【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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ニアミス・フライト

紬と真人は、並んでドリンクバーへ。

周囲に聞かれぬよう、紬は小声で説明する。

 

紬「ここにコップ置いて,好きな飲み物のボタン押せばOKだよ」

真人「結構簡単だね,OK〜」

 

真人は,順にボタンを押して飲んでを繰り返す。

色とりどりの液体を口にしては首を傾げ、最後に炭酸を一口。

 

真人「このソーダ?っての,なんか面白いね,パチパチする」

紬「………ちなみにね,人間はドリンクバーの飲み物全部混ぜたやつ作ったりするんだよ?」

真人「え、それって不味くなるやつじゃないの?」

紬「…まあそうなんだけどね??」

真人「ほらやっぱり〜」

 

軽く笑った真人は、ふいに視線を宙に漂わせる。

次に落ちた声は、先ほどまでとはまるで違う響き。

 

真人「混ざり合わないモノってのはさ,どうしてもあるんだよ。魂だってそう。ひとつでは独立してても,ふたつ混ぜると途端に壊れる……」

 

が,ここで悪戯めいた笑みを浮かべる。

 

真人「ま,でも,たまに壊れない組み合わせもあってさ。

うまくいけば,強化版改造人間とか作れそうなんだけどね」

 

その言葉に,紬は実験場の風景を思い出す。

連日,少しずつ顔ぶれは変わっているのに,

数の減らない"元人間"たち。

そして,頭がふたつあったりする奇妙な個体。

 

真人の魂変形能力の全貌がわからなすぎて,

そういうものかと流していたけれど———

 

紬「え,もしかして真人,人間キメラ作ろうとしてたの??」

真人「あは,面白い言い方するね。…ん,まあ,大体そうかな?」

紬「人間同士の合体って……どこをどう組み合わせてもダメな気がするんだけど。……白鳥の羽を馬にくっつけたペガサスみたいにはいかないでしょ?」

 

その紬の返しに,真人は思わず笑いが漏れそうになる。

 

真人「パーツを組み合わせるとか,そう単純な話じゃないんだよ。俺のは"魂の合成"だからさ」

紬「ふぅん……??」

 

相変わらず理屈は分からないが,真人の言葉には説明不能の妙な説得力がある。

 

その時。

店員「あの,お客様……」

 

気づけば紬は、ドリンクバーの前でひとり、何やらブツブツ言いながら長々と立ち尽くす怪しい女になっていた。

 

紬「あっ、すみません!」

慌てて席に戻りながら(あ、そういえばもう食べ終わってたんだった……!)と内心で苦笑する。

 

伝票を手にレジへ向かう。

店員「3590円です」

紬「Pay◯ayで」

 

会計を済ませ、ファミレスの自動ドアをくぐった瞬間。

———真人がぐいっと紬の手首をつかみ、

さっと,柱の影へと引き込んだ。

 

紬「え,何??」

真人「夏油だ」

紬「え?夏油って,あのファミレス放火犯?」

 

真人の指す方向を目で追うと、

そこには,全身黒ずくめの,長身の男。

こちらにはまだ気づいていない様子で,ゆったりと道を歩いている。

 

紬「……っっ」

 

それを見て,紬は背筋が凍った。

今の紬は,呪力操作の特訓の成果で,相手の"呪力量"を

少しは感じ取れるようになっていた。

 

……しかし。あの男から溢れるそれは——

真人と同等,いや,それ以上。

 

そんな紬の緊張をほぐすように、真人がそっと手を握った。

 

真人「心配しなくていいよ,敵じゃない。夏油は俺の仲間だから。

たださ,ほら。紬のことは隠しておきたくてさ。

瞬間移動持ちなんてバレたら,目の色変えてくるだろうし」

 

紬「あ………」

脳裏に浮かぶのは、一昨日の言葉。

(夏油たちには紬のこと、内緒にしておきたいんだ。

——だって、紬は“俺の”じゃん?)

 

真人は続ける。

真人「いい機会だしさ,長距離ワープで飛んでみよう。相手から逃げるための瞬間移動って,今後使う時も出てくるだろうし」

 

その言葉に,紬は,真人に握られた手に意識を移す。

 

紬「!……わかった!確か,手を繋いでれば一緒に飛べるんだったよね!……えと,行き先どうする?」

 

真人「どこでもいいよ,夏油から反対方向なら。ついでに最大飛距離も試そうか。一昨日,術式トリガーを拡張したから,伸びてるはずだよ」

 

紬「了解!!行くよ———」

 

紬は,体内に意識を集中して呪力を練る。

"夏油"から反対方向を目視し,住宅街を飛び越えるイメージで意識を集中。

そして,呪力を脳の術式トリガーに流し込む——

 

紬「瞬間移動!!」

 

バシュッッ!!!

視界が反転。

次の瞬間,紬と真人の身体は空中に投げ出されていた。

下には———ゴミ捨て場。

 

紬「わぁぁぁっ!!」

真人「ははっ!どこだここ!!」

 

しかし,今回の高度はそこまで高くない。

紬は咄嗟に全身に呪力を流したのと,

着地地点に不法投棄されたソファがあったのとで,

なんとか無傷で墜落。

 

一方,真人は綺麗に脚から着地した。

 

真人「いや,瞬間移動の時のヒュンってなる感覚,アトラクションみたいでクセになりそう」

紬「そう!?…私は慣れないよ〜」

 

紬の胸には,まだ、足場がなくなった時の心臓のバクバクが色濃く残っていた。

 

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