学生転生〜兄と一緒に本気出す〜   作:腐ってもタイ

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今回はオリジナル設定がバンバン出てきます。
世界観を壊すようなものじゃないし、ただただ"ありそうな過去"を並べただけなので大丈夫です。


間話   無意味な英雄

~シャンドル視点~

 

目の前をまぶしい光が包み込んできた。

その光はエド君の方に向かう私を背後から包みこむ。

 

途端に体の感覚がなくなった。

徐々に体が浮いてくる感覚に襲われてくる。

前回書き忘れていましたが、次回からは新章です。

そろそろ本筋に合流するんで楽しみにしといてください

しかし、走ろうとするのをやめない。

 

これではパウロさんやゼニスさんに合わせる顔がない。

今頃矜持とか誇りとかそんなことを思っているわけではない。

ここでエド君を死なせてしまっては護衛として任された身として情けなく感じる。

自分でも矛盾してることは分かっている。

 

そんなことを思っている私の心とは裏腹に、体はどこかへ動いている。

この感覚は正直身に覚えがある。

幼い頃、母に連れられ何回か体験したことがある。

 

おそらくこれは「転移」だ。

この体が浮く感覚。

何もない空間を動く感覚。

 

英雄となってからは自らの足で動いていたため感じていなかったから、久しぶりというべきか。

 

もしこれが予想通り「転移」ならば私はエド君や他の方々と同じ場所に行くと思うのだが...

 

人生っていうのはそう上手くはいかないことだ。

自分が正義と思ってやっていたことも他人から見れば悪なことはよくある。

完璧な正解など存在しない。

これがもし座学であれば存在していたのだろうが皮肉なことにこれは感情の話だ。

まぁ、私はかの魔王の血筋を引いてるから座学などできたものではないのだがね。

 

そんなことより、いつになったら到着するのだろうか。

私が以前、体験した時は数秒くらいでついたと思うのだが...

1番長かったのは父に連れられ、かの甲龍王ペルギウス・ドーラのところに行った時くらいだろうか。

彼は転移魔術の第一人者のようなものだろうしな。

彼は私を魔族の血を引くものとしては扱わなかったし、むしろ大歓迎していた。

私がラプラス伝説のことを詳しく聞きたいというと、親身になって話してくれたし、食べたいものがあるというと配下のアルマンフィ殿に取りに行かせたり。

あれもかれこれ300年以上前のことになるか。

しばらくして父が死に、母と甲龍王は仲が非常に悪かった為、行かせてくれることは無くなったし、あちら側から声をかけてくれることも無くなった。

そう考えると、もし今回の事案がなければ、またあのお方とこれまでの話について話し合いたいことだ。

転移魔術の第一人者ってことは今回の事件も解明してくれるかもしれない。

これが転移だと確定したわけではないが、彼なら何か分かることがあるかもしれない。分かったからと言ってなんだという話にはなるが、そこは別にどうでもいいだろう。急に起きた事件にはロマンってものがあるから理由なんかなくても別に大丈夫だろう。

 

そう考えていると、段々自分の体が地面に向かっていくのを感じた。

そんな高く飛んだつもりはないのだがね。

地面に近づくにつれその情景が見えてきた

枯れた地面。わらわらといる魔物達。そびえ立つ城。

あぁ。懐かしいな。

最後にここにきたのは何十年前だっただろうか。

英雄としての名を捨てた後に一回来たはずだ。

あの時、私が母にそのことを伝えても彼女は怒りはしなかった。

そうかと一言いい、一緒に私の名前も考えてくれた。

母はそういうことには不器用なのだが、あの時だけは器用に動いていたと思う。

 

地面が急接近してくる。

体の操作が自分に戻ってくる。

私は咄嗟に受け身を取り、地面へと降り立った。

別に受け身なんか取らなくてもそんなに痛くはないのだが、その痛みの積み重ねが敗北に近づくかもしれない。

私が純粋な不死魔族だったのなら痛みすら感じなかったのだろうが、そんなことは今考えてもしょうがない。

自分の生まれを後悔はしない。

私の生まれた環境は毎日が楽しかったし、自由であったからな。

ただ、座学のみが足りていなかったがな。はっはっは!

 

周りを見渡しても一緒にいた人たちはいない。

周りにいるのは魔物だけだ。

となると私が使った転移魔方陣とはまた違う仕組みなのか。

いまごろそんなことを考えても仕方ない。

私は魔術の面にはあまり詳しくないからな。

それにしても本当に懐かしい。

不死魔族というのはその性質上あまりそういうことを感じないのだが私は人族の血が半分入っているからかな。

魔大陸 ガスロー地方

そこは過酷である魔大陸の中でも最も過酷な土地の一つである。

そこには北神流の本山があり、行ったものは帰ってこないという話もある。

大抵は着く前に死ぬか逃げるのだが、着いたとしてもまぁ帰ることはできない。

理由は...説明しなくても分かるだろう。

私はその真実を知っているし、それに辿り着いた人物を何回か見たことがある。

まぁ可哀想なものだったよ。

2択のどちらを選んでも結局同じ結論に辿り着くのだからな。

たしか....こんな伝承だったか。

『力を望むものよ、旅をせよ。

 力を望むものよ、魔大陸を目指すのだ。

 魔大陸を踏破せよ、ネクロス要塞に到達せよ。

 魔大陸を踏破せよ、不死魔王アトーフェラトーフェに謁見せよ。

 かの魔王に力を示し、さらなる力を渇望せよ。

 そなたは類を見ぬ圧倒的な力を手に入れるであろう』

真実を知っている身からすると罠でしかないと分かる。

魔王という身からやはり手下は多い方がいいからというのが親衛隊の1人の見解だ。

正直なところ、20年近くいた私でもよく分かっていない。

母に聞いても、ハッハッハ!と一度笑われ、その後擬音まみれの話をさせられるだけだからな。

その後、近くにいた親衛隊からも要約した話があったが、当時の私は座学を一切受けていない英雄になりたくて仕方がなかった少年だったから理解できるはずもなく。ただ理解したふりをしていただけだった。

 

さて、こんな長い間考え込んでいる間に、周りは魔物でいっぱいになってしまっていた。

いや〜不死魔族である私がこんなになに考え込んでしまうなんてね。

明日は豪雷積乱雲でも降るのではないのだろうか。

いや、今日降ろうとしていたか、ハッハッハ。

あまりそんな不謹慎な話はしたくないし、私も見たいと言った内の1人だったからあまりそんなことを言えないのだが。

 

魔物が一斉にこちらに襲いかかってくる。

しかし私は鉄の棒一本でそれをいなす。

私を誰だと思っているのだろうか。

少なくとも10年はここで狩をしていた男である。

対処法くらいは知っている。

 

小一時間後、私は大きな城壁の前にいた。

世間では要塞と言われているが外見からはそうはみえない。

魔王の息子が育つにしても英雄になりたいと思うような場所である。

実際、英雄だったかと言われると自分としてはそうとは思わないが。

それにしても魔王の息子が英雄か、文だけ見るとかっこいいシチュエーションが思いつくのだが、魔王は母親だし、父親は英雄だしでそんなことが起こるとは考えにくい。

実際、そんなことがおきないように動き回ってきたし、母の方もそうとはしなかった。

彼女の私に向ける視線は明らかに母親のものであった。

武器や外見は物騒であるが幼少期の私を心配してくれるような優しい母親であった。

父が殺されたときは激怒していたが私がその仇を取ったと言ったら喜んでくれたし。

 

私が城壁の前で突っ立っていると兵士が大きな声で言ってきた。

 

『英雄よ! よくぞネクロス要塞へと到達した!』

 

あぁ。懐かしいな。

私も昔はああいう感じの兵士の真似をしたものだ。

 

『ここにたどりつくとは、その心意気や良し!』

『貴様が求めるものは勇者の名誉か? それとも魔王の力か!?』

『どちらにしても構いはしない!』

『ここを通りたければ!』

『我らアトーフェ親衛隊を倒していくがよい!』

 

いつもの決まり文句だ。

通常ならばここで親衛隊と戦闘になるのだが今はそうではない。

 

「お久しぶりです。親衛隊の皆様。不死魔王アトーフェの息子のアレックスです。

 挨拶がしたいのでここをとおしてくれませんでしょうか。」

 

一応敬語にしておく。

母からは別に親衛隊にはため口でいいといわれているが礼儀というものがあるのだ。

 

「おお!アレックス殿でありましたか!!

 ぜひお入りください」

 

さっきまでの威勢はどこに行ったのやら。

私がいるといつもこうだ。ほかの勇者がいたらどうするつもりなのだろうか。

 

門が開く。

 

私は親衛隊の方々とあいさつをしながら中へと入っていった。

 

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「アールが帰ってきたぞー!宴会だー!」

 

今、私は母主催の元、宴会を楽しんでいる。

親衛隊の方々と肩を並べ酒を飲み、

闘技場で親衛隊の1vs1を見ながら料理を食べ、

近くにいた仲の良い親衛隊の人にこれまでのことを話したりしている。

 

そんな中、私に一人の親衛隊が近づいた。

 

「お久しぶりです。アレックス殿。あぁ今はシャンドル殿でしたか」

 

ムーア殿だ。

 

「あぁ。いえ、依然と同じようにアレックスでいいですよ。ここでは偽名を使う意味はないですからね。」

 

「それであれば今まで通りアレックス殿と呼ばせていただきます。

 それでなんでこんな急に帰ってきたのですか?

 以前みたいに英雄の名を捨てるというわけでもないのでしょう?」

 

「あぁ..実はですね...」

 

私は今回おきたことをムーア殿にすべて話した。

 

アスラ王国のフィットア領にいたら目の前に大きな光が差し、ここに転移してきたこと。

周りを見渡したが一緒に飛んだであろう子供がいなかったこと。

このことからこれは普通の転移ではないということ。

 

「それは...おそらくランダム転移ですね。」

「ランダム転移というのは?」

「迷宮などによくある仕掛けなのですが、まぁ言葉通り範囲内のどこかに転移するといった種類のものであります。こちらも普通の転移と同様に触れているものは同じ場所に飛ぶので、もし誰かと触れていたのならば同じ場所に転移しているのだと思います。」

 

そういえば、光が私を包む直前、ルーデウス殿がロアの町のお嬢様を守ろうとしている姿が見えた。もしそこが触れていたのならば同じ場所に転移しているのだろう。

エド君は....誰とも触れていなかったな。

こんなことならアルマンフィ殿に触れていればよかったのだろうか。

 

「なぜ急にそんな魔力災害が起きたのはそこにいなかった私にはわかりません。

 もしペルギウス殿と連絡が取れたのならわかったのかもしれませんがあいにく主があれなもんでね。ハッハッハ!」

 

念のため母がいないか確認する。

もしいたらムーア殿がぶっとばされかねん。

 

「それで...いつまでここに滞在するおつもりでしょうか?」

「体力の回復もかねて10日くらいでしょうか。」

「そうでございますか...アトーフェ様はきっともっと長いこといることをお望みでしょうけど。」

 

前回もそういわれて一年も滞在してしまった。

今度こそはそうはいかないぞ。

 

 

 

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あれから1年半くらい過ぎてしまった。

以前はあんな感じに意気込んでいたのに、母や親衛隊の方々に丸め込まれ、こんなに滞在してしまった。

最近は近くにいた魔物を狩っているだけの生活だ。

こんなのではダメだと自分でも思っているのだが、私は母に弱いらしい。

いくら決意しても結局はここに残ってしまう。

転移の時に感じていた感情はなんだったのやら。

 

そんな私の耳に一つの情報が入った。

フィットア領転移事件捜索団についての話だ。

冒険者ギルドにあった大きな張り紙。

私はそれを読んではっとした。

私はなんで丸め込まれていたのだろうか。

私が手伝ってさえいればもっとはやくフィットア領の人々は見つかっていたのではないか。

私がこの町にいる間はフィットア領の人民の話はきかなかったが...。

 

それより、だ。

私も探さなければならない。

やや強引にここから抜け出さないといけない。

目的地は...そうだな。

魔大陸三大都市のひとつ。

周りは大きなクレーターで覆われており、ってまぁ説明は要らないか。

叔父が統治している町。

リカリスの町だ。

 

さて、どう抜け出そうか。

母に言うとまた引き止められてしまいそうだな。

ムーア殿にだけ伝えるか。




前回書き忘れていましたが、次回からは新章です。
そろそろ本筋に合流するんで楽しみにしといてください。
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