【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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想定外

夕方。放課後。

脇目も振らず向かった先は、言うまでもなく

——裸電球の下、湿気のこもる真人の実験場。

 

真人「や、来たね」

 

視界に入った瞬間、紬は小首を傾げる。

昨日まではなかったハンモックが、

配管と壁の間に張られている。

そこに真人は、手足を伸ばして寝そべっていた。

 

紬「真人、裸電球といいそのハンモックといい、DIYスキル結構あるよね…」

 

真人「いや、今朝読んだ本に載ってたんだけど、これがなかなか快適でね……って、あれ?」

 

言葉がふっと途切れる。

視線が、じっと紬に向けられる。

 

真人「君、昨日までは呪力が外に漏れてたのに……今日はちゃんと中で廻ってる。……ここ来るまでに特訓でもしてた?」

 

問いかけられた瞬間、紬の頬がふわりと緩む。

嬉しさを隠そうともせず、にっこりと頷いた。

 

紬「うん!学校って退屈なのに行かなくちゃいけないからさ……だからその時間、ずっと呪力操作の特訓してたんだ!

昨日、真人が教えてくれたやり方で!」

 

真人「ははっ、偉いじゃん。……ほんと、君っておもしろいね」

 

ハンモックから軽やかに降り、紬の頭をくしゃっと撫でる。

掌の温もりに、紬の口元が緩んだ。

 

真人「君の成長速度、なかなかに爆速だよ。君が優秀なのかな?それとも、俺の教え方が上手い?」

 

紬「ん〜、両方かも♡」

 

いたずらっぽく笑う紬に、真人も唇を吊り上げる。

 

真人「……これなら、すぐに瞬間移動の検証に移れそうだね。今日は、長距離ワープができるかどうか、やってみようか」

 

紬「長距離?」

 

真人「そう。君の瞬間移動の最大飛距離を確かめる、って感じかな。視界内だけなのか、それとも数百メートル、数十km飛べるのか」

 

紬「え、それってもし飛びすぎたら…下手したら迷子になっちゃうんじゃ…」

 

真人「ま、あんまり遠くに飛んじゃったら,俺がここまで送るから大丈夫だよ」

 

「送る」という単語に、紬の脳裏に浮かんだのは——

自分を抱えてダッシュで帰ってくる真人の姿。

そのあまりのシュールさに、口元が震える。

 

紬「……っっ(やば、笑いそう…)」

 

真人「ん、どうかした?」

 

紬「いやっ!なんでもない!」

 

慌てて否定し、気持ちを切り替える。

 

紬「えと、今日は瞬間移動でどれだけ飛べるかの検証だよね……それなら、いい方法がある!」

 

ポケットからスマホを取り出し、画面をタップしてみせる。

 

紬「GPSだよ!今の地点を記録しといて、飛んだ先の位置情報と照らし合わせれば……何m飛んだのか、すぐわかる!」

 

意気揚々とスマホのGPS画面を差し出す紬に、

真人は興味深そうに覗き込んだ。

 

真人「へぇ、文明の利器ってやつ? 面白いね」

紬「でしょ?」

 

嬉しそうに返しながら、

紬は体内の呪力に意識を集中させていく。

 

真人「術式のトリガーは…紬、今回はガイドなしでも分かる?」

 

紬「うん、もう二回飛んだから。頭のこの辺…覚えてる」

 

そして、ためらいがちに付け加える。

 

紬「……でも真人、一緒に飛んでくれる?」

 

真人の腕に、ポン、と指先を置く。

昨日の検証で分かった通り、触れている相手は一緒に飛べる。これで条件は整う。

 

真人「いーよ。君だけあらぬ場所に飛んでもアレだし…ま、それはそれでウケるけど」

 

紬「ちょっとお!?」

 

口を尖らせる紬だが、意識はすぐに内側へ戻った。

 

一昨日、そして昨日と押し込んだ、脳の術式トリガー。

そこへ呪力を流し込む。

目指すのは——最大飛距離。

 

真人「いちばん遠くまで飛ぶからね。イメージして。…そうだ、あの山の向こうにしようか」

 

真人が指差した先、ビル群のさらに奥に霞む霧の山。

 

真人「あれを飛び越えて、その向こう側に出現するイメージ。できるかできないかはともかくとしてね」

 

紬「了解……」

 

山の向こう側——その景色を頭に刻む。

そして——

 

紬「…いくよ。3、2、1、ワープっっ!!」

 

バシュッッッ!!!

 

視界がグルンと回り…

飛んだのは,紬……だけ,だった。

 

紬「えっ——」

しかも……足場はない。

真下に広がる街並み。自由落下,再来。

 

紬「うわぁぁぁぁ!?」

 

ビルの屋根の角が、目前に迫る——

左足首が直撃。

グギリ、と嫌な音が響く。

 

紬「い″っっっっ!!」

衝撃が全身を走り抜ける。落下は止まらない。

地面が急速に迫る。

 

紬(まずい、死ぬ——!?)

 

その時。脳裏に蘇る,真人の言葉。

(呪力による強化は肉体強度も大幅に上昇するから、事故っても死にはしないよ)

 

紬「っっっ!!!」

瞬間、全身に呪力を巡らせる。

 

——ドサッ。

 

紬「はぁ………はぁ………」

荒く息を吐く。全身は痛みに包まれているが、意識はある。

ただ——左足首は。

 

紬「っっ、あ″ぁぁぁ!?」

 

——あらぬ方向に,折れ曲がっていた。

 

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