【呪術廻戦】血と笑みと瞬間移動   作:祈月4777

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マダンテからメラゾーマへ

 

紬「座標指定…瞬間移動で飛ぶ位置、ってことだよね」

真人「そうそう。どこにしてみる?」

 

紬は視線を巡らせ、夕暮れに揺れる風車を見つけた。

 

紬「……あそこ!あの風車の根元にする!」

真人「ん、いいんじゃない?」

 

そう言いかけて——真人の目がふっと細くなる。

 

真人「そういえば君、昨日は俺ごと飛んだよね?俺を対象に含めようとか、意識してた?」

 

紬「え、いや特には…飛ぶってだけで精一杯だったし」

 

真人「ふぅん…」

 

唇に指をあて、数秒の思案。

 

真人「昨日の瞬間移動の時は、俺と君で手を繋いでたよね。だとすると……自身と、触れているもの?

それが自動的に対象になるのかな?」

「…じゃあ、対象指定の実験も兼ねてみようか」

 

真人の手が、ためらいなく紬の手を包み込む。

 

そのまま足元へ視線を落とした先には,

例の通行人の成れの果て。

真人の手により異形と化し,生き絶えた肉体。

 

真人「じゃあ、やってみようか。場所は風車の根元。

そして……今回、君は、自分と“そいつ”を飛ばすつもりで。

俺は飛ばさないつもりでね」

 

紬「え、それ……でも、また上空に飛んじゃったら、真人いないと……」

 

落下死を想像する紬に,真人はあっさりと返す。

 

真人「へーきへーき。その時は全身に呪力を巡らせればいい。さっきやったみたいに。

呪力による強化は肉体強度も大幅に上昇するから,

事故っても死にはしないよ。

仮に怪我しても、俺ならすぐ治してあげられるし」

 

その声音には、軽さと妙な安心感が同居していた。

 

紬「あ、うん……わかった!」

 

胸の奥で、覚悟がカチリと噛み合う。

 

紬の中で,呪力が増えていく。

 

真人「へぇ、"きっかけ"抜きでも呪力を練れるようになったね……上達だ」

 

真人の掌が、紬の頭の一点にぼわっと熱を宿す。

昨日、空に飛んだあの瞬間と同じ感覚。

 

紬「瞬間移動……トリガー……そこ!!!」

 

呪力を一気にそこへ流し込む——

 

バシュッ!!!

 

視界が反転。

次の瞬間、——紬の足は地面を踏んでいた。

風車の影の下。ちゃんと狙った位置。

 

——ただし。

 

飛んだのは、紬と……真人だった。

 

紬「やった、成功……!!」

 

上空に飛ばなかった安堵で、思わずガッツポーズを取る紬。

 

真人「うんうん、座標指定、ちゃんとできたじゃん、紬」

 

その声は上機嫌で、どこか楽しげだった。

 

真人「あの改造人間はついてこなくて、飛んだのは俺と君。つまり、瞬間移動の対象は——自身と、触れている相手。確定だね」

 

そして——次の瞬間、紬の全身を襲ったのは。

昨日と同じ、術式使用後の重い倦怠感。

 

紬「……はあっ、ふう……」

 

足から力が抜け、思わず風車の支柱に寄りかかる。

 

胸を上下させながら、ふと気づいたことを口にした。

 

紬「……あ、でも真人。昨日より、ちょっと楽かも。

昨日はもう立ってられないくらいだったけど……

今は、ギリギリ……なんとか」

 

真人はその様子を見て、満足げに頷く。

 

真人「うん。呪力操作の成果だね。術式発動の時の呪力ロスが少なくなったってこと。無駄が減った証拠だよ」

 

紬「……なるほど。呪力操作が上手くなると、

術式の必要MPが減るってことか……。

昨日はマダンテ並みにMPぶっ込んだけど、今日はメラゾーマで抑えた。そういうことだね」

 

うんうんと自分で納得して頷く紬。

ぽかんとした後、首を傾げる真人。

 

真人「……えむぴー?? ……まあ、君の変な理屈シリーズは突っ込んでも仕方ないしね」

 

飄々とそう言いながら、真人は続けた。

 

真人「でもまだ、一回で呪力切れのライン。二回飛ぶのは無理そうだね。今日は、ここまでかな」

 

紬「う……」

 

紬は口をつぐむ。

——本当は、もっと一緒にいたい。

そう言いかけたが、呪力はもう残っていない。

それに、遅くなればまた親がうるさくなる。

頭の中で自分を納得させる。

 

代わりに、紬は真人の方へ一歩踏み込み、勢いよく言った。

 

紬「真人! 私、今は一回だけど……

そのうちMP消費、メラミくらいに抑えて!

二回飛べるようになるから!!」

 

真人「ん、前半はよくわからなかったけど……まぁ、意気込みがあるのはいいことだよ」

 

紬「——ねぇ、明日も来ていいよね?」

 

食い気味に問う紬。

 

真人は、少しだけ目を細めて笑った。

 

真人「もちろん」

 

ほんの一瞬、いつもの軽薄さをひそめた声音。

それは、からかいでも社交辞令でもない——

純粋な期待の色を帯びていた。

 

真人「待ってるよ」

 

夕暮れの風が風車を回し、カラカラと音を立てる。

その音に紛れても、真人の声ははっきりと紬の耳に届いていた。

 

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