【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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帰り道はワープで

そして、紬は自分の分のチケットを購入する。

真人は一般人には見えないため、映画館は実質フリーパスだ。

 

ふと、真人の視線が映画館のコンセッション(売店)

に止まった。

真人「ねえ、ドリンクバーにあったあのパチパチするソーダ? あれはないの?」

紬「あー、炭酸ね。それなら映画館といえばコーラだよ。買う?」

真人「じゃあ、それお願い〜」

紬「OK〜。ちなみに食べ物は? ポップコーンとか」

真人「そっちはいいや。ファミレスで食べたばっかだし」

 

コーラを手に、二人はシアター内へ。

紬はあらかじめ席を取る際、隣が空いている場所を選んでいた。

真人は何の違和感もなく隣に座る。

まあ,そもそも館内ガラガラだし。

 

予告編が流れ始め、暗闇の中で真人の横顔がスクリーンの光を受けて浮かび上がる。

 

紬(……ほんとに隣にいるんだ)

 

いつもは軽口ばかりの真人が、黙って映像を見つめている——その姿が紬には新鮮だった。

 

やがて本編が始まり、スクリーンいっぱいに青く広がる海。

登場人物たちが嵐の中、羅針盤を頼りに航海を続けるシーンでは、真人がふっと口元を緩めた。

 

真人「船の舵って、魂みたいだよね」

紬「え、どういう意味?」

真人「ちょっと曲げただけで行き先が全然変わる。……人間も同じ。魂をちょっと弄れば、全然違う場所に行き着く」

 

スクリーンの光が、真人のオッドアイに青と白の揺らぎを映す。

紬はそれ以上返事をしなかった。

返そうとした言葉は、波の音とBGMに溶け、飲み込まれていった。

 

上映時間の二時間は、思ったよりあっという間に過ぎた。

照明がつき、周囲の客たちが立ち上がる中、真人はゆっくりと席を立ち、紬を振り返る。

 

真人「……面白かったね。紬の選んだやつ、当たりだよ」

紬「でしょ?」

 

出口へ向かう通路で、真人がふと片手を差し出した。

何も言わず、紬もその手を取る。

ただ、それだけで。

 

映画の余韻と、真人の掌の温もりが、

紬の胸の奥をじわりと満たしていった。

 

映画館を出たあと,

真人はしばし紬を見つめ、それから悪戯っぽく口を開く。

 

真人「紬。映画見てる間に、呪力が少し回復してる。……今の状態なら、“君ひとり”なら飛べそうじゃない?」

 

紬「ん……ああ、そうかも」

 

言われてみれば、全身を包んでいた倦怠感はだいぶ薄れている。

 

真人が視線で示す先に、ふもとの駅があった。

この映画館は高台にあり、見下ろせば駅のホームが小さく見える。

 

真人「確か帰る方向って、あっちだろ? 誰も見てないし、騒ぎにもならない。……ちょうどいい練習じゃん」

 

周囲は人影もまばらで、近くにあるのはゴミ捨て場くらい。

真人が指す駅は、紬が使ったことはないが、家まで繋がる路線だ。

 

紬「……わかった。やってみる!」

 

“瞬間移動を帰り道の一部に使う”

——その非日常に、紬の胸が高鳴る。

 

飛ぶ前に、ふと尋ねた。

 

紬「ねぇ真人……明日は会える?」

 

真人は小さく笑って答える。

 

真人「明日かー。午前中は陀艮の領域でサッカーするんだけど……午後なら空いてるよ」

 

紬「やった! じゃあ……14時にいつもの場所で、どうかな?」

真人「いーよ。じゃあそれで」

 

紬「ありがとう! また明日ね、真人!」

真人「うん。バイバイ」

 

真人が軽く手を振る。

その姿を嬉しそうに見返してから、紬は一息で呪力を練り上げた。

 

——バシュンッ。

瞬きする間に、紬の姿は掻き消え、

高台のふもとの駅へとワープした。

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