あれから家族で話し合いをした。
何やら魔術の家庭教師をよぶのだとか。
しかし、その家庭教師を呼ぶ前に俺にも最低限の知識が必要だ。
そういうことで、家庭教師が来るまでの間、
兄ことルーデウスに教えてもらうことにした。
「兄さん。ここはなんて読むのですか?」
「これはな、『エドルート』ってよむんだぞ。
あと、敬語はやめてくれよ、双子の兄弟だろ?」
「うん!兄さん、ありがとう!」
兄は意外と気がいい人らしい。
この家は一応貴族の家らしいから、そこはしっかりしないといけないとおもっていた。
「けど、母さんや、父さん、リーリャさんには、敬語で接してくれよな?」
「はい!」
そんなことは言われなくてもわかっていたが
一応気のいい返事をしておく。
そんな生活が二か月は続くと思っていた。
しかし、意外にもあっさり見つかったのか
家庭教師は数日後には来るようだ。
この近くには、宿屋が無いため、この家に住み込みになるようだ。
住み込みになるということは、部屋を一つ使うということだ。
もともと、我が家では子供には、一人ひとり部屋をあたえるものだった。
しかし、我が家も子供が二人いるということで、もう使える部屋がなかった。
と、いうことで、俺はルーデウスと同じ部屋で生活することになった。
正直に言おう。
快適だ。
兄は全然寝言を言わないし、いびきもかかない。
かといって寝相が悪いわけでもない。
水が飲みたくなったらすぐに出してくれる。
出すところを以前見せてもらったが、本当にすごかった。
急に兄の手のひらの少し上から、水の塊がでてきたのだ。
あと、寝る前にもしっかりと読み書きを教えてくれる。
一言でいうと、いいお兄さんだ。
おっと、話が脱線してしまった。
家庭教師のはなしだったね。
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あれから数日後、家の玄関の前には一人の少女がたっていた。
実際、その女性は少女と呼べる年齢ではないが、
見た目がそうなので、周りからは、そうとしかみえなかった。
その少女は青い髪をしていた。
この地域では珍しい青い髪だ。
しばらくすると、玄関の扉があいた。
そこから出てきたのは、
家長の『パウロ・グレイラット』
その妻の『ゼニス・グレイラット』
そして、双子の兄弟『ルーデウス・グレイラット』と『エドルート・グレイラット』だ。
メイドであるリーリャは、家庭教師が来たと聞いて、
いろいろと準備をしている。
少女は言った。
「ロキシーです。よろしくお願いします。」
その姿を見て、そこにいたものは、皆驚いていた。
あるものは、その少女が魔族であることに。
あるものは、彼女の外見に。
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~エドルート視点~
驚いた。
俺が予想していた家庭教師は、
まさに髭をたっぷりと蓄えた年配の男だったからだ。
そうおもっていたら、こんな中学生くらいの年齢の子がやってきたのだ。
両親は驚いている。おそらく俺と同じ理由だろう。
ルーデウスは…なんかニヤニヤしてるな。
最近はそんな姿を全然見かけないと思っていたのだが…
まぁ、見なかったふりをしてやろう。
両親も家庭教師こと、ロキシーもきづいてなさそうだし。
「あ、あ、君が、その、家庭教師の?」
「あのー、ず、随分とそのー」
両親が随分と言いにくそうだ。
すると、ルーデウスが言った。
「小さいんですね」
「あなたに言われたくありません」
ルーデウスはピシャリとロキシーに言われていた。
ブーメランとはまさにこのことをいうのだろう。
そして、ロキシーはため息をついた。
「はぁ。それで、わたしが教える生徒はどちらに?」
「あ、それはこの子達です」
その紹介に合わせて、おれたちがでてきた。
あ、ルーデウスがウインクしている。
やっぱこいつはこいつなんだな。
するとロキシーがまた、ため息をついた。
「はぁ、たまにいるんですよねぇ、
ちょっと成長が早いだけで自分の子供に才能があると思い込んじゃうバカ親……」
ぼそりとつぶやいていた。
本人は心の中で思ったつもりなのだろう。
しかし、こちらには丸聞こえだった。
「何か」
「いえ。しかし、そちらのお子様方には魔術の理論を理解できるとは思いませんが?」
「大丈夫よ、うちのルディちゃんはとっても優秀なんだから!
確かにエドちゃんはまだ魔術を使ったことがないけれど、
しっかりと教えてくれるわよね?」
ゼニスが笑顔で言っている。
…怖い
ロキシーがまたため息をついた。
「はぁ。わかりました。やれるだけの事はやってみましょう」
まぁそういうことで午前は魔術の授業を、午後は剣術の授業をうけることになった。
庭についた。
いつも窓から見ていた風景だ。
田舎だからか空気がおいしい。
「たしか、ルディが魔術をすでに習得済みで、
エドがいまだにやったことがないんでしたっけ?
エドはともかく、ルディがどれだけできるのかをみさせてもらいます。
魔術教本は...なしでいきましょう。」
ロキシーはそういって杖を構えた。
「まずはお手本です。
汝の求める所に大いなる水の加護あらん、
清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」
ロキシーはそう詠唱して、杖の先から水の球をだして、発射した。
その水は先にあった木に直撃して、その幹をへしおった。
てか、詠唱か。
前回ルーデウスの魔術を見たときはそんなことしてなかったのに。
どういうことだ?
あ、てかあの木って…
「どうですか?」
「はい。その木は母さまが大事に育ててきたものですので、母さまが怒るとおもいます」
「え? そうなんですか!?」
「間違いないでしょう」
そう思った時にはすでに兄がロキシーに向かって言っていた。
「それはまずいですね、なんとかしないと……!」
ロキシーは慌てて木に近づくと、倒れた幹をうんしょと立てた。
そして唱える。
「うぐぐ……、
神なる力は芳醇なる糧、力失いしかの者に再び立ち上がる力を与えん、
ヒーリング」
この魔術は以前見たことがある。
ゼニスが使っていた魔術だ。
「すげぇ」
気づけばそんな声が出ていた。
これまで治癒魔術で治せるのは人体だけだとおもっていたが
なんと、植物にも使えるということが分かった。
おれはそのことに驚いていた。
しかし、ロキシーには別に意味で伝わっていたらしい。
「いいえ、きちんと訓練すればこのぐらいは誰にでも出来ますよ」
「先生はどこまで使えるんですか?」
ルーデウスがすかさず聞く。
「中級までは問題なく使えます」
「すごい!すごいです!」
あ。ルーデウスがニヤニヤしてる。
あれは尊敬のニヤニヤじゃない。
エロいことを考えているときのニヤニヤだ。
このやろう。どこでもいけるのかよ。
あ、ロキシーが嬉しそうにしている。
こいつもちょろいのかよ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
つぎはルーデウスの番だ。
「汝の求めるところに………ウォーターボール」
ルーデウスは詠唱を途中まで言って、水の球を出した。
いわゆる詠唱を端折るっていうやつだ。
てか、普段は無詠唱で出しているのになんで、今回は詠唱をしようとしたのだろう。
あ、またあの木が折れた。
「詠唱を端折りましたね?」
「はい」
ロキシーとルーデウスがそんな会話をしている。
そんなことより木が折れているのは大丈夫なのだろうか。
「いつも詠唱を端折っているのですか?」
「いつもは……無しで」
「無し!? ……そう。いつもは無し。なるほどね。疲れは感じていますか?」
無詠唱ってそんなにすごいものなのか。
「はい、大丈夫です」
「そう。水弾の大きさ、威力共に申し分ないです」
「ありがとうございます」
そして、ロキシーは小声で言った。
「………これは鍛えがいがありそうだわ」
聞こえてるんだよなぁ。
「それでは、次は、エドに魔術をおしえ…」
「ああぁー!」
ロキシーがこちらを向いて魔術教本を開こうとしたとき
叫び声が上がった。
様子を見に来たゼニスだった。
飲み物を載せたお盆を取り落とし、口を両手で抑えて、ボッキリ折れた木を見ている。
悲しげな表情。
次の瞬間、その表情に怒りの色が篭っていく。
あ。
ゼニスはツカツカと歩いてくると、ロキシーに詰め寄った。
「ロキシーさん! あなたね!
ウチの木を実験台にしないで頂戴!」
「えっ! しかしこれはルディがやったもので……」
「ルディがやったのだとしても、やらせたのはあなたでしょう!」
ロキシーはとても落ち込んでいるように見える。
「はい……そのとおりです」
「こういう事は二度としないで頂戴ね!」
「はい、申し訳ありません、奥様……」
ゼニスは木に治癒魔術をかけて、家の中に戻っていった。
「早速失敗してしまいました……」
「先生……」
「ハハッ、明日には解雇ですかね………」
ロキシーはさっきより落ち込んでいる。
さすがに解雇はないとは思うが。
まぁそこまで思うのもしかたあるまい。
するとルーデウスがロキシーの肩をポンポンとたたいた。
どうしたのだろうか。何かあったのだろうか。
「先生は今、失敗したんじゃありません」
「ル、ルディ……?」
「経験を積んだんです」
なんだその胡散臭いセリフは。
どっかで聞いたことあるセリフだな。
あー思いだした。
昔友達に誘われて少しやったけどすぐやめたエロげーのセリフだ。
なんでそんなもんがここででてくるんだよ。
しかし、そんなことを思っていた俺とは裏腹にロキシーの顔がはれた。
「そ、そうですね。ありがとうございます」
「はい。では授業の続きをお願いします」
「わかりました。ではエド、今から私が言った言葉を復唱してください。」
その後、魔術の訓練をした。
どうやら、俺には兄ほどの才能がないらしく、その日中一度も打つことができなかった。
ロキシー曰く、「それが普通です。」とのこと。
ふぅ、才能がうらやましいね。
午後からは剣術の授業だったが、その話はまた今度しよう。
ルディとエドがロキシーからこの世界の歴史や常識を教えてもらうところは割愛します。
次回は「剣術」です。
幼少期ペース早目のほうがいいですか?
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