ホビアニ風百合異世界に転生して魔法少女もどきしながらTCGやってます(仮題)   作:朝陽祭

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架空TCGものに触発されて書いてみました

とはいいつつも既存TCGタイトルを元ネタにしたパロディの要素が強いものでもあるので、元ネタがわかる人は「あ、このカード元ネタなんだな」ぐらいの気分で読んで頂けると幸いです


ホビアニ風百合異世界に転生して魔法少女もどきしながらTCGやってます(仮題)

アドラ・ステラカードゲーム。

 

星の導きたる『シグナル』と共に様々なモンスターや呪文を駆使し、7枚の『ヴェール』と呼ばれる守りを剥ぎ取り、相手に攻撃を通せば勝利という、世界的な大ヒットを記録し続けている唯一のカードゲーム。

 

前世で酷似したカードゲームの存在を知るが故に、創作物でよくある異世界転生をしたのだと、幼いながらに私は認識していた。

 

まぁ、あるタイトルを辞めたかと思ったら別のタイトルに手を出したりと、前世でも文字通り死ぬまでカードゲームを趣味の1つとし続けた人間なので、そのカードゲームに興味を持つのは、ある種必然だったのかもしれない。

 

しかもこの世界ではカードゲームの認知が様々な理由によって高く、老若男女問わず楽しんでいるという環境が世界中で既に構築されているので、今世で女性として生まれた私が興味を持っても、両親に特段イヤな顔をされることもなかった。

 

それに、異世界転生をしてカードゲームに触れる、というのにワクワクがあるのも事実だった。

 

テレビで中継されるプロカードゲーマーの対戦では、『シグナルデヴァイサー』という機械に自分が使うデッキ*1と『シグナル*2』をセットしながらゲームを行い、『シグナル』を盤面に展開する際に『シグナルデヴァイサー』を変形させながらカードを取り出すという行為が、前世の感覚でいうヒーロー作品の玩具ギミックのように見えて*3……もしかしたら自分は、そういうホビーアニメ的な作品の、『主人公』になったのかもしれないというような淡い期待を抱いていたからだ。

 

まぁ、そんなことは全然ないどころかむしろモブキャラ未満とでもいうかのように、苦心して作り上げたはずのデッキが上手く機能せず負けるということが日常茶飯事だったのだけれど。

 

それでも、カードゲームに触れるのが楽しくて、近所のカードショップに通い詰めたりすることが、日常に組み込まれていったのだった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★FOCUS:RUKI TATSUBOSHI☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

季節は、春。中学生活最後にして、高校生活の目前たる春休みの最中である土曜日。

 

私こと『辰星(たつぼし) 流輝(るき)』は、予約していた新商品のボックスを買いに行きつけのカードショップ『BLUE PLANE』を訪れていた。

 

このカードショップは毎週土曜日の昼頃からアドラ・ステラの公認ショップ大会も開催しているので、大会が終わって落ち着きだす時間を見計らいながら店の扉を開くと、予想通り大会参加者も減っていて、店内は比較的空いている状況だった。

 

 

「お、流輝ちゃんいらっしゃーい。新弾の受取だよね?もう一般分は売り切れちゃったから、予約しといて正解だったと思うよ」

 

「こんにちは鏑木さん。今回のパック、例によって強力なカードが多い特殊弾ですもんね……シングルも?」

 

「光り物や優良レアカード系は全滅だねぇ……いやぁ、ここまで初動で捌けたのは久々だよ」

 

「やっぱりですか……あ、フリースペースで開封してもいいですか?」

 

「いいよいいよ、毎度毎度律儀だねぇ。開封後のゴミも店のゴミ箱に捨てちゃっていいからねぇ」

 

 

顔馴染みであるバイトの『鏑木 道流(かぶらぎみちる)』さんに声をかけると、レジの奥から予約していた新商品のボックスを取り出してくれる。

 

会計を済ませた私は、フリースペースとして用意されてるテーブルの角に座ると、新商品のパックを開封し始めていた。

 

 

「……すみませーん、対面に座って大丈夫ですか?」

 

「ふぇっ!?は、はい構わないですけど……」

 

「ありがとうございまーす!!せっかくなんで、新弾の開封も眺めてていいですか?」

 

「え、えぇ……」

 

 

すると、赤い髪を後ろで纏めた少女が朗らかな笑顔で話しかけてきて、私の了承を得るとテーブルの向かい側に座って、こちらを眺めてくる。

 

小学校の頃からこのお店には通っているけれど、初めて見る人だな……と思ったので、開封したカードのチェックをしつつこちらからも話題を振ってみることにする。

 

 

「……このお店、よく来るんですか?」

 

「いえ、今日が初めてです!!この近くの高校に4月から通うんで、放課後に寄れるお店の下見を兼ねて公認大会も参加しようかなって思って!!」

 

「この近くというと……流楓高校(りゅうふうこうこう)ですか?じゃあ、4月から学友になるかもしれないですね」

 

「うっそ、同い年!?よかったー!!入学前から友達ができそう!!ボク、住良木 榛名(すめらぎはるな)、よろしくね!!」

 

「私は、辰星 流輝(たつぼしるき)です、よろしく」

 

「オッケーるきるき!!それで、るきるきは何狙いなの?やっぱりトップレアの『ウェイブストレイザー*4』?」

 

「い、いえ私は『ゼノバースペリオル』が欲しくて……」

 

「おー、じゃあるきるきは『ドラグネス*5』か『フェネクス*6』使いなんだ。でもあれ3枚必須じゃないっけ?」

 

「私は1枚あれば十分なんd……あ゛っ゛」

 

 

同級生とわかるやいなや一気に距離を詰めてきた住良木さんに若干気後れしつつ、私は会話を進めながらパックを開封していると、まさに今会話に出していたカードが出てきた。

 

しかも、シク版*7だ。

 

慌てて鞄にしまっていたデッキケースを取り出すと、その中のカードと入れ替えつつもう一方をレアカード開封用に用意していたスリーブの方へといれる。

 

 

「ん?るきるきどした……うおおおおおおっっっっ!?!?!?『ゼノバースペリオル』のシクじゃん!?おめでとー!!」

 

「あ、ありがとうございます……これで、ようやくデッキが完成した、気がします」

 

 

住良木さんの賛辞に礼を述べつつ、デッキケースを胸元で抱える。

 

なんだか、ようやく最後のピースが嵌まって、歯車が動き出したような……そんな感覚が浮かぶのだった。

 

 

「……へぇ?デッキが完成したっていうなら、じゃあやることは一つだよねるきるき!!」

 

「住良木、さん?まさか……」

 

「すいませーん!!バトルフィールド、借りまーす!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★FOCUS:HARUNA SUMERAGI☆★☆★☆★☆★

 

 

 

――アドラ・ステラカードゲームには、1つ大きな特色がある。

 

それは、偽造防止も兼ねてカードに施された特殊インクの二次元コードを読み取り、カードに描かれたイラストを実体化させて臨場感に溢れたバトルを行うことができる、バトルフィールドを提供していること(ちなみにどういう技術を使ってるのかボクにはさっぱりわかんないけど、この技術は他のエンタメにも提供されている、らしい)。

 

もちろん、それなりに大きいスペースを確保できているお店にしか置けないし、「それだけの集客効果があるお店ですよ」とお店側も運営事務局からの認定を受けなきゃいけない。

 

ボクん家の近所じゃバトルフィールドを設置してるお店はなかったからこのお店に置いてるのはびっくりしたけど、1台しか提供されていないしたくさんの人が入れ替わり使うには大変だからか、さっきの公認大会ではトーナメントの最終戦でしか使っていなかった(そしてボクは惜しくもベスト4だったので使えなかった)。

 

だから、あわよくばフリープレイで使えないかなーって粘ってお店に残っていたんだけど(店員のお姉さんに聞いたら、「帰宅時間に問題なくて人が居ないなら閉店前にティーチングとしてやってもよい」と言ってくれた、マジ女神。だけどこういう形になっちゃってマジゴメン今後通うから)、るきるきのデッキの試運転も兼ねられて本当に、色々動き出した感じだった。

 

そして……

 

 

 

 

「ボクは破刃:3(ドライ・エッジ)*8を持つ『流氷騎士ウェイブストレイザー』で、るきるきの『ヴェール』に攻撃!!」

 

「っ!!」

 

 

ボクが操るモンスター『流氷騎士ウェイブストレイザー』がるきるきの『ヴェール』に氷でできた剣を振るうと、『ヴェール』が割れたガラスのように粉々に砕け散る演出が入る。

 

くーっ!!テレビの向こう側だと思ってた光景が間近で見られるのって、心が踊るよねっ!!

 

とまぁそんな感動とは別に、カードゲーマーとしてのボクは冷静に状況を分析する。

 

アドラ・ステラでできる行動は、『エナジー』と言うモンスターの召喚や呪文を使う為のエネルギーとしてカードを配置する『貯蓄』という行動、『貯蓄』した『エナジー』を支払ってモンスターや呪文を使う『展開』という行動、モンスターによって相手のモンスターか相手自身を攻撃する『戦闘』という行動の3種類が基本で、これを各プレイヤーが交互に繰り返してゲームが進んでいく。

 

なので、相手がどういうカードを『貯蓄』に回したか、『シグナルデヴァイサー』に表示される戦術色が何色かで、その戦術の大枠を見極めることが可能だ。

 

例えば、ボクが使う『流氷騎士』というテーマは、モンスターの特殊能力を駆使することで、少ない『エナジー』が『貯蓄』されている状態でも大量のモンスターを『展開』できるというのが売りの、近年推されて環境トップクラスになっている、戦術色が青・紫のデッキになる。

 

 

じゃあ、その視点でるきるきの行動を踏まえると、どう見えるか。

 

まず、るきるきの『シグナルデヴァイサー』に表示されているのは赤・青・緑・紫・黄色の5色。黒と白は例外枠なのでそれを除いて考えれば、るきるきは全部の戦術を使うデッキってことだ。

 

ただ、るきるきが『貯蓄』に回したカードと対戦前のパック開封時の会話を踏まえると、色そのものはどうでもいい。

 

るきるきが使う『ドラグネス』に属するモンスターはバリエーション豊富なので全部の色に存在するし、『ドラグネス』に属するモンスター自体を『エナジー』を使わず『展開』するなんて特殊能力がごまんとある。

 

というか強い『ドラグネス』を幅広く使いたいから『シグナル』を5色にしておいて『展開』しまくる『連鎖ドラグネス』なんて戦術があるくらいで、るきるきがパックから当ててデッキに入れていた『ゼノバースペリオル』――『次元虹竜鳳ゼノバースペリオル』も、『連鎖ドラグネス』戦術を大きく強化できるカードだ。

 

ただ、『連鎖ドラグネス』戦術は基本的に『展開』を支えるカードをリミット限界*9までいれるのが定石(セオリー)だし、要になるモンスターを早急に『展開』する為に『貯蓄』を加速させるカードを使うので、『エナジー』になるカードが被ることが多い、んだけど……るきるきの『エナジー』4枚は、現状1枚も被ってない。

 

いや、そういうことも可能性としてはあり得なくはないんだけど、ボクの脳裏には別の戦術も浮かんでしまう。

 

まさかそんな、ねぇ?

 

 

「…………私は、『ブレイクリベンジャー』を2枚宣言します!!一つは黄の呪文『ディバインフリーズ・ネオ』、もう一つは、赤・緑・黄の『ドラグネス』モンスター『守護騎竜ロード・ブリガデス』!!」

 

「おぅっ!?」

 

 

分析を進めていると、なんか纏ってる雰囲気の変わったるきるきが『ブレイクリベンジャー』*10の宣言を行う。

 

『ディバインフリーズ・ネオ』はこちらのモンスターがこれ以上攻撃できなくなる特殊能力で、『ロード・ブリガデス』は『展開』された時にデッキの上から4枚のカードを、『エナジー』として『貯蓄』することができるカードだ。

 

ただ、『守護騎竜ロード・ブリガデス』は本来『展開』する為に7つの『エナジー』が必要なモンスターなんだよね……だから。

 

 

「『守護騎竜ロード・ブリガデス』が『展開』された時に、ボクの場に居る『流氷騎士クリスタル・フリントウッド』の特殊能力が起動するよ!!『展開』時に『貯蓄』されていた『エナジー』よりも大きい『エナジー』を支払う必要のあるモンスターを、破壊できるっ!!」

 

「ですが、『流氷騎士クリスタル・フリントウッド』ではこちらのモンスターの特殊能力は止められません!!そのまま、デッキの上から4枚『貯蓄』します!!その後、『守護騎竜ロード・ブリガデス』は破壊!!」

 

「……これで、ボクの手番は終了だ」

 

 

うーん、ボクのデッキもノリノリでこのままフィニッシュムーブまで行ける想定だったんだけど、絶妙に防がれてしまった。るきるきの『貯蓄』も結構進んじゃって、『流氷騎士クリスタル・フリントウッド』で止められるカードが少なくなっちゃうんだよなぁ。戦術色も『シグナル』に表示される5色全部揃っちゃったし……さて、何が飛んでくるやら?

 

 

「――私の手番を開始時。山札のカードを手札に加える代わりに『シグナルデヴァイサー』を展開します。そして、『シグナル』を手札にっ!!」

 

るきるきの宣言と共に、『シグナルデヴァイサー』の上部スロット――『シグナル』をセットする部分がガチョンッ!!と展開し、排出された『シグナル』をるきるきが手札に加えた。

 

 

「5色、7つの『エナジー』を消費。新たな竜鳳よ、次元を超えて、その『映身(かげ)』を顕現させよっ!!『次元虹竜鳳ゼノバースペリオル』!!」

 

なんかテンションが上がっているのか、るきるきは不敵な笑みを浮かべてこちらを見つめながら、手札に加えた『シグナル』を場に『展開』する。すると、それに合わせて虹色の光がるきるきの身体を包みこんだ。

 

 

「何の光ぃっ!?」

 

「おー、『転霊化』?珍しいのが見れるやんけ」

 

「あー、はいすいません皆さん撮影とSNSへの投稿NGとなりまーす。スマホしまってくださーい」

 

 

バトルフィールドの外に居たお客さん達もがやがやと見物が増え、店員のお姉さんと店長と思われるマッチョの人が声掛けをしてる。いやほんと想定外の事態になっちゃってごめんなさい。

 

バトルフィールドの外に意識を向けていると虹色の光が収まり――るきるきの、姿が変わっていた。

 

今まで着ていた身体のラインを隠す大きめのパーカーとジーンズではなく、セクシーな感じに露出度が高くなった和風の衣装と、虹色のグラデーションになった翼に、鋭い角と鱗の生えた尻尾。

 

一見するとそれは、『次元虹竜鳳ゼノバースペリオル』のイラストに描かれているキャラクターのコスプレをるきるきがやっている、という感じの姿だ。でも、そうじゃない。アドラ・ステラでは稀によくあるオカルトチックな出来事。

 

 

 

――アドラ・ステラカードゲームには、『精霊』というものが存在する。

 

お偉い大学の教授さんが言うには、『別世界の存在が依代によって具現化している』とかアドラ・ステラカードゲーム誕生以前から確認されている例があるとかで厳密には違うらしいのだけれど……ともかく、カードを通して『精霊』が現れるという事象は珍しいことじゃない。

 

『精霊』による影響の多くはアドラ・ステラカードゲームのプレイヤーぐらいにしかないので、世間一般の認識からしたら外国人とそこまで大差ないから、普通に受け入れられている……のはともかく。

 

今るきるきに起きているのは、『転霊化』――人間の魂そのものに『精霊』が宿っていて、対応するカードを『展開』すると『精霊』としての姿に変わる、というものだ。つまり、その場で変身ヒーローとか魔法少女みたいになるってことだね。

 

中学の全国大会でも、見たことはある、あるんだけど……さすがに今日発売されたばかりの新パックに封入されてるカードになるってのは、経験したことないかなぁっ!?え、そんなミラクルあるのっ!?『精霊』って摩訶不思議だね!!あと、対戦前に比べて微妙にるきるきのテンションが上ってるように見えたのってこれの影響かなぁっ!?

 

 

「『展開』した『次元虹竜鳳ゼノバースペリオル(わたし)』の特殊能力を起動!!山札の上から3枚を捲り、その中にある『ドラグネス』または『フェネクス』モンスターを、『エナジー』を消費せずに『展開』!!そして、私の場に『展開』されたモンスターは、次元酔いの影響*11を受けないっ!!星の導きに、誘われよっ!!」

 

るきるきが『シグナルデヴァイサー』の上に手をかざすと、なんか超能力的なあれでデッキの上からカードが3枚吐き出され、るきるきの眼前に浮かぶ。そして、それらのカードがくるりと回転すると、ボクに何のカードが捲れたのかを公開する。

 

 

『守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』

 

『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』

 

『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』

 

 

どれも『ドラグネス』のカードなので、当然場に『展開』される。『次元虹竜鳳ゼノバースペリオル』はこの能力が強いので、発売前から3枚必須だと騒がれてたのだ。なんでゼノバースペリオル自体が捲れても『展開』できて連鎖するんだろうねこれっ!?

 

 

「捲れたカードは全て『ドラグネス』!!更に、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』は『守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の上に重ねて、『エヴォルト*12』状態で『展開』!!我が騎士よ、呼び声に応えよっ!!」

 

「仰せのままに、我がマスター。そして祝いましょう、あなたの真の姿が、顕現なされたことを」

 

 

るきるきがテンション高めの状態でそう叫ぶと、まずるきるきの前に2体のモンスターが現れる。

 

片方は、鎧っぽさもある踊り子のような衣装を纏ったドラゴンガール、『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』。

 

もう一方は、ソシャゲなんかでよく見る、ボディラインにフィットした鎧をつけた騎士っぽいドラゴンガールの『守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』。

 

そして、『守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の方はまばゆい光に包まれると、より肌の面積が増えてセクシーさが上がってるのになんか高貴さも感じさせる派手な鎧を纏い直し、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』へと姿を変える。

 

アドラ・ステラ黎明期の『ドラグネス』代表格ともいえるモンスター2枚の上に、更に近年登場したリメイク枠の登場だ。なんかこう、漫画とかでありそうな光景をリアルで見るとは思わなかったよ。

 

 

「あなたも幸運ですね、我がマスターの覚醒に立ち会えるとは。この機会を生み出してくれたことに感謝を。願わくば、あなたがマスターのよき友としてこれから歩んで頂けると助かりますが……手は、抜きませんよ。デッキとしては、あなたの方が強者なのですから」

 

 

すると、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』が明らかにボクの方を見据え、対戦前の会話の流れも汲んで語りかけてくる。そんなこと、普通のバトルフィールドではあり得ない。

 

……えっ、るきるきって『精霊』が宿ってるカードも持ってるの!?

 

 

「残念ながら、私だけではありません……マスターの晴れ舞台なのです、そろそろ姿を見せなさい」

 

「『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の特殊能力を起動!!『エヴォルト』状態で『展開』された時または攻撃を行う時、相手のクリーチャーと戦闘できる!!更に、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』は昇華ゾーン*13にあるカードの枚数分、パワーがプラス5000されるっ!!そして戦闘に勝った場合、『エナジー』にしたカードの中から『ドラグネス』モンスターを1体、『展開』可能!!」

 

 

そんな言葉と共に『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』が右手に持つ大剣を横薙ぎに振るうと、ボクの『流氷騎士クリスタル・フリントウッド』が真っ二つにされ、破壊される。

更にるきるきが『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の効果を読み上げると、るきるきの『エナジー』から、赤・青・黄・紫の4色が入り混じった焔が勢いよく燃え上がって、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の傍らに降り立つ。

 

 

「ハハハハハハ!!主の晴れ舞台に、(オレ)が居らんのはつまらんよなぁっ!?こいつとは違い原初の(オレ)と並び立つのも、また一興っ!!いざ、参ろうぞっ!!」

 

「――『展開』するのは、『絢爛武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』!!我が刃よ、舞い踊れっ!!」

 

 

焔の中から現れたのは、『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』が4色の焔とよりド派手な衣装に身を包み、よりグラマラスな体型になったセクシーなドラゴンガール、『絢爛武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』。

 

うわぁ……よりにもよって『精霊』の宿るカードが、この2枚なんだ。

 

『精霊』はプレイヤーに憑いてる守護霊みたいなものだから、カードの所有権とかで別の人の所に行くなんてことは少ないんだけど……この2枚の『精霊』が同時に憑いてるって、昔からのプレイヤーからしたら感涙物だぁ。

 

とまぁ浸ってる場合じゃないというか状況はヤバい。というかボク、詰んだかもしれん。

 

 

「言ったでしょう、デッキはあなたの方が強者だと。プレイヤーとしても、マスターに比べればあなたの方が強者です。ならばこそ礼儀として、我らの全力を持って、あなたを打倒しましょう」

 

「『エナジー』には蒼焔の(オレ)も控えているからな……貴様の『ヴェール』、全て滅してくれようぞっ!!」

 

幕引き(カーテン・コール)の時間よっ!!『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』で、『流氷騎士ウェイブストレイザー』に攻撃っ!!パワーはこちらの方が上なので、戦闘に勝った場合の特殊能力が再び起動するわっ!!『展開』するのは、『蒼焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』!!」

 

 

『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』が翼をはためかせて『流氷騎士ウェイブストレイザー』に突撃し、見惚れるような一閃で『流氷騎士ウェイブストレイザー』を破壊する。すると、るきるきの『エナジー』から蒼い焔が燃え上がり、今度は『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』が蒼い焔とちょっとお姉さんっぽい衣装になってメガネをかけたドラゴンガール『蒼焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』が姿を見せる。

 

さて、ここで一つ解説をしつつクエスチョン。

 

『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』とそれに連なるモンスター達は、共通して焼滅(ブレイズ・エンド)という、『ヴェール』を破壊する際に手札に加えさせず昇華ゾーンに叩き込むという特殊能力を持っている。

 

Q:ボクの『ヴェール』枚数は初期状態の7枚ありますが、るきるきの場に居る『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』達の破刃(エッジ)可能枚数も、合計7枚です。どうなるでしょうか?

A:現実は非常である。逆転要素を全て潰された状態で、ボクを守る『ヴェール』は0枚になる。

 

 

「征くぞ(オレ)らよ!!その焔で穿ち、主の路を斬り拓け!!」

 

「これでっ!!私の、勝利よっ!!」

 

「ぬわあああああああああああっっっっっっっっ!?!?!?!?」

 

 

怒涛の連続攻撃で、ボクの『ヴェール』は焼き尽くされる。そして、なんか光り輝く弓に矢を番えてこちらを狙い定めていたるきるきが矢を放つと、ボクの視界は敗北演出の爆発エフェクトで一面埋まるのだった、まる。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★FOCUS:RUKI TATSUBOSHI☆★☆★☆★☆★

 

 

 

「いやー、上振れムーブ来ちゃったから一気に突っ込んじゃえっ!!ってやったら見事に逆転されちゃったよ!!るきるきすごいねー!!……って、どうしたの?」

 

 

――対戦が終わり、バトルフィールドのこちら側に住良木さんが来たのが声でわかったが、私はそれどころではなかった。

 

きっと住良木さんの目には、顔どころか肌が見える部分を真っ赤にして、顔を覆って蹲る私の姿が映っているだろう。

 

 

いや、待って待って待って待って待って。昔『物語の主人公』かもしれないなぁという期待はしたよ、しましたよっ!?でも、それってカードゲーム的なホビーアニメ作品風の話であって、変身ヒロインになるのは聞いてないですってっ!?!?もしかして変身バンクみたいなノリで、光に隠されているとはいえ素っ裸になってませんよね私っ!?

 

 

「あー、大丈夫だよ流輝ちゃん。撮影禁止にしたし、演出的には服が光って変わる感じだったから。ギリセーフだよ」

 

「えぇ、今でもエンタメ重視のプロ対戦に出たら、花形選手になれそうなくらい素晴らしいものだったわ」

 

 

鏑木さんの温かいフォローが聞こえてくるが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいですってっ!?

 

あと店長、そのマッチョな見た目でオネェ口調で元公式プロって要素の過剰積載はしれっと出てくるにはインパクトありすぎませんかっ!?

 

他のお客さんはっ!?あ、私達の観戦したら満足しちゃってほとんど帰っちゃいましたかっ!?なんかすみませんっ!?

 

 

「……やれやれ、マスター。いつまでもそこに蹲られると迷惑になりかねません、移動しますよ」

 

 

そんな声が聞こえたかと思うと、私はいつの間にか現れた上になんか私服っぽい出で立ちになった『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』に抱えられてバトルフィールドを降りると、フリースペースに座った『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の膝の上に座らされた。

 

ん?なんか流れるようにぬいぐるみみたいな扱いになってない私?

 

 

「当然ですマスター。私はマスターの勝利に貢献しました。なので褒美を得る必要があると思うのです。これは正当な報酬ですよ」

 

「は?それならば(オレ)にも権利はあるが?何を独り占めしているのだ貴様」

 

「あ?私が居なければ戦場に立てなかったあなたが何を言うのです?というかマスターは羽毛のように軽いですがあなたは重いのですが、どいてくれませんか?」

 

 

すると、同じくなんかモデルっぽい私服になった『絢爛武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』が現れ、抱きかかえるかのように私の膝に座る。体勢的に見ると、私がサンドイッチされて顔に二人の暴力的な質量(おっぱい)が当たる感じだ。役得っぽく見えるでしょ?苦しさの方が勝りますねこれ。ヘルプ、ヘルプ!!!!!!

 

 

隙間からちらっと住良木さんの方を見ると、なんかいい笑顔でサムズアップして、そのまま鏑木さん達と会話しているっ!?あれ、出会って早々に見捨てられた私っ!?

 

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

――こうして、私の波乱万丈なカードゲーム人生は、今、ようやく、スタートラインにたった……のかもしれない。

 

この時の私は、高校に入学してから住良木さんと共にカードゲーム部に入って全国大会を目指すことになったり、青春を謳歌したり、ちょっとしたトラブルに巻き込まれたり等の未来が待っていることを知らないのだけれど……

 

それはまた、別の機会に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★FOCUS:????????☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無限に続く、一面見渡す限りの白輝(シロ)き世界。

 

『ソレ』は、その世界の中央で、静かに佇んでいた。

 

――正確に言えば、そこに見えるのは『世界』ですらない。ただ単に、『ソレ』が放つ光によって白輝(シロ)く塗りつぶされ、視界を塞がれているだけなのだから。

 

光なき深淵(ゼロ)と対極にありながら限りなく近い、光溢れる白輝(シロ)。故に、『ソレ』は『世界』を正しく観測できない。

 

『ソレ』が『世界』を観測するには、光を遮る◯◯(カゲ)が必要なのだ。

 

 

そういう意味では、新たに創った◯◯(カゲ)から見える『世界』は面白い。

 

今まで創った◯◯(カゲ)のおかげで、『ソレ』は『世界』が無数にあることを知っていた。様々な『イノチ』の形があることを知っていた。

 

だから、ある◯◯(カゲ)で観測していた『世界』で、たまたまその『世界』からこぼれ落ちた『イノチ』が、拾われずにそのまま漂っているのを、『ソレ』は見つけた、見つけてしまった。

 

 

『ソレ』はこう思った、どうしてこの『イノチ』はこの『世界』に戻らないのだろう?『世界』も回収する様子を見せないのなら、そのまま狭間を漂うのか?と。

 

『ソレ』はこう思ってしまった、この『イノチ』がそのまま狭間を漂って、『世界』がそれを気にもとめないならば、自分がこの『イノチ』を拾ってもよいのではないのか?と。

 

そうして、『ソレ』は『イノチ』を掬い上げた。せっかくなので、新しく創っていた◯◯(カゲ)に、その『イノチ』を入れようと考えた。

 

『世界』の輪廻(サイクル)で、それはごく普通に行われることだから。

 

そして、『イノチ』を入れた辰星 流輝(カゲ)は面白いことになった。

 

その事実は『ソレ』にとって想定外だったが、観測する分には面白いので、『イノチ』が困るなら、辰星 流輝(カゲ)に力を注いでやってもいいと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

――そうして、アドラ・ステラというカードゲームのフレーバーにおいて『白陽き鳳(フェネクスペリオル)』と呼ばれている『ソレ』は、『世界』を照らし、観測し続ける。

 

これまでも、これからも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
40~50枚のカードで構成され、後述するシグナルもデッキ枚数に含まれる。

*2
デッキで使用する戦術の色を宣言する為のモンスターカード。基本的には赤・青・緑・紫・黄色・黒・白の7色が存在するが、黒と白を除いた複数の色を備えるカードもある。色が増える程デッキの戦術は多彩になるがバランスが難しくなる。

*3
本来『シグナルデヴァイサー』を使用せずとも対戦は可能だが、『シグナル』カードを相手に見せず戦術の色を宣言するという行為がプレイヤーに好評なので公式戦では多くのプレイヤーが使用している

*4
正式名『流氷騎士ウェイブストレイザー』。だいたい環境トップのデザイナーズデッキに「ただでさえ強いのに更にこんなカード渡すんか!?!?」とプレイヤーが慄く類のカードと思ってよい。

*5
アドラ・ステラ黎明期からの大型モンスターを駆使する人気テーマ。かっこいい系竜人女子のイラストが多い。

*6
同じく黎明期からの不死鳥をモチーフにした人気テーマ。アドラ・ステラのメディアミックス作品でボスキャラが使いがち

*7
シークレットの略。ざっくり言えばイラスト違い

*8
1回の攻撃で、相手の『ヴェール』を2枚以上剥ぎ取る場合の枚数を示すキーワード。

*9
いわゆる禁止制限。アンリミテッド:無制限、セミリミテッド:2枚制限、リミテッド:1枚制限、オーバーリミテッド:デッキ投入不可と分かれる。

*10
相手の攻撃を受けた『ヴェール』はプレイヤーの手札に加わることで剥ぎ取られたことになるが、そのタイミングでだけ『エナジー』を使わずに『展開』することが可能なキーワードで逆転要素の一つ。

*11
『展開』されたモンスターは、基本的に『展開』直後は攻撃等はできない。無視する手段はいっぱいある。

*12
モンスターの上に重ねることができるモンスターのキーワード。『エヴォルト』状態だとより強力な特殊能力が使える場合が多い

*13
いわゆる墓地

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