次の日——金曜日。真人とは会えない日。
この日も,"やること"は同じ。
学校には行くだけ行って、
授業中はひたすら呪力操作の特訓。
1時間目、2時間目は予定通り。
右腕、左腕、右脚、腹、指先、首、背中へと順番に呪力を流し、自分の中で循環させていく。
最初は一周3分かかっていたタイムも、
今日は2分35秒まで縮まった。
(……よし、いい感じ)
しかし——3時間目、日本史の時間。
教師が黒板にチョークを走らせながら、
クラス全員へ告げた。
「今日の授業で平安時代は終わりだ。
というわけで、桓武天皇による平安京遷都から鎌倉幕府設立まで、まとめテストをやるぞ。テストは来週の月曜日、1時間目だな。週末によく復習しておくように」
「……えっ」
紬は、思わず顔をあげた。
(やっば……このテスト、60点いかないと放課後補修なんだよな……)
日本史は、紬にとって苦手科目だ。
飛鳥時代のまとめテストでは45点を取って放課後補修に呼び出され、奈良時代では62点——ギリギリの回避。
(補修なんてなったら、放課後潰れて真人に会えなくなる……それだけは……!)
呪力操作の特訓は、泣く泣く中断。
紬は急遽、日本史の授業に全集中。
4時間目以降も、表面上は授業を受けているふりをしながら、日本史の内職を続けた。
(うう……最澄が天台宗で……いや、天台宗って空海!?どっちだっけ……?)
(それに、平将門の乱と前九年の乱……いや、“前九年の役”??どっちが先だっけ……)
これはまずい。
でも——明日は約束通り真人と会いたい。できれば明後日も。
今の紬の生活で、唯一色を帯びて見える時間だから。
ならば——
今日のうちに、日本史は詰め込めるだけ詰め込むしかない。
放課後。
まっすぐ帰宅し、時計は17時半。家の前に到着。
紬の母「おかえり紬!今日は早かったわね!“まおくん”とは遊ばなかったの?」
玄関先で母親がにこやかに迎える。
紬「うん。今日はまおくん予定あるって言ってたから。
そのかわり、明日遊ぶことになったんだ。朝10時から」
その言葉に、母親の顔がぱっと明るくなる。
紬の母「まあ、そうなの!楽しみね!」
そして——
紬の母「ねぇ、今日の金曜ロードショー、ジ◯リの崖の上のポニョやるんだけど……お父さん、早めに帰ってくるみたいだし、みんなで見ない?」
紬「ごめん。月曜に日本史のテストあって。そっちやんないとやばいから、無理」
紬の母「あらそう。それなら,確かに勉強優先ね。頑張ってね」
紬「うん,ありがとう」
そう告げて、紬は教科書片手に自室へと引っ込んだ。