9-nine-if なついろ、すずのね、きみのおと 作:かまた
〜〜4/20〜〜
私が教室につき授業が始まってもやはり美波の席は空いたままだった、いつも見せる彼女の笑顔それが完全にもぬけの殻になっていてそれを見ただけで、胸がぎゅっと締めつけられる。
涼(……やっぱり、夢なんかじゃなかった)
昨日のあの光景。
ベンチに座った、まるで人形のような“石像”。
あれが、美波だったことは――もう、否定できない。
涼(……ニュース、出てた)
今朝、いつものようにスマホをいじっていたら、目に飛び込んできたネット記事。
“市内の公園で不審な石化遺体”
“被害者は女子高生”
“事件性の有無を含め、警察が調査中”
そのような情報が流れてきていた、彼女の顔を思い出す
石像になっても、あんなにも苦しそうだったのに。
世の中は、いつもどおりに動いている。
教室も、何も変わらず授業が進んでいた。
涼(犯人、探さなきゃ。でも……どうすれば?)
犯人も私と同じ様にアーティファクトを拾ったという事だ、
でもそんな人をどう探せばいいの…
そんな事を思考しながら私は、ただひとり、日常の外側に置いていかれたみたいな気分に陥っていた
そして1日の授業が終わり、モヤモヤが残っていたので公園に向かう事にした。
〜〜公園〜〜
夕方の光が、公園の木々を長く引き伸ばしている。
昨日と同じ風景。だけど――決定的に、何かが違っていた。
ベンチの上に、“それ”はもうなかった。
涼(……やっぱり、なくなってる)
昨日は、そこに座っていた。
まるで時間が止まったように、何も語らず、何も動かず。
それでも、美波は“いた”。
涼「……回収されたんだ、警察に」
当然だ。
あんな異常なものが、いつまでも公園に放置されているわけがない。
私が帰ろうとした時、背後から足音が聞こえた
静かな足取り。でも、確かに私のほうに向かってきている。
声をかけられる前に、私はそっと振り返った。
そこにいたのは――
涼(……結城、さん?)
私と同じクラスの結城希亜さんがそこには居た
涼「……結城さん?」
希亜「やっぱり、あなただったのね。黒井涼さん」
希亜はまっすぐ私を見て、言った。
涼「……なんでここに? 何か用……?」
希亜「いいえ、貴方に用は無いの」
そう言って彼女はベンチに目を向けた
希亜「“石化遺体”はやはり撤去されてるのね…」
そう言って、ベンチを見つめる彼女の表情はどこか鋭く、けれど感情を表に出すことはなかった。
涼(まるで、全部分かってるみたい……)
希亜「……昨日、あなたはここにいたのよね」
涼「っ……」
否定はしなかった。できなかった。
それだけで、彼女は十分だと言わんばかりにうなずいた。
希亜「言いたくないことなら、無理に話さなくていい。ただ……ひとつだけ、聞かせて」
涼「……なに?」
希亜「最近、何か“落とし物”を拾わなかった?」
涼「!」
その問いに、心臓が跳ねる。
あのイヤリングのことが、頭に浮かんだ。
涼「……どうして、それを」
希亜「直感。……それだけよ」
涼「……もしかして、結城さんも?」
希亜は少しだけ目を伏せ、何かを隠すように言った。
希亜「……答えは、また今度。ここじゃ、目立つから」
それは、涼が望んだ答えではなかったけれど、
何かを“知っている人間”の言葉であることは間違いなかった。
希亜「また、学校で」
そう言って、結城さんは静かに踵を返す。
去っていく彼女の背中を見ながら、私は確信していた。
――彼女も、きっと“ユーザー”なんだ。
次の日。私は少し寝不足のまま、学校に向かった。
眠い目をこすりながら下駄箱を開けると――
ふわりと、何かが落ちてきた。
一枚の小さな紙。
涼「……手紙?」
開いてみると、そこにはたった一言、こう書かれていた。
『放課後 教室で』
誰からのものか、名前もない。けれど、字は綺麗で整っていて、どこか無機質な印象を受けた。
そして私はすぐに、その筆跡に心当たりがあった。
涼(……結城さん、だよね)
涼(結城さんは、私と違って……きっと何かを知ってる。だったら、このモヤモヤを少しでも晴らすために、話すしかない)
〜〜放課後〜〜
私は他のクラスメイトが帰っていくのを待ち、教室に残った。
時間が過ぎ、やがて教室には私と結城さんだけになった
希亜「ちゃんと残ってくれたのね」
涼「うん…私も聞きたいことがあったから」
希亜「そう…」
涼「とりあえず結城さんに聞きたいんだけど石化の能力者ユーザーじゃないよね?」
希亜「ええ、貴方も違うのでしょ?」
涼「うん、違うけど…なんでわかったの?」
希亜「貴方、昨日あの場に居た顔が昔の私に似ていたから…」
涼「そうなんだ…」
詳しいことは分からない。けれどその一言だけで、彼女にも“何か”あったんだと伝わってくる。
涼「結城さん……犯人見つけるまで協力してくれないかな? 私ひとりじゃ、どうすればいいか分からなくて」
希亜はほんの少し、目を伏せた。
そして、やがて静かにうなずいた。
結城「別に、いいけれど」
涼「ほんと? ありがとう……!」
結城「でもその前に、あなたの《聖遺物》の能力を教えてくれる?」
涼「……? 聖遺物?」
結城「あなたが拾ったアクセサリーのことよ」
ああ、なるほど。
彼女は“アーティファクト”とは呼ばないんだ――そう気づく。
涼「あー……うん。私のは、範囲内の物理法則を変更できる、みたい」
結城「なるほど……。あなたは“法則なき庭(アンコード・ガーデン)”の契約者なのね」
涼「……へ?」
なんか突然、聞いたこともないワードが飛び出してきて、私は思わずフリーズした。
涼「え……?」
結城「強力な《聖遺物》ね。でも――私の《ジ・オーダー》には勝てない」
涼「……」
(アンコード…ガーデン…?)
(ジ……オーダー……?)
一瞬だけ言葉に詰まったのを、どうにか表に出さずにこらえる。
(……なんか名前のクセがすごい)
そう思ったけれど、口には出さなかった。
真剣な顔で語る結城さんの雰囲気が、どこか浮世離れしていて。
それがまた彼女の“本気”を感じさせたからこそ、茶化すようなことは言えなかった。
涼「そうなんだ…じゃあまたお互いに情報が手に入ったら連絡する為に連絡先交換しよ?」
希亜「ええ」
そうして私に協力者?が見つかった