【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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ワープする少女

紬「使ってみたい!!」

即答だった。

 

瞬間移動——アニメや漫画にしか存在しないはずの力が、

今、自分の中にある。

その現実が、心拍数を跳ねさせる。

 

真人「OK……じゃあ、ね」

 

真人の手が、

ためらいもなく紬の手を包み込む。

指先まで熱を帯びたような感覚。

 

紬「……あ」

繋がれた手の感触は、拒めない。

 

真人「……集中して。脳の術式回路、この辺かな……」

 

真人が,再び紬の魂に触れる。

頭の奥の一点が、ぼやあっと熱を持ち始めた。

真冬にカイロを当てられたような、

やわらかくて確かな温もり。

 

そこが——発動の引き金。

 

真人「この辺に、呪力を込めて」

 

紬「え、呪力って——」

 

戸惑いの言葉が口をついて出かけた瞬間、

真人がぐいっと紬の体を回転させる。

 

視界にガッツリと入り込んだのは,

ぐにゃりと歪んだ腕、爛れた皮膚、

干からびた下半身を引きずる“元人間”たち。

裸電球の下で,未だ蠢いている。

 

紬「っ……」

 

真人「ほら、最初に見た時のあの感覚——“怖い”ってやつ。

それを思い出して」

「恐怖は立派な負の感情。呪力の源になる」

 

紬「…わかった,やってみる…」

 

唾を飲み込み、言われるままに,

視線を逸らさずに意識を集中する。

恐怖が,胸の奥に,黒い渦となっていく。

 

——何かが、自分の中で生まれた。

 

真人「そのまま……今度はそれを、ここに」

 

真人の指が示す脳の一点へ、

黒いエネルギーを叩き込むように意識を流し込む。

紬の体内で,何かが,カチリと噛み合った。

 

紬「……瞬間移動!!」

 

——視界が、一瞬で弾け飛ぶ。

 

全ての感覚が反転し、足元の地面が消える。

紬と真人は,"空"にいた。

 

真下には橋と川。

——絶賛,自由落下⭐︎

 

紬「えええええ!?!?」

 

真人「あははっ!! 成功じゃん!!」

 

落下する中、真人は迷いもなく紬の体を抱え込み。

 

次の瞬間——橋の上に軽やかに着地。

そのまま河川敷へとひらりと飛び降り、

紬をそっと降ろした。

 

紬「あ、えと……ありがと……」

 

急な自由落下の恐怖と、

真人に抱えられた余韻が混ざって、

呼吸が上手く整わない。

 

真人はそんな紬をよそに、冷静に分析を口にする。

 

真人「さっきいた場所から、

高度が跳ね上がったのに加えて、

某オフィスビルの方向に移動したみたいだね」

「座標指定はこれから覚える感じだけど……瞬間移動は本物。

そして、自分に加えて誰かを一緒に飛ばすこともできる」

 

そして、唇の端をゆるく吊り上げ——

 

真人「いいじゃん。……君、合格」

 

瞬間移動の成功。

紬の胸の奥に残っているのは、

自由落下の衝撃と、

真人に抱きかかえられた瞬間の甘い余韻。

 

——それと同時に、全身を包み込むどうしようもない倦怠感。

 

紬「はぁっ……はぁ……」

 

思わず地面に座り込み、肩で息をする。

真人はその様子を気にも留めず、淡々と分析を口にした。

 

真人「……ふぅん。術式での呪力消費、相当“重い”ね。

……ま,それもそうか」

 

視線を上げ、瞬間移動前にいた実験場の方角を見やる。

 

真人「さっき飛んだ上空と、元の場所。……直線で繋ぐと、どうしてもあのガードレールにぶち当たる」

「つまり、君の瞬間移動は“高速移動”じゃなくて,文字通り,空間をすっ飛ばした"ワープ”ってこと」

 

言い終えると、真人は紬の方へ視線を戻す。

冷静な分析の奥に、わずかな愉悦の色が見え隠れしていた。

 

真人「呪力量が増えれば回数も増えるかもだけど、

今の君だと、一回が限界かな」

 

紬は口を尖らせ、地面の砂利を指でいじる。

 

紬「えぇ〜!じゃあ私、もう飛べないの??」

 

真人はふっと微笑み、片手を軽く振った。

 

真人「今は,ね。」

「でも時間経過で呪力は回復する。

人間の回復速度は呪霊より速いし……多分、一日もすればまた飛べるよ」

 

そう言うや、真人はタンっと地面を蹴り、

河川敷から道路へひらりと飛び上がった。

振り返りざま、何でもないことのように告げる。

 

真人「明日、また来なよ。術式の使い方とか、いろいろ教えてあげる。……あの実験場で、待ってるからさ」

 

そしてもう一度、軽やかに跳躍し、ふっと視界から消えた。

 

夕日で橙色だった空は,いつの間にか,

すっかり暗くなっていた。

サラリーマンの帰宅ラッシュの時間で道路が混みだし,

紬のいる河川敷にも,車の走行音が響いてくる。

 

しかし,紬の耳には、車の音はフィルター越しのようで。

真人の声が,まだ刺激的に響いていた。

 

倦怠感は確かにある。だがそれ以上に——

胸の奥を占めているのは、終わらない夢のような“非日常”の余韻だった。

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