【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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"グチャッ"という"感触"

そして、昼休みが終わる頃。

三人は、無言のまま校庭に集合していた。

 

重苦しい沈黙を背負ったその空気に、

五条が目を丸くして言った。

 

五条「アレ?どうしたの、みんな? 仲良くしなくちゃダメだよ〜。せっかくの仲間なんだからさ」

 

その軽口は、どこまでも軽く——

しかし空気はまるで動かない。

五条は苦笑しながら肩をすくめると、あっさり切り替えた。

 

五条「……じゃ、廃校向かうね。ついてきて」

 

 

ほどなくして、一行は廃校の前に到着する。

 

伏黒が足を止め、辺りを見渡して呟いた。

 

伏黒「……いますね。呪い」

 

五条「でしょ?手頃な場所としてリサーチ済みだからねー」

 

五条は軽くそう言ってから、

紬の前に立ち、小ぶりの刃物を差し出した。

 

刃渡りは短めだが、幅があり、軽くて扱いやすそうな一本。

 

五条「紬の術式は攻撃用じゃないからね〜。呪霊を祓うときは、これを使って。呪具って言って、あらかじめ呪力がこもってる武器だから、呪霊にも効くよ」

 

そして、あっさりと宣言する。

 

五条「じゃあ、いってらっしゃい。みんな」

 

その声を合図に、伏黒・釘崎・紬の三人は、廃校の中へと足を踏み入れた。

 

——中に入った瞬間。

そこは既に、呪霊の巣窟と化していた。

 

伏黒がすぐさま周囲を警戒しながら言う。

 

伏黒「数だけの雑魚……じゃねえな。多分、まとめてる“親玉”が一体いる」

 

そう言って、手を影の形にかざす。

 

伏黒「玉犬・渾」

 

その瞬間、床から滑るように影が走り、白と黒の毛並みの犬が姿を現した。

 

紬「……犬?」

 

思わず漏れた紬の声。

その姿に、ほんの少しだけ——心が和らぐ。

ちょっとだけ、触ってみたい気がした。

 

伏黒「こいつで索敵して、親玉を叩きに行くぞ。ついてこい」

 

釘崎「……了解。任せたわよ」

 

玉犬を先頭に、三人は廃校の廊下を走る。

 

途中、どこからともなく雑魚呪霊が次々と飛びかかってきた。

 

伏黒は影から取り出した黒い刀で斬り祓い。

釘崎は「芻霊呪法・簪!」と叫び、釘を打ち放ち、遠隔で爆ぜさせて、応戦していく。

 

そして——紬もまた。

五条に渡された呪具を構え、呪霊に斬りかかった。

 

斬撃が呪霊を断ち、黒煙のように霧散する。

 

その瞬間。

紬の体に走ったのは——手首から肩にかけて伝わってきた、

ぐちゃり、とした生々しい“感触”だった。

 

紬(…………あ。これ、無理かも……)

 

あの嫌な感触。

 

思い出すのは、先週の木曜日。

真人に言われて、金槌で人間の後頭部を殴ったときの、

あの感覚。

骨が軋む音と、掌に残った生ぬるい圧。

 

同じだった。

 

けれど、手を止めている暇はない。

次の呪霊がもう飛びかかってくる。

 

紬(嫌……でも、やらなきゃ……!)

 

覚悟を押し殺しながら、紬は再び刃を振るった。

 

ひと段落ついたところで、釘崎が言った。

 

釘崎「桐生、アンタなかなか悪くないわね」

 

軽口ではあるが、確かな評価だった。

 

だが——

紬に返事をする余裕はない。

息を荒げ,必死に吐き気と戦っていた。

 

(……おととい。真人と連携したときは。

私が真人ごと敵の背後に飛んで,

真人が殺すっていう奇襲作戦で。

私は“飛んだだけ”で、真人が呪術師を殺して。

平気だった。達成感さえあった)

 

(私が移動要員で、真人が下手人。

真人が,それを"連携"として提案してくれた。

———それはきっと。

殺すための"力"なら私より真人のが圧倒的に上で

中途半端な"力"ならそもそも改造人間で代替が効くから,

私は"移動要員"特化にするのがいい,

っていう合理的な判断だったんだろう)

 

(———それが良かった。

それが,ちょうどよかったんだ。)

 

でも。

 

(呪術師なら、こうして……自分で呪霊を殺さなきゃいけない)

(この状況で、“私は飛ぶだけでいい”なんて……通るわけない)

(人手不足,って言ってたし……きっと,"ひとりで戦えるか"が重視されるんだろうな……)

(でも………この感触、慣れない…………嫌だ、嫌だ、嫌だ……)

 

呪霊を斬った時の“グチャッ”という"感触"は,

ただの物理的な衝撃じゃない。

 

それは、紬にとって。

人を斬り、人を殺すということと,なんら変わらないものだった。

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