悪魔族は贔屓しない。   作:倭猛らない

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その欲に天井はなく、また底もない。
であるのなら、全てを求めよ。全てを欲せ。
我らには、それが許されている。

七大罪科(デビルズシン) 強欲のマルモーン


(ソウル)カードじゃねぇか!!

 

 俺はその後も順調に勝ち進んだ。(ひじり)を倒した勢いをそのままに、破竹の快進撃。

 

 が、「聖女」使いのアイツとぶち当たって準々決勝で敗退した。手札で発動する効果と破壊時効果を縛られちゃあ……かなりキツい。ヴァール着地からの連続攻撃までは漕ぎ着けたんだけどなぁ……。何なのアイツ、「浄化の光」3枚(フル)投入って。悪魔族に親でも殺されたか?

 

 ……うーん、ブイエール抜こうかな。防御担当はフェルネクスとグレイモールで割りと間に合ってんだよな。基本的に「序列(デーモンズ)」はみんな割りと高めのパワー数値だから、最初のうちはそうそうパワー負けしないし。召喚条件緩めの「序列(デーモンズ)」でも探しとこう。

 

 大会の出場結果としては、参加賞の汎用カード「簡易召喚(インスタントサモン)」と、上位入賞ということで5万ポイント貰った。これで汎用カード買うのもアリか。聖の使ってた「贖罪の山羊(スケープゴート)」とか良さげ。対象をフェルネクスに移し替えて〜とか、色々使い道がありそうだ。どれどれ幾らぐらいかな……

 

10万!?

 

 ぼったくり乙、自引きします。ペッ!!……これで引けた試しがないけど。

 

 ちなみに優勝した奴は「無限竜(ウロボロス)」使いだった。凄まじく強かった。引きもプレイングも。デッキと一心同体っていうか……まさに圧倒的だった。対戦相手の「聖女」使いもかなり食い下がってたが……数歩、及ばなかったな。

 

 一体どれだけの経験を積めばあの領域に到れるのか。想像もつかない。それこそ、無限にも及ぶ対戦経験でもなければ説明できない気がする。……まぁ、それはいいや。

 

 今回はだいぶ有力なプレイヤーが揃ってた。キサラギ、聖、「無限釣果」デッキのおっさん、「無礼-MEN'S」デッキのギタリスト、聖女のアイツに、優勝した「無限竜(ウロボロス)」使い。まさに粒揃いといったところだ。賞金目当ての身としては困る困る。ま、500万バトルポイントと最新対戦スペースの優待券とかみんな欲しいしな。仕方ない。

 

『貴様。我等七大罪科(デビルズシン)の力を借りておきながらこの体たらくとは……』

 

 うるさい。念話(テレパシー)着拒。

 

『貴様ァ……』

 

 本気でやって負けたんだから仕方ない。悔いもない。相手がどれだけ俺を、悪魔族デッキを対策(メタ)ってたとしてもな。寧ろその対策(メタ)をぶち破る為に悪魔スペルがあるわけで。

 

 ただお小言だけは聞きたくない気分です。帰って学校の準備して寝よ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜景を一望できる、高級レストランの個室内。一人の女性がワインを嗜みながら、側に立つ秘書らしき女性から端末を受け取り、報告を受ける。

 

「こちらが今回の上位入賞者プロフィールです」

 

「……まぁ、順当に上位ランカーが入賞するわよね。……無限竜(ウロボロス)の稼働も順調と。数人無名が混じってるけど……貴女が個人的に気になったプレイヤーは居る?」

 

「そうですね……聖女使いに準々決勝で敗れた悪魔族使いでしょうか。登録名はあくまつかい。本名まんまですね」

 

 その言葉を聞いた女性は訝しげに眉を吊り上げた。

 

「悪魔族使い?変な奴も居たものね……戦績は?」

 

「一回戦で「筋肉蛮族(マッスラー)」、二回戦で「影喰い」、三回戦で聖城学園の浅草 (ひじり)、四回戦で「糸鳴り」、五回戦で「電音奏者(エレキクラッパー)」……いずれも高名なプレイヤーに勝利しています」

 

「…………。悪魔族デッキで?……信じ難いわね、プレイ映像を見せなさい」

 

「こちらです」

 

 グラスに残ったワインを一息で飲み干してから、秘書に端末を操作させてプレイ映像を閲覧し始める女性。その視線は徐々に、戒の使うカードに釘付けになっていく。

 

 

『手札から七大罪科(デビルズシン) 憤怒のサイターン」の効果を発動』

 

『手札から七大罪科(デビルズシン) 強欲のマルモーン」の効果を発動』

 

『「悪魔の遊戯場(ヘルズパーク)」の効果、ライフを300減らして1枚ドロー』

 

『手札から七大罪科(デビルズシン) 暴食のヴェールゼバルブ」の効果を発動』

 

 

「……本当に悪魔族デッキなのね。しっかり勝ってるし……」

 

 

『手札から七大罪科(デビルズシン) 嫉妬のレアヴィータ」の効果を発動』

 

『その効果に反撃(カウンター)。手札から「悪魔の契約(デーモンズコントラクト)」の効果を発動』

 

『破壊された「序列三十七位(デーモンズサーティーセブン) フェルネクス」の効果。パワーを-200してフィールドに残る』

 

『手札の七大罪科(デビルズシン) 色欲のアルスモディオス」の効果を発動』

 

「「序列一位(デーモンズワン) ヴァール」で攻撃。効果で手札の「悪魔の烙印(デビルズブランド)」を破棄して追加攻撃権を得る」

 

 

「待って。このカード……いや、コイツの持ってる悪魔族カード全てが!?」

 

 閲覧中、女性が何かに気付いて声を上げた。信じられないものを見たかのように。動画を停止し、食い入るように戒の持つカードを見つめている。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「どうかなさいましたかじゃないわよ!コイツの情報を全部洗い出して!」

 

「承知しました」

 

「あと、この大会でコイツのデッキを確認したスタッフと審判!ソイツらクビ!」

 

「気でも触れましたか?」

 

 いつもの気品ある女性の姿を知っている秘書は思わずそんなことを言う。失礼極まる発言だが、女性からしたら慣れっこなので瞬時に言い返す。

 

「巧妙にカムフラージュされているとはいえ、(ソウル)カードを見落とす節穴なんて要らないわよ!!」

 

「あー。なるほど。良く見抜けましたね?」

 

「舐めないで。私これでも元はトップランカーよ」

 

「そうでした」

 

 てへっと舌を出す秘書に溜息を吐いて、女性は指示を出しながら端末を返す。

 

「この映像も解析に回して、よ〜く調べさせて。多分コイツのカード、みんな金枠よ」

 

「すっご……じゃなくて、承知しました。手配します」

 

 端末を返してもらってパタパタと慌ただしく個室を出る秘書を尻目に、ワインボトルを引っ掴んでラッパ飲みする女性。気品もへったくれもない姿である。

 

 ドンッとボトルを置き、溜息を着く。

 

原初(オリジン)カード以外に存在しないとされる金枠の(ソウル)カード。それでデッキを構築しているなんてね。デッキに入れているカードが後天的に金枠の(ソウル)カードになったのか、それとも原初(オリジン)カードでデッキを組んでいるのか……」

 

「どちらにせよ、普通じゃない。さっさと研究所にぶち込んでやるわ。待ってなさい、悪末(あくまつ) (かい)

 

「随分とまあ、名は体をあらわすというけれど。ピッタリな名前ね。…………失礼、水を1杯頂けるかしら?」

 

 ボトルイッキはやりすぎたかも……と思いながら日本バトルモンスターズ協会会長、霧峰(きりみね) 愛理(あいり)は今後の展望に思いを馳せるのだった。ぐわんぐわんし始めた頭を抱えて。

 

 

 





(ソウル)カード……モンスターの魂が宿る特殊なカード。

原初(オリジン)カード……世界に発生(ポップ)した、世にふたつとない唯一(オンリーワン)のカード。世に流通するカードはこれを複製(コピー)したもの。

金枠……(ソウル)カードのパワーを示す最高位の色。一つ下に銀枠、その下に銅枠がある。銅枠カードはある程度バトモンを経験したプレイヤーなら皆持っており、高名なランカー達の殆どは銀枠カードを使っている。金枠は原初(オリジン)カードにしか確認されていない。
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