【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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一方その頃part1

紬が,五条悟による尋問を受けていたちょうどその頃。

 

真人がいたのは,紬と会う"いつもの場所"。

裸電球にぼんやりと照らされた,

川の脇の地下通路の実験場。

 

ハンモックに寝転がったまま、退屈そうに足をぶらぶらと揺らす。

片手には開きかけの文庫本。だが、目はほとんどページを追っていなかった。

 

真人「……はぁ、今日、紬来ないな〜」

 

ぽつりと、そんな独り言がこぼれる。

 

(瞬間移動、ヒュンってなるの面白かったのに。

あと、小型化できるようになったって見せたかったのにな。

人間って、特に女は“可愛いの好き”って夏油が言ってたし……

絶対、紬もウケると思ったんだけどなぁ)

 

小さく溜め息をついて、真人は思考と同時に姿を変える。

すっと、その体が縮まり、少年サイズに。

くるんと回って、また元の大人の姿へと戻った。

 

真人「……ま、ひとりでやっても、反応ないしね。つまんないや」

 

言いながら、ぴょんとハンモックから軽やかに飛び降りる。

西の空には、すでに夕暮れの翳りが滲み始めていた。

 

真人「ま、来ないもんは仕方ないか。……明日来たら、文句言おっと」

 

そう、呟く声はあくまで軽い。

彼にとっては、今日が少し退屈な一日だった、ただそれだけのこと。

 

そのまま、真人は手を振るように軽く伸びをして、

本来の拠点——陀艮の結界が張られた“あの海辺の別荘”の方角へと、足を向けていった。

 

 

すべてを失っていた紬のことなど,知る由もなく。

 

 

—————

翌日。

寮のベッドで紬は目を覚ました。

どうやら、泣き疲れたまま眠ってしまったらしい。

 

身を起こし、重たい身体を引きずるようにして

寮の食堂へと向かい,静かにパンを口に運んでいた。

 

そのとき。背後からあの声。

 

五条「おはよう、紬。早速だけど、今から君の制服採寸に行くよ——」

 

その言葉が終わる前に、五条悟は紬の顔を一瞥し。

 

五条「……って、その顔。昨日、泣いてた?」

 

紬「…………っっ」

 

瞬間、紬の警戒心がせり上がる。

昨日のこと、あの修羅場を見せつけた男に、泣き顔を見られた——それがたまらなく嫌だった。

 

しかし、五条はそんな敵意などどこ吹く風。

 

五条「まあ、正直、無理もないけどね」

 

その言い方には、思いのほか感情がこもっていた。

——昨日、あれだけのことを経て、まだ人間らしく泣ける。

そんな“普通”を紬が保っていたことに、安堵しているようにも思えた。

 

五条「これから同級生に会うけど、君が呪霊と繋がってたことは伏せておくよ。

術師経験ありのスカウト入学ってことにする。

……超基礎的な呪力操作はできてるし、今さら“一般人あがり”はちょっと無理あるからね。

設定としては、君の母親が術師で、そこから呪術を教わってた、ってことにしておく」

 

紬「……わかった」

 

紬は短く答える。

誰にも過去を問われないというのは、都合がいい。

 

("あぐり"の設定……ちゃんとノートに書き留めておかないと。今後,証言が食い違わないように,見た目とか、術式とか……)

 

頭の中では、

冷静に“虚構”の管理体制を組み立てはじめていた。

 

だが——

 

紬「……そういえば。なんであんたが、制服採寸の案内までしてんの?」

 

昨日の“尋問”、"親への説明",あれはわかる。

でも、“制服採寸”って、それ……

コイツ,さては暇なのか?と,紬が思いかけたとき。

 

五条「そりゃあ、君、僕の生徒になるわけだし」

 

紬「…………え?」

 

五条「……あれ、言ってなかったっけ?

僕、呪術高専一年の担任だから。君の担任になるんだよ。

だから、今後は“あんた”じゃなくて、“先生”って呼ぶようにね?」

 

紬「…………っっっ!?!?」

 

頭が一瞬、真っ白になる。

 

(ちょ、ちょっと待て……こいつが担任??

いやいやいや、こいつ……こいつに教わるの??

もう……気の休まる瞬間ゼロじゃん……)

 

制服採寸の間も、紬の思考は完全に上の空。

 

ただ、採寸台の上でじっと立ちながら。

ぽつりと思った。

 

(……はぁ。真人……会いたいな……)

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