【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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実験場への招待

真人が紬を案内したのは、路地裏の脇道の奥,

マンホールを降りた先の,

じめっとした湿気がまとわりつく地下通路。

足音がコツンコツンと響き、やがて視界が開ける。

 

川の脇に、巨大な配管が何本も走っている。

そこには、真人がつけたのであろう、

裸電球がいくつも吊るされ、

ぼんやりとした光を落としていた。

電球の下には——

 

異形。

 

腕が不自然に長く垂れ下がり、目が三つあるもの。

上半身だけが膨張し、下半身は干からびたもの。

皮膚が爛れ、骨と肉が入り混じったもの。

 

ゆらり、ゆらりと動くそれらは、しかし異様に遅い。

生命力が抜けかけているのが、一目でわかる。

 

真人「あー、良かった。まだ生きてたんだ」

「急に形変えるとすぐ死んじゃうけど、

ゆっくりやれば割と長持ちするね」

 

紬「……?? なに、これ……」

 

困惑の声。

真人は振り返りもせず、淡々と続ける。

 

真人「俺の実験だよ。人間の魂の形を変えたら、

どのくらい持つのか,っていうね」

「部分的な変形なら大体は問題なくできるんだけど……

大規模変形となると、大体ショック死で、すぐ死んじゃうんだよね〜」

 

“人間”

“実験場”

“目の前のバケモノ”

 

その三つが紬の脳内で一本の線に繋がった瞬間、

背筋に冷たいものが走った。

 

紬「……待って。真人、もしかして私を……実験体に……」

 

思わず半歩後ずさる。

だがその背中に、真人の手が優しく置かれた。

 

真人「大丈夫。君は殺さないよ」

 

柔らかな声色が、逆に逃げ場を塞ぐ。

 

真人「……だって、君は他の人間とは違う……“特別”だから」

 

紬「え……“特別”……?」

 

その言葉が、じわじわと胸に染み込んでいく。

恐怖の色は薄れ、再び別の感情——好奇心が顔を出す。

 

真人は微笑み、ふっと距離を詰めた。

湿った空気の中、彼の声が耳元で低く響く。

 

真人「術式ってのは、生まれつき肉体に刻まれてるもの」

「人間で術式持ってるやつなんてほんの一握り……

でも、君にはある」

 

ぐいっと顔が近づく。

紬の,緑の双眸に,真人の青と金のオッドアイが映り込む。

 

真人「それも——とびきり強力なやつがね」

 

息を飲む間もなく、唇が笑みを形づくる。

 

真人「“瞬間移動”だよ」

 

紬「……“瞬間移動”」

 

胸が、過去最高に高鳴っていた。

 

主人公だけに訪れるあの展開——

「君には特別な力がある」。

まさかそれが、自分に降ってくるなんて。

 

真人は、紬の心臓の鼓動まで読み取ったかのように、

爽やかに続けた。

 

真人「今はまだ眠ってる力だけど……

俺なら起こしてあげられるよ。魂をちょっと弄って、脳の構造を少し変えれば一発」

 

紬「え、魂……を……」

 

胸の高鳴りに,冷たい波が混ざる。

再び視線が、周囲に並ぶ“元人間”たちへと向いた。

ぐにゃりと歪んだ手足、爛れた皮膚、干からびた下半身——。

 

紬(もしかして……私も、弄られたら……ああなる……?)

 

瞬間移動は魅力的だ。

けれど、それでこのグロテスクなビジュアルになるのはごめんだ。

紬が、二の足を踏みかけた——

 

その瞬間。真人の掌が、ぽん、と紬の頭に置かれた。

 

真人「——無為転変」

 

紬「あっ、ちょ——」

 

ぼやあっとした熱が、頭の奥に広がった。

まるで額にカイロを押し当てられたような、柔らかい温もり。

痛みはない。身体が変形することもない。

 

真人は、パッと手を離した。

 

真人「はい、終わったよ〜。覚醒完了。これで君は、瞬間移動が使える」

 

紬「えっ……もう!?」

 

あまりのあっけなさに、素っ頓狂な声が漏れる。

“魂を弄る”と聞いた時点で、もっとヤバい何かを覚悟していたのに。

 

紬「待って……ほんとにこれだけ?

なんか代償あったりしない??

魂だけ抜かれて……今の私、実は抜け殻!ゾンビ状態!!……とか……」

 

紬が連想する、「魂」に関連する、力をくれる存在といえば

——あの某ホワイトネコウサギだ。

可愛い顔して、魂の契約を持ちかけるヤバいやつ。

それと似たようなものを想像して、

思わず背筋に冷たいものが走る。

 

真人は肩を揺らし、笑う。

 

真人「なにそれ、アニメかなんかの話??へーきだよ。

瞬間移動は、君が元々持ってた術式。俺はそれを覚醒させただけで、力をあげたわけじゃない」

 

紬「......それなら、いい,けど.....」

 

ここで、紬はこの話を切り上げる。

まだ"代償"の有無については半信半疑。

しかし,これ以上真人を問い詰めても、

紬が確信をもって納得できる、

ちゃんとした答えは返ってこないだろう。

 

正直、今は、それよりも……

興味の矛先は別にある。

 

紬「……ねぇ、じゃあ——今、私……瞬間移動、使えるの?」

 

真人は唇の端を悪戯っぽく吊り上げた。

 

真人「うん。使えるよ。やってみる?」

 

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