【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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立場表明

放課後、夕暮れ。

再び、あの実験場へ。

 

真人は、巨大な配管の上に腰を下ろし,

足をぶらぶらさせていた。

その姿は、昨日と何も変わらない。

 

真人「——おっ、来た来た」

 

昨日と同じ,軽薄な声。

それを聞いた瞬間、家や学校では氷のようだった紬の心が、じわりと解けていく。

 

真人「早かったね。……待ちきれなかった?」

 

紬「まあ、ね」

 

図星を突かれ、曖昧な返事になる紬。

 

異形の"元人間"たちは、昨日と同じくゆらゆらと蠢く。

——ただ、その中に、明らかな新顔がいた。

 

壁にもたれかかった、巨大なでっぷりとした肉塊。

脂肪のように見える塊が、呼吸に合わせてわずかに揺れている。

 

紬「えと……これは?」

 

真人「ああ、ひとりの人間をどこまで大きくできるかの実験。君が来るまでに試してたんだ」

 

紬「うわ、質量保存の法則に全力で喧嘩売ってるじゃん」

 

真人「そんなの物理法則の話でしょ。魂に質量なんてないからさ。魂を膨らませれば、肉体も膨らむ——当然だよ」

 

紬「ふぅん……??」

 

理屈はさっぱりだが,突拍子もないのに妙な説得力がある。

——というより、そういうものだと受け入れた方が話が早い。

 

紬「大きくできるってことは、小さくもできるの?」

 

真人「あ〜、そっちは今練習中なんだけどね。でも、一個だけ成功したやつがある」

 

真人が懐から取り出したのは、指サイズの——

ストーンチョコのような物体。

よく見ると、目や鼻、口に対応するような穴と、

小さな手らしき突起がある。

 

紬「え、これも……人間?」

 

真人「そう。これは“ストック”用。持ち運びの手駒にして、戦いの中で元のサイズに戻すんだ」

 

紬「戦いって……真人、敵いるの?」

 

真人「そりゃいるよ。“呪術師”——呪いを祓うのを生業にしてる人間たちさ」

 

紬「呪術師……でもそっか、人間 vs 怪異ってあるあるだもんね。真人は“怪異”側だし」

 

真人「相変わらず、変な理屈で納得するね、君」

 

紬「じゃあ……私も真人と会ってるわけだし、“呪術師”に狙われちゃうかな?」

 

真人「あはは、どーだろ。……でも、会ってるのがバレたら、確かにヤバいかもね」

 

紬「え、それ困る。……呪術師って普通の人間に紛れてる? 見分け方とかないの?」

 

真人は,その言葉に,きょとんとした顔を見せる。

だって,今の発言は,明らかに——

 

真人「え,そうくる?……紬,それってさ…」

 

一拍おき,紬の顔を覗き込む。

 

真人「俺が人間の敵って知って,俺の側に付く…ってことだよね?」

 

低く抑えた声。

真人の,紬の立場を明確に問う発言。

 

紬は言葉を詰まらせ、視線がわずかに泳いだ。

 

紬「あ、それは……」

 

一拍置き、深呼吸をひとつ。

 

紬が選んだのは——

心のうちを,偽らずに言うことだった。

 

紬「えと、私……は、

呪術師と呪霊の戦いがどういうものなのかは、

まだわからないし……

戦いに出る覚悟もできてない」

「でも、真人の敵になるのも、

真人と会うのをやめるのも嫌だし……

呪術師に狙われるのも嫌だ。

だから、最低限、呪術師に目をつけられないようには…

しておきたい」

 

真人「へぇ……」

 

短い声とともに、真人の口元が緩み。

探るようだった視線が,柔らかなものに変わる。

少しばかり——嬉しそうに。

 

真人「ま、確かに今の君じゃ、呪術師と戦っても瞬殺されるのが関の山だろうしね。

バレないように隠れとく、ってのは得策かも」

 

飄々とした調子に戻り、

真人は足をぶらぶらさせたまま続けた。

 

真人「呪術師の見分け方、だったよね。

呪術師なら、うずまき模様のボタンをつけた黒い制服を着てるのが多いよ。呪術高専っていう、呪術師を育てる学校の制服なんだ」

「……とはいえ、これは必ずしもそうとは限らない。

呪術師だってオフの日は普通に私服だし、フリーの術師なら任務でも私服だったりするしね」

 

紬「え、じゃあ……私服呪術師は、見分けようがない?」

 

真人「いや、そんなことはないよ」

 

真人は配管から軽く飛び降り、紬との距離を一歩詰めた。

裸電球の下、影が重なる。

 

真人「服装、って言ったのは……

今の君でもできる唯一の見分け方だから。

でも——君がもっと上手く呪力を扱えるようになれば、

相手が術師かどうかなんて、一発で見分けられるようになるよ」

 

声色がほんの少し低くなる。

それは———

甘い誘いであると同時に、確かな挑発でもあった。

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