【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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追撃拒否

四日後。

当初は三日間の予定だった長野での調査任務は、

村人側の儀式日程の変更で一日延びることになったが、

それ以外は驚くほど何も起きず——

呪霊の気配ひとつ感じられないまま、

拍子抜けするほど平穏に終了した。

 

新田「四日間お疲れ様っす、桐生さん!

信仰の実態とか儀式とか、ばっちり調査できたっすね!

……じゃあ、これから高専戻るっすよ!」

 

明るく言いながら、車のキーを回す新田。

その横で紬は、助手席に体を預けながら、内心ほっと息をついていた。

 

紬(……本当に、呪霊と戦わずに済んだ)

 

あの“グシャッ”と潰れる、命の手応えを、

再び味わわずに済んだ。

それだけで、肩の力が抜ける。

 

だが——安堵は一瞬だけ。

 

紬(……帰ったら、いよいよ)

 

緊張と興奮が、静かに胸を叩き始める。

 

紬(五条と鉢合わせさえ避けられれば……

 資金と物資を回収して、瞬間移動で脱出する。

金庫の位置もカギの保管場所も頭に入ってる)

 

ここまで、一ヶ月かけて準備してきた。

呪力量も以前より増加してきており、

試してはいないが,体感で言うならばおそらく,

今なら《瞬間移動》は自分ひとりなら四回は使える。

距離も以前より伸びている。

2.8kmどころか、実戦での余裕を含めて、もっと遠くへ飛べるはずだ。

 

紬(……絶対、逃げ切れる。真人のところへ還れる)

 

深く息を吸い、車窓に視線を向ける。

見慣れた風景が、少しずつ戻ってきていた。

 

——そして。

 

車が、里桜高校———

順平の通って"いた"高校の前で信号に引っかかり、徐々に速度を落とす。

 

新田「……あれ、七海さん……っすよね?」

「……って,倒れてるの,虎杖くん…?」

 

運転席の新田が、

校庭の向こうに立つ七海と,

地面に倒れ伏す虎杖を視界に捉えた瞬間——。

 

七海もまた、こちらの車を一瞥。

 

次の瞬間。

 

ブルルルル……

新田のスマホが着信音を響かせる。

 

新田「……え、はい……もしもし、七海さん?」

 

七海の声は、低く、そして鋭かった。

 

七海「桐生さんは……そちらに一緒ですよね。

  車を降りて,彼女を連れて、大至急こちらに来てください」

 

一瞬、車内の空気が変わった。

 

紬「……えっ?」

 

新田も顔を強張らせる。

 

新田「……了解っす。すぐ向かいます」

 

車を降り、新田と紬は七海のもとへ駆け寄る。

七海の表情は険しく、

その場の空気を一瞬で張り詰めさせる。

 

七海「新田さん、虎杖くんをお願いします」

 

視線の先——地面には、穴だらけの体で気絶している虎杖。

その無惨な姿に新田は一瞬息を呑む。

 

新田「えっ……あ、はい!」

 

即座に返事をしつつ、虎杖のもとへ駆け寄る新田。

七海はそのまま紬に向き直り、鋭い口調で告げる。

 

七海「桐生さん。君の瞬間移動は——“手を繋いだ相手”と、“視界内”なら飛べる。そうですね?」

 

紬「あ……はい……」

(……待て。どこで知った? 私、説明なんて——)

 

紬の脳裏に疑念が走る。

 

だが、五条悟の“六眼”は、見ただけで術式の仕様を見抜く。

つまり、五条が一度紬を見ただけで条件を理解し、

それを七海にバラしていたのだ——もちろん紬は知る由もない。

 

七海「失礼します」

 

七海は、有無を言わさずの身体を抱えて里桜高校の校舎の屋根へと飛んだ。

即座に紬を下ろし、その手を掴んだまま眼下を指さす。

 

七海「あの川——橋の付近が見えますか」

紬「あ、はい……」

 

七海「先程交戦していた呪霊が、排水溝からあそこへ逃げました。瞬間移動なら追いつける。私が追撃します。私を連れて飛んでください」

 

紬「………っっ!!」

 

その瞬間、紬の胸に沸き起こった疑惑。

七海が指す一点。それは、真人の実験場の場所———

 

紬「あの……戦ってた呪霊って、どんな——」

七海「ツギハギ顔の人型呪霊です。改造した人間を——」

 

七海がそこまで言いかけた瞬間。

 

紬「っっっ!!」

理解する。七海は、さっきまで真人と戦っていた。

そして今、紬にその追撃を手伝えと言っているのだ。

紬(やるわけ,ない,だろ———!!)

 

バチィィィッッ——!!

 

紬は、七海に掴まれていた右手を渾身の力で振り払う。

 

次の瞬間。

 

バシュッッッ——!!!

 

紬の姿は屋根から消える。

向かった先は——七海が示した真人の実験場。

紬は“単独”で瞬間移動を果たしていた。

 

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