【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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助っ人は,まさかの?

 

——意識が浮上する。

紬が瞼を開けると、そこは薄暗いオフィスビルの一室だった。

安っぽいソファの上に横たわる紬の全身を、

まだ強い倦怠感が締めつける。胸の奥では、じくじくとした痛みがしつこく脈打っていた。とても起き上がれる状態ではない。

 

視線を動かせば、部屋の奥。

社員用の椅子に掛かっていたものだろう、

ブランケットを手にした真人が、こちらへゆっくりと歩いてくる。その足取りは重く、足を引きずっているようにも見えた。

 

——真人もまた満身創痍だ。

大きく移動する力は残っていない。

それでも真人は、倒れた紬を資材置き場に寝かせるのは忍びなく、この無人のオフィスビルのソファまで運び込んできたのだ。

深夜で、建物内に誰もいないのは幸いだった。

 

真人「……起きた?」

安堵の色を混ぜた声。そのまま無言でブランケットを掛けてやる。

紬は小さく息を整え、「……あ、ありがと」と掠れた声で返した。

 

だが真人の顔には、珍しく陰りが差していた。

——自分が提案した“魂の欠片による緊急脱出”作戦。

その繋がりが、分身に受けた共鳴りの衝撃を紬へも伝えてしまい、大きなダメージを負わせた。

それでも紬は役割を果たし、戦場から真人を救い出したのだ。

 

申し訳なさを滲ませながらも、真人はそれを言葉にはせず。

ただ、ぽつりと一言だけ落とした。

 

真人「……俺の呪力が回復したら、無為転変で治すから」

 

その声は、静かな部屋に溶けていった。

 

しばしの沈黙の後——

紬「……真人。こっち来て、ぎゅってして」

紬はソファの端へ身をずらし、自然と漏れた言葉を口にした。

引かない胸の痛みを、真人に抱きしめられることで和らげたかった。

そして、足を引きずって歩く真人が痛々しく、少しでも休ませたかった。

 

真人は何も言わず、拒む素振りも見せない。

そのまま紬の隣に腰を下ろし、横になって、静かに抱き寄せた。

 

——そこからは、もう体力的にも限界だった。

二人とも、一言も発することなく、互いの体温を確かめ合うように眠りへと落ちていった。

 

翌朝。

オフィスビルの窓からやわらかな光が差し込んでいた。

 

コツ…コツ… ざわ…ざわ…

通勤する人々の足音と話し声が、ビルの外から微かに響く。

真人はその音で目を覚まし、小さく息を吐いた。

 

真人「……あ」

 

使われていない会議室のソファを選んだおかげで、まだ誰にも見つかってはいない。

しかし、もし紬の姿が一般人の目に入れば、すぐに騒ぎになるだろう。

真人なら一般人の口を封じることは造作もないが——

昨日の今日、まだ渋谷に呪術師が残っている可能性は高い。

騒ぎを聞きつけて彼らが現れれば、この消耗した身体では交戦は難しい。

そのときは、紬ごと殺されて終わるだけだ。

 

真人「………仕方ないか」

 

真人はまだ眠っている紬を抱き上げ、人気のない路地裏へと移動する。

幸い、足を引きずらずに歩ける程度には回復していた。

 

紬「…………ん……」

紬が目を覚ます。身体のだるさも胸の痛みも、まだ引いてはいない。

 

真人「…おはよ。あそこにいたら見つかって騒ぎになるからさ」

紬「あ……そっか」

 

少し間を置いて、紬はぽつりと呟いた。

紬「……ここから、どうやって帰ろう……」

 

当然の疑問だった。紬も真人も、長距離を移動できる状態ではない。まだ瞬間移動も使えない。

渋谷から例のアパートまでは、直線距離で五十キロはある。

 

その疑問に対し,真人はあっさりと言った。

真人「それなんだけど……“アイツ”に迎えに来させようよ。助けたときの貸しもあるし、ちょうどいい。確か車持ってるって言ってたし」

 

その一言で、紬の頭にひとりの顔が浮かんだ。

思考のもやが晴れ,一気にクリアになる。

紬「あ、それって……!」

 

その紬の様子に,真人はニッと笑って言った。

真人「そ。例の焼き師」

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