ホビアニ風百合異世界に転生して魔法少女もどきしながらTCGやってます(仮題) 作:朝陽祭
――世の中、時間というものは常に進んでいく。
変わらないものもあれば、変わっていくものも。
だけど、変化を恐れては行けないのだと思う。
一歩踏み出せば、新しい出逢いがあるかもしれないから――
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春休みも終わりに近づいていく、ある日のこと。
カーテンの隙間から差し込んでくる朝日で目が覚めた私は、隣でまだ寝ているドランを起こさないように布団から出ると、着崩れたパジャマのボタンを閉じ直しながら、2階の自室を降りてリビングへと降りていく。
「おはようございます、マスター」
「おはよう、ペンデ……
「既にお仕事へ。那奈様は本日会社の懇親会があるので帰りが遅くなると言伝を預かっております」
「そっか、ありがと」
キッチンでは(キャラ設定としては騎士団を率いる女王なのに何故かメイド服を纏った)ペンデが朝御飯をトレイに用意してくれていたので、そのままトレイごと受け取って、いただきますをしてから口をつけていく。
……こう、一軒家を構えられる程裕福な両親の元で育てられてきたのはとても感謝しているが、『そういう世界』だからなのかオカルトチックな事態も許容できる両親に時々面食らうのは、前世があるが故のギャップなのかもしれない……いや、そもそも同性婚当たり前なこの世界にもびっくりだけど。
おかげで意識がはっきりした時には「あ、本当の子供じゃないし私自身になんかあるわこれ」って悟ったよね、うん。
「本日も、榛名様とお出かけの予定でしたよね?」
「え?あぁうんそうだね。ウィンドウショッピングしながらお昼食べて、午後からある『BLUE PLANE』でのイベントを見に行く感じになるかな?」
今まではデッキの都合もあって、『BLUE PLANE』でのイベントはカジュアルなものくらいしか参加してなかったのだが、今回は少々趣きが異なるイベントなので、せっかくだから参加することにしたのだ。
なにせ――道流さんのプロ就任お披露目も兼ねた、女性プロチーム『MONOCHROME-CHEMISTRY』のイベントなのだから。
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アドラ・ステラカードゲームに置いて、『プロプレイヤー』になることはそこまでハードルが高いものじゃない。
極端な話を言うと、アドラ・ステラ運営が主導してる公式ランキング*1に参加していれば、『プロプレイヤー』を名乗ること自体は自由なんだよね(バイトなり配信者なりで収入を得れば、「自分自身がスポンサー」ってことだし)。
その為、アドラ・ステラの界隈だと『プロカードゲーマー』というのは、大きく3種類に分類される。
1つ目は、アドラ・ステラ運営が直接雇っているキャストさんや、解説に呼ばれるプロプレイヤーさんの総称となる『公式プロ』。
2つ目は、アドラ・ステラに何らかの形で関わってる企業さんが運営するチームに所属する、『企業プロ』。
3つ目が、その他大勢(とはいうけれど、世間一般的にはアドラ・ステラを主軸にしたストリーマーを指すかな?)である『在野プロ』。
今日『BLUE PLANE』でイベントを行う『MONOCHROME-CHEMISTRY』は、大手玩具会社が運営してるプロチームなんだ。
(友達になってわかったんだけど、るきるきはなんでか男性を主軸に話すことがあって『女性プロ』って言い方するけどもね?男性プロって店長さんみたいな例外を除くにしても数少ないんだけどなぁ)
「しっかし、ボクもアンテナが狭かったなぁ。ちょっと調べたら道流さんってびっくりするくらい好成績残してるプレイヤーじゃん?そんな人にフリー対戦とかお願いしてたとは……」
「道流さん、高校生時代から企業プロチームの勧誘は受けてましたからね。ご家族との約束で大学卒業まで断ってましたけど」
「あー、るきるきはその頃から付き合いあるんだ?じゃあ石上プロとも会ったことあるの?」
「そうですね……道流さんが『BLUE PLANE』でバイト始めるようになったのも元々拠点にしてたって縁からなので、時折来てましたよ?」
そんな他愛もない会話をしながら、昼食を取り終えたボクとるきるきは『BLUE PLANE』へと向かっていた。
ちなみに道流さんの加入は、同タイミングで加入した
まぁ、道流さんが中学〜大学時代に争っていて先に企業プロになった世代は公式主催の日本一決定戦や世界大会で名を馳せていて、特に世代最強の双璧と名高く『MONOCHROME-CHEMISTRY』の看板選手でもある
如月プロも高校の全国大会で活躍し、卒業と同時に企業所属になった注目選手――なんならボクの目標とも言える人だったので、間近で会えるとなると緊張もひとしおだ(なお、るきるきには全然そんな風に見えないと言われた、解せぬ)
「お、いらっしゃ~い二人とも!!今日は来てくれてありがとう!!」
そんなこんなで『BLUE PLANE』に着くと、チームユニフォームを纏った道流さんが入口で出迎えてくれた。チラリと見える店内は開店直後だというのに千客万来で、レイアウトを変えてサイン会場となったフリースペースでは、『MONOCHROME-CHEMISTRY』所属のプレイヤーさんがサインを書いたり等てんやわんやとなっているのが見える。
「おぉ……なんかすごい光景だ。でも、道流さんはなんで入口側に居るんです?今日の主役ですよね?」
「サイン会とは別に1日店員の企画もあるからね、今はそっち担当なのよ。あ、公式チャンネルとしての撮影も入ってるから、もし嫌だったらカットしてもらうから言ってね?」
「そこは多分、るきるきがフィールド使うエキシビションマッチに選ばれたりとかしなければ*2大丈夫だと思いますけど……ねぇ、るきるき?」
「そ、そうですね。卓上でのプレイとかなら全然……」
「それならよかった……じゃあ、イベント楽しんでね。できればチームロゴの限定グッズとかも買ってくれると嬉しいな♪」
それはもちろん!!ふっふっふっ、こういう時の為に確保してたボクのへそくりが火を吹くぜ〜!!!!
ところで道流さん、そのチームユニフォーム、なんで下がピッチリしたショートパンツとチャップスの組み合わせなんです?なんかこう……上のジャケットも相まって黒と白のグラデーションはかっこいいですけど、ドラグネスに負けない感じの太腿が強調されとりますが。
「…………私以外の満場一致で、この衣装にさせられたわ。それを推さないだなんてもったいないって」
そ、そうなんすね……
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そんなこんなで私と榛名さんは限定グッズを記念に買ったり、サイン会にそのままグッズを持ち込んでサインを書いてもらう等して、イベントを楽しんでいた。そうして、時間が過ぎていくと……今日のメインイベントの1つである、『MONOCHROME-CHEMISTRY』のプレイヤーさん達と戦えるエキシビションマッチの抽選会が始まった。
このエキシビションマッチは、新人メンバーである道流さんと如月ソフィアプロとはバトルフィールドを用いたバトルを、それ以外のメンバーとは卓上でバトルする、時間制限30分の1本勝負。
対戦の権利は、イベント物販購入時についてる抽選用の半券を、対戦したいメンバー側の抽選BOXに入れて、それを各メンバーがくじ引き感覚で引く、という流れだ。
せっかくの機会ではあるので、バトルフィールド側にならないよう既存メンバーの抽選BOXに半券を入れたのだけれど……
「久しぶりねぇ、
「お、お久しぶりですね咲耶さん……」
よりにもよって、見知った顔である石上咲耶プロとの対戦に、当選してしまった。ちなみに榛名さんは如月プロとの対戦に当選したようで、今は順番待ちをしながら道流さんのエキシビションマッチを観戦している。
「道流から聞いたわ?ようやく精霊の力を乗りこなせるカードに巡り合えたようね?一応、おめでとう、と言っておくわ。でも、道流があなたのことばかりで、妬けちゃうのよね」
「あ、あははははは……」
ちなみに咲耶さんは昔から道流さんのことが好きだ。宿命のライバルだからと大本営発表してるが、LikeではなくLoveなのは幼い頃の私でも察するくらいに。なので、道流さんから妹分的に扱われている私に対して、会う度々にプレッシャーをぶつけてくる。
そろそろ勘弁してくださいよ……道流さんが一人暮らし始めたら小まめに来るどころか事実上の同棲状態だって聞いてますよ?私なんかより他のライバル達と恋愛バトルしてくださいよ。え?他とは格付け済んでるけどお前の立ち位置が依然厄介だって?そうですか……
※ここまでの会話はアイコンタクトで行われています
「……まぁ、プライベートの話はこれくらいにしておきましょう。それじゃあ、あなたの
「――よろしく、お願いします!!」
〜〜10数ターン後〜〜
「『次元虹竜鳳ゼノバースペリオル』で、プレイヤーに攻撃!!」
「『金環魔皇ゴルドファング・スーパーノヴァ』の特殊能力を宣言。デッキをシャッフルした後、デッキトップを昇華ゾーンに落とし、それが『エヴォルト』を持たない『デモノクラン*3』カードならば墓地に落としたカードを下に置いて、『エヴォルト』状態で『展開』するわ。もちろん、シャッフルするわよね?」
「じゃあ、お預かりします……シャッフル、終わりましたのでお返しします」
「それじゃあ、結果は〜〜〜〜〜?『魔皇の騎士ズラゥグァン』、『デモノグラン』カードね♪ざぁんねぇんでしたぁ♡『金環魔皇ゴルドファング・スーパーノヴァ』の『展開』に成功したので特殊能力を起動。あなたのドラグネス達をすべて星雲ゾーン*4に叩き込むわぁ♡」
「むぎゃああああああ!?!?!?!?!?て、手番終了っ!!」
「それじゃあ、私のターンね……『ヴェール』が0枚の状況から盤面をひっくり返してきた所まではよかったけれど、私の勝ちよぉ♡」
よ、よりにもよって最後に手札に加わった『ヴェール』がゴルドファング・スーパーノヴァだなんてええええええ!!!!!!くやしいいいいいいい!!!!!!
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おわぁ……るきるき頑張ったなぁ。5Cドラグネスのハイランダー*5構築でプロ相手にあそこまで戦えたのすごいよ……
「それでは55番の方、フィールドにあがって準備を行ってください」
「あ、はーい」
るきるきのエキシビションマッチを遠目で観戦しつつ、スタッフさんの指示に従ってボクはバトルフィールドに立ってデッキやシグナルデヴァイサーをセットする。
フィールドの向こう側には、さっきサインを貰った如月ソフィアプロが、準備を終えてこちらに笑みを向けていた。
「確か……住良木、榛名さんでしたね?このバトルがあなたのよき経験になるよう、誠意を持ってお相手しましょう」
「はい!!よろしくお願いしますっ!!」
ボクのデッキは公式大会Tier*6上位の『流氷騎士』デッキ。如月プロは何を使うかわからないけど、エキシビションマッチのルール上フェザーリーグ*7用のデッキなのは決まっている。本当なら戦う土俵がズレてるデッキを使うのはマナーが悪いんだけど、今回のイベントはそれを織り込み済――むしろ、『その程度のハンデは悠々に乗り越えて勝つのを求められるのが企業プロのプレイヤーだ』というのを見せて魅せる為のイベントだ。
なので、ボクはボクの全力を持って……理想は、勝つつもりでいくぞぉ!!!!!
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「いやぁ、一仕事した後にお風呂も入って、さっぱりさっぱり!!それじゃ、かんぱ〜〜〜い!!」
「……乾杯」
『BLUE PLANE』でのイベントと撤収作業を終えて帰宅した*8私と道流は、風呂上がりでゆったりとしたまま、ソファーに座って缶チューハイを飲んでいた。
疲れは残っているが、道流と共にプロチームで活動できるという喜びの方が勝っているので、この程度苦でもない。いずれは、心地よさに変わっていくだろう。
「……しかし、
「お?咲耶の方から流輝ちゃんの話題を出すなんて珍しいねぇ?」
「……別に、褒める部分があったから褒めてるだけよ」
「ふ〜〜〜〜ん??????」
道流は赤くなった顔を更に綻ばせながら、ニヤニヤとしつつチューハイに口をつける……こういう『妹を褒められて嬉しい姉』のような、あの子が関わる時だけしか見せない表情を見せてくるのだから、あの子に対して複雑な気持ちを私達が抱えていることに、道流は気づいているのだろうか?いや気づいていないわね絶対。
そんなことを思いながら缶チューハイを飲んでいると、ふと『BLUE PLANE』を去る間際にあったことを思い出し、道流に尋ねてみた。
「……そういえば、解散する時に如月の奴が何か話しかけていたようだけど、何だったのあれ?」
「あー、あれ?榛名ちゃん――流輝ちゃんと一緒に居た子、覚えてる?私の知り合いならってことであの子宛の伝言預かったんだよ。けれど、どう伝えるか迷っててさぁ……」
「なに、文句?そんなことを言うなら、チームの先輩として逆に注意しなきゃいけないんだけど」
「あぁ、違う違う。『もし企業プロを目指すのなら、公式大会は程々にして学生大会に専念した方がいい』ってアドバイスだから真っ当ではあるんだよね。イベントのあれこれで伝え忘れちゃったらしいから」
なるほど、確かに高卒で企業プロになった先達としては真っ当なアドバイスだ。
アドラ・ステラ運営が各教育機関と提携して行っている学生大会……特に高校生大会を指す、通称『アドラ・ステラ甲子園』。
これらの大会には、公式ランキングで一定以上の成績を納めている学生プレイヤーは出場不可になるという制限がある。
昔聞いた話では、そもそも「カードゲームでも甲子園やドラフト会議を開きたい!!カードゲームだって青春ドラマはできるんだ!!」という馬鹿げた大人達による純粋?な思惑が何故か社会に受け入られた結果誕生している催しなので、既に実績を持つ学生プレイヤーが大会を蹂躙するというのを――より悪く言えば、そういうのは中学時代の道流みたいな
まぁ、一旦そこは置いておくとして。エキシビションマッチ自体は如月が勝利してたが、プレイングセンスは私の目から見ても光るものを感じたので、公式大会でいずれ実績を積むのは、想像に難くない。
公式大会も企業チームのスカウトはチェックするとはいえ目に留まりやすいのは学生大会なので、そちらに焦点を当てた方が企業プロを目指すなら手っ取り早い。
「……それは、確かにね。でも、それならなぜ伝えるのを迷うの?」
「榛名ちゃんの目標がそもそも『アドラ・ステラ甲子園で優勝して、ソフィアちゃんみたいに輝くプレイヤーになりたい』だから、変に企業プロのこと意識させなくてもいいかな〜って。それよりはソフィアちゃんが応援してたとかの方がモチベーション上がりそうだし?みたいな?」
「あぁ、そういう……とっくに、夢に向かって走り出してるのね」
それはまた、素晴らしいことだ。
そんなこんなで、私は道流と共に色々語りながら、夜が更けていくのを楽しむのだった。