【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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どうする?

折れ曲がった左足首は、

じくじくとした熱と鈍い痛みに脈打つ。

 

折れた瞬間のグギリという音、

グチャッという生々しい感覚が,

脳裏にはっきりと残っていた。

 

それは、ただの女子高生として生きてきた紬には無縁の痛みで。

 

加えて、ひとりきり。

どうすればいいのかわからない。

 

紬「え、う、うぁ……」

 

紬は,パニックに陥っていた。

涙がじわりと目に滲む。

 

紬(痛い……痛い…… 真人…… 救急車……)

 

思考がまとまらない。単語が浮かんでは消えていく。

 

その時——

バサリ,と、視界に白い羽が入り込む。

眼前に現れたのは、背から羽を広げた真人。

 

真人「あっははっ、めっちゃ派手に失敗したな。また空中に飛んじゃった?」

 

紬「ま、真人……」

 

泣きそうな顔で見上げる紬とは対照的に、

真人は楽しそうな顔を崩さない。

 

真人は羽を解き、しゃがみ込むと,

ぽん、と紬の頭に手を置き。

 

真人「無為転変」

 

瞬間、紬の左足首がグチュグチュと音を立てて治っていく。

骨も神経も、完璧に修復され、痛みは跡形もなく消えた。

 

紬「あ……っ…」

 

——ぎゅっ。

助かった安堵とパニックの反動とで、

思わず真人に抱きつく紬。

 

真人「え〜? 怖かったの?」

特に拒む様子はなく、真人は分析を口にする。

 

真人「君と、君が触れている相手が対象になる……

と思ってたけど、今回君だけ飛んだのを見るに、

それじゃ不十分だね。

誰かを一緒に飛ばすには“手を繋ぐ”必要がある。

今回は掴んでたのが腕だったから、君だけ飛んじゃった。

多分そういうこと」

 

紬「手を……繋ぐ……」

 

落ち着きを取り戻しつつ、その言葉を繰り返す。

 

一回目と二回目の瞬間移動。

今思い返せば、両方とも真人ごと飛んで、どっちも真人に手を掴まれていた。

 

真人「君の呪力を追って飛んできたけど……ここ、そこまで遠くないね。さっきの位置とどのくらい離れてる?」

 

紬「あ…そうだ!」

スマホを取り出し、GPSを確認する。

 

紬「998m……約1kmだ」

 

真人「1kmか、なるほど……ん?」

 

何かに気づいたように目を細める。

 

真人「君の魂……脳の術式トリガー、三回使ったからだんだん“開いて”きたのか……これだと今のままじゃ窮屈そうだな」

 

紬「??? ……えっと…?」

 

意味がわからず首を傾げる紬。

真人は意に介さず、再び掌を紬の頭に当てる。

 

真人「無為転変」

 

その時。紬の脳内に、じわりとした熱。

そして、その熱が体内に広がり、霧散する感覚。

 

真人「君の術式トリガーを拡張した。

ちょうどできそうだったからね。

これで、次はもっと遠くまで飛べるはずだよ」

 

紬「あ、うん……」

 

理屈はわからない。

だが先ほど脳の奥に走ったじわりとした熱と、

真人特有の妙な説得力が、

紬の中に説明不能な“納得”を生んでいた。

 

——その時。

 

「こっちに人が! さっき落ちてきたのを見て!」

「なに? 本当か??」

 

先ほどの落下を誰かに見られてしまったらしい。

足音が近づいてくる。

 

紬「あ」

 

めんどくさいことになる。

見つかる前にこの場を離れないと。

そう思った瞬間、真人が横目で紬を見た。

 

真人「君、今日は呪力に余裕ある感じだね。

多分、一人で飛んだから消費が"軽かった"のかな。

……もう一回くらい飛べそうじゃない?」

 

紬「あ、うん! OK、ワープして逃げようか——」

 

差し出した手に、真人の掌が重なる——と思った、その瞬間。

 

真人が取り出したのは,

指ほどの大きさの改造人間の“ストック”。

即興でぐにゃりと形を変え、小ぶりの金槌へと変形する。

 

そして、その柄の部分を紬の差し出した手に押し付ける。

 

真人「いやいや、ちょうどいい相手じゃん」

 

真人の笑みが、オッドアイの奥で妖しく光る。

 

真人「君、昨日の感じだと“視界内”ならブレずに飛べるよね? ……だったらさ、“瞬間移動”で背後に飛んで、その金槌でぶっ叩いてみなよ」

 

紬「えっ——」

 

想定外の提案に紬は硬直した。

真人は構わず、面白そうに続ける。

 

真人「君、昨日“戦いたい”みたいなこと言ってたじゃん?

……だったら、人間殴る感覚は慣れといたほうがいいだろ?」

 

紬「それ、は……」

 

言葉が喉で詰まる。

戦うなら——真人の味方でいるなら——

相手は呪術師、つまり人間になる。

真人の言い分は筋が通っている。

 

しかし。いざやれ,と言われると…

その覚悟は……まだ。

 

真人の笑みは崩れない。

この状況を楽しむように。

背後をビッ、と指差し、軽い口調で言った。

 

真人「ほら、来てるよ……どうする?」

 

振り返った紬の視界に——

 

「こっち!! この辺だ!!」

「あの子じゃないか??」

 

二人の住民が、こちらに向かって走ってくる姿があった。

 

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