【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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刃と笑み

人気のない路地裏は、

夕暮れの残光が高いビルの壁に切り裂かれ、

赤黒い影を長く伸ばしていた。

 

その路地裏の奥。室外機の上。

真人は片膝を立てて腰掛け、長い指を組みながら,

愉快そうに紬を見下ろしていた。

 

真人「そもそも呪霊ってのはさ——

人間から漏れ出した負の感情の集合体。

だから、共通認識のある“畏怖”のイメージは、強力な呪いとして顕現しやすい」

 

紬「共通認識の畏怖……地震、雷、火事、親父,みたいな?」

 

真人「……大分古くない?ソレ」

 

くつくつと笑いながらも、

真人はすぐに口調を戻し、薄暗がりの中で淡々と続ける。

 

真人「でも、概ね正解だよ、紬。

怪談話とか墓地とか、そういう漠然としたものへの畏怖からも呪霊は生まれる。

でもね——君が今挙げたような、実在するモチーフに根差した恐怖の方が、遥かに強力な呪いになる」

 

紬「じゃあ、真人も……実在するモチーフへの畏怖から生まれた呪霊なの?」

 

その問いに、真人はわずかに目を細める。唇がにやりと持ち上がった。

 

真人「あはは……お目が高いね、君。俺が“強い方”の呪いだって、わかるんだ?」

 

紬「そりゃあ……だってさ、あるあるじゃん?強い怪異ほど、人間に近い……みたいなの。だとしたら、真人は、その最上位って感じだし」

 

真人「あははははっ!」

 

乾いた笑い声が路地裏に響き、壁に反響する。

 

真人「いやぁ……“強いほど人間に近い”か。……漏瑚が聞いたらなんて言うかな、コレ」

 

紬はきょとんと首を傾げ,ぱちぱちと瞬きをした。

紬「???」

 

怪訝そうな視線を向けられても、真人は肩をすくめるだけだった。

 

真人「でもね、君の言ったこと……大体合ってるかも。

俺の発生源は——人間。人が人を憎み、恐れた,

その腹から生まれた呪いだよ」

 

紬「人間……人が人を……」

そしてふっと息を飲み、目を丸くする。

 

紬「って、それ……ラスボス級のやつじゃん! ……やっぱり……」

 

真人の口元が、また緩やかに吊り上がる。

その笑みは、何かを愉しむ捕食者のそれだった。

 

緩やかに笑ったまま,真人は続ける。

 

真人「でさ、人間の畏怖するモノから呪霊が生まれるって言ったけど……

それは人間の負の感情をベースとするエネルギー、“呪力”がそれらに集まるからなんだ」

 

紬「呪力……。……やっぱ、“魔力”みたいなのあるんだ…」

軽く頷き、ぽつりと続ける。

 

紬「ってことは、呪霊って……自然発生する魔物、

みたいな感じってことか。なるほどなるほど…」

 

口元に手を当て、なぜか納得したように頷く紬に、

真人は軽く首を傾げる。

 

真人「???……なんか君、突拍子もない理屈で納得してる気がするけど……」

 

肩をすくめつつ、室外機からひょいと降り、歩み寄る。

 

真人「まあいいや、話を続けるね。呪力ってのは、

俺や君……量の大小はあれど、呪霊も人間も皆が持ってるエネルギーだ。その用途は、身体強化にも使えるけど——」

 

真人は口の端をつり上げた。

「面白いのは、コレ。“術式”。……君ふうに言うなら、“魔法”かな?」

 

その言葉と同時に、真人の右腕がぐにゃりと変形し、

長く鋭い刃に変形。

次の瞬間——刹那の横薙ぎ。

 

ギィィィィン……ズバァァ!!

 

金属を裂く甲高い音が響き、

路地裏の電柱やブロック塀が真横にスパッと切断された。

遅れてガラガラと崩れ落ち、土埃が舞い上がる。

 

紬「えっ……すご……!!」

目を丸くし、驚きと興奮を混ぜた声をあげる。

 

真人は刃を解き、腕を元に戻す。

「俺の術式、“無為転変”。自分や他人の魂の形を変えるんだ。魂が変われば、肉体も連動してそれに従う」

 

——その時。

 

住民A「何事だ!?」

住民B「でっ……電柱が!!」

 

路地の向こうから、騒ぎを聞きつけた住民たちが顔を出す。

 

紬「あっ……」

胸がひやりとする。

(やば……真人は他の人には見えないし、これ……私のせいになるんじゃ…)

 

だが、その思案も一瞬。

紬が住民たちに見つかる前に,

——真人の手がすっと紬の手を掴み,

そのまま路地裏の脇道へと案内する。

 

真人「見せてあげるよ。俺の“実験場”」

 

振り返ることもなく、騒ぎなど意に介さず。

真人は,紬に笑いかけながら,

さらりとそう言ってのけた。

 

 

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