【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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待ち合わせと悪魔の誘い

次の日。日曜日。

紬が目を覚ましたのは、朝の10時だった。

 

火曜、水曜、木曜——真人と会った日は、瞬間移動で倦怠感の残る身体を引きずって帰宅する、という日々が続いていた。

楽しい時間の余韻に浸っていたせいで、疲れの蓄積には気づかなかったが……昨日,呪力を限界まで使い切った反動で、

それらが,一気に眠気として襲ってきたのだ。

 

(危なっ……待ち合わせ、14時で良かった……)

 

ボサボサの髪をとかし、遅めの朝食——

というよりブランチをとる。

食後,呪力を体内で一周させ,全快を確認。

この呪力循環も,今のタイムは2分10秒。

3分かかっていたときから比べると,だいぶ手慣れてきていた。

 

クローゼットを開け、この日の服を選ぶ。

 

首元に透け感のあるキャンディスリーブの黒ブラウスに、

焦茶のミニタイトスカート。

長い黒髪は白のシュシュでポニーテールにまとめ、

足元はスポーツサンダル、ショルダーバッグは昨日と同じ。

 

真人と会う以上、血がつく可能性は常にある。

好みのフリル服は避け、シックな服装にしている紬だが——

なんかこの路線のほうが似合っている気がしてきている。

 

出かける準備をしていると、

廊下から母親の声が茶化すように響いた。

 

紬の母「紬〜、“まおくん”はそういうシックなのが好みなの?」

紬「いや、別に……そういうんじゃないよ」

紬の母「あら、そう?でもそういう大人っぽいの、お母さんが勧めても『フリルがいい』の一点張りだったのに。

……やっぱり、恋すると変わるのかしら?」

紬「うるさいなぁ!だから、友達だってば!」

紬の母「ごめんごめん……でも似合ってるわよ、紬」

 

母親はそう言って台所へ引っ込んだ。

 

——その数分後。

今度は父親の声が背後から飛んできた。

 

紬の父「紬、ちょっといいか」

紬「なに?」

紬の父「“まおくん”ってさ……どんなやつなんだ?」

紬「クラスメイトだよ。オタク友達の」

紬の父「部活は?スポーツやってるとか、何か目標あるとかは?」

紬「うーん、そういうのは……ないかな」

紬の父「ふぅん……」

 

父親の声色は淡々としていて、感情が読めない。

ほんの一瞬、紬の心臓が強く脈打った。

 

紬の父「……まあ、変なやつじゃないならいいけどな」

紬「大丈夫だって!心配いらないから」

 

紬はそのままスポーツサンダルを履き、

ショルダーバッグを肩に掛ける。

 

紬「じゃあ、行ってきます!」

 

背後からは母親の明るい「いってらっしゃい!」と——父親の、小さなため息が追いかけてきた。

 

13時50分。

約束の10分前、紬はいつも通り電車に揺られ、地下通路を抜け、実験場に辿り着いた。

 

その日、空気はいつも以上に血の匂いが濃い。

そして真人は、配管に腰掛けるでもなく,ハンモックに寝転がるでもなく,

地面に立ったまま地下通路の方を見据えていた。

——まるで、紬が来るのを待っていたかのように。

 

真人「お、紬。待ってたよ」

視界に捉えるや否や、真人が片手を軽く振る。

その仕草に、紬の胸がひそかに跳ねた。

 

駆け寄る紬に、真人はずいと歩み寄り、指の間に挟んだ小さな物体を見せつける。

片手に三つずつ、計六つ——指ほどのサイズの、ストーンチョコのような“改造人間ストック”。

 

真人「ついにさ、これ、ほぼ失敗なしで量産できるようになったんだ〜!」

紬「え……待って、早っ! 前は“一個だけ成功”って言ってなかった!?」

 

脳裏に蘇るのは、水曜日の会話。

——大きくできるってことは、小さくもできるの?

——あ〜、そっちは今練習中なんだけどね。でも、一個だけ成功したやつがある。

 

真人「ふふっ、成長してるのは君だけじゃないってことだよ」

 

得意げに言い、軽くストックを転がしてみせる。

 

真人「これ、めっちゃ便利なんだよね。駒にも飛び道具にもできるし」

 

それを聞き,紬は感心混じりの苦笑をする。

 

紬「なんかもう……真人の能力って自由度えぐいよね。敵のグロテスク変形から自分のスタイリッシュ変形、ヒールまでできて……その上で持ち運びの飛び道具まであるとか。……真人ってさ,実は術式2つ3つ持ちなんじゃないの?」

 

真人「あははっ、そんなのないない。あくまで俺の術式は“無為転変”だけだよ」

 

真人は笑いながら首を振る。

 

真人「俺がやってるのは一貫して“魂の変形”。君の言う“変形”も“ヒール”も、結局はその副産物に過ぎないんだ」

 

紬「ふぅん……??」

 

相変わらず、変な説得力だけはあるものの,説明はさっぱりだ。

首を傾げる紬。

 

しかし真人は、それを気にする様子もなく、一歩、紬との距離を詰める。

青と金のオッドアイが、紬の緑の瞳を映し込み——

邪悪な笑みを形作った。

 

真人「それよりさ……面白いおもちゃを見つけたんだ。試してみない? 俺と君の“連携”」

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