【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

23 / 51
人を傷つけるのが嫌なんじゃなくて

紬「はあっ、はぁ……」

 

紬の肩が大きく上下する。

もはや恒例行事の,瞬間移動の反動としてやってくる倦怠感。

加えて、先ほど、真人の背から振り落とされかけた際の,心臓のバクバク。

そのダブルパンチで、息を荒げていた。

 

そんな紬を、真人は背からそっと下ろしながら、上機嫌に尋ねた。

 

真人「連携、大成功じゃん、紬!

いや〜、こうも綺麗に決まると気持ちいいね〜!

……ねぇ,紬てきにはさ、どうだった??」

 

紬「あ………」

 

呼びかけに、紬はようやく我に返り,

目の前の光景を見つめる。

 

ついさっきまで命を持って動いていたふたりの人間は、

今や血の海に沈んでいる。

辺りには内臓と血が飛び散り,その匂いが充満していた。

 

明確に,紬が加担して作った地獄——

その真っ只中に、今、立っている。

 

——それなのに。

 

それなのに。

 

紬の心は、痛まなかった。

 

それどころか、胸の奥にあるのは——

どこか、ゾンビゲームで一角を制圧した時のような、プレイヤーとしての”達成感”。

 

紬(え……なんで……?

私、人を殴った時は、あんなに……嫌だったのに……)

 

——ふと、思い出す。

 

あの日。

木曜日、金槌で人を背後から殴り倒したとき。

紬の手首から肩にかけて、ずっしりと響いてきた。

後頭部の骨が鈍く軋む——あの、あまりにも生々しい“感触”。

 

でも、今回は。

 

——自分は、ただ“飛んだだけ”。

 

手を下したのは、真人。

この手は、何もしていない。

 

そして、思い出す。

真人の実験場で,変わり果てた"元人間"たちを見たとき。

真人が,目の前で人間を改造したとき。

恐怖は,そして生理的な嫌悪感は,あった。

 

でもそれは、割と早く,消え失せた。

早い段階で,“慣れてしまった”のだ。

 

点と点が、線で繋がる。

 

紬(……私、人を傷つけるのが嫌だったんじゃない。

“あの感触”が……嫌だっただけなんだ……)

 

だから今回は、痛まない。

血も、肉も、死も、自分の手を通していない限り——

“現実味”がない。

 

それに気づいたとき、紬は素直に、言葉を漏らした。

 

紬「なんか……達成感、あったかも……」

 

真人「え!? マジで??」

 

真人が素で驚いた声をあげる。

どうやら、この答えは予想外だったらしい。

 

真人「いやだって、君、人殴った時、超動揺してたじゃん?」

 

紬「……アレは、金槌越しの“感触”があったからさ。

……でも今回は、私は飛んだだけで……やったのは、その,……真人じゃん?」

 

真人「ええ〜? ……ってことは、つまり君、俺がやる分にはOKってこと??」

 

真人は、からかうような笑みを浮かべつつも、

どこか本気で楽しそうだった。

 

紬「あ、……いや〜,それは……」

 

真人に改めて言葉にされると、我ながらやばいことを言っているな、と自覚し,紬は言い淀んだ。

 

けれど——

 

真人「いや〜、ほんと面白い。素質あるじゃん、君。

そういう正直なの、むしろ好きだよ、俺??」

 

紬「あ………」

 

その言葉を聞いた瞬間。

真人に“認められた”という感覚が、胸に灯る。

 

心のどこかで、自分を責める声があった。

でも——真人が笑ってくれるなら。

真人が、面白いって言ってくれるなら。

 

——それだけで。

 

なんかもう,これでいいや,と。思ってしまった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。