【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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緊急救助依頼

数週間後。

 

紬と真人は、すでに例の高級焼肉店に三度足を運んでいた。

二回目の来店時、

他の呪霊客が途切れたタイミングで,例の焼き師と紬&真人は世間話を交わし、気づけば紬と焼き師は連絡先を交換していた。

 

その日。

ふたりはアパートの一室で、漫画(盗品)を読みふけっていた。

そんなとき——。

 

スマホの着信音が室内に鳴り響く。

 

紬「??……誰だろ?」

 

親とも友人とも絶縁した今、

この生活が始まってから着信など一度もなかった。

真人はそもそも携帯を持っていない。

画面に表示された名前を見て、紬は瞬きをする。

 

紬「あ、あの焼き師だ。……はいもしもし?」

 

スピーカーから飛び込んできたのは、聞いたこともないような絶叫だった。

 

焼き師『紬さんっ!!真人さんっ!!やばいです!!呪術師に追われてます!!!助けてください!!!』

 

息は荒く、ハァ、ハァと途切れ途切れの呼吸音。

ダッ、ダッと地面を蹴る足音の向こうで、

「待てぇ!」「事情聴取に応じろ!」という呪術師の怒声まで混じっている。

 

紬「…………え?」

真人「なにこれ」

 

事態を飲み込めないふたりの耳に、さらに必死な声が届く。

 

焼き師『呪霊のお客さんを対応してるところを……呪術師に見られてしまいました! 捕まったら、あの店は終わりです! お願いです、どうか!!』

 

紬「……どうする?」

真人「んー、あの店潰れるのは嫌だし。助けるか」

紬「了解。……場所どこ?」

 

焼き師『あっ……今、ナリコビルの辺りです! でも走ってて……えっと……うわっ!!』

 

おそらく、呪術師が足止め狙いで放った攻撃を間一髪で避けたのだろう。悲鳴と雑音が混じる。

 

紬は即座に窓を開け放ち、真人の手を掴んだ。

 

紬「ナリコビル……あそこだ」

真人「OK、飛んで」

 

瞬間移動。対象,紬と真人。目的地,ナリコビル。

 

———バシュッッ!!

 

次の瞬間、紬と真人の姿はアパートから掻き消え,

ナリコビル近くの路地に姿を現した。

 

視界の先——商店街の通りを、あの焼き師が全力疾走している。

制服のまま飛び出してきたのだろう、腰の前掛けは乱れ、息は荒い。

その腕には、小柄な呪霊——例の焼肉店で見かけた常連客の姿。

「ヤキシ……」「ハシッテ……」と、途切れ途切れの言葉を紡ぐあたり、“会計”の概念を理解できる程度の知能はあるらしい。

しかし抱えられるほどのサイズゆえ、戦闘は不得手だろう。

そして焼き師の背後には、二人の呪術師が迫っていた。

 

「紬さんっ! 真人さんっ! こっちぃぃぃ!!!」

焼き師は紬と真人を横目に認めるや、進路を変えてこちらへ駆け寄ってくる。

 

「アレって……桐生紬!?」

「ツギハギ……七海さんが言ってた…っ!」

 

呪術師たちが驚愕の声を上げる中、紬は一瞬の迷いもなく真人の背に飛び乗り、その手を強く掴む。

 

——バシュッッ!!!

一瞬で、二人は呪術師たちの背後へと“瞬間移動”していた。

 

振り返る間すら与えず、真人は嬉々とした笑みを浮かべ、

片方の呪術師へ手を伸ばし——触れる。

グニャァァ……グジャッッッ!!!

肉体は一瞬で潰れ、無残な肉塊へと変わり果てた。

 

同時に真人は片手間にもう一人に足払いをかけ。

「うわっ……ぐ!」

地面に倒れ込んだ呪術師の視界に映ったのは,

冷ややかな紬の瞳,

にやりと笑う真人,そして——

 

「——はい,お終い」

 

——ザシュッッッ!!!

ランスへと変形した真人の脚が、その頭部を容赦なく貫いた。

 

…路地に残ったのは,静寂。

血の匂いだけを残し、呪術師たちの気配は完全に絶えている。

 

「……はぁっ、はぁっ……助かりました……!」

焼き師は膝に手をつき、全力疾走と極度の緊張で肩を上下させていた。

その腕の中の小さな呪霊客も、「タスカッタ……」と、か細く呟く。

 

「無事でよかったね」

紬が小さく笑いかけると、焼き師は汗で額に張りついた髪を乱暴に払った。

「ほんと、紬さんと真人さんには足向けて寝られませんよ……! もし捕まってたら、店も……この呪霊のお客さんも、全部終わってました」

 

真人は肉塊になった呪術師たちを面倒くさそうに蹴りやりながら、軽い調子で語りかける。

「ま、潰れるのはもったいない店だし。……それに、この子も常連だろ?」

 

「……ヤキシ……マタ、イキタイ」

呪霊客は短い手足をばたつかせ、焼き師の前掛けをぎゅっと掴んだ。

 

「あぁ……もちろんですよ。またお席、取っておきますから」

 焼き師は優しく笑い、そっと呪霊客を地面に降ろす。

 

呪霊客は一歩、二歩と路地の奥へ歩き、振り返って小さく手を振った。

紬も手を振り返す。その姿が暗がりに消えていくまで。

 

「じゃあ俺、店戻ります。……本当にありがとうございました!」

深く頭を下げ、焼き師は全速力で走り去った。

 

残された紬と真人は顔を見合わせ、どちらからともなく吹き出す。

「……あの人、やっぱ面白いわ」

「だね。明日あたり,また行こっか」

 

二人の足取りは、また軽くなる。

夜の街の喧騒へ、溶けていった。

 

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