【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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呪力操作

真人「呪力操作の特訓、やってみる?」

 

紬「お願い!!」

 

即答したその声に、

真人は薄く口元を持ち上げ——思慮を巡らせる。

 

真人「でも君、呪力を練るにはまだ“きっかけ”が要る感じだよね……」

 

昨日は実験場の改造人間を前に恐怖を煽った。

しかし、あれはもう効果が薄い。

真人の視線がちらりと蠢く"元人間"たちをかすめ

——すぐに別の案を探し始める。

 

数秒の沈黙ののち。

 

真人「……ついてきて」

 

足音がコツコツと湿った通路に響く。

地下通路の出口を抜けると、

目の前には川が流れ、堤防の上にはガードレール沿いの細い道。

そこには,通行人がひとり。

 

真人「ちょうどいい」

 

その瞬間——真人の右腕が音もなく伸び、

瞬く間に通行人を捕らえる。

 

通行人「うわぁぁぁぁ!?」

 

見えない何かに引き寄せられ、悲鳴が夕暮れに響く。

 

紬「え、真人!?」

 

戸惑う紬。

その目の前に,真人は通行人をずいと突きつける。

 

真人「——無為転変」

 

瞬間、ボコボコという音と共に,通行人の肉体が膨れ、

骨が軋み、皮膚が膨張と収縮を繰り返す。

 

紬「———っっ!!」

 

グロテスクな光景。

その生理的嫌悪に,息が詰まる。

 

その肩に、真人は左手をそっとのせる。

まるで,安心させるかのように。

 

真人「集中して、紬。昨日と同じ。“恐怖”から呪力を練るんだ」

 

紬「……あ、うん……!!」

 

紬はここで,真人の行動の意図を理解する。

 

息を整え、眼前の変形を直視。

恐怖,嫌悪感……脳裏に黒い渦が巻き起こり、それが胸へ、さらに腹の底へと沈殿していく。

——呪力が生まれる。

 

真人「そう。その調子……今回は術式じゃなくて、こっちに流してみて」

 

真人が紬の魂に触れた瞬間、右腕の奥にじんわりと熱が広がった。

言われるまま、その熱へ呪力を押し流す。

 

真人「OK……一旦、拳を作って。全力で」

 

紬は指先を固く握る。

ずしり、と。今までの自分からは想像もつかないほどの力。

 

紬「え、これ……!!」

 

真人「そう。これが呪力による身体強化。覚えておいて」

 

真人は再び魂に軽く触れ、今度は左腕、右脚、腹、指先、首、背中へと順番に熱を灯していく。

 

紬は,その真人のガイド通りに、呪力を次々に流し込む。

 

最初は力む全身がぎこちなかったが——

繰り返すうちに、少しずつ,呪力が滑らかに流れ始める。

まだところどころ引っ掛かりはあるものの,

身体の内側を,黒い力が水のように循環していく感覚。

 

真人の笑みが、わずかに深くなる。

それは、紬が一歩、成長したことへの確かな手応えだった。

 

真人の右手に掴まれ、

恐怖の材料にされていた通行人は、

幾度も繰り返された変形に魂が耐え切れず、

すでに息絶えていた。

 

その亡骸を、真人は無造作に地面へと投げ捨てる。

 

真人「——はい、よくできました」

 

その右手を紬の頭に置き、ぐしゃ、と撫でた。

大きな掌の温もりが、訓練の緊張をやわらげていく。

 

紬「私、できてた!? 今の!!」

 

力が流れる感覚に胸を高鳴らせたまま、紬は顔を上げた。

 

真人「うん。君は余計なブレーキがなくて素直だし、飲み込みも早い。才能あるよ、紬」

 

短く褒められたその一言に、紬の瞳がきらりと輝く。

熱が胸に広がり、口から次の言葉が溢れた。

 

紬「え、じゃあ——」

 

一拍おき、視線を鋭く細める。

 

紬「私、さっきは“戦う覚悟なんてない”って言ったけど……

この力なら、その、もしかしたら——」

 

真人「あー、それは無理」

 

ぴしゃりとした一言。

 

真人「呪術師は、鍛えた肉体をさらに呪力で強化して戦う。君の細腕に、ぎこちない呪力が乗っただけじゃ,到底勝てないよ」

 

実際は,

ちゃんと鍛えれば弱い術師には勝てそうなものだが。

しかし,そんなことは真人にとって価値はない。

真人が紬に期待するのは,"戦闘員"ではない。

 

紬「えぇ——!?」

 

抗議の声をあげた紬に対し,

真人は右手の人差し指を立ててみせる。

 

真人「試しに力比べしてみる? 俺は指一本でいいからさ」

 

紬はその一本指を両手で包み、全力で自分の方へ引く。

——が、鉄骨でも通っているかのように、びくともしない。

 

紬「むう……ぐ……」

 

右手に力を込めすぎて、腕がぷるぷると震える。

 

真人「ほら、ね?」

 

真人は特に嘲笑するでもなく、当然といった口調で言い放つ。

 

紬「うぅ……」

 

胸に湧いた高揚感が、現実に押し潰され、しゅんと肩を落とす。

“強くなった”——それは、ただの思い上がりだったのか。

 

だが。

 

真人「そもそも君の本業は、呪力強化での戦闘じゃなくて——瞬間移動、だろ?」

 

紬「!!!」

 

はっと顔を上げる。

 

紬「そうだった!!……確か昨日は、上空に飛んじゃって……それで……」

 

その瞬間、昨日の自由落下と,

真人に抱えられた感触とがよみがえる。

頬がわずかに熱を帯び、紬は視線を逸らす。

 

真人はそんな反応を追わず、本題を切り出す。

 

真人「呪力操作を覚えたことで、瞬間移動の精度は上がってるはずだよ。早速、座標指定からやってみようか」

 

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