湖の乙女が持つ、幾つかの宝剣。そのうちの一振り。消して壊れず朽ち果てない。湖面が如き清廉の剣。
「手札からソニックスペル、「騎士の宣誓・撃滅」を発動!攻撃中の騎士モンスター1体を指定!そのパワー以下の相手モンスターを1体破壊し、破壊時効果を発動させない!私は「穢れなき騎士」を指定!よってパワー1500以下のフェルネクスを破壊!」
「何もないです。「
「させない!
「その効果に
「くっ……!」
以前と変わらない悪魔デッキ。ホッと心安らぐ反面、背筋が冷える。真正面からのパワー比べで負ける気はしないけれど、「
「効果を処理する。フローラウスが「騎士の宣誓・封殺」を無効にして追加召喚。「騎士の宣誓・封殺」が無効にされたのでアルガレスも召喚。まずアルガレスから召喚時効果を処理。直前に破壊されたモンスター、すなわちフェルネクスを追加召喚し、パワーを+100。続いてフローラウスの召喚時効果で、手札を1枚破棄。そして墓地の「
「……いや、ないよ」
「では手札の「
「ないかな。相変わらずのライフバーンだね」
「変えられるもんでもないさ。では、フローラウスのパワー500分のダメージを受けて貰う」
地面から大門がせり出してくる。その門には目玉や口、牙といった見るもおぞましい装飾が施されていた。突然ソレが開いたかと思うと、夥しい数の手がフローラウスを掴み取って内側へ引きずり込む。
その直後、門の内側である暗闇の中から肉塊が放たれ、私のライフを削った。絵面が酷い。
……全滅させたはずの盤面が復活する。盾役として優秀なフェルネクスがフィールドに再召喚され、パワーが高めなアルガレスもいる。エースストッパーのグレイモールも手札に戻っている。これではアーサーも召喚しにくい。パワーが1400以下の「湖の騎士」がいる限り、向こうもおいそれと召喚できないとは思うけれど……
「「穢れなき騎士」の攻撃はフェルネクスで
「ないかな」
「ではフェルネクスは破壊されるが、破壊時効果によりパワーを-200してフィールドに残る。「
大盾を持った白銀の騎士が炎を纏った鳥のような悪魔を押し潰すも、悪魔は炎の中から復活する。一回り身体が小さくなっているけれど。
……私のフィールドには攻撃済みの「穢れなき騎士」と「湖の騎士」。そして攻撃権を持つ騎士トークンが2体。トークンじゃどうやっても突破出来ないし、次だね。
「ターンエンド」
「ターンスタート、ドローシーン……」
淡々と続ける戒。前戦った時はもっと楽しそうだった。キサラギちゃんと戦ってた時はあんなに感情をむき出しにしていたのに。
欲を言えばバトモン部に入って欲しい。バイトもやめて欲しい。
あなたは私よりずっと強いのに、ショップのバイトで埋もれてていい訳ない。理不尽な目に遭ったあなたには、その分の栄光が約束されるべき。
だから。
あなたを必ず入部させる。
あなたを連れて全国大会に、世界大会へ行く。
その為にも、全力の私を倒してもらう。この会場に来ている部の皆に彼の強さを思い知らせる。
「メインシーン。手札からスペルカード、「
「何もないよ、効果処理どうぞ」
「了解。こちらもないので、デッキを5枚破棄する」
バラバラとデッキが墓地へ置かれていく。内容はシグオム、アルスモディオス、
「条件は墓地に悪魔族モンスターが5体以上。クリア。「
「こちらは何もないよ」
「了解。このまま破棄する」
デッキからカードが墓地へ置かれる。内容はレアヴィータとキルマリス。悪魔族モンスターが2枚ということは……
「破棄された悪魔族カード1枚につき、相手モンスターに悪魔族を付与。そして付与した数だけフィールドに悪魔カウンターを置く。付与対象は「湖の騎士」と騎士トークン。何かあれば」
「ないね」
「では効果処理だ。指定した2体に悪魔族が付与され、悪魔カウンターが2個置かれる」
人狼の姿をしているヴァルバストが遠吠えをあげ、銃を撃ち放つ。乱雑に放たれたように見えるそれは、寸分の狂いなく私のモンスター達へ命中し、取って付けたような悪魔の尻尾と羽が生えた。見慣れているけれど、久しい悪魔化だ。
「ヴァルバストを出したって事は、あるんでしょ?「浄化の光」」
「流石、お見通しだな。手札から「浄化の光」を使用。お互いのフィールドにいる悪魔族モンスターを1体ずつ破壊する。対象はフェルネクスと「湖の騎士」を指定」
「何もないよ」
「では破壊だ。フェルネクスはパワーを-200してフィールドに残り、「
空から降り注ぐ極光が「湖の騎士」とフェルネクスに直撃する。両者は灰となって消えるが、フェルネクスだけが灰の中から火の粉と共に復活した。
これが厄介。破壊されてもフィールドに残るフェルネクスと、悪魔族モンスターの破壊時にライフを減らしてドローできる「
「続いて「
「うーん……」
手札ブーストのおかげで、妨害カードも握ってはいる。相手の発動したスペルに
「
「俺は
「いや、これ以上はないかな」
「なら「
現状、戒のモンスターでは私の「穢れなき騎士」を突破できない。最もパワーの高い「
ただ、「
警戒すべきは、貯まっている悪魔カウンター。シルファード召喚の準備が着々と進められている。……もう手札にいるのかな。
兎にも角にも。戒は「
「ターンスタート、ドローシーン」
きた。
「リカバーシーン、メイン!手札から「
「ない」
「手札から「
「
破棄されたカードが青く燃えたかと思えばコインへと姿を変え、「
懐かしい演出だね、相変わらずなっがいんだから。
「うん、「
流石にこれは通らないか。一番手っ取り早い策だったんだけど……次だね。
「続いて手札からフィールドカード、「騎士集う円卓」を配置。配置時効果で手札の騎士モンスターを追加召喚する」
「ない」
だろうね。「
「召喚するのは「悲しみの騎士」。召喚時効果を発動、デッキから「金の想い人」と「白の妻」を1枚ずつ手札に加えて、どちらか片方を追加召喚する。召喚するのは「金の想い人」」
「ない」
場に銀の弓を持つ甲冑騎士が現れ、その傍に美しい金髪の女性が立つ。2人は仲睦まじい様子で挨拶を交わし、それぞれの得物を構えた。……マズイ、手札の「白の妻」から暗黒オーラが。手早く行こう。
「「悲しみの騎士」の効果により、「金の想い人」は騎士モンスターとしても扱う。これで私のフィールドには「穢れなき騎士」、「悲しみの騎士」、騎士モンスターとして扱われる「金の想い人」に、騎士トークンが2体。合計5体の騎士モンスターが揃った!」
「来るか」
「召喚条件は自分の手札が12枚以上か、もしくはフィールドに騎士モンスターが5体以上!」
輝き始めたカードを掲げて宣言する。
「聖剣の騎士!剣の王!過去の王にして未来の王!いずれ復活し、再び世を救う輝きの英雄!来たれ、「王の騎士 アーサー」!聖剣振るい、我が敵を撃滅せよ!!」
フィールドが光で満ちる。その中から、マントを翻して歩く人影があった。彼こそ最強の騎士。無双の剣王。
白銀の美しい鎧と、黄金の冠。炎のように赤いマントを羽織るその姿は、他の騎士モンスターとは一線を画す存在感と威圧感を放っていた。
「手札の「
辺りに満ちていた光がアーサーの右手へ集まっていく。それは徐々に剣の形を成していく。それこそが「
「アーサーのパワーは2000、「
「ふっ、バケモノが。手札の「
微笑を浮かべながらそう言う戒。その顔に焦りや諦めの色はない。紋章の中からグレイモールが現れ、騎士たちの前に立ちはだかった。その顔は蠱惑的で、攻撃を誘っているように見える。
「ふふ、これで終わらないでね。メイン終了、アタックシーン!アーサーで攻撃!」
光の剣を構えてアーサーが突貫する。その時、聖剣がより強く輝いた。
「アーサーが
「ない」
「次にアーサー自身の攻撃時効果を発動、フィールドにいる騎士モンスターの攻撃時効果をふたつまで選んで使える。「穢れなき騎士」と「金の想い人」を順に発動させるよ」
「ない」
「「穢れなき騎士」の攻撃時効果、2枚ドローし、墓地の騎士カードを2枚デッキ下へ戻す」
「ない」
戻したのは「硬い手の騎士」と「美しい手の騎士」。
「次に「金の想い人」の攻撃時効果。普段はデッキから1枚ドローするだけの効果だけど、フィールドに「悲しみの騎士」がいる時は3枚ドローになるよ」
「ない」
「じゃあドローするね。アーサーのもうひとつの攻撃時効果は使わないよ」
これで私の手札は9枚。
「ソニックスペル、「騎士の宣誓・撃滅」を発動!攻撃中のアーサーを指定し、そのパワー以下のグレイモールを破壊!破壊時効果は発揮させない!」
「ん、…………ない」
迷った。つまり
両方持ってるのかな。それなら魔封に
「それじゃあグレイモールは破壊だね」
アーサーが聖剣を振るい、グレイモールを斬り捨てる。本来なら即座に傷を再生させて立ち上がる女悪魔は、傷口からサラサラと灰になって消えていった。
「では「
「
「フェルネクスで
「こちらは何もないよ」
「ない。「
続いて炎を纏う不死の悪魔が両断された。既に再生する力を使い果たしていた悪魔は、身に纏う炎と共に消えていく。
「攻撃終了。「
「ない」
再び突撃するアーサー。「
「アーサーの効果で再び「穢れなき騎士」と「金の想い人」の攻撃時効果を発動するよ。さっきと同じ順で」
「ない」
素っ気なく、こちらを見ることなくそう言う彼。フィールドと自分の手札に視線が釘付け。少しムカついた。
「…………もう少し楽しんでくれてもいいんじゃない?」
「何度相手したと思ってんだよ、悩む余地はあるが楽しむ余地はない」
「もう……デッキから2枚ドロー、墓地の騎士モンスターを2枚デッキ下へ。戻すのは「不義の騎士」と「隻腕の騎士」」
減らず口も相変わらず。全くもう、ギッタンギタンにしてやるんだから。負けて欲しくはないけど……
「今ので7枚目だな」
「えっ」
「確認だ。効果でドローした枚数は今ので7枚目だな」
「……そうだね」
……マズイ、
「手札から「
汚物と蝿の王。腐敗と不作を齎す羽音の主。奈落の如き暴食の
湖の乙女が誇る最高の剣。光の概念そのものであり、闇夜を照らす希望の聖剣。