、もう一度破壊しなければ「
「ああ。だから俺は、何度でも攻撃する。行けヴァール!攻撃時効果で、手札から「
ヴァールから放たれる稲妻が、今度こそ獣神を焼く。これで1回目。パワーは1300になった。
「再びヴァールで攻撃!効果で手札から「
今度は嵐を起こし、獣神を粉々に切り裂いた。これで2回。パワーは1200へ。
「三度攻撃!効果で手札から「
次は槍で貫き、床に叩きつけた。これで3回。パワーは1100。
「……でも、これで貴方は
そう思うだろ?キサラギの言葉を遮って宣言する。
「墓地の「
これでライフ残量は3000。5回も「
「4回目の攻撃だ!効果で「
ヴァールが棍棒で殴り付け、獣神を沈黙させる。これで全ての耐性を剥がした。再び墓地で「
「500減らし、墓地から手札へ戻す!ヴァール、攻撃!効果で「
ライフは残り2500。ヴァールの両手が輝き、光の奔流を放った。かつて神であった頃の権能の一つだろうか。それは「
これが、「
「…………ん。
両手を上げ、んべ。と舌を出しながらキサラギは言った。
「しょ、勝負あり!勝者、赤コーナーあくまつかい選手!!見事三回戦進出です!」
審判が俺の勝利を宣言する。その瞬間、観戦してた人々から拍手が起こり、ヤジが幾つも飛ばされる。
「やるじゃねぇか悪魔使い!」
「ほんとに悪魔使いなのか!?劇的なドロー過ぎるだろ!!」
「キサラギちゃんも、よくやったぞー!!」
ふぅ〜〜〜……。…………し、辛勝。影絵デッキの恐ろしさを、これ以上ないほど叩き込まれた戦いだった。なんかサイターンもサイターンで、相手の手札を削るという仕事を果たしたし、無駄ではなかった……かも。捨てた手札、キサラギ3枚で俺6枚だったけどな。
ただ、あれのおかげでヴァールを出せる下地が出来たから、本当に無駄ではなかったな。感謝。
「……またやろう。次は負けない」
そう言いながら手を伸ばし、握手を求めてくるキサラギ。それに応じて握手し、正直な気持ちを口にした。
「俺はもう……しばらく君と相手したくないけどな」
「ふふ……ばいばーい。また会おうね」
そんな俺をクスクスと笑い、手を振りながら背を向けて去っていった。
……これで二回戦目ってマジ?激戦すぎて俺もうヘロヘロだよ……
ひとつ望むがいい。其方の魂を対価に、それを叶えよう