第二十五話 あれから
天大陸にある、とある町から東に半日かけて着く丘。
そこに立つのは三名の男女。
そのうち二名の背中には大きな翼が生えており、その手にはそれぞれ槍と杖が握られている。
もう一名は翼の生えていない人族の少年。
その手には鞭が持たれている。
そんな彼らを囲むのは翼を生やした鎧。
鎧だからと言って中に何か入っているわけではない。
だが、動かないというわけでもなく、その鎧はいまにも少年たちに襲い掛かろうとしている。
その鎧はA級の魔物、「スィエルソルジャー」。
そんじょそこらの冒険者が見れば強敵だの倒せないだの言って逃げてしまうような魔物。
しかし、彼らは違う。
十代前半という若さを持ってなお彼らに対峙することができている。
その実力は経験か、はたまた才能か。
そこのところは誰もわからないことである。
そんな中、鎧の中の一つが彼らに向かって襲い掛かる。
それに次いで、鎧が次々と襲い掛かる。
まず槍を持った天族の少年が動き出す。
彼は最初に動いた鎧を突き抜き、その後動いてきた敵を薙ぎ払っていく。
次に杖を持った天族の少女が動き出す。
彼女は少年が動いている間に詠唱をし、鋭い岩を生成した。
土系統の中級魔術「
今中央大陸を旅している少年のような無詠唱のものではないが、魔術師としては申し分ない威力である。
その岩は鎧の一つへと向かっていきそれを破壊した。
そして、鞭を持った人族の少年が動き出す。
彼は無詠唱で火系統の初級魔術「ファイアボール」を出し、大量の鎧に飛ばしていった。
その火の玉は鎧へと命中し、敵の鎧に傷がついた。
そこで槍を持った少年が動く。
彼は手に持った槍を敵の方に回転させながら投げ、その鎧たちを真っ二つにした。
そして鞭を持った少年が炎を出し、その死体を燃やした。
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~エドルート視点~
あの戦争から二年半が経った。
今俺はラグナとウリエのA級冒険者パーティー「ボーイング・アエリオン」に所属している。
三年くらい前にヴァリアスと約束した通りにしている。
まぁ、
はたから見れば余裕そうに見えたと思うが、実際のところはそうではない。
ファイアボールはラグナにあたりそうになるし、それでもダメージをそんなに与えることができなかった。そのせいでラグナにカバーをさせてしまった。
今回のこの一件はこれからのためにもしっかりと反省するべきだと思う。
ラグナに言っても別にいいといわれると思うが、こういうことが大きなミスにつながる。
改善していかないとな。
最近は火魔術の扱いについていろいろ考えている点がある。
ただただ飛ばすだけだとよけられてしまうし、かといって不意打ちに使おうとしてもチームで戦っている故にあまりその場面がない。もし、不意打ちに使う方がウリエのほうがいいしな。
あぁウリエといえば、一年くらい前から俺はウリエに人族の言語を教えている。
あの魔道具を使えば簡単に言語を学習できるし。
ウリエは学ぶのが早いほうだと思う。
後少しくらいでカタコトなしで話せると思う。
ラグナもそれに参加しているかと聞かれると、実は参加していない。
ウリエは参加したほうが良いといったが、ヴァリアス曰く次期町長として今のうちに今から町の手伝いをしなくてはいけないとのことらしい。
それが一段落ついたら受けたいといっていた。
また、ウリエ曰く人間語は天神語よりも数段難しいらしく、それが習得の速さに影響しているらしい。俺が天大陸の言葉を学んだときは人間語と似ていると感じたんだが...。
そこもこれから考えていくべきというかなんというか。
戦争のその後についても言わなきゃな。
あの戦争の後、殺した殺されたでいろいろいざこざもあったらしい。
俺はまだ子供だということであまり前には出してもらえなかったし、俺も相手の兵士を何人も殺してる。だからあんまり内容を知らないのだが、最終的にはお互いに援助をし合うという結果に落ち着いた。ラグナが言っていた通りになったな。
あの後俺はとある結婚式に招待された。フィレロムの結婚式だ。
どうやら結婚相手もしっかりと生き残っていたらしく同じ砦を過ごした仲として招待された。
いや~それにしてもすごかったよ。
現代日本の結婚式とは違い、空で行われた。俺は飛べないからヴァリアスにおんぶされながらだったけれども。
新郎新婦の二人が一緒にそれを飛び合い最後にハグする形であった。
サプライズでサーカス団のメンバーがいろいろしていたがそれもすごかった。
内容は割愛させてもらうが、現代日本のよりかははるかにすごかった。
魔術も頻繁に使っていて、まるでデ〇ズニーの映画を見ているような感覚になったね。
後はあの戦争の裏切者についてだな。
終戦後、裏切者たちは解放された。
兵士の中には裏切者に殺されたものもいるがその点はお互い痛み分けということで終わった。
しかし、何もバツがないわけというわけでもなく、一年間は砦で見張りをしてもらうことになっていた。すでに同盟を結んだから反逆される心配はないしそんなことせずとも大丈夫だと思ったんだが、バツはバツ、罪は罪だからね。
あと、カリオンからは砦のメンバーに向けて謝罪があった。
指示だったとはいえフィレロムを殺そうとしたことや、メンバーを裏切ろうとしたこと。
俺たちは寛大な心でそれを許した。
メッセリアだけは二度としないようにときつく叱っていたが。
この二年半の出来事はこのくらいか。
新技を覚えたりもしたが、それはまた後日にしよう。
そして俺は今日の任務の疲れをとるために眠りについた。
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目が覚めた。
真っ白い空間だ。
自分の体を見ると転生前のがりっがりの体。
この世界に転生してからは鍛えていたけど、この体はありえないくらいに貧弱だ。
それこそこっちの世界では魔力によるブーストみたいなものがあるからまた違ってくるが。
それより懐かしいな。
ここに来るのも二年半ぶりか。
あ、そうそう前回目を覚ましたらウリエの髪の毛が真っ白になっていたんだっけ。
原因はわからないが時間経過で治ったのでみんなそれほど気にしてなかった。
それで、この空間に来たってことはつまり...
「そう!僕だよ!」
声の主は俺の視界の外から急に視界の中に入ってきた。
すごく驚いた。
体がビクってなるのを感じた。
「そこまで驚いてくれるとは心外だね。」
二年半ぶりだしな。
「君、この二年半ですごく強くなったじゃあないか。」
そうか?
「あの新技とか、後隙は大きいけど決まればすごい威力になると思うよ。」
けど、その後隙とかタメが大きすぎるからなぁ。
使いどころがあまりないと思うんだよね。
「それこそ、鞭を二本持ちするのはどうだい?
ほら、君の技の中に鞭括ってのがあるだろう?
それをした後にその新技をすれば敵からの反撃は少ないと思うんだ。」
ほう。なかなかいいことを言うな。
けど、いい鞭を作ってくれる人なんてそうそういないと思うけどな。
俺が今持っている鞭はシャンドルがくれたものだから出どころもよくわかってないし。
お前ならそういうこともわかるのか?
「わかるっちゃわかるのだけど....場所がね。遠すぎるんだよ。」
どこなんだ?
「ミリス大陸南部の町だよ。ここからじゃ遠すぎる。」
ミリス大陸ってここから真反対じゃないか。
そりゃ無理か...。
「正直僕も良い鞭職人に心当たりがないんだよ。
なんたってものがものだからね。」
俺はよく知らんが、まあたしかに
「けどね、君の近くに良いものがあるんだ。」
良いもの?
「それは金属でできた鞭なんだけどね。」
はえ~。
ってかこれって助言の流れか?
「そうそう。助言。聞きたいでしょ?」
まあ、二年半前からずっと待たされてきたからな。
「じゃあ僕からは二つほど助言をしてあげる。」
俺は唾をのんだ。
「エドルートよ。天大陸から降りなさい。もし、ラグナ達に連れて行ってといわれたら連れて行きなさいそしてそのことを町の人々に報告しなさい。さすれば君はさらに強くなり、家族とも会えるでしょう。」
しょう...しょう.....しょう................
その声はエコーがかかりながらどこかへと消えていった。