【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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爆速の伏線回収

土曜日。

今日は初めて、制服ではなく私服で真人に会う日。

 

クローゼットの前で、紬は服を吟味していた。

最初は白のオフショルブラウスを手に取ったが——

昨日の「血痕事件」を思い出し、そっとハンガーに戻す。

 

紬(血がついても目立ちにくくて、動きやすくて……

でもちゃんと可愛い服……)

 

悩んだ末に選んだのは、黒のキャミソールにミニスカート。

上からグレーのクロップドジャケットを羽織り、

首元にはダブルチェーンのネックレス。

足元はスポーツサンダル、ショルダーバッグには最低限の荷物だけを詰める。

 

鏡の前で全身を確認し、

出発前に一度だけ体内を呪力で一周させて、流れの感覚を再確認する。

 

紬(……よし、完璧)

 

玄関に向かおうとしたその時、背後から父の声が飛んだ。

 

紬の父「紬、遊ぶのはいいが気をつけろよ。今朝、若梅市のファミレス…"ゴスト"が全焼したってニュースやってた。……11人,死亡だって…紬の学校の近くだろ?最近,物騒だからな…」

 

紬「大丈夫だって。心配しすぎ」

 

靴を履きながら、軽く手を振る。

 

紬の母「…気をつけるのよ,紬」

 

さすがの母親も,11人焼け死んだ事件のせいで,

今日ばかりは心配そうだった。

 

家から真人の実験場までは、電車に揺られ、

通学路を途中まで辿る必要がある。

 

路地裏の脇道からマンホールを降り、

じめっとした湿気が肌にまとわりつく地下通路を抜ける—— そこが、ふたりの「いつもの場所」だ。

 

到着は約束より10分早い、9時50分。

裸電球の下、ハンモックに揺られながら本を読んでいる真人の姿が見えた。

 

紬「真人ー!来たよ〜!」

真人「あ,紬〜〜」

 

声をかけると、真人は本をパタンと閉じ、

ぴょんと軽やかに飛び降りる。

……が、その表情と声色はいつもの飄々とした感じではなく、

妙に不満げで、どこか子供っぽい。

 

紬「? どうかした?」

 

紬が首を傾げると、真人は少し口を尖らせた。

 

真人「昨日、対呪術師の作戦会議があったんだけどさ……夏油たち、俺を置いてファミレス行ってたんだよね」

 

そう言って,足元の石を軽く蹴る。

それは近くに転がる,生き絶えた“元人間”に当たり、

グジャ,という嫌な音を立てた。

 

紬「え……ファミレス?」

 

真人の口から飛び出した予想外の単語に,

素っ頓狂な声があがる。

 

真人「そう。なんか楽しそうだったらしいんだよねー。

……ま、燃やしたって言ってたけど」

 

紬「えぇ!?燃やしちゃったの!?……って、まさか……お父さんが言ってたやつ……」

 

点と点が線になる感覚。

 

ファミレス全焼事件の犯人が真人の仲間と判明し,

どきりとする紬。

しかし、お構いなしに真人は続ける。

 

真人「でさー、俺もファミレス行ってみたいんだよね」

紬「……真人、お金持ってるの?」

真人「持ってないけど?」

紬「もー!」

 

真人が人間から見えない上、一文無しな以上、

注文も会計もすべて紬の役目になる。

しかし——-

 

紬(……まあ、いいか。お小遣いだいぶ余ってるし)

 

紬は普段ほぼ友達と遊ばず、交際費はゼロ。

アニメオタクではあるが、グッズには興味がない。

 

"まおくん"との行き先でアニメイト、と言ったのも、

紬が行きそうな場所を母親にでっち上げるためであり、

実際のところはほぼ行かない。

 

そして,母親が服を買ってくれるため服代もかからない。

 

必然的に、お小遣いはほぼ貯まりっぱなしだった。

 

そして——友達(??)と一緒に外食なんて,中学以来の経験。

 

つまり。紬が断る理由など,何ひとつなかった。

 

紬「…仕方ないな。いいよ。行こ、ファミレス」

紬がそう答えると,真人の顔がぱっと明るくなる。

 

真人「やった!……ここだと近いの,ゴストだっけ?」

紬「それ燃えたとこね!? あと近いのは、デリーズとゴゴスだけど……」

真人「どっちがいいの?それ」

紬「どーだろ…親とたまに行くのはゴゴスだけど…」

真人「おっけー,じゃあそっちにしよ」

 

行き先が決まり、ふたりは並んで歩き出す。

湿った地下通路から地上に出ると、

昼の光が一気に視界に溢れた。

 

真人「そういえば紬。いつもと服装違うんだね」

紬「あぁ……いつもは制服だからね。今日は学校ないから私服なの」

真人「ふーん。人間って不便そうだね,服装まで勝手に指定されるなんてさ」

紬「まー,確かに。……真夏日なのに,まだ5月だから冬服着てこい,って言われた時は,割と本気で殺意湧いた」

真人「あははっ!何それ,バカみたい!ルールに縛られすぎて,柔軟性ゼロじゃん!」

紬「ほんとそう。制服システムって,デメリットしかないよ」

 

真人は、なにかを思い出したようににやりと笑った。

 

真人「どおりで,白いシャツ着てたわけだ。

あれ絶対汚れるじゃんって思ってたんだよねー,昨日も袖に血付いてたし」

紬「ちょ……!気づいてたなら言ってよ!あれ,親にバレかけて焦ったんだから!」

真人「“バレかけた”ってことは,結局誤魔化せたんだろ?なら結果オーライじゃん」

 

真人の飄々とした口ぶりに、

紬は呆れたようにため息をつく。

それでも、口元はわずかに緩んでいた。

 

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