【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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南京錠はガチャリと

そして、家入は「じゃ、あとはよろしく」と軽く手を振って退室した。

 

残されたふたりは、しばらく無言のまま。

 

虎杖は、ソファの端からさりげなく腰をずらし、横に空間を作る。

その意図に気づいたのか、紬は無言でその隣に座った。

 

——薄暗い地下の部屋。

テレビには、どこかのアクション映画が流れている。

音だけが、空間を埋めていた。

 

10分ほどが経った頃。

不意に、虎杖が口を開いた。

 

虎杖「なぁ、呪霊ってさ……怖いよな」

 

思わず、紬の口から息が漏れる。

 

紬「…………え?」

 

唐突すぎる一言に、反射的に声が出ていた。

それでも虎杖は、落ち着いた調子で続ける。

 

虎杖「俺もさ、先月の任務で……少年院に行ったんだよ。そこで、呪霊に全然敵わなくて……」

「……大怪我してさ。一回、死んだんだ」

 

紬の目がわずかに見開かれる。

だが、虎杖はすぐにトーンを軽くして笑う。

 

虎杖「でも、まあ!その後、生き返れたんだけどね!!」

「俺、中に“宿儺”って呪いがいてさ。その力で……なんとか助かった。普通じゃないから」

 

そして、少しだけ目を細める。

 

虎杖「でもその時、自分の無力さがすっごく怖くて。悔しくて、情けなかった。

だから、桐生が大怪我して“怖い”って思ったこと、全然変じゃないよ。

むしろ、生きて帰ってきただけで、すごいことだって思う。

……だからさ、焦らず、ゆっくり乗り越えてけばいいと思うんだ」

 

そのまっすぐな言葉は、紬の胸の奥に——静かに染み込んだ。

 

紬「あ…………」

 

思わず、声が漏れる。

 

虎杖の笑顔。言葉の選び方。

——本気で、優しいと思った。

もしかしたら、この人だけは——と、心がわずかに動いた。

 

———けれど、その瞬間。

 

五条「やっほー、悠仁。呪力トレーニングできてる?」

 

軽快な声とともに、扉が開く。

入ってきたのは、五条悟だった。

 

虎杖「あ、五条先生!!三時間、呪力ぶっ通しも余裕って感じ! バッチグー!!」

 

いつもの調子で明るく返す虎杖。

 

五条「へぇ、上達だね。筋がいいじゃん、悠仁」

 

そう言って、五条は紬の方へ視線を向ける。

 

五条「君のことだけど、恵と野薔薇には“療養中”って伝えてあるから、しばらくここで休んでて大丈夫だよ」

「でもね、悠仁は表向き“死亡”ってことになってるから。くれぐれも、バラさないようにね」

 

それは、配慮でもあり、優しさでもあった。

 

——けれど。

 

その言葉のすべてが、

今の紬には“支配”にしか聞こえなかった。

 

五条が,部屋に入ってきた瞬間から。

あの尋問。あの即実戦。

大怪我。恐怖。トラウマ。

何もかもが、フラッシュバックのように。

怯え、嫌悪感,危険信号として,紬の中に湧き上がった。

 

紬の中で,五条は明確な"敵"。

そして、その“敵”と平然と笑い合う虎杖の姿。

———ならば,虎杖も。紬の"敵"だ。

 

紬(……ああ。信じてもいいかもって思ったのに)

(オマエも、結局は“そっち側”か)

 

希望だったものが、裏切りに変わる音がした。

 

ガチャリ。

虎杖に対し,一瞬だけ開きかけた紬の心のドアは。

南京錠の音と共に、閉ざされたのだった。

 

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